※連載小説のなにしおはばとは全くの無関係の読み切りです。違う世界線の話と考えてください
追記 題名を「笑ってよいかも」に変更しました。
加賀さんには変な習慣がある。毎週火曜日に「笑ってよいかも」というバラエティーを見ることだ。同じような内容、同じような出演者、同じようなネタ。はっきり言ってつまらない。
あんまりに熱心に見てるから「それ、面白い?」と聞いたら「別に」とぶっきらぼうに返ってきた。それでも毎週見てるからなんだかおかしい。
ああ、もう1つ変な習慣があった。番組の最後にグラサンの司会者が「来週も見てくれるかなー?」と言うとスタジオの観客全員が「よいかもー」と声を揃えるのだが、加賀さんも仏頂面で「よいかもー」とそれに合わせて小さな声で言うのだ。
初めてそれを発見した時は思い切り嗤って馬鹿にした。その時加賀さんは少し怒った顔をしたけれど、それ以降もその2つの習慣は変わることがなかった。アタシは毎週加賀さんが律儀に「よいかもー」と言うのが楽しくて、なんだかんだ毎週勝手に横に座って「笑ってよいかも」を見てた。
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瑞鶴先輩には変な習慣がある。毎週火曜日に「笑ってよいかも」という番組を見ることだ。番組全体が毎週型にはまったような構成。正直つまらない。
それでも熱心に見てらっしゃるから「それ、面白いですか?」と聞いたら「ううん、つまんない」とはにかみながら返ってきた。それでも毎週見てる。変なの。そんな所も格好いいけれど。
そうだそうだ、もひとつヘンな習慣があった。番組終わりかけに司会者が「来週も見てくれるかなー?」と言うと「いいかもー」と元気よく腕を振り上げて叫ぶの。
初めてそれを発見した時はついに狂ったかと思って心配した。その時瑞鶴先輩は少し恥ずかしそうな顔をしたけれど、以降もその2つの習慣は変わらなかった。あたしは毎週瑞鶴先輩が「よいかもー」と叫ぶのが可愛いから、「つまんないなー」と思いながらも毎週並んで「よいかも」を見ていた。
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わたしの妹、葛城には変な習慣がある。毎週火曜日に「笑ってよいかも」を見ることだ。毎週毎週同じ内容、同じ出演者、同じネタ。何も面白くない。
実戦時と同じくらい真剣に見ているから「……面白い?」と聞いたら「全然」とこちらに見向きもせずに返ってきた。それでも毎週見てるから変な娘だ。
あー……もう1つ変な習慣がある。番組の終わりにグラサンが「来週も見てくれるかなー?」と言うとテレビの中の出演者の誰よりも「よいかもー!」と大きく声を張り上げる。
初めてそれを知った時は熱がないかと無理やり寝かせた。その時葛城は少し泣きそうな顔をしたけれど、それ以降もそれらの習慣をやめなかった。わたしは毎週葛城がまじまじと「よいかも」を見ているのを横目にその日の新聞を読む。テレビ欄に「笑ってよいかも」が記載されていない新聞を。
これはフィクションです。実在する番組名と全く関係ありません。
「なにしおはば」の方も近々更新します。すみません。