コボゴボ・・・
「またか・・・血が出たか・・・。」
ホテルの洗面所で私は血を含んだ咳、痰を出していた。
体が痙攣することもしばしば起こるようになり、辛い状態が続いていた。
2回戦の朝のことである。
5種類の薬を飲み込んで一時凌ぎだが痛みを和らげると私は2度寝しようとベットに入っていった。
(しず?)
異様な音の咳に驚いた私こと憧は洗面所に行くしずをベットの中から見ていた。
また咳をした後、しずが洗面所から戻ると眠ってしまったので私は洗面所に行ってみた。
(え?)
流し忘れたのか結構な量の血が付着していた。
「しず・・・!!」
「見たな。」
寝たと思ったしずは私の後ろから真っ青な顔でこちらを見ていた。
流し忘れたのか・・・私らしくない。
「しず!!大丈夫なの!?」
「憧、みんなが起きちゃう。こっちに来て。」
私はみんながいる部屋から憧を廊下に連れ出した・・・。
廊下は空調が効いていてとてもすごしやすい。
自販の前にある椅子に座り、憧の質問に答えていく。
「しず、体調悪いの?・・・あんな咳や血が出てたから悪いとは思うけど。」
「悪いよ。この上なくね。」
「いつから?」
「3年ぐらい前から。」
「3年!?」
「・・・憧ならいいか。手を握ってくれない。」
「手を?」
13座のうち9座を彼女に流し込む。
命渡し・・・エベレストの能力・・・奇跡の生還伝説からの能力である。
「あ、あ!?」
「我が半生・・・託したよ。憧さん。」
流れ込む・・・しずの記憶・・・
国外逃走、絶望、諦め、冤罪、認められない成果、衰える体、僅かな希望、楽しかった日々、数少ない仲間・・・前世と今世が混じる。
その濁流のごとく記憶を憧はその天才的な頭脳で吸収していく。
全てを理解したとき・・・憧は目の前にいる老けたしずに対してなにも言わなかった。
いや、言えない。
苦労の言葉では足りない前世を知り、安定を求めた今世は魂の限界である。
憧の瞳には強い思いが宿る。
その思いは彼女に8に関わる異能を与えることとなる。
「思わずは、若き我が身、朽ちの時、少し残るは、未来の色。」
2回戦、千里山の園城寺怜が未来視を使って玄を苦しめる。
宥さんも巻き返しを頑張るが上手くいかない。
憧は能力に振り回され沈黙。
灼さんが必死に稼いでなんとか3位。
そして私の出番。
「行ってくる。」
「がんばって。」
「・・・負けないで。」
「頑張れしずちゃん!!」
「頑張れ穏乃ちゃん!!」
「ファイト!!」
「楽しんできな、穏乃!!」
「はい!!」
ゴボ。
ハアハア。
「・・・。」
タッタッタ
血の塊が廊下にこびりつく。