「そう緊張することはないぞ、その…確かに皆個性的な連中だがな、皆気のいい奴らだ」
そう教授に言われても落ち着けない。現在僕は、会合に参加するために黒塗りの高級セダンタイプのエレカに乗って、アジア・オセアニア共同体の首都、スラバヤを走っている。シートが明らかに高そうな革張りで落ち着かない。
なぜスラバヤが首都か?まぁ位置的に都合がよかったらしい、大体領域の真ん中、脅威ととれる敵対する国家…東アジア共和国があまり近くない、同じ条件だったジャカルタはこれ以上の拡張が難しかったらしい、今でもインドネシア州の州都ではあるんだけど。
「ここが会合の会場だ」
エレカの止まった場所は高級料亭だった。こういう店って密談の場所を提供する役割もあるんだっけ…と思いながら教授の後をついて暖簾をくぐり指定された部屋へと入るとそこには15人ほどの人がいた。皆仕立てのいいスーツや高い階級章を付けた軍服を着ている。
「湯野君、彼がそうかね?」
「えぇ、ほら、挨拶を」
「白兎工業カレッジ宇宙用作業機械設計研究室所属、鶴野正史です。」
「ふむ、話は聞いている、私はタクシン、名前は長いし覚えてもらわんでも構わん、一応まとめ役を務めている」
「財務大臣ですよね…?」
「そうだぞ、まぁ気にするな。なぁ、アティ?ケン?」
「そうですね、気にしてもらわなくて結構です」
そう答えた女性は確か大統領補佐官だ。
「そうだな、大体此処じゃ部下も俺のことを官職や階級名なんかじゃ呼ばん」
そう答えたのは第1航宙艦隊司令だ。ほかにも大企業の重役や官僚、何度も名前と顔を見たことがある技術者などが会合のメンバーだったなんかすごい人ばかりじゃないですかね…。何気にうちの教授も「フィールドモーターシステムの権威」って呼ばれているし…。
「大体私たちなど先人の守ったものを受け継いだだけだ、たいしたことなどしちゃいないさ。」
再構築戦争では大変だったらしい、特に日本にいた7人の転生者は伝説だそうだ、それからカシミール地方への「最後の核」も落とさせなかったらしい。と長々と続く首都大の教授の話を要約するとそんな感じだ。話が長いことで有名ってのは本当だったんだな。
「さて…まぁ鶴野君はこのまま技術開発部に所属してもらうということで」
いい加減長い話を切りタクシンさんが言う。
「いや、ちょっと我々から頼みたいことがある」
そう答えたのは国防省の次官を務めている人だ。
「なんだね?湯野君からの情報では成績などが非常に優秀なのだがね…発想もいい」
技術部の重鎮と言われているコンペイトウの造船工廠長が顔を顰めながら聞く。この人か、教授に変なこと聞いたの。
「技術者になるのを止める気はない、だがこちらでMAとワークローダー、パワードスーツ関連の訓練を受けていただきたい、白兎基地に話は通す。」
要はMAを操縦できるようになれということか
「パイロットエンジニアというやつか…役に立つのかそれは?」
「コートニー・ヒエロニムスとかいたし大丈夫だろう。何より黎明期の兵器などそうでもしなきゃうまいことフィードバックができん。テスパイはリーカ・シェダーをこちらで確保できたが彼女はまだプラントの学生だ、大体ナチュラルのテスパイも必要だしな」
アジア・オセオニア共同体はコーディネイター自体を否定しているわけじゃないし受け入れもしているのだそうだ。だから白兎のカレッジではでは普通にコーディネイターの同級生がいたし教師もいた。どこでも同じなのだろう。一方でブルーコスモスの活動も「他者の生活を害せず、良俗に反しない限り」認めてるあたりいろいろ生臭いけど。
「待った、そんな話聞いてないぞ…」
工廠長が話を止める
「あぁ、そういえば技術畑の奴らに知らせてなかったな、プラントでうちが運営してる学園に入学してきたんで、せっかくだからひも付き奨学生にしておいた、これでうちの系列企業に奨学金返済まで勤めてもらうことになったのさ。」
たしかフジヤマ社の専務だと言っていた男が言う。
「頼むから報告はしてくれ…テスパイはうちにもかかわってくるんだから。というかそのえげつない制度まだ続けてたのか…」
「原作の人材が網にかかればめっけもんだろ?現に今役に立った。」
「確かにそうだがなぁ…もう少しやり方ってもんが…」
確かにネームドが一人いなくなるのはザフトだと結構痛い気がする…設定上操縦技能高かったはずだし。まぁ同情なんかしないけどな。
「まぁいいじゃないか。彼女はあと二年で卒業なんでそのあとは白兎の宇宙本社に引き抜く予定だ。それから今年からプラント工場の設備更新を打ち切る、前々から決まっていた方針通り我が国のプラントへの対応は『我が国のプラントへの投資総額を返済するのならば独立を許可する』ということでいいのだろう?連中おそらく工場の接収とか考えてるだろうし最新設備をくれてやる必要はない。」
「あ…あぁ、そのつもりだがね、いいのかね?」
タクシンさんがあっけにとられたような感じで答える。プラントの工場は確かフジヤマ社最大だったはずだ。
「もとより損切り前提で作った工場だ、広さだけはあるが、広さしかない、生産能力はムーアや白兎の拠点のほうが高いんだよ。大体最近ストライキが増えてロクに生産もできやしない、待遇は気を使ってるんだがな、報酬も他の企業より高いはずだし」
「そうか、なら問題はない、では次はMSについてだが、プラントにてプロトジンの開発完了が確認された、性能に関してはおおむね、我々が推測したとおりとの見通しだ…それで、技術者たちに聞きたいのだがMSを開発するのにどれだけかかる?」
タクシンさんが話題を変える、MS開発か…オッゴやワークローダーなんかのデータって役に立つのだろうか…。
「一応、現在ある技術を組み合わせれば開発できるようになってはいる…が、いろいろな研究を隠れ蓑として極秘裏に進めていたからそれを結合した場合どのような問題が出るのかは不明だ、ヤキン・ドゥーエ戦役までに量産体制に入ることは可能だろうが、C.E69年を目途に量産型の開発が完了すると考えてくれると助かる」
…なるほど、他国に感づかれないように極秘で開発していたということか。
「OSも一応β版の完成には至っている。シミュレータでは問題ないが、あとは実際に動かしてみてどうかだな。…それにしても便利だよな、知識や能力は乗り移る前のやつのものが引き継がれてるってのは、一応元々システムエンジニアだったが、自分があんなプログラム作れたのが信じらんねぇ…」
「それは言わない約束だろ、というかそうじゃなきゃ俺なんかMAの開発なんかできっこない、生前はただの土建屋だぞ」
教授ってこっち来る前の職業建築業だったのか…。まぁ、僕だってただの大学生だ、それも工業系の学部じゃない。なのにMAとかワークローダーの知識があるのだから乗り移る前の彼に感謝だろう。
「それは気にしたら負けだと前々から結論が出ていただろう…では議題だが…」
この後かなり重要な話がされており「俺、こんなところにいていいのか…?」と思いながら、料理をぱくついていたら会合が終わった。MA関連のところ以外は意図的に話は聞かないようにしておいた。どっかで漏らしたら怖いし。
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「…今日は比較的おとなしかったな…、まぁ会合とはこんな感じだ、お前はまだ何かなければ呼ばれないから安心していいが」
要職についている人以外はあまり呼ばれることがないらしい、転生者は全体で500人ちょっとらしいが、その人数で会合をしようとなるとどうしても難しいだろうし、防諜にもよろしくないか。
「僕はこれから当分は白兎でパイロット訓練と工業カレッジ生の二足の草鞋ってことですね。」
「そうだ、会合でも決まった通りMS開発プロジェクトを開始する、報告にもあったがプラントにてプロトジンの開発完了が確認された、量産体制に入るのも時間の問題だろう。当面の計画としてはまず、MS開発は私とパワードスーツやワークローダーを扱っている研究者の合同プロジェクトとしてスタートするからな、聞いていたと思うがC.E69までに量産体制に入ることを目標に開発を開始する。もちろん、君にも働いてもらうぞ」
「はい」
教授の考えとしてはこちらの技術でまず最初にガンキャノン最初期型のようなMSを作るらしい。オリジンでは散々なことになってたMSだけど初めてのMSとしてはいいのではないだろうか?ちなみにジオニストな技術者たちがザクⅠやヅダを推していたのだが「モノアイじゃザフトと紛らわしくて誤射されたら敵わん」と言われて黙らされていた…性能は悪くないと思うよ、今回は見た目が問題になっただけで。
二話をお送りしました、初めて作ったにしては悪くないと思うんですよね…ガンキャノン最初期型、まぁ性能とか抜きにしてあの見た目が大好きなので出すことにしました、ザフトにつく予定はないのでモノアイの機体はUCで連邦がやったと書かれていたようにようにゴーグルアイにする必要がありますね。バイアランカスタムとかみたいに…もしかしたらスクウェア型(リーオー等)とか、X字型(ジンクス等)になるかもしれませんがね。まだ量産機何にするか決めていないんです。ジム系統ばかりでもつまらないですし…主力をUC系統に決めてもアジアオセオニア共同体の立地的にどうしても必要な水泳部と空中戦機が不足していますから必然的に別作品の機体も出さなければなりませんし