「勝った。」
勝利宣言はテレビに拾われ、全国に流れる。
ネットは燃え上がり、ニュースになるのは容易い。
そんな中、真っ白の髪になった穏乃は椅子に深く座り込む
「山は私の支配下だ。もう負けることはない。」
その言葉通り手牌は次々に役の形になっていく。
オーラスになった頃には勝敗は決した。
穏乃は絶対安全圏内に入った。
ぼろ負けしていた立場から大逆転であるが、周りはそうは思わない。
勝つべきして勝った。
運命で決定していたかのような起こり得るべきして起こった出来事のように感じた。
「ありがとうございました。」
私は立とうと足に力を入れるが立てない。
見かねた千里山の大将が肩を貸してくれたが、立った時に見えた自分の足は、前世で凍傷になりそうだった時に酷似していた。
「ただいま。」
「穏乃!!大丈夫!!」
「穏乃ちゃん!!」
「シズ!!」
皆が駆け寄ってくる。
大丈夫と言って、私は疲れたと呟いて寝てしまった。
「やぁ。久しぶり高鴨穏乃。」
「久しぶり、神様。」
「そろそろ体も限界だ。どうする?このまま眠っても良いのだよ。」
「・・・いや、私はまだ皆のために戦う。」
「まだ戦うか・・・。なら賭けになる。君に残されたのは時間はピッタリ1時間。明日の準決勝で使うかい?それとも決勝?」
「私は・・・」
「なるほど。君らしい答えだ。・・・頑張ってきな。最後の時間を。」
穏乃は起きない。
昨日の昼から起きない。
今日の朝、いくら私達が揺すっても起きない。
赤土先生が今穏乃を病院に連れていった。
私達は穏乃が抜けた状態で準決勝に挑まなくてはならなくなった。
相手は千里山、白糸台、新道寺・・・強豪校に勝たなくてはならない。
「諦めない。諦めないよ!!」
私・・・新子憧は穏乃から受け取った気持ちと能力で戦いに行く。
「ドラドラドラ。爆発よりも流さないと。今は勝つことだけだよ!!」
「冷たくてもいい。勝つんだ。皆のために!!」
「晴ちゃんの目指した舞台、私達の思いを繋がないと。」
『僕は神様だけど・・・運命に干渉することはできない。・・・穏乃、残念だけど君は終わりだ。』
最後の力を振り絞って起き上がる。
私は周りを見渡すと泣いている皆を見つけた。
ボヤけて見えづらい視界と難聴になった耳は声をよく拾うことはできない。
だけど・・・私は察した。
あぁ、負けてしまったのだ。
と・・・。
今の私でも淡、メリー、咲の3人を飛ばすことは出来る。
だけど私は全力を出せぬまま魂が壊れてしまう。
あぁ、残念だ。
とてもとても残念だ。
「ありがとう。」