それはともかく、ついにあの二人が……
というわけで本編どうぞ〜
「ぬぅ……」
士郎からの話を聞き、ネロが唸る。
現在彼らは進軍を停止し、サーヴァントたちを集結させていた。
「なるほどな。おそらくただの戦上手というわけではなさそうだな。敵側には相当な策士、いやこの場合は軍師だな。少なくとも、此度の襲撃は、その両者が力を合わせた結果だろう」
「ふむ。戦力として呂布とスパルタクスを失うのは惜しいな。今からなら回収に間に合うかもしれん」
「私はブーディカさんを助けに行くべきだと思います。仲間を見捨てることなんて、できません」
「どうかしら?敵がわざわざ誘っているということは、罠の可能性が高いわね。そこでやられるくらいなら、先に進むべきかもしれないわよ」
ここまで順調に進んでいたこと、その勢いを思わぬタイミングで止められてしまい、ローマ兵の間に不安が広がっているようだ。サーヴァント組も決して一丸とは言えない状況にある。
「むぅ……シロウ。そなたはどう思う?」
ここでネロが考え込んでいる士郎に意見を求める。他のサーヴァントたちの視線を受けながら、士郎が伏せていた顔を上げる。
「俺は、今はスパルタクスと呂布を探すこと、そしてブーディカさんを助け出すこと。その両方をすべきだと思う。一緒に戦う仲間を、見捨てることなんてできない!」
「うむ。よく言ったな、シロウよ」
「先輩の言う通りですね。私も、賛成です」
「はい、私もです。騎士としても、仲間を見捨てたくはありません」
「はぁ〜。まっ、そう言うとは思ってたわよ。そう言う男ですもの、ね」
「うふふ。それでこそ、勇者様ね。困難な道と知りながら進む。とても見守りがいがあるわ」
「何、かつて私も仲間に裏切られ、それ故に失敗した。私個人としては、それを繰り返さないためにも、呂布たちを助けたいと思っていた」
「なかなかいいこと言うじゃない、子イヌ。今はまだまだだけど、いつかマネージャーにしてあげてもいいわよ」
「キャットはご主人に従うのみだワン」
士郎の言葉に、サーヴァントたちは皆頷いた。
「いいよな、アーチャー」
「ふん。ここまでまとまっている話を拗れさせるつもりなどないさ。それでいいだろう。では、これより三つの班に分けるとしよう。ブーディカを救出する班、呂布とスパルタクスを探す班、そしてこの場にて、今まで取り戻した領土を守る班だ」
アーチャーによってサーヴァントたちが振り分けられていく。こういう時、アーチャーは頼りになる。多くの戦場を経験した故の判断力や、サーヴァント一人一人の力量を正しく把握している観察力。こういう時に、彼ほど頼りになるものもそういない。
で、その結果……
「ではアーチャー、荊軻。任せたぞ」
「ああ。呂布とスパルタクスは私に任せてもらおう。何、呂布とはずっと一緒にいたのだから。心配はいらないさ」
「任されるとしよう。君たちが無事に戻ってくるまでは、私がここを死守しよう」
ブーディカ救出組がネロ、士郎、マシュ。呂布・スパルタクス捜索組が荊軻、リリィ、ジャンヌ。待機組がアーチャー、ステンノ、タマモキャット、そしてエリザベートと分けられた。
「シロウ、ご武運を」
「リリィたちも、気をつけろよ」
「ふん、心配など、必要ありません」
「流石はジャンヌさん。すごい自信です」
こうして、進軍を続けていた正規ローマ軍は、一度その進軍の足を止めることとなり、三方向に分かれて向かうのだった……
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「そろそろくる頃じゃないかなぁ」
「そうだな。向こうの陣営に即断即決のできる者がいたとするなら、距離と時間から考えても、そろそろいい具合だろう。ブーディカは?」
「とりあえず兵たちが余計なことをしないように、僕たちのテントにいるように伝えてあるよ。今回はあくまでネロに用があるだけだからね」
「ふん。まぁ奴も余計な抵抗をしているわけでもない。その判断には従うとしよう。私は、お前の願いを叶えるだけだからな」
森の中、とある砦にて、二人のサーヴァントが話をしている。一人は赤い髪の少年、もう一人は長髪の男。
「じゃあ、そろそろ準備をしないとね」
「配置は既に私から伝えてある。号令をかければ、すぐにでも動ける」
「頼もしいなぁ。でも、なんだか不思議な感じ。君が僕の先生になるだなんて、ね」
「私とて驚いている。何故縁もゆかりもないサーヴァントの依り代に選ばれてしまったのか……が、こうなったからには、私は私のすべきと感じたことをするだけだ」
「でもいいのかい?君は僕と違って、聖杯に呼ばれたんだろう?彼らに協力しないのかい?」
「……私が仕えると決めているのは、一人だけだからな」
「……ふぅん。まぁ、僕としては頼もしいけどね。君も、そして彼も」
この奇妙な聖杯戦争、特異点という異常。それによって巡り会ったこの二人。それは運命的な者なのかもしれない。ただ、この二人が肩を並べることが、どれほど厄介なことなのか、まだ出会っていない士郎たちには想像もつかない。
そして少年が指差す先、彼らの近くに大きな影が立っている。バーサーカーとなり、理性を奪われた彼は、今はただ彼らの指示に従うだけの存在。しかしその男が少年と同じ側として戦うこと、それもまた異常による奇跡と言えるのかもしれない。
「あの砦だな……」
兵が指差した方向、そこにあった森を進んでいた士郎たち。ロマニからの通信を頼りに進んでいた彼らの前に、一つの砦が姿を現した。遠くから見ても、連合側の兵がたくさんいるのが見える。
「さて、ここからどうするか、だな」
「はい。理想は敵に気づかれないように接近することですが、この様子だと難しそうですね」
砦の入り口は見る限り一つ、それもしっかりと護衛が立っている。意表をついた奇襲を仕掛けようにも、結局入れる場所が一つだけなら、ルートも必然、限られてしまう。
「ぬぅ。せめて入口がもっと大きければ良いものを。あれではうまく攻め込めん」
「なら、入り口を大きくすればいいんだな?」
激しい爆発音に、砦の兵たち混乱する。予期せぬ大きな音に、流石のサーヴァント二人も驚きの表情を浮かべる。理性のない彼は相変わらずほぼ無反応だが。
「いやぁ、正面から来るしかないようにしてたけど、これは流石に予想できなかったよ」
「まさか、門そのものを破壊してくるとは。こちらの想定以上の火力を有したサーヴァントがいるようだな」
「今の、遠距離からの攻撃だよね。アーチャーかな?」
「それもただの攻撃ではないな。宝具によるもの、それも、宝具を自壊させることによる、
「随分無茶苦茶なことするなぁ。宝具をこんな簡単に一つ犠牲にしちゃうなんて。まさか、彼がいるのかな?」
「仮にいたとしても、奴はこんな使い方はしない。自分の至高の財を無駄にする男な訳がないからな」
「そうだね。なら、一体どんなサーヴァントの仕業なんだろうね」
「さて、どんな相手が来るのだろうな……」
兵たちがどんどん蹴散らされていく。いよいよ相手の顔を拝む時が来たようだ。目の前の兵を斬りはらいながら、一人の男が三人の前に立つ。
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『士郎くん、そのすぐ先に、サーヴァントが三人いる』
「ブーディカさんか?」
『いや、霊基パターンが違う。恐らく敵将だろう』
干将・莫耶を握る士郎の手に力が入る。目の前に立っている兵を斬り払い、士郎が一歩踏み出す。敵将三人の前に立った士郎は、強い視線で敵を睨みつけた。いや、睨もうとした。
「見つけたぞ!ブーディカさんを返し……えっ?」
「なっ……」
士郎の表情が固まる。そして、長髪の男のもだ。追いついたマシュが首をかしげる。
「な、なんっ!?あんたはっ!?」
「これは……どういうことだ?」
「時計塔の先生!?」
「遠坂の弟子!」
というわけで……
ついに士郎と孔明、もといエルメロイ二世、もといウェイバー君が出会いましたね〜
次回はいよいよ激突ですね
しかし今回、士郎たちかなり状況的には不利な気が……