私とキリト君の出会いの物語   作:SAO映画記念

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プロローグ
「リンクスタート」


 

人間には一人一人生まれもって運命(さだめ)られた物語がある。

 

生まれ持った性別。

生まれて育っていくうちに身に付いた性格。

「暴食」「色欲」「強欲」「憂鬱」「憤怒」「怠惰」「傲慢」。七つの大罪とも言われている、人間誰しもが感じたことのある感情。

 

 

それら全てを合わせて私の物語は進んでいく-------------

 

 

 

 

--------------------はずだった。

 

 

 

 

私の物語は亀裂を生み崩壊していった。

 

虐めという最も残酷な行為によって。

 

私は虐められながら思っていた。

 

 

 

世界には二種類の人間がいる。

虐める人間と虐められる人間だ。

 

私はずっと虐める方だと思っていた。だから最初は虐められているということに気付こうともしなかった。.....いや少し違う。気付いてはいたけど気付かないフリをしていたんだ。

私は虐められてなんてないって常に自分を騙していたから。

 

だけど常に自分を騙し続けるのも限界があった。

 

------------------------------ついに私は壊れてしまった。

 

 

 

 

私の物語に亀裂が入ってしまった。

虐められていると認識してしまった。

 

 

神様は私に何故このような仕打ちをするんだろう。悩んでも考えても答えは出てこなかった。

私は学校に行かなくなった。

 

母も父もある程度虐めに関して分かっていたようで私が行きたくないって行っても止めなかった。本当は止めて欲しかったのかもしれない。

 

言われた言葉は母から一言だけ。

 

「ウチはお金があるから学校に行かなくても将来なんとかなるから好きにしなさい」

 

私の瞳からは生気が抜けていくのが分かった。

何もやる気が起きなかった。

何も考えたくなかった。

何も何も..........。

 

そんな時だった部屋のパソコンで2ちゃんを読んでいた時だった。

私の心を揺さぶる内容が書かれていた。

 

 

 

 

40:以下、彩ちゃん最強説がお送りします

 

VRMMORPGって知ってるか?

 

 

41:以下、彩ちゃん最強説がお送りします

>>40

はぁ?馬鹿にしてんの?仮想現実世界を大人数でプレイするゲームのことだろ?

 

 

42:以下、彩ちゃん最強説がお送りします

>>41

そうなんだけどちゃうねんて。今度のは最新技術を取り入れたVRMMORPGなんだよ

 

43:以下、彩ちゃん最強説がお送りします

>>42

あっ!それ俺知ってるべ!確かーナーブギアっつー最先端の技術使って本当にその世界で冒険してるような感覚になれるっていうやつだべ!?

 

 

44:以下、彩ちゃん最強説がお送りします

>>43

いやお前誰やねん。もー俺の美味しいとこ持ってかれた。激おこだぞ?

 

 

45:以下、彩ちゃん最強説がお送りします

>>44

わりーわりー。ついね~。許してちょんまげ?

 

 

46:以下、彩ちゃん最強説がお送りします

>>45

うぜー.....。(`皿´)

 

 

 

 

「ナーブギア.....」

私は急いでネットで検索を開始した。すると新発売ナーブギアと書かれた商品が電気屋にて販売されていることを知った。

 

マウスをスクロールしていくと感想の書き込みがあり「世界観が変わった!」「時間を忘れるほど楽しい!」など幾つものコメントが書かれていた。その中でも私が最も惹かれたコメントがあった。

 

 

それは「現実のことを忘れられる」という書き込みだった。

 

今の自分にはピッタリだと思ったしこの書き込みをした人にも興味を持った。自分と同じ境遇なんじゃないかと思ったから。

 

それからは速かった。母にメールで欲しい商品の名前などを打ち込み写真を貼付。後は買ってきてくれるのを待つだけだ。

 

コンコン。と扉をノックする音が聞こえて部屋の扉を開けると扉の前にナーブギアが置かれていた。

母と最後に会話をしたのは何時だっただろうと考えながら、ナーブギアの入った箱を持ち上げて部屋にいれた。

 

ナーブギアの説明書を読んでいくうちに私の心が高鳴っていくのが分かった。

 

「(早く!ナーブギアを使ったゲームがやりたい!)」

 

だけど1つの問題に気が付いた。

 

ナーブギアはあったが肝心のゲームの内蔵データが入っている所謂カセット?的な物を買ってもらうのを忘れていた。私は慌てて母に追加注文すると「今外出したから帰ってからね」と定例文のように返ってきた。だけど私は我慢することが出来なかった。

 

早く!一刻も早く!ナーブギアを使ってゲームがやりたい!という衝動に駆られて何ヵ月ぶりかに外に出る決意をした。

 

 

「ゲーム.....夢.....現実が忘れられる.........」

 

私はずっとぶつぶつ呟いていたと思う。

家が都内に近いこともあって大きな電気屋は徒歩でも15分ほどで辿り着いた。

 

値段が高額なのにも関わらず大人気残り僅かと書かれたナーブギアのコーナーを発見してVRMMORPGのカセットを探した。そこで私は『剣と魔法のユグドラシル冒険記』というカセットを見つけた。

内容は初心者でも分かりやすく剣と魔法を駆使して物語を仲間と協力し完全クリアーを目指せ!という物だった。

 

こういったゲームをしたことがない私でもなんとかなりそうだと思いそのカセットを手に取り財布からカードを取り出して会計を済ました。

 

「これで.....現実を忘れられる..........」

 

私はにやけそうになる顔をなんとか手で隠しながら速足で家に向けて歩きだした。

 

「痛っ.....何?........」

 

私は誰かとぶつかってしまってその勢いでお尻を勢いよくぶつけてしまった。

未だに痛いお尻を擦りながら起き上がると目の前には私を学校で虐めてたグループの3人がいた。

 

「ちょっと、あんた何処に目つけて...へえ。カナじゃーん。久し振り。どお?元気してた?」

 

「ええ?うっそー?ほんとだー。あははは。不登校になったカナだー」

 

「というかーぶつかっといて謝りもしないわけ?」

 

上から夏希に千夏に有理。所謂トップカーストと言われる類いの人間で私の憧れた所にいて私が最も遠い場所にいる。

 

「ご、ごめんなさい......。それじゃあ、私急ぐから」

 

「ちょっと待ちなよ」

 

夏希が私の袖を掴んで止めてくる。顔は笑っており他の二人も同様に笑っていて私を虐めてた時と同じ顔だった。

 

「ねえ?あんたさー確か、すごーいお金持ちだったよねー?」

 

「あーちょうどいいやー。ねえ?あたしら喉渇いたからさ、そこの喫茶店で奢ってよ」

 

「あ、それいいー。ねえ?いいでしょ?私ら友達じゃん」

 

私はまた繰り返してしまうのか....。学校に行かないことでこの気持ちを忘れられそうだったのに。そんなの嫌だ。

 

「わ、私は.....」

 

「んー?どうしたー?カナ?」

 

「そ、その....」

 

「何か言いたいことがあんなら言ってみなよ?」

 

「・・・」

 

また黙りこんでしまった。私はやっぱり駄目みたいだ。私は弱いから。私は生まれもってこういう運命(さだめ)だから。

 

「分かった......奢、る......」

 

「ちょっと待った」

 

「はあ?あんた誰?」

 

「てかいきなり出てきといてなんなの?」

 

私の目の前にいきなり知らない男の人が夏希達と私を遮るように立っていた。

 

「・・・誰?」

 

「彼女、嫌がってるじゃないか」

 

「はあ?だからあんたいきなり何様なのよ」

 

年は同い年くらいだろうか....。後ろ姿しか見えないが今の私にはその後ろ姿がとても大きく見えた。

 

「俺の名前は桐ヶ谷和人だ。別に知り合いってわけじゃない。でも虐めをみすみす見逃すことも出来ない」

 

彼が言ったその一言で私の体はまるで電気が走ったようだった。瞳からは涙が溢れてきて嗚咽が混ざり声も出にくくなっていく。

自分の中で二種類の人間が3種類の人間に変わりそうだった。

 

私の中で今目の前の少年は間違いなく英雄(ヒーロー)になっていた。

 

「ちっ。いくよ、あんたら」

 

「はあーいい金づるがいたと思ったのになー」

 

「最悪だー。ゲーセンでもいこうよー」

 

夏希達は諦めたのか私の横を通って行ってしまった。

 

「君。大丈夫?」

 

ありがとうって言いたかった。溢れてくる感情をぶつけて感謝を伝えたかった。でも今の私には彼の問いにこう答えることしか出来なかった。

 

「・・・はい」

 

「そうか。良かったよ」

 

彼は笑顔で私に言ってくれた。その事が嬉しくてまた涙が溢れてしまう。

 

「う、うう.....」

 

「あ、えっと......。き、君もナーブギアのMMORPGをやるの?」

 

私は涙でグシャグシャになっている顔をあげて思わず彼を見ていた。君も、ということは彼もナーブギアのゲームをやっている。それならゲームの中で、また彼に会えるかもしれない!

 

そう考えるととても嬉しくて先程までの嫌な気持ちなんて忘れてしまっていた。

 

「は、はい!」

 

「俺もだよ、それならあっちで会えるかもね」

 

ピリリリ、ピリリリ。

 

「おっと。電話か.....て、母さん。もしもし?ああ、もう帰るよ、分かってる。道草なんかしないって、うん。アイスもちゃんと買ったし大丈夫だよ。はぁ....。あ、悪い。もう帰らないと、それじゃ!」

 

彼はどんどん遠ざかっていく、私はその姿をただ見つめていることしか出来ないのだろうか。

・・・・私は先程買ったカセットの『剣と魔法のユグドラシル冒険記』が目に入り、大きな声で叫んだ。

 

「あ、あの!貴方のゲーム内でのお名前を教えてください!」

 

人生で初めてだったと思う。こんなにも大きな声を出したのは、でも不思議と恥ずかしくは無くむしろ自分が誇らしかった。

 

「ん、キリト!ローマ字でKiritoだ!」

 

「Kirito君かぁ......」

 

私は胸に熱いものを感じながら帰路につき部屋のベットの上でナーブギアを被って彼の事を思いながら物語を始めようと一言、始まりの言葉を紡ぐのだった。

 

「すぅ.....。リンクスタート!!」

 

 

 

 




在り来たりなプロローグでしたかね.....。まだSAO編ではありません。

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