私とキリト君の出会いの物語   作:SAO映画記念

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言い訳できないくらい間が空いてしまい本当にすいません....そして待っていただいた片ありがとうございます。無事に書き始められることになりました。更新が遅れる際などはなるべくお知らせをしようと思います。


友達

会議室から出た私は真っ直ぐユウキの病室には向かわずに自動販売機のある休憩所に来ていた。

 

「はぁ.....」

 

今の私は酷い顔をしているだろう。

病院長と話をしてユウキの真実を知って恨みや憎しみ、そして自分に対しての苛立ちがふつふつと込み上げてくる。

両手は爪が食い込むほどに手を力強く握りしめて落ち着こうとするがユウキの顔を思い出す度に何も出来ない自分が嫌いになりそうだった。

 

 

「はぁ....こんな顔じゃユウキの前にいけないよ」

 

「どんな顔じゃボクの前に出れないの?」

 

突如後ろから話しかけられ振り向くとユウキが立っていた。

 

「っ!.....ユウキ」

 

「わー....凄い顔だね」

 

「ユウキ......ごめん。ごめんね....」

 

自分が許せなくなりユウキに頭を下げる。自分に力があればユウキを助けるだけの力があればどれだけ良かっただろう。

 

「どうしてカナお姉さんが謝るの?」

 

「だって....私は、私は軽い気持ちで今日この場所に来たの。一番最初にフルダイブ機能を使ったのって誰なのか気になったから。でもそんな軽い気持ちで来ていい場所じゃなかった....」

 

「カナお姉さんは、ボクに会って後悔した?」

 

「するわけない!...するわけないよ。ユウキに会えて本当に良かった。でもそれ以上に自分が許せないの」

 

「んーねえカナお姉さん。ボク思うんだけどね。人って一人では生きていけないと思うんだ。でも昨日までのボクは一人だった」

 

「....」

 

「看護師のお姉さんや病院長もいたけどさ。でもそれって一人なのと変わらないんだよ。それとカナお姉さんにまだ話してないことがあるんだ。ここじゃ話せないから一度病室に来てくれないかな?」

 

「うん」

 

ユウキに連れられて病室に戻ると病室の扉に鍵をかけたユウキを見て少し驚いたけど鍵を閉めた右手は微かに震えていた。

 

「ユウキ.....」

 

きっと今から話すことは聞かれたくない今までのユウキのことなのだろう。

 

「.....それじゃあ、カナお姉さんベットに座りながらで良いから.....最後まで聞いてくれると嬉しいな」

 

「っ!」

 

はにかみながらもこんなときでも笑顔を向けてくれるユウキに涙が頬を伝うのを感じた私はただ頷くことしか出来なかった。

 

「あれは、まだボクが小学4年生の頃で姉ちゃんも生きていた時の話なんだ」

 

 

 

「姉ちゃん!起きて!早く学校行こうよ!」

 

「ユウキ....まだ早いわよ。後5分まっ......」

 

「寝るのはやっ!?」

 

今日は小学4年生に進級した日なのでテンションが上がるのは仕方ない。

 

「ユウキは何時も元気だよね。まるで太陽みたい」

 

ようやく体を布団から起こしまだ覚めきっていない目を擦りながらボクの頭を優しく撫でてくる。

 

「姉ちゃんから頭撫でられるの落ち着くからボク好きなんだ」

 

「くす。ユウキは甘えん坊ね」

 

むっ。ボクだってもう立派な小学4年生なのだ、成績だって常にクラスで一番だし一部分はそこまで成長しないけど...今からだもん!

 

「もう!ボクは甘えん坊なんかじゃないよ!姉ちゃんこそこの間お母さんに甘えてたの見てたんだから!」

 

「あれは甘えてたんじゃなくて、媚ってたのよ。ん~よく寝た」

 

両手を上げながら背筋を伸ばす藍子はユウキとは違って2つの大きな膨らみが余計強調された。

 

「........むー。なんか不公平だよ」

 

「ん?そんなに私の胸見てどうかしたの?」

 

「なんでもない....それより早く起きて!学校行こうよ!」

 

「分かった、分かったから引っ張らないで。仕度したら教えるからユウキも仕度しちゃって。まだ薬飲んでないんでしょ?」

 

「うん...あれボク苦手なんだよなぁ....」

 

「誰だって嫌よ、あんなの。でも飲み続けなきゃ駄目」

 

「はーい」

 

この日。

ボク達は小学4年生になるはずだった。

 

 

-----------なれるはずだったのだ。

 

 

春の訪れを教えてくれているのか小学校に向かう道は桜が満開に咲いていた。

ユウキが桜を拾ったり匂いを嗅いでいる光景を微笑ましく見守る藍子。普通の姉妹の微笑ましい光景だった。

 

学校に着くまでは。

 

「皆!おっはよぉー!」

 

「............」「............」「おい...お前行ってこいよ」「んだよ、お前が言えよ」「えーやだよ」

 

「あれ?」

 

「.....」

 

この時ユウキはまだ違和感しか感じていなかったが藍子は皆の私達に向ける目で何となく分かってしまった。

 

「ユウキ.......帰ろう」

 

「え!?どうして姉ちゃん。まだ来たばっかりだよ?」

 

疑問しか持てなかったユウキだが男の子のある一言で全て分かってしまった。

 

「エイズの奴が学校にきてんじゃねえよ!うつったらどうしてくれんだよ!」 

 

「..........あっ..........」

 

隠していた事がバレてしまったのだ。今まで隠して隠し通して来たことが全部。

ユウキの目からは涙が頬を伝っていた。

 

「ユウキ.....」

 

藍子は放心しているユウキの手を掴んで学校から飛び出した。

 

 

「姉ちゃん.....姉ちゃん............」

 

「..........」

 

妹が今にも泣きそうになっているというのに何も声をかけることが出来ない自分が心底嫌になりそうだった。だが姉と妹と言っても双子なので歳は同じなのだ、藍子も心の中では泣いていた。

 

 

 

 

 

「それからボクは引っ越しするしか無くなってこの町にやって来たんだ」

 

「......」

 

頬から伝う涙は止まることを知らずに目の前が涙でボヤけてしまっていた。

ユウキの過去は私が想像していたよりもさらに酷い現実だった。ベットで未だに笑顔を向けてくれるユウキに横から両手を回して抱き締める。

 

「カナお姉さんが初めてなんだ。エイズのボクでもこうやって接してくれるの...みんな離れちゃうから...」

 

「ユウキ...」

 

「本当はねカナお姉さんにこの話をするのすっごく怖かったんだ...皆見たいな目をされたらどうしようって凄く怖くて」

 

ユウキの体の震えが私にも伝わってくる。こんなにも優しくて強い女の子。世界は理不尽で溢れている。

 

ユウキは悪くない、ユウキは何一つとして落ち度がないのにも関わらず産まれてから殆どこの苦痛と闘ってきたのだ。

 

私なら----------と考えれば自殺してしまうかもしれない。

 

でもユウキは少しでも治らなくてもいずれ死ぬと言われていてもそれまでは生きることを選んだ。そして自分と同じ病気になった人の為に被験者になり毎日辛い投薬や検査を受け続けている。

 

ユウキを救いたい。ユウキと一緒に笑って生きていたい。

 

でも私はただの一般人。

科学者でもなければ医師でもない。この病気の知識だって一般的に知られているくらいしか知らない。

 

きっと私がユウキを治せればなんて思うのは怠惰で傲慢な人間的思考なのだろう。

 

でも人間はその感情で幾つもの不可能と言われ続けてきた難題を解決してきた。

 

それなら私だってやってみせる。目の前の友達を救うことが出来るというのなら怠惰でも傲慢にでもなってみせる。

 

誰も救ってくれないのならユウキは。

 

 

-----------------------私が救う。

 

 

 

「ユウキ。私は何があってもユウキを嫌いになんてなったりしないよ」

 

「カナお姉さん....」

 

抱擁を解きユウキの目を真っ直ぐ見ながら言う。

 

「ユウキ.....私の事も聞いてくれる?」

 

「カナお姉さんの事?」

 

「うん。どうして私が学校に行っていないのかの話」

 

「うん。カナお姉さんの事もっと知りたいから....聞きたい」

 

「ありがと、ユウキ。あれはまだ私が小学校3年生の時の話.....」

 

 

 

 

 

私のクラスで週末に皆でデパートに買い物に行こうという話になった。

 

友達を作りたかった私は参加してその日になるのをワクワクしながら待っていた。

 

でも今思えば参加しなければ良かったのかもしれない。

 

まぁ今更なんだけどね.....。

 

 

週末は快晴という言葉が似合うほど太陽は輝いており私の心も踊っていた。

 

待ち合わせ場所は東京駅で楽しみにしすぎて30分も前に私は東京駅に着いて私の他に今から来る女の子3人を待っていた。

 

時間が少し過ぎたところで3人は一緒に現れてデパートに向かうことになった。

 

デパートに着いた途端に一人の女の子に「ねえねえカナ~これ買ってよ。私これ前から欲しくってさ~」と言われた。

 

ブランドもののバックでおよそ小学生の買える値段では無かった。私はカードを持っていたから買えなくはないけど少し違和感を覚えていた。

 

 

「で、でもちょっとこれは高いかなって....」

 

「えーいいじゃん。あたし達~友達でしょ?」

 

「.........」

 

友達。

その言葉は不思議な重みを背負っていた。有無を言わせぬ圧力というか甘美な誘惑というのか....今となってはどうでもいいけど。

 

「分かったよ.....でもこれだかだからね?」 これだけだからで、合っているでしょうか?

 

「うっはー。カナ、サンキュー♪」

 

「えーいいなぁ~⚪⚪ばっかずるくね?ねえあたしにも買ってよ?」

 

「え..いやでもそれは.....」

 

「へえ....⚪⚪は友達でもあたしと⬜⬜は友達じゃないんだ。だって⬜⬜どう思う?」

 

「えーてか酷くね?あたしマジ友達だと思ってたのに、最悪~」

 

「..........分かったよ...皆一つずつだからね」

 

「さっすがカナじゃーん♪」

 

「やっぱり友達って良いね~」

 

私はブランドのバック3つとその後のご飯代も私が払いました。

 

「あ!やべあたしよーじあったんだった。カナ今日はありがとねー。んじゃまた学校で~」

 

と一人が帰ると次々に帰っていきました。

 

残ったのはバックの領収書とご飯代の領収書のみ。

 

私は重くなった空気を振り払いながら帰ろうと歩を進めると路地裏に先程私と一緒にいた三人がいました。

 

「はぁ~やっぱり金持ちは良いよね~」

 

「うんうん。てかさーまさか一つ10万するバック買ってくれると思わなかったわー。マジアホで助かった」

 

「てかあんなのと友達になるわけないし?」

 

「確かに!友達って言ったときのあの顔、超ウケるwwww」

 

「ちょ、やめてよ。思い出したら...ぷっはははは」

 

「はーは。笑ったわー。んでこれからカラオケでも行こっか?」

 

「いーね~。今日は機嫌良いから歌っちゃうよー」

 

「お金は割り勘でね?」

 

「「あはははははは」」

 

「.........」

 

 

 

 

「私はその光景をただ見ることしか出来なかった」

 

「......」

 

「今思えば気付かなかった私が悪いんだけどね....でもあの時はちょっと...ね。それで私は不登校になって中学入ってからは殆ど学校に行ってないの」

 

「そんな....そんなの友達なんかじゃないよ!」

 

ユウキは大声を出して立ち上がった。

 

「ユウキ?」

 

「友達は....友達はそんなんじゃないんだよ!ボクはカナお姉さんと友達になりたいよ....でもボクがなりたいのはそんな友達なんかじゃない...ボクは」

 

私はユウキの背中に両手を回して抱擁をする。

 

「ありがとう、ユウキ。ユウキは友達だよ。あんな偽物の友達なんかじゃなくて本物の私の大事な友達」

 

「うん、カナお姉さん。ボクに出来ることがあったら何でも言ってね!まあボクに出来ることなんて何もないんだけどね」

 

えへへと笑うユウキを見て私の口元は緩む。

 

「そんなことないよユウキ」

 

私はもう救われてるんだから...ユウキのその笑顔のおかげで私は.....。

 

 


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