正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

84 / 92


……

( ^ω^)・・・

お久しぶりです(笑)


ラビリンスの主

階段を降りきった先はもう視界が真っ暗、というわけでもなく不思議と視界だけは良好だった。それだけにはっきりと見えてきたものがある。

 

「これは、迷路でしょうか?」

「みたいね。どうしましょうか、マスター?」

「進むしかないな。ドクター、反応は?……ドクター?」

 

自分たちの侵入した迷路――いやこの場合は迷宮といった方が正しいだろう。内部に入ったからには何かしらの反応をキャッチできるようになったかもしれない、そんな僅かな期待もありカルデアに呼びかけたが、応答がない。

 

「どうやらこの迷宮の中じゃ、カルデアとの通信も阻害されているみたいだな」

「困りました。これでは敵性反応の接近も感知できないかもしれません」

「油断は禁物ということね、任せて。これでもスパイだったのよ。人の気配を察するのなら少しは役に立てると思うわ」

「助かるよ、マタ・ハリさん。っと、そうだ。試してみるか?」

 

言いながら士郎が迷宮の壁に手を当て目を閉じる。

 

同調、開始(トレース・オン)

 

魔力を走らせ迷宮の構造を把握しようとしてみる。身体から流れ出た魔力は壁に浸透し――

 

「っ、ダメだ。ここの構造はどうやら俺には読み取れないものみたいだ」

 

魔力を浸透させようと試みたものの、壁に触れた瞬間に、自身の魔力がはじかれる。剣ほどではないが物質の構造を読み取ることはそれなりに得意なはずだったが、まるで英雄王の乖離剣を読み取ろうとした時と同じように、いやそれ以上に構造を把握することが不可能なように思える。

 

「この迷宮そのものが結界ってことなのかもしれないな」

「だとしますと、こちらからの干渉は難しいと思われます。解除するには結界の起点を破壊するか、結界を仕掛けた術者を倒すかしかありませんから」

「でもそううまくいくかしら?迷っちゃいそう」

「そうですね……って、先輩!来た道順、覚えてますか?」

「あ」

 

まさかのここで痛恨のうっかりである。遠坂から伝染してしまったのだろうか、もしそうだとしたら厄介極まりないことであるが。しかしまぁ本当に厄介なことになってしまったらしい。さらに言えばこの迷宮、入ったものを絶対に逃がさないための概念でも込められているらしく、道順を覚えようとしてもすぐに忘れてしまう。そう簡単には進ませてくれないらしいし、同時にそう簡単に帰らせてもくれなさそうでもある。

 

「これはもう、迷宮の主と出会えることを期待して進むしかないな」

「そのようですね。先輩、ここは私が先頭に立ちます。トラップの類がある場合、盾を持っている私なら傷を負う可能性も低いかと」

「でもそれじゃあマシュを一番に危険にさらすことになるだろ?それはちょっとなぁ」

「あらあら、マスターはマシュのことが心配なのね。でもここはマシュの言うとおりにする方が正解だと思うわ。あなたが先に倒れてしまったら、私たちは二人とも戦えなくなってしまうもの」

「……だよな。すまないマシュ、頼めるかな?」

「お任せください」

 

盾を構えなおすマシュ。マシュ、士郎、マタ・ハリの順に並び壁を伝うように歩を進める。いやに静かな空間には自分たちの足音だけが響き渡る。

 

「そこそこ歩いてきたけど、トラップや敵の類はいないのかもしれないな。いるとしたら、」

「この迷宮をここに作り出した何者か、ですね。この規模ともなると人間の魔術師とは考えられません。やはりサーヴァントの類でしょうか?」

「かもな。実はここに来る前にステンノからこの島には女神と怪物がいるって言われていたんだけど、もしかしたらそのどちらかかもしれない」

「もしかしたらその両方かもしれないわよ」

 

ステンノがわざわざ忠告するのだ、よほど厄介な相手が待っているということなのだろう。気を引き締める三人だったが、

 

「みつ、けた」

「っ!」

 

かけられた声は後ろから。いつの間に回り込まれていたのだろうか。気配も何も感じ取ることができなかった。

 

しかも驚くべきことは小さな相手ならいざ知らず、相手はかなりの巨体だった。自分の知っている巌のようなあの大英雄、それよりも更なる巨体。両の手に持っている長い獲物は、生半可な力では振るうことすら叶わないだろう。

 

しかし何よりも目を引くのは顔を覆う仮面。ある動物を連想させるその仮面。目にあたる部分は空洞となっており、まるで死体を連想させる。仮面から伸びる二本の大きな角は、相手の体格をさらに大きく見せてくる。

 

「うぅ、おまえ、くってやる」

 

唸り声ともとれる片言の言葉。目の空洞の奥に見えた瞳は、しっかりと士郎たちを見据えている。

 

「ま、まさか」

「そういうことかっ。この迷宮は神話に伝わる大迷宮、「ラビリンス」!その主ってことはこいつは神話の怪物、ミノタウロス!」

 

両手を広げ立ちふさがる巨大な影は、圧倒的な存在感と威圧感を放ち獲物を見据える。

 

「わた、さない。ぜったい」

「?何のこと、っ!?」

 

勢いよく振り下ろされた一撃をかろうじてよける士郎。先ほどまでの通路のサイズであれば、彼の持つ長い武器を振り回すことなど不可能だったというのに、いつの間にか狭かったはずの通路が広がり、十分に戦えるだけのスペースが出来上がっている。

 

「どうやら、ミノタウルスの意思でこの迷宮を自在に操れるようですね」

「ということはつまり、こいつを倒さない限りは脱出することもできなさそうだな。マシュ、戦闘態勢。マタ・ハリは下がってくれ」

「わかったわ」

「了解です、マスター」

 

近接戦闘が得意ではない、どころか隠密行動・諜報活動以外のことに関しては不得手であるというマタ・ハリを下がらせながら、士郎は素早く両手に武器を投影する。

 

盾を構え地面を踏みしめるマシュの隣に並ぶ士郎。

 

「これだけの巨体となると、パワーもかなりのものだろうな。マシュ、気を引き締めていこう」

「はい、マスター。マシュ・キリエライト、行きます!」




ってなわけでかなり、かなり久しぶりでしたが、投稿してみました。

またたぶんぼちぼち書いていくと思いますので、はい。

……なんか、帰ってきちゃってすみません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。