正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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AZO復刻しますね〜

なーんていうより先に言うことあるだろ!

お久しぶりです!
いやぁなんか急にこの作品の続き書こうかなぁって思ったので笑

それじゃあ、短めですけど、どうぞ!


異様な島

波に揺られる船の上から、士郎は水平線の彼方を見つめる。パッと見ではただ景色を眺めているだけのようにも見えなくもないが、彼は周囲の索敵をしていた。

 

双眼鏡や望遠鏡を使わずとも、彼には弓兵にとって重要なファクター、類稀なる視野を発揮することができる。

 

剣をより鋭く、盾をより硬く、光をより明るく。それが強化の魔術。その応用で己の感覚を補助している。

 

と、彼の視界に島が映る。それなりの距離を進んできたが、未だ手がかりなしの状態だった。あの島で何か見つけられれば……

 

すぐさま士郎はドレイクへ島があることを伝えると、彼女も同意見だった。

 

「何かあるかもしれないなら探してみるのが吉さね。そういう冒険心があってこその海賊でもあるしね」

 

 

ドレイクが舵を切り島へと方向を修正する。なんとも言えない予感に近いものを感じながら、士郎がじっと島を見つめていると、

 

『シロウ、ちょっといいかしら?』

 

と、突然通信が入る。鈴の音のような少女の声。

 

「珍しいな。どうした、ステンノ?」

『ええ。普段なら別にあなたがどうしているかに干渉する気はないのだけれど、今回は別ね。気になることがあったから』

「気になること?」

 

基本人間がどう困難に向かって行くかを眺めて楽しむだけ、それが女神ステンノ。しかしそんな彼女がわざわざ自分に連絡してまで気になることなんて、一体何なのだろうか。

 

『今向かってる島のことなのだけれど。感じたの』

「感じた?何をだ?」

『いるのよ、そこに。ロマニは反応はなかったと言っていたけれど、間違いなくいるわ』

「いる、って誰が?」

『そうね……女神と……怪物、かしら?』

 

そう答えたステンノは笑っていた。あ、これは分かっていて隠してる顔だ、と士郎は即座に理解する。その表情が彼女、遠坂凛の時折見せるからかうような表情に、とてもよく似ていたのだから。

 

「自分の目で確かめろってことか?」

『ええ。簡単に答えがわかってしまったら、旅に面白みがないじゃない?私はあなたの物語を見物するだけだもの』

「はいはい、わかりましたよ女神様。まぁ一応忠告という形で受け取っておくよ。ありがとう」

『ふふっ、どういたしまして。それじゃあ、お話はここまでね。頑張って私を楽しませなさい』

 

最後にまたからかうような笑顔を見せてから、ステンノは通信を切った。

 

「怪物……またキメラかドラゴンか、或いは……」

 

かつて対峙したことのある怪物を思い出す。

 

まるで巌のような大男。

 

その動きは獣のそれと、勇士のそれとが合わさったまさに無双の男。

 

「サーヴァント、か」

 

気を引き締めながら、士郎は近づく島をじっと睨んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

上陸前までの感想としては普通の島、そう見えていた。

 

だが、一歩島に踏み込んだその瞬間、士郎は警戒レベルを上げざるを得なかった。

 

「先輩?どうかしましたか?」

「……」

 

マシュの問いに答えるでもなく、士郎は足元の砂を険しい表情で見つめている。

 

否、正確にはその砂の奥を感じていた。

 

「シロウ?何かあったのですか?」

「ちょっと待ってくれ。確かめたい」

 

一歩足を踏み入れた瞬間に、体に謎の悪寒が走るのを、士郎は感じていた。それはまるであの時と同じ。学校に張られた結界に踏み込んだ時、或いは串刺し公の領地に踏み込んだ時に似ている。

 

何者かの支配する領地、空間。自分にとって危険とも思える場所にして、その支配者の狩場足り得る場所。

 

つまり……

 

同調、開始(トレース・オン)

 

嫌な予感を確かめるため、地面に手をつき魔力を走らせる。遠坂にも言われた自分の空間把握力の高さを信じるなら恐らく……あたりにあるのは砂と海、そして……

 

「っ、やっぱりか……ドレイク」

「何だい?」

「ドレイクたちは船の側で待機しててくれ。探索は俺たちでやる」

 

「先輩?」

「シロウ?」

 

突然の士郎の発言に驚くマシュとリリィ。一方ジャンヌは声にこそ出していないが、何やら納得したような顔をしている。

 

「シロウたちだけでかい?別に構やしないけど、またどうしてだ?」

「この島は何かおかしい。多分何かしらの結界が張られている。それも大規模なやつだ。この規模のものを張れるなんて、並大抵じゃない。多分、サーヴァントかそれに近い何かがいる」

「なるほどね。だからあんたたちだけってことかい」

「ああ。それに……」

 

先程のステンノとの通信を思い出す。恐らく彼女は嘘をついていない。彼女とはまだ知り合って日が浅いが、つまらない嘘をつくはずがないことはわかる。

 

つまり、この結界を張っているのは女神か怪物のどちらか。それも、どちらかは、或いは両方、彼女がわざわざ気になる、と言うほどの存在。女神の場合はそれなりの神格であるということ、怪物の場合はそれだけ危険であるということ。

 

不測の事態を考えるなら、ドレイクたちにはすぐに逃げられるようにしておいてもらったほうがいい。

 

「本気でヤバイと思ったら、合図を出す。すぐに逃げられるよう準備してくれ」

「……はぁ。わかったよ」

 

海賊としては島の探索に加わりたかったのだろうドレイクだったが、士郎の本気の視線に折れた。

 

「何かあったときのために、サーヴァント側も何人か残った方がいいんじゃないの?」

 

と、意外なことにジャンヌから提案が上がる。確かにその通りだと感じる士郎。必ずしも探索側が遭遇するとは限らないのだから。

 

「なら、今回行くのは俺と……そうだな……」

「私が行くわ」

 

真っ先に挙手したのは、マタ・ハリだった。これまた意外な出来事に、思わず驚いてしまう。

 

「マタ・ハリさん?いや、でも戦闘は苦手って」

「ええ。でも私は元スパイ、クラスはアサシンよ。こういう隠密行動には向いていると思うのだけれど」

「む」

 

確かに。悪意のなさげな言動から忘れがちだが、彼女は有名な女スパイである。もっとも、どちらかといえば表立って行動するタイプのスパイだった気もするが……

 

「まぁ、わかった。ならマタ・ハリさんと、」

「わ、私も行きます!」

 

名乗りをあげるマシュ。何やら慌てているようにも見えるが何かあったのだろうか。

 

「マシュ?」

「いえ、その。と、トラップや奇襲があったときに、私ならすぐに防げると思うので」

 

それもまた確かに、と納得してしまう。シールダーという特殊なクラスの彼女は、あらゆる攻撃に柔軟に対応できる。加えて彼女の宝具の守りも一級品だ。

 

「わかった。なら、俺とマシュ、それからマタ・ハリさんの3人で行くよ。2人はここで船を守っていてくれ」

「お任せください!」

「わかったわよ」

 

グッと拳を握り気合いを入れるリリィ。ジャンヌはどこかほっとしている様子。ちらりと彼女が微笑んでいるマタ・ハリに視線を向け、さっとそらす。

 

どうやらマタ・ハリと別行動できることにほっとしていたらしい。仲良くして欲しいけどなぁ、と思わず苦笑してしまう士郎だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「この島か……」

 

一足先に森の中に入っていたフードの男が、影に隠れて士郎たちの様子を伺う。

 

特異点の危機を回避する最速の方法、それを実行すべく彼はここまでついてきた。

 

「後は彼女を見つけ出し、始末することだな」

 

物騒なことを呟きながら、男は気配を消しながら歩き出した士郎たちを追う。

 

己がやり方で救うために。

 

男は咥えていたタバコの火を消し、銃を手に取る。

 

フードの奥の瞳は、まるで死んだ魚の如く覇気のないものでありながら、同時に獲物を狙う狩人の如き鋭さを見せる。

 

仕事だから。

 

それが彼が殺す理由。

 

それがより最善であることを信じて。




続く……っと

いやぁ、キャラが増えると動かしにくい人も出てくるから別行動多くなるなぁ

どうしよう……

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