C.E転生   作:asterism

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phase20 デブリベルト

デブリベルト

 

「ホントにここを通るのか?」

 

「アルテミスで阿呆がやってくれたからな。コンペイトウを捜索拠点として使う腹積もりだったらしいが…」

 

虫のいい話だな、と笑いながら歩いていくズルフィカールの下士官達を尻目に鶴野は胃を押さえる。

 

チクショウ、パゴダにつめっばなしの俺をこっちに呼び戻したのはこれかよ。超高出力索敵レドームとリストマルチランチャー、ロングブレードライフルの試験データのまとめと対G用の小物の準備が…ってまぁ小物のほうはあとは弾薬装填したり、動作確認するだけなんだけど…。ほんとは一回くらい実際に使ってみたいが、時間がない。今夜は徹夜かな?

 

「アルスター事務次官を招待しての昼食会」にたかが大尉を呼び出すって相当だぞ、とも思ったが聞けば向こうのご希望らしい。こっちの経歴を知ってるみたいだ。…まぁ、今更驚くことでもないけどさ…。それに、一応マナー講習は受けた、宇宙軍は海軍を参考に作られている。その手の講習も欠かさない。失礼をすることもないだろう。

 

「よう、大尉、災難だな」

 

「シュレスタ少佐も…」

 

「あ、俺は出ないんだ」

 

あんな息の詰まる場所、指令と艦長がいりゃ十分だろ。と真顔で言うシュレスタ少佐が本気で恨めしい…。

 

「まぁ、上等な飯が食えるんだ、味なんかわからんだろうがな」

 

「今日のパゴタの昼食…シャハン麺なんですよ…」

 

「そりゃ災難、日系には人気のメニューだったな…って鶴野大尉は月居住者(ルナリアン)だろう?いろいろ食いなれてるんじゃないのか?」

 

確かに僕の出身はかぐやだが、だからと言って何か違うというわけでもない。

 

「それでも、行くのは日系の店とか多かったんですよね、日本式のラーメン屋もよく行きましたし」

 

月では今時珍しいが、両親がどちらも日系なのだから外食なんかもそんな感じだった。白兎のカレッジに進学してからもその傾向が強い、といっても記憶便りだが。乗り移った後も自分の好みの問題もあるのだろうが、そんな感じの食事が多かった。自分で作ったりもしたが。

 

「そうなのか?まぁ、そんなもんか…」

 

「ですね」

 

そこでシュレスタ少佐と別れ、僕は応接室へ向かう。…本気で帰りたい。

 

―――――――――

 

デブリベルト ザフト軍「足つき追撃艦隊」 旗艦ヴェサリウス 

 

「お初にお目にかかる、マクシミリアン・ホークだ」

 

「ようこそ、ホーク隊長、ラウ・ル・クルーゼだ」

 

隊長二人が握手をする。

 

「それで…こちらに来るまでにデータを確認していたのだが、これほどの戦力が必要なのかね?」

 

ナスカ級二隻、ローラシア級四隻、確かに性能は高いにしろ、船一隻にずいぶんと厳重なことで、…ここまで神経質になるのならコンペイトウにもっとよこせよ。

 

「あと少しで地球軍第8艦隊と合流すると予測されている、敵の先遣艦隊が合流していないとも限らん。用心に越したことはない」

 

「第8艦隊と合流していた場合どう立ち回る」

 

「グリマルディやヤキンと変わらんさ」

 

それをやって負けた戦いを経験した俺がここにいるんですが…。とマックスは思うが、言っても無駄である…多分。

 

「敵MSが増援に現れた場合は?」

 

「十分な数を準備できているのはAOCのみのようだ。大西洋の第8艦隊では碌な数はおるまいよ」

 

見積もりが甘いような気がする。確かに、大西洋連邦製と目されているMSは現在少数が確認されているのみである。しかしそれは重要拠点や大規模艦隊への襲撃を行っていないからかもしれない。艦隊としての基盤がガタガタであるといわれている第8艦隊だが、だからこそのハルバートンなのだろう、もしかしたらMSの一個大隊もいるかもしれん。指揮に兵がついてくるかは別物だが。

 

「…わかった、私はそちらの指揮で動くよう言われている。まぁ、従いはするさ」

 

俺は雇われの隊長、クルーゼはほぼフェイスに近い権力を持っている。こいつに『信頼』なんて言葉は縁遠いとは思うし、似合わないとも思うが。…というか階級の無いせいで意味不明なことになってやがる。

 

「よろしく頼む、設計局より送られた新型、当てにさせてもらおう」

 

シグーアサルト2型、シグーアサルトの火力向上型だ。レールガンシヴァを肩部大型シールド裏に装備し、さらに以前使っていた専用シグーでは装備の見送られたバルカンシステム内蔵防盾も両腕に装備している。戦闘が起これば、これに重粒子特火砲二つ抱えて出撃する予定だ。残念ながら、現状シグーで使える装備でGとやらに有効なのはこれだけだろう。話を聞く限りじゃ命中させることが難しいだろうが、そのあたりはほかの射撃武器による牽制でどうにかするしかない。

 

「…あまり期待はしないでほしいな」

 

押されっぱなしで部下を3人も失った。損耗率25%…とんだクソ指揮官だ。まぁ全滅どころか壊滅や殲滅しやがったほかの隊と比べればマシなのだろう

 

「では、共に来てもらおう」

 

意味深な笑みと共にそう告げられる。畜生、胡散臭すぎていかん…。

 

―――――――――

 

「しかし、AOC軍上層部の先見の明は素晴らしい、MSをこうも早く戦力化できるとは」

 

「いえ、最初は我々も懐疑的でしたが、次第に驚異的な性能を見せるようになり…」

 

「なるほど、偶然の産物と…、ということは研究者が優秀なのでしょうなぁ…」

 

探るような眼をこちらに向けてくる。俺はただのテスパイ兼手伝いだぞ。

 

「いえ…、私は乗って動かしていただけですよ…」

 

「はっはっは、ご謙遜を、娘の婚約者がオーブの工業カレッジに通っておりましてね。おそらく娘と共にアークエンジェルに乗っていると思いますが、君のような人材になってほしいですなぁ…」

 

か え り た い

 

何が楽しくておっさんたちと味もわからない肩肘張った料理を食わねばならんのだ。その辺でバロットとかカイモッデーンみたいなゲテモノ料理のフルコースでも喰わされた方がましだ。伝統的に食われているだけあって食えないものじゃないんだろうし。というか、サイはサイで優良物件だろ…。キラという冗談みたいな比較対象がいるだけで、17でカレッジにいる時点で存分に天才だ。俺、乗り移った時、3セメで20歳だぞ。飛び級なしで順当に進学しただけだが。師事する人間さえ間違わなきゃ、俺なんか早晩に超える人材だ。

 

「ははは…早晩、超えると思いますよ。自分はいい教授に師事できただけです」

 

転生者特典、もちろん既定の成績も満たしたが、で湯野教授の研究室へ入れた身としては、相応に結果を出さねば抽選漏れした人たちに申し訳が立たない。まぁ、研究室を選択する三年開始時に至るまで教授の研究室に入り浸って勉強していたのもあるのだろうが、特に変には思われていない。

 

「君はもう少し自分に自信を持った方がいい。ナチュラルでも使えるMSを作ったのは君の師やその仲間たちという認識なのだろうが、君は、それを動かしてきたのだ。君がいなければ、私たちのMSは形にならなかった、それは誇るべきことだ」

 

 

確かに、それはそうなのだろう、だがそれは誰にでもできることだ。誇ることじゃない。

 

「そう…なのでしょうか?」

 

「そうだとも」

 

そういうと、アルスター事務次官はコーヒーを飲む、こんな時に出される料理は、基本的には、地球や月で食べるコース料理と同じである。違いといえば、アルコールの類が出せないところだろうか?

 

「まぁ、もう少し自信を持ちなさい、嫌味にしか見えんのだよ」

 

確かに、関わってきたということは事実だ、けど、そんなに自慢するようなものでもないと思う。誰でもできたことだ。

 

 




アジアはゲテモノ料理の宝庫(白眼)。まぁ、日本が言えたことじゃないんだが。

対ミラージュコロイドとか考えていると結構楽しいですよね、果たしてこれが役に立つのか?とも考えてしまいますが。

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