C.E転生   作:asterism

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結局一週間飛んでしまい申し訳ありません。

ベースマテリアルが万能素材化…実際Nジャマーキャンセラーの為だけの素材なら「ベースマテリアル」なんて呼ばれないんじゃないかなぁ…。と考えたからです。話は変わりますが、バイオベースマテリアルなる言葉は現実に存在しているみたいです。…ちょっと調べましたが、大まかには石油等に依存しない天然の再生可能資源を用いた新素材…でいいのかな?あまり理解できていない気がします。


phase22 アークエンジェル

アーモンド護衛部隊

 

「何だ…?って速い!?」

 

いきなりの警報にレーダーを見ると、ミサイルほどの大きさの物体が異常な速度で接近している…。取り敢えず記憶の中では見たことのない兵器だ。

 

「新兵器か?でもこれなら!!何!?」

 

ショットキャノンの拡散率を広げ撃つ。ミサイルならばこれでも落ちるはずであったが、当たっても落ちない。

 

「チィ!?」

 

充填は間に合わないと判断し、もう襲撃のないことを祈ってミサイルを撃ち尽くした背部ユニットをミサイルへ飛ばしぶつける、がそれでも多少軌道を変えただけである。

 

「なんつー推力だよ!?」

 

ミサイルは軌道を変え、機関部への直撃こそ避けられたがバイタルパートを貫通している。長くは持たないか。

 

「退艦は…持つのか?」

 

脱出ポッドやシャトルが出てくる姿を見ながら呟く。幸いにも、爆発するまでは時間があり多くの乗員が脱出できたが、バイタルパート貫通やミサイル命中時の衝撃により、約7割の乗員が戦死した。その際アークエンジェルにより「保護をした民間人を人質にとる行為」が行われZAFTが撤退し、それも含めて惨敗といってもいい結果に終わった。

 

―――――――――

翌日 ズルフィカール ブリーフィングルーム

 

「…それで、このデカブツの正体はなんだったのかね?」

 

「簡単に言えば、運動エネルギーを用いたミサイルです。とても強固な構造…というより金属塊をぶつけることで、敵艦を破壊します。ご丁寧なことに、対ビームコーティングを施してあることも確認されていますね。それから、推進力であるエンジンもベースマテリアルを使用した高性能固形ロケットエンジンです。推力はバカみたいに高いです。その気になれば外宇宙へ乗り出す推進力として使えますよこれ…」

 

エンジンに関しては燃料が切れたらそれで終わりだが、規模によっては、それほどの加速が可能だと思う。未だ火星のベースマテリアル鉱脈が見つかっていない状態でこんな使い方をするのは勿体無い。もしかすると自由と正義がリストラされるかもしれないじゃないか。産出量が少なくて、加工がめんどくさく、それでも製造業での需要は尽きることがない…。だから、“ベース”マテリアルなんて名前がついてるんだ、代替品の研究は常にされているがどれもパッとするものはない。ZAFT側にはボアズしか鉱床がないのだから不足気味だろうに。ミサイル自体は、恐らくは「迎撃されないこと」を目的に作られたミサイルだろう。ダインスレイブではないが、素直にレールガン撃てというのは甘えなのだろうか?と、思いながら、昨日ネルソン級を撃沈させたミサイルの検証結果を伝える。ぶっちゃけ外れれば地球の重力吹っ切るまで加速しそうだし、かなり頑丈に作られており、破壊することは至難の技だろう。誘導性能も酷いが、そのお陰でアークエンジェルを狙った一発が小惑星に突き刺さり確保できた。数が作れるようにも思えないが…。

 

「何とも手の込んだ品だな、が、それだけに強力でもある。しかし、そう数が作れるものでもなさそうだな」

 

「私ならば、手頃な大きさのデブリにでも適当なロケットエンジンつけて飛ばしますね。ほぼ同じことができますし、安いです」

 

耐ビームコーティングなんぞ使い捨てのミサイルに使う気にはなれないし、このロケットエンジンなんてもっと使う気にはなれないが、敵がビームシールドを装備しているというのなら話は別だが、ミサイルなんて数撃たなきゃ話にならない状況だし、なるべく手間を減らしてたくさん作って撃つべきなのだ。

 

「…まぁ、総合すると、アルスター事務次官他、三割の乗員の脱出時間があっただけ良かったということか、あの混乱の中、三割の乗員を救助してくれたことに感謝する」

 

艦長は間に合わなかったが、アルスター事務次官をシャトルに案内していた為生き残ったアーモンドの副長が口を開く。

 

「いえ、任務失敗というべき無様をさらしてしまい申し訳ない」

 

「命あっての物種だ。アルスター事務次官の怪我もそちらの集中医療設備のおかげで大事なかったのだ。そう悪いようにはならんさ…それよりも…だ。ラミアス副長…いや艦長代理、なぜ命令を無視した?」

 

スハルト指令が頭を下げ、その謝罪を副長が受け入れる。

 

「それは…」

 

「何故我々が情報流出の危険性を顧みずAOCを作戦に参加させたのか理解していなかったのかね?」

 

「その…AOC製のモビルスーツがこれほどとは…」

 

ラミアス艦長が取り繕うように発言する。実際、指揮をする人間ではないのだ。間違いをする可能性は多分にあるから仕方がないのだろうが、だからこそ、こちらの指示を聞いてほしかった。

 

「ふむ…成程、情報が限りなく少なかったのはあるが、前線に出してくる時点で使い物にならんわけがないだろう?まぁ、君に責を問うのは理不尽か。専門でないことをやらされているのだしな」

 

技術屋風情を副長とかふざけてんのか第8艦隊は。とでも言いたげにアーモンドの副長が言う。実際、どうしてなったのだろうか。

 

「そんな事より問題はアーモンドが沈んでしまい兵器類の補給ができない事だ。第7艦隊の物資残量は?」

 

アーモンドの副長がこちらに問う。

 

「あと2会戦分…といったところでしょうか?共通規格のものに関しては融通しましょう。ただMS用の部品は…」

 

物資管理の担当者が答える。ストライクとAOCのモビルスーツは規格が共通化されていない。全くの共通点もないのだから当たり前といえばそうなのだが。ただ、一から削り出したり、3Dプリンタで出力する事はできるが、時間がかかる。そして今は時間がない。

 

「それは助かるが…消費の激しい対空砲弾がどうにもならないのは痛いな…即席でCIWSを作るというのは…」

 

アーモンドの副長が鶴野に目を向ける。パゴダが使えないか?ということだろうか。

 

「ガワだけなら…しかしレーダーなどの基幹部品の数が足りません。交換部品もあるのである程度の数は作れるでしょうが…、これからのことを考えると…。それに数が数ですので時間もかかりますし、おすすめはできませんね」

 

パゴダ自体、工廠艦なんて大それたネーミングがされているが、実情は工作機械を積んだ輸送船に過ぎないのだ。意図的に重要部品の製造が不可能だったり、生産能力は限定されている。部品や細々としたオプションならともかく、一からの兵器製造など無理だ。と思いながら鶴野は答える。

 

「仕方ない、ならば渡せるものだけ渡して誤魔化すしかないな」

 

「えぇ、もう次があるとは思いたくありませんがね」

 

「全くだ。では艦長級以下は解散、各自通常業務へ戻れ…。あぁ、鶴野大尉は補給活動の指揮を頼む」

 

こんなんでも一応整備班の責任者だ。責任者が何最前線に出てるんだという突っ込みはしょっちゅうだが、実際、整備の実権を握っているのは古参の先任曹長だ。対馬の頃から付けてもらっているが、経験豊富で頼れる存在である。此方に非常に厳しいが。

 

「了解」

 

――――――――――

 

「さて、……しかし酷いな、厄介にも程がある」

 

「取り敢えず、アークエンジェルで軟禁状態にはしているが…」

 

「面倒というか…、どうするんです?」

 

「いやまぁ…、人質に取ったのは…、軍法会議を開いてやりたいが、第七艦隊が第八艦隊所属者を罰するのは無理だ。その辺まだなし崩し的な組織だからな。せめて俺にもっと権力がありゃ政治力でやりようはあるんだが…俺准将だし」

 

異なる艦隊なのだから管轄が違う。本来ならばそれでも可能ではあるのだが、所属国が違うので面倒だ。アーモンドも便宜上こちらの指揮下なのでそこは変わらない。

 

「ラクス・クライン…人質にしなければまだ穏便かつ秘密裏に処理できたものを…」

 

全員苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「捕虜…ではないか、民間人なのだし。しかしどうしてこんな場所に…」

 

民間人だから捕虜ではない…はずだ。捕虜を人質にする以上に大問題である。

 

「血のバレンタイン一周年追悼式典の事前視察だそうだ」

 

呆れたような声で誰かが言う。

 

「余裕だな、前線ナメてやがる」

 

「向こうの報道からの情報だけなら圧勝してることになってるからな、民間人の認識なんぞそんなもんだろ」

 

戦争知らん奴が観光気分で前線に出てくるから…という誰かのつぶやきに全面的に同意したい。と思いながらスハルトが言う。

 

「しかし、彼女は議長の娘ですよ?そんな甘い認識ではないはずでしょう?」

 

艦長たちの口調に面食らっていたアーモンドの副長が言う。

 

「いやぁ…彼女、政治家じゃなくてアイドルだしなぁ…何故あのいたって普通の歌があそこまで流行るのか訳が分からんが」

 

「戦場のことなんぞ知らんだろうさ。アイドルなんて九割くらい見た目だし…好みじゃねぇけど」

 

「まぁ…見てくれは悪くないよな、でもピンク髪はなぁ…」

 

「アイドル談義は後でだ。で…当然ながら十中八九奪還に来るだろう、捕虜交換協定は締結されたが、守られているとは言い難いしな」

 

向こうが守ってねーんだ、こちらも守らないと仮定してくるだろう。現に破ってしまったしな。とスハルトは続ける。先ごろヴィクトリアが設定より陥落したが、その際捕虜虐殺が行われたことが判明している。AOCと南アフリカの戦線はバクゥの登場から膠着状態だ、解決には高機動型MSの本格的な実践投入が必要だろう。というのが大方の見解だ。

 

「兎に角、どうやって早急にお帰り願うかだ、持ってても良いことなんぞ何にもない。政治的カードにしようにも交渉の窓口がないのだからどうにもならん」

 

ZAFTと理事国間には交渉の窓口がない。戦争をやっている時点でアレだが、外交的に末期である。というか、知れてしまったら死に物狂いで奪還に来るだろ奴ら…。カードにする以前に俺らにとってとんでもない貧乏くじである。

 

艦長会議では現状維持で第八艦隊に押し付けるというだけで何も決まらなかった。

 

 

―――――――――

 

「やっぱり足りませんね…」

 

「そりゃ仕方ない、分けてくれるだけ感謝ってもんですよ」

 

鶴野はマードック曹長と補給物資の確認をしている。MA用の共通部品や、ミサイル類しか渡せないのだが、武器弾薬類は全般的に足りていない。しかし先任曹長ってのはどこも若手士官より偉いんだな。

 

「ストライク用の武装も、そちらの規格とはいえ融通してくれるんです。文句は言えんでしょう」

 

「でも誰かがいじる必要ありますよ」

 

そりゃマニピュレータの大きさは大して変わらないのだから実弾兵器持つことはできる。ビーム兵器に関しては十分な数があるようなのでそのままだが。

 

「その辺は坊主に任せましょうや」

 

「その坊主ってのは出てこないんですね…」

 

「あー…まぁ、ちょっといろいろありましてね」

 

マードック曹長が言い辛そうに言い淀む。

 

「深くは聞きませんよ」

 

この辺のキラの心情は理解しているが、自分に何ができるわけでもない。ノータッチである。というか、無関係な大人が、あの状態の子供にできることなど無いに等しい。無責任なことならいくらでも言えるが、そんなこと言っても反発されるだけである。無関係だから何とでも言えるとしか思われないだろうし、何より、そんな無責任なことはしたくない。これから先ずっと関わっていく訳でもないのだ。そういう役割は、アークエンジェルにいる大人の仕事だろう。

 

「しかし大尉殿はすごいですなぁ…、MSエンジニアにパイロットもこなせる」

 

「必要があっただけです。なれるのなら誰でもよかった」

 

まぁ、転生者であることも理由に含まれているとも思うが、非転生者でも画期的な意見を出す人物はいるのだしあまり考慮には入れられていないと思う。タイミングが良かっただけだ。

 

「大尉、食料品の積み込み、完了しました」

 

「おう、お疲れ。…じゃあ、民間人の受け入れ手続きに入ってくれ」

 

主計課の担当者が食料品の積み込みが終わったことを伝えてくる。

 

「ところで、ところどころ作業している青やピンクの軍服着てる連中っていったい何なんです?」

 

ところどころで作業しているとても軍人には思えない連中を見て聞く。知っているが、何も言わないのは不自然な気がする。

 

「あー…えっと…志願兵です」

 

「…、志願兵…ですか?」

 

「えぇ、ヘリオポリスが崩壊して、こちらの戦死者も多くどうにもならないからと…」

 

「成程、阿漕な話ですけど仕方ないといったところでしょうか…」

 

「ホントはとっとと降ろしてやりたいんですがね…」

 

無理だ。曲がりなりにも機密に触れてしまったのだから降ろすのは難しい。大西洋連邦の法ではどうなるかわからないが。うちの国なら、重要拠点に連行後、取り調べを経た後、監視付きで生活することになるだろう。見たものによっては、向こう五年は転居制限等の制限も加わるかもしれない。

 

「その辺は第八艦隊との合流後に相談してください。友軍とはいえ、管理国が違う艦隊ですので手が出せませんし」

 

「整備屋としては、その辺がもっと融通きくとやり易いんですけどね…今回の事だってもっとどうにかなったでしょうに」

 

兵器の採用すら理事国ごとに権限が分かれているのだ。ユーラシアも、東アジアもストライクダガーを購入する方向で話が進んでいるらしいが、自国製MSの開発も諦めてはいない。ユーラシアは自国製MSの開発を加速化、東アジアは雲南、四川戦線で鹵獲したジンをを積極的にリバースエンジニアリングしているらしい。彼らの製造するMSは他の連合とはまた違った形になるのかもしれない

 

「全くですが、できて数か月の烏合の衆にそれを求めるのは酷ですよ」

 

AOCと大西洋連合製MSのパーツの共有率は3割ほど、それほど高くはない。コンセプトの違いなんかが影響する部位の部品は共通性が低い。大西洋もOSやいくつかの部品をこちらに頼ってはいるが、それを良しとしない動きはあるらしい。当然か、同じ国ではないのだし。

 

「烏合の衆って…所属している人間がそれを…」

 

「事実ですから」

 

地球で暗闘繰り広げてるだけのモグラは「戦後いかに自国が主導権を握るか」しか考えていないだろう。それでも勝てるほどの国力差があるのが救いだが。そんなんだから戦争がなくならないんだろう。AOCはAOCで主導権を握る気はないが、国力的にはそれに参加しなければならなくなっている。貧乏クジは御免なのだ。戦争が終われば復興特需が待っている…、原作通りならば、一回戦争することになるが、それに参加する気は更々無いらしい。企業の連中も「復興で散々儲かるし、これ以上民生犠牲にすると経済がきつい。ロゴスでも俺たちはそう言っている」と言っているらしい。らしいらしいと伝聞ばかりだが、間にいる連中だって嘘を言って得をするわけでもない。間違いではないんだろう。

 

「まぁ、ここを切り抜けられればいいんです。頑張りましょう」

 

そういうと、物資の搬入の確認を終え、民間人を乗せた内火艇の護衛をしながら戻るために背部をパージしてしまった疾風に戻るのであった。

 

 




ゲイボルグの元ネタはLOSATやCKEM等の対戦車ミサイルです。速度によって回避困難にし、運動エネルギーと質量で破壊するミサイルです…レールガン使えば?って話ですね。同威力のレールガンと比べて発射機構が軽量なことがメリットといえばメリットですが。…冷静になって考えてみると…ショボい…。


意図していませんでしたが、兵器名称に関して言えば、AOCはインド神話やインドネシアの伝承ネタが使える分あと十年は戦える(違う)他にも琉球神話やアイヌ神話、アボリジニの伝承なんかもありますしね。文化文明のサラダボウルは名称ネタに困りません。…思うとこそこじゃない気がするけど…。

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