正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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ふ……

文章が、全然出てこねぇ……

もうなんか、書くの難しすぎるし、全然真新しさがでねぇ。


要するにぶっちゃけスランプ入ってます。
が、まぁ、とりあえず続けてみます。


その男、船長につき

「やれやれ。二人がかりとは、ずいぶん警戒されちゃってるね」

「軽口を叩けるとは余裕ですね。それともなめているのかしら?」

 

魔力弾の援護を受けながらジャンヌが旗をふるう。獰猛ささえ覚える激しい攻撃は、単体でも強力だというのにそこにマタ・ハリの援護が加わっているのだ。通常ならばとてもさばききれるものでもないし、更に言うのであればその正面に立っていることすら難しいはずだ。

 

だがこの男――ヘクトールにとっては難しいことなどではなかった。

 

「そぉら!」

「っ、ちぃ」

 

攻撃の隙を縫うかのように繰り出された槍が頬をかすめる。一筋の赤い痕が白い肌に刻まれ、思わずジャンヌは舌打ちをする。追撃を避けるため、咄嗟に繰り出した蹴りも槍の柄で防がれたものの、何とか反動で距離を取ることに成功する。ヘクトールの方も少しふらついたものの既に体勢を立て直している。

 

「おっとっと。思ったよりやるね~。こりゃおじさんもうかうかしていられないかな?」

「ふん。よく言うわ。全然余裕そうじゃない、あんた。腹立たしいわね、まったく」

「いやいや、これでもおじさんなりに褒めてるつもりなんだけどね。攻勢に出るのは得意じゃないとはいえ、おじさん相手にここまで粘れてるんだから」

 

ピクリとジャンヌの眉が動く。表情は最初と変わらず基本的に冷笑を浮かべているだけだが彼女を知るものからはすぐわかる。

 

あ、これ怒ってますわ。

 

人の感情の機微を読むことに長けているマタ・ハリにもそれは明らかで、彼女は彼女でポーカーフェイスの笑みを崩さぬまま、ジャンヌの隣に並ぶ。

 

「あらあら。冷静さを欠いちゃだめよ」

「ええ、言われなくともわかっています、それくらい」

「そう?ごめんなさいね」

「…ねぇ、むしろそういうのが冷静さを失わせそうなのですけれど?」

 

唇の端をひくひくさせながらジャンヌがマタ・ハリをにらみつけるように見つめる。並の者であれば怯むであろう視線を受けながらも、マタ・ハリは笑顔のまま魔力弾を前方の敵、ヘクトールに向けて飛ばす。

 

「おっとっとぃ~。そっちの嬢ちゃん、本当に冷静だねぇ」

「あら、殿方の前では常に優雅でいたいじゃない?」

「いうねぇ。いい女なのには違いないね。おじさん敵として出会いたくなかった気もするよ」

「褒めてくれるのね、ありがとう。でもごめんなさいね。私には素敵なマスターがいるもの」

「そりゃ残念」

 

「ちょっと……」

 

軽口のような会話の応酬をするマタ・ハリとヘクトール。と、低く小さなつぶやきのようなジャンヌの声がそのやり取りを遮るかのように聞こえてくる。

 

「ん?うぉっ!?」

 

防御の構えをとるヘクトールの頭上から渾身の力を込められたジャンヌの旗が振り降ろされる。防ぎ切った、その瞬間旗の力が緩むのをヘクトールが感じ取った直後、彼の顔の下から上に向けて黒い剣が振り上げられた。

 

「っ、とぉい。こっちの嬢ちゃんは乱暴だねぇ」

「うっさい。それよりあんた」

「私?」

 

ぴしゃりとヘクトールの言葉をシャットアウトしたかと思ったら再びマタ・ハリをにらみつけるジャンヌ。これにはマタ・ハリも首を傾げる。

 

「素敵なマスターって、どういうことかしら?」

「?何かおかしかったかしら?」

「そうね。急にそんなことを言い出した理由がとても気になるわ。素敵なマスターですって?素敵な?またあのマスターはやってくれやがったのですか、そういうことですか?」

 

途中からまるで独り言のようにぶつぶつつぶやき始めながらも、ジャンヌの中で苛立ちがふつふつと湧き上がっているのはマタ・ハリからもヘクトールからも見ていて明らかだった。

 

「あーっ、ほんっとイライラするっ!このイライラ、この怒り!存分にぶつけさせてもらうから覚悟しなさい!」

「あらあら」

「何に怒ってるのかよくわからないけど、こりゃおじさんも少し気を引き締めるべきかな。さっきの攻撃も、油断ならなかったし、な」

 

首元についた一筋の傷からにじんだ血を確認し、ヘクトールが槍を構えなおす。飄々とした雰囲気は変わらずとも、その顔に現れている笑顔は、やや小さいものとなっていた。

 

――――――――――――――――

 

「ヌァァァアッ!」

「くっ、ぉぉぉおっ!」

 

渾身の力で横なぎに振りぬかれそうになる巨大な斧を、彼はすんでのところで躱し、その後ろ側から両手の獲物をたたきつける。

 

サーヴァントと人間との間では大きすぎる力の差が存在する。真正面から受け止めることはほぼ不可能、できたとしてもその後の動きに影響が出てしまう。

 

多対一の場合はそれでもいいかもしれない。大きな一撃を受け止めたとき、相手の隙を誰かがつくことが可能なのだから。

 

しかし今回は一対一、であるならば彼の、人間の魔術師(衛宮士郎)のとれる行動は回避、そして――

 

「吹っ飛べ!」

 

斧に叩き込んだ剣を力いっぱい振りぬく。元々斧にかけられていた勢いをさらに後押しするように力を込める。振るった本人の予想を超える勢いがつけられた斧がエイリークの手から離れる。

 

「ガァッ!?ォォオオオッ!」

 

得物を失い一瞬怯みこそすれど、狂戦士(エイリーク)は止まらない――止まることを知らないし、止まることを考えない。

 

ただ目の前の獲物を屠るためにその腕を振りかぶり、勢いよく振るう。対する士郎も双剣を振るうが、エイリークのリーチは士郎の剣が届くか届かないかの範囲からの攻撃を可能とする。かすった程度では意味はなく、よけられるほどの余裕もない。

 

獲った。そう狂化しながらもエイリークは思った。だが――

 

投影(トレース)・オーバーエッジ」

 

瞬間、血斧王の身体は目の前の人間に切り裂かれた――否、引き裂かれた。

 

先ほどまでの美しい形状の刃ではなく、刀身を伸ばした双剣は今や無数の刃が羽のように束ねられた形状へと変化していた。数多の戦いを経験してきている英霊ならば、それに対処することも不可能ではなかったかもしれない。が、狂気に落ちた英霊にはその変化に対応できるはずがなかった。

 

切るというより――斬るというより――抉る。

 

強烈なその一撃は、エイリークの胴体を両断した。霊核さえも砕いた一撃には狂戦士も実態をこれ以上維持することはできず……

 

「……よい、戦いだった」

「っ!?」

「願わくば、また、戦いたいものであるな」

 

最後にそんなことを言って、笑いながら消えていくのだった。

 

「普通に喋れたのかよ……けど、また戦うのは正直勘弁だな。とりあえずは、まぁ、眠っててくれよ、バイキングの王様」

 

小さく息を吐き、呼吸を整える。少しばかりの敬意を払ってから気を引き締める。

 

まだ戦いは終わっていないのだから。

 

「よしっ」

 

両の手で双剣をより強く握る。伸ばした刀身はよりなじみのある元の長さに戻しておき、士郎は次なる敵に向かって駆け出した。

 

 

 

「―――■■■」

「?どうした?何か感じ取ったのか?まさかと思うが、あそこに馴染みのある相手がいるということなのか?」

「そうみたいですね。どうしますか?」

「ふんっ。だとしてもやることは変わらない。それにたとえ馴染みのある相手がいようとも関係ない。こいつに勝てるやつなど、いるはずもないからな。女神を手に入れ大いなる力を得るのは、私たちだ」

 

勝利を確信した笑みを浮かべ、男は高らかに笑うのだった。

 

「でも、まだ到着までは時間がかかりそうですね。パンケーキでもいかがですか?」

「っておい!人がせっかく気分よくなっているのに、本当にいいタイミングで水を差してくるな、お前は!?そしてやめろ!パンケーキだけはやめろ!ふりじゃないからな!?」

 


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