私とキリト君の出会いの物語 作:SAO映画記念
「落ち着いた?」
「うん、ありがと。なんか姉ちゃんみたいだった」
「木綿季にはお姉さんがいるの?」
「うん。もう死んじゃったけどね」
「あっ.....」
「気にしないでよ。これについてはボクも踏ん切りをつけたつもりだから」
「木綿季........ん?ユウキ.....?」
「どうしたの?」
「えーと.....。ねえ?木綿季、さん」
「さんなんていらないよ。それよりどうしたの?」
「そこにナーブギアがあるんだけど、もしかして『ユグドラシル』ってやったことある?」
「うんっ!今一番嵌まっているゲームなんだ!ゲームの中で優しい人にも会えたし。でもね!始めたばっかりみたいなんだけどすごい戦い方するんだ!いやぁーボクもやってみようかなーなんて思ったんだけど、中々難しかったよ」
それ私だー!え、嘘でしょ....こんな偶然なんてあるの?木綿季ってあのユウキ!?いやでも、まだほんのわずかだが別人って可能性も....。
「そ、そうなんだ.....。その人ってもしかしてkanaって人じゃなかった?」
「えっ!どうして知ってるの!?」
完全に私だぁ!世間ってせまい......。
「そ、その人私、だ......」
「ええ!ほんとに!?kanaお姉さん!?」
「うん。私の本名は春風カナって言うんだけど.....」
「なんか運命みたいだねっ!そう言えば病院に用事があるって言ってたけどもしかして」
「うん。ここに用z「良かったぁ!」え!え!?」
「心配してたんだぁ。kanaお姉さんも何か病気なのかなって思って」
「ユウキは本当に優しいね」
「えへへ。もっと頭撫でて」
うん。可愛い!どうしよう...お持ち帰りしたくなってきちゃった。駄目かな?駄目だよね。
私がユウキの頭を撫でていると扉をノックした音が聞こえて誰かが入ってきた。
「紺野さん。失礼するよ。ん?そちらのお嬢さんは誰かな?」
「あー!さっきの子ここにいたんですね....探したんですよ?」
入ってきたのは、30代後半くらいの男性、格好からして医師だろうか。それと先程廊下で出くわして逃げてしまったナースの人がいた。
「やばっ」
「Kanaお姉さん。どうしたの?」
「ん?お姉さん?」
医師が不思議に思ったのか私に顔を向けてくる。そりゃそうだよね。個室の病室に知らない人がいてその人を姉だと言っているんだから。はぁ....どうすれば。取り合えず黒川、ヘルプミー。
「Kanaお姉さん。この人がここの病院長だよ」
は?いやいやいや若すぎるだろう。いくらなんでも若すぎる。
「ん?カナさんと言うと......。春風社長の御息女でしょうか?」
いきなり話し方が変わる医師。まぁ当然なんだろうがなんだろう、こういうタイプは好みじゃない。
「はい。この度は時間を急遽取らせてしまい誠に申し訳ございません」
因みにこういうタイプとは昔話したことがあるので仕事モードに切り替えれば話すことは出来る。隣のユウキは信じられないという顔を浮かべている。そりゃ社長令嬢なんて聞かされればね......。
この事実で離れていく人も少なくないし。
「か、カナお姉さんが.....壊れたっ!」
し、失礼すぎる......。なんだ、なんだと言うのだ。社長令嬢よりも話し方に驚いたと....うーん。安心したような.....でも壊れたはないだろう。なのでほっぺを引っ張ることにした。
うむ、柔らかくて気持ちがいい。
「いたたたた。痛い、痛いよっ!ごめんなさい!」
うん、まぁこのくらいで許してやろう。
「ふへぇ....痛かったよぉ」
痛そうにほっぺを撫でるユウキを見て自然と頭を撫でていた。
「えへへ....」
うん、やっぱり可愛い!
「これはこれは....仲良くなられたのですね」
「敬語は大丈夫なので普通に話してください。私は社長令嬢ではありますが、まだ子供です」
「成る程。わかりました。ですが患者さんと話す程度には敬語を使わせてもらいます。それで構いませんか?」
「はい」
「そ、その.....えーと....え?」
美人のナースさんは戸惑っているようだった。まぁ分からなくもないが心の中で合唱することにしよう。
「ああ、君は食事の準備を頼めるかい?ここは僕がやっておこう」
「は、はい。分かりました。病院長」
ナースさんは我に返ったのか病室から出ていく。
「さて....まずは感謝を言わせて頂きたい。ありがとう」
医師は、ピシッと90度に腰を曲げて未だにユウキの頭を撫でている私にお礼を言ってくる。
「え、えーと。いきなり手配してもらってしかも迷子になったとはいえその約束を破り勝手に会っていた方からすると怒られるのが筋かと思ってましたが.....」
「いや、確かに約束を破った事はいけないことだが....その程度の事だ。今の紺野さんの表情を見れば怒りよりも感謝の気持ちの方が上回るというものだ。それよりも君の方こそ敬語ではなくても大丈夫な「お断りします。この方が話しやすいので」そうか....」
「でもお気持ちは素直に受け取らせて頂きます」
「そんな君だからこそ知っておいて欲しい事があるんだ。悪いが私に付いてきてはくれないか?」
「ここでは話せないことなのですか?」
「察してくれると助かるよ」
「そうですか.....ユウキ....ちょっと言ってくるね」
「うん。その.....また来てくれる?」
うっ.....可愛すぎる。私って以外とそっち系も.....いやいやいや....私にはkirit君が....片想いだけど。片想いといけない恋か.....終わってるなぁー私。
「勿論。むしろ話が終わったら戻ってくるよ」
「うんっ!それじゃあ待ってるねっ!」
「それでは行きましょう」
「はい」
▼
病院長に着いてきた私は会議室まで連れてこられた。2.30人ほどは楽々入るであろう大きな会議室に私は病院長と二人で高級そうな椅子に座って向かい合っていた。
「さて....そろそろ本題に入りましょうか」
「はい」
「この話をする前に1つ約束をしていただきたいのですが」
「何でしょうか?」
「ここでの話は口外しないでいただきたいのです」
「・・・・分かりました」
「大変お話し、しずらいのですが紺野 木綿季さんの病名は」
「それは知っています」
「っ!」
「ユウキから直接聞きましたので」
「そうですか....。本当に心を許したんですね」
「それだけでしょうか?」
「いえ、ここからが本番です」
そう言う病院長の顔は先程よりも強張っており如何に話しずらい内容なのかが伺えた。
「紺野 木綿季さんが何故この病気にかかってしまったのか、の話です」
「っ!そ、それは.....」
「大丈夫です。貴方が危惧している用な話ではありません」
「............」
「これは我々医師の不甲斐なさが招いた結果なのです。紺野 木綿季さんの病名は後天性免疫不全症候群と言われています」
「ですからそれは分かってると」
「最後までお聞きください。紺野 木綿季さんは出生時に輸血用血液製剤からHIVに感染したのです」
「そ、それって.....」
「はい。私達のミスで紺野 木綿季さんは、この病気に感染してしまったのです」
「そ、そんなのって!」
私は怒りで机を叩きながら立ち上がっていた。たぶん病院長を睨んでいたと思う。
「分かっています。どれ程の罪を犯してしまったのか。その病院はもうありませんが....全ての病院を代表してお詫び申します。本当にすいませんでした」
「私にお詫びを言われても困ります」
「そこまで睨まれながら言われても説得力はありませんが正論ですね」
「.......。それで、今私は貴方達医師に対して不快感しか抱いていないのですが。それを伝えたかったのですか?」
「ええ。紺野 木綿季さんには双子のお姉さんがいました。名前は紺野藍子さんと言います」
「双子の.....と言うことは」
「はい。姉と言っても年は同じでした。とても仲が良くて....病院でも人気のある双子でした。ですが....紺野藍子さんが亡くなってしまってから紺野 木綿季さんは、あまり病院内で笑ってくれなくなってしまいました。いえ笑ってはくれるのですが何処か無理をした笑いと言いますか.....心から笑ってはいないんじゃないかと思っていました」
そうかこの人は.......、この人は本当にユウキの事が心配なんだ。
「すいません....少し貴方を誤解してました」
「いえ。貴方の先程のお気持ちは当然の事です。これは私達の罪です。罪を償えるのなら私はなんでもするつもり.....でした」
「でした、とは?」
「本来この病気は皆さんが思っているほど怖い病気ではありません。放っておけば亡くなってしまうので恐ろしい病気には違いないのですが薬による適切な治療を行えば発症させないまま生活を送ることも可能なのです。ですが感染したのは薬剤に耐性を持つ型でした」
「そんな.....じゃあユウキは......」
「ほぼ間違いなく......」
「っ!!そ、それなら何故隔離の用な形を取ってるんですか!?意味ないじゃないですか!」
「それは紺野 木綿季さんの意思でもあるからです」
「ユウキの?」
「紺野 木綿季さんは<メディキュボイド>の被験者でもあります」
「すいません。その<メディキュボイド>と言うのはなんでしょうか?」
「末期患者に対して使用される最先端技術の医療技術です」
「最先端の医療技術?」
「貴方はナーブギアを御存じですか?」
「はい、一応は」
「そうですか。そのシステムを利用して病気の際に生じてしまう苦痛や歩けないという事実からくるどうしようもないストレスから少しでも解放される為の装置です」
「でもそれで何故病気が治るんですか?」
「病気を治すには強い痛みや嫌悪感を伴う薬もあります。痛みに耐えられなくて亡くなってしまうというケースもあります。なのでショック死を無くすという事も可能になります」
「でも、でもユウキは...」
「この話は紺野 木綿季さんにもお話してあります。その話を聞いた結果、自分を被験者として使ってくれと言ってくださったのです」
ユウキ....貴方はどれだけ強いの.......。私は.....私は.......貴方に何もしてあげれないの?私は.......。
「ユウキ.......」
「貴方には本当に感謝しています。紺野 木綿季さんの唯一の友達になってくれたんですから....それは残念ながら私達では絶対になることは出来ませんから」
「私は別にそんな大したことは.....」
「それでもお礼を言わせてください。ありがとうございます」
「...........」
「これで、私からの話は以上です。何か聞きたいことはありますか?」
「ユウキの病室にはナーブギアが置いてありました。先程の言い方ですと、そのメディキュボイドという装置があるならナーブギアは要らないのではないですか?」
「その通りですね。ですがそうとも限りません。紺野 木綿季さんは、まだそこまで悪化していないので普通に歩いたりすることが出来ます。なので出来る限りは外の空気を吸ってもらいたいのです。いずれ出来なくなってしまいますから.....」
「そうですか......あ、あのあと1ついいですか?」
「はい」
「ユウキは、その装置を使ったことがあるんですよね?」
「はい。数回ですが薬の投与の時に使用しています」
「メディキュボイドは.....二人の為に作られたと聞きました。それはもしかして、ユウキと......」
「そのお話は、私の権限ではしかねます。申し訳ありませんがプライバシーに関するところもありますので....御理解下さい」
「........分かりました。それでは、私はユウキの所に戻ります」
「はい。どうかよろしくお願いします」
私が会議室から出るまで病院長はずっと御辞儀をしたままだった。