演出全部見ようと思ったけど、途中で諦めて視線そらしたんですよ
終わったかなーと戻ったらあら不思議、最後に出たのは武蔵ちゃんでした!
というわけで、レフの正体がついに……
あ、展開微妙に変わってますけど、悪しからず
「シロウ、マシュ。あれは?」
「私たちが探していた魔術師です。そして、この特異点を生み出した元凶だと推測されます」
玉座に座ったまま、レフはその感触を確かめるかのように肘掛の部分を指で撫でる。その表情はひどく退屈そうに見え、ひどく怒っているようにも見える。
「ふん。過去の皇帝共であれば、この時代の攻略もたやすいことだと思っていたが、神祖殿はその気になってくれなかったのでな。新たなローマを作ることで時代の崩壊を招くという、回りくどい手を使わざるを得なかった」
特異点となった冬木同様、ロムルスもまた、この時代を維持しようとしていたのだろう。あの時、最後にネロに告げた言葉は、セイバーが士郎にくれたものと同じ、激励と肯定、そして彼もまた、ネロに託したのだ。
「まぁ、サーヴァントも所詮は使い魔の類。替えなど、いくらでも用意できる。そういう意味では、貴様らに感謝しなくてはいけないな。面倒な奴を消してくれたことに、な」
ギリッ、と士郎の口から音が漏れる。その表情は今までにない程の怒り。
目の前の男は、英霊をなんだと思っている。まるで捨て駒のように、使い捨ての道具のように、この男は笑顔で語っている。
ふざけるな。
サーヴァントとして呼ばれるものは、大なり小なり、人々の願いや信仰を集めたり、その功績を称えられたりと、その生涯の結果として英霊となったものだ。
中には必ずしも褒められたものではない、大量殺人による反英霊という存在もいるが、その彼らの逸話もまた語り継がれ、人々の記憶に深く刻まれている。
様々な意味で人を超えた、超えることを求められたものたち。それが英霊だ。その彼らを、クラスという枠に押し込め、現界させたのがサーヴァント。マスターとサーヴァントは対等な関係、どちらがいなくても聖杯戦争は勝ち残れない。
本来ならば自分たちよりも遥かに格上の存在である相手。それを使役することがどれほどの意味を持つのか。士郎は自分の剣として戦うと言ってくれた彼女のことを思い出す。あれほどまでに気高く、正しく、美しい存在。その彼女と肩を並べ戦う、それはきっと本当に光栄なことなのだ。
「ふざけるなよ、レフ。サーヴァントを、英霊をなんだと思ってる!」
「言っただろう?ただの使い魔だと。私の手には聖杯があり、その気になればいくらでも呼び出すことができる。ただの使い捨ての兵士に過ぎないのだよ」
「貴様!何処まで余の先代の皇帝たちを侮辱するつもりだ!それ以上は許さぬぞ!」
「あたしも怒ってるんだからね。サーヴァントとして、戦士としての誇りとかは、正直あまりないかもしれないけど、あんたの言い分には怒りしかないわ」
「貴様ごときの首級には毛ほども興味はないが、その首、私が貰い受けてやろう。それが、全ての英霊のためにもなるだろうしな」
本気の怒りを見せ、ネロたちが武器をレフに向ける。サーヴァントによる強い殺気を受けながらも、レフは笑みを絶やさない。否、むしろその笑みはさらに深くなり、玉座に座ったまま、肩を震わせ笑っている。
「クハッ、クハハハ……思い上がるなよ。たかが霊長最高峰の存在ごときが、私を倒せるつもりかね」
「倒します!人理修復のためにも、この時代を守るためにも!」
マシュが盾を構え、戦闘態勢に入る。士郎も剣を構え、レフを睨みつける。
「どうする?5対1だ。降伏するなら今の内だぞ」
「ふん。たかだか5人。私の敵ではない。それに、必要な準備は既に整っている」
レフが左手をかざすと、その手の上に金色の盃が現れる。聖杯が、レフの願いに応えるように魔力を巡らす。玉座の足元近くに描かれていたのは魔法陣。その魔法陣から溢れる光が、急速に回り出し収束する。
「まさか、新たなサーヴァントの召喚を!?」
「その通りだ、マシュ。しかし今度のは君たちにもどうしようもないぞ。その前では、ローマを守ることなど無意味。力の無さを嘆きながら、この時代の消滅を見ているがいい!」
光の収束が終わり、人の形へとなっていく。
褐色の肌に、華奢な体。頭を覆う美しいヴェール。その姿はとても美しかった。けれども、それに不釣り合いに思えるほど異質な剣。纏う空気は、そう、何処か透明なもの。マシュの透き通るような透明さと違う、空虚。
「クハハハ!止められるものなら止めてみせろ!文明を滅ぼすその一撃を!やれ、セイバーよ!」
「いいだろう……マルスと接続する」
レフの命令を受け、セイバーと呼ばれた謎のサーヴァントが剣の柄を天井、否、空に向ける。そこから放たれるは一条の光。感覚でわかる、あれはまずい。発動させたが最後、どうしようもない一撃。
「発射まで2秒」
「先輩!」
「くっ!」
マシュと士郎がサーヴァントを止めようと走り出す。
「無駄だ、間に合わんさ」
レフの笑みが深くなる。士郎が剣を投げつけようとする。それでも何処かわかっている。間に合わないと。
「終わりだ、人類最後のマスターよ」
「いいや、間に合ったさ」
突然聞こえた低い声に、レフが驚きその方向を見る。聞き覚えのあるその声に、ネロや士郎もハッとする。
「
「
準備段階に入っていたセイバーの隣に、降り立った赤い影。その男が言葉を紡ぎ、魔術を発動する。地面から湧き出る炎が室内を照らし——
——その影とセイバーの姿は消えていた。
「……ここは?」
気がつくと景色は一変していた。
天井だったはずの場所には、雲に覆われた空が広がる。異常なことに、その空には歯車が噛み合いながら浮かんでいる。
そして広がるのは荒野。無数の剣がつきたつだけの荒野は、自分の持つ空虚さにも何処か似ている。
「マルスとの接続が切れた?」
「すまないが、ここは外界からは隔離された、私の世界だ。ここから外の世界に干渉することはできんよ」
少し離れた場所に立つ男。褐色の肌に白髪、自分とよく似た特徴の男。けれども、彼の纏う赤は、自分と違う。
人の血が通っているような赤、機械ではなく一人の個。だというのに、彼もまた、自分のように機械的な存在、のような気がする。
「何故ここに連れてきた?」
「あのままでは、君によってこの時代の文明が破壊されかねないのでね。全力で止めさせてもらうとしよう、破壊の大王よ」
僅かにセイバーの瞳が大きくなる。その呼び方、自分の真名を知っていなければ出てこないはず。
「私を知っているのか?」
「ああ、知っているとも。でなければ、あそこで君をこの世界に引き込むことはできなかっただろう」
「……なるほどな。だが私に与えられた役割は文明の破壊だ。その邪魔をするならば、お前も切らねばならない」
「そうなるとは思っていたさ」
赤い外套の男はいつの間にか両手に白と黒の夫婦剣を持っている。元より一戦交えるつもりだったようだ。
「ならば文明の前に、お前の世界から破壊しよう」
破壊の大王、彼女が剣を取り切っ先を向ける。その刺すような視線を受けながら、男は、アーチャーは、笑みを返す。
「では行くぞ、フン族の王よ。貴様が挑むのは無限の剣。臆せずしてかかってこい!」
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「ふむ。アーチャーは間に合ったようだな」
扉から聞こえる声。ネロが見ると、エルメロイII世を始めとする、彼女の客将たち。誰一人欠けることなく、ここまでやってきている。
「お待たせ。なんとか間に合ったみたいだね」
「残る圧制者は一人のみ。おお、叛逆の最後の幕開けだ。叛逆者たちよ、いざ参らん!」
「外の兵士も、皆キャットがコロッと料理してやったぞ。酒池肉林の大盤振る舞い。満足だったわん!」
「連合の兵隊さんたちも降伏してきました。私たちの勝利も間近です」
「当然ですね。マスター、モタモタしていないで、さっさと終わりにしましょう」
「みな、よくやってくれた」
「はい。あとは、レフ教授を倒すだけです」
サーヴァントの視線を一身に受けながらも、レフは動じない。それどころか考え込むように独り言をつぶやいている。
「霊基が消滅したわけではない、か。別の場所、あるいは別の空間に転移させたか。余計な真似を」
顔を歪め、舌打ちするレフ。
「どうする?頼みの綱もいなくなったぞ」
士郎が剣を向けながら問いかける。
「フハハッ、フッハハハハハ!」
狂ったように笑い出すレフ。
絶望的な状況についに気をやられたかにも見える。
しかしその気はおかしくなってなどいない。
一瞬前と異なる、恐ろしいほどの圧力。
サーヴァントのそれを軽く上回る殺気、存在感。
幾多のサーヴァントと出会った士郎でさえ、その圧力に剣が震える。
武者震い?
違う、これは恐怖だ。
初めてバーサーカーと出会った時にも似ている。
圧倒的な相手に対する、恐怖心。
「仕方がない。下等な人間ごとき、私自ら手を下す必要もないと思っていたが……喜べ人間。私自ら相手をしてやろう」
玉座から立ち上がり、士郎たちのそばまで歩み寄るレフ。狂気的な笑顔は消え、冷静に士郎たちを見つめている。
「なんなんだ……お前は」
「前にも言ったと思うが、私はレフ・ライノール・フラウロス、そして72柱が1柱。貴様ら風に呼ぶなら、魔神柱」
「72の、魔神柱……だと?」
「さぁ。勝負と行こうか、魔術使い。私に相手をしてもらえることを、光栄に思うがいい」
笑い声をあげながら、レフの姿が変化していく。
人の姿から、おぞましい怪物の姿に。
無数の瞳を持ち、体からは莫大な魔力が検知される。
その姿はジルが怪魔を集めて変貌したものより禍々しく、恐ろしい。
「なっ、これは!?」
『士郎くん、何があったんだい!?突然とんでもない、バケモノ級の魔力反応が、って……これは!?』
通信越しにロマニが驚愕する。カルデアの観測でも類を見ない魔力量、それを持った敵が今目の前にいる。
「奴はフラウロスと言ってた。それに、魔神柱だとも」
『なんだって!?そんなまさか、ありえない』
「ドクター、あれは一体なんなのですか?」
『もし奴の言っていることが本当なら……奴は人間じゃない』
「あいつは神と同じく、人間とは根本的に違う」
『神話に語られるような存在、正真正銘、本物の、』
『「悪魔だ」』
完全な変貌を遂げ、レフ、否、フラウロスが雄叫びをあげる。
第二特異点、場所はローマ。
その最後の戦いへの幕が上がる。
ちゅーわけで、先にセイバーに召喚されてもらっちゃいました
次回はレフとの激突ですな、お楽しみに