正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

63 / 92

福袋回したら式さん被っちゃった笑
個人的にはライダーの誰か欲しかったのに……

そしてエミヤ欲しくて特異点Fピックアップ回したのに、ピックアップ関係ないサーヴァントしかでなかった、ドユコト!?

まぁ、愚痴はともかく、本編へレッツゴー


進軍が止まる

 

朝。早い時間に目が覚めた士郎は、ランニングをしに外へ出た。暫く走り、いざ休憩を取ろうと思ったところで、一つの人影が宮殿の隅に咲いている花を眺めているのを見かけた。

 

近寄り声をかける士郎。

 

「花、好きなのか?」

 

声をかけられた相手は士郎の方を向く。あらゆる男を魅了できるのではないかとまで思える微笑みを浮かべながら、ステンノは立ち上がる。

 

「そうね。散ることが定められているというのに、今日を美しく咲き続けようとするその姿は、見ていて飽きないわね。無駄だというのに、運命に抗おうとしてもがく人間に似てるわ」

「……確かに花はいずれ散る。けど、散るまでの間に、きっと色々なことを残せる。誰かに想いを伝えることだったり、誰かへの祝福だったり。誰かの心を癒したり。それに、散ったとしても、それは次の花を咲かすことに繋がる。無駄なことはないさ」

「……それは人間もかしら?」

「ああ」

 

正真正銘の女神を相手にしているというのに、士郎は動じることなく、いつも通りだ。皇帝のように尊大な態度でもなく、マシュたちのように敬っているわけでもない。まるで自分がどこにでもいる少女であるかのように接してくる士郎に対し、ステンノはますます興味をそそられる。

 

「そういえば貴方、前に駄妹(メドゥーサ)に会ったことがあると言ってたわね」

「ああ。今のとは違う、正式な聖杯戦争でな」

 

以前ステンノから、三姉妹で過ごしていた頃の話を聞いた士郎。正直な感想、若干、いやかなりライダーに同情してしまった。聖杯戦争の時のイメージとかなり異なることから、あの戦いでは、彼女は無理をしていたのではないかとまで思う。

 

完全に化け物となる前のあの姿は、成長してしまうという彼女の個性の現れ。姉二人と違う、大人のような姿。しかし、そのことをコンプレックスに感じていると言われても、目元こそ隠していたが、間近で見たライダーの姿は、素直に美しいと感じるものだった。

 

「貴方があの子のマスターだったの?」

「いや、その時は敵同士だったよ」

「あら、そうなの?残念」

 

何が残念なのかよくわからない士郎。疑問符を浮かべているその様子に、クスリと笑いながら、ステンノは士郎の手を取る。

 

「だって、貴方があの子のマスターなら、私の所有物も同然だもの」

「いや、それはどうなんだ?」

「だってそうでしょ?妹のものは姉のものでもあるのよ。逆はないのだけど、ね」

 

さらりとひどいことを言っている気がする。姉妹というのはこういうものなのだろうか。いや、そういえば自分の姉貴分も似たようなことを言っておやつを強奪してきたことがあったような……

 

「姉って怖いな」

 

思考の行き着いた先に、思わずポツリと呟いたその言葉に、今度は声を出して笑うステンノ。初めてみるその様子に、士郎は驚き、戸惑う。

 

「ごめんなさい。貴方が私が思っていたよりもずっと面白い子だったから、つい」

「なんだそれ、褒めてるのか?」

「ええ。褒めてるわ」

 

士郎の手を引きながら、庭を歩くステンノ。どこへ行くでもなく、ただ散歩をしているだけなのだろうか。いや、しかしそれだと、この状況……まるで散歩に連れていかれたペットのように見えてるのではないだろうか……

 

「それで、貴方はメドゥーサと殺し合った、ということなのね」

「えっ、ああ。まぁ」

 

正確には一度だけ、ライダーの彼女と戦ったことがある程度ではあるが。あの時、迫力不足だと自分は言ったが、優しく殺すと言っていた通り、かなり手加減してくれていたのだろう。彼女があの眼を使っていれば、自分は動くことすらままならないのだから。

 

まぁ、その後目を取られそうになったわけなのだが……

 

「貴方が殺したの?」

「いや……俺たちとは違うマスターが」

「そう。そのマスターは?」

「……そいつも脱落した」

 

アーチャーによって、と心で付け加えておく。しかし、あの戦争でのライダーは、かなり運が悪かったとしか言いようがない。マスターの立ち回り方や、マスターたちが学校にやたらと集結していたこと。他にも最初に彼女の元に向かったのが、葛木だったこともそうだ。

 

ただ、彼女の雰囲気からは冷たさが感じられていたが、彼女自身は冷たいというわけではなさそうだ。少なくとも、ステンノの話を聞く限りでは……

 

「でも、あの子もダメね。戦うことしかできないのに、負けてしまうなんて。何の為に呼ばれたのかしらね」

「そう悪く言うなよ。あんたの妹なんだろ?それに、話を聞いてる限りだと、根は悪い奴じゃないみたいだしな」

「やけに庇うのね。あの子を好きにでもなったのかしら?メドゥーサの癖に男を籠絡するなんて、生意気ね」

「え?」

 

イタズラを思いついたような笑みを浮かべるステンノ。好きになるも何も、そんな余裕自体がなかったのだが、彼女は面白がっているようだ。

 

「でも、覚悟しておくことね。あの子を貰うなら、もれなく私たちも付いてくるもの」

 

それは色々と大変そうだ。やや引きつった表情の士郎の腕を引いたまま、ステンノは宮殿の中まで戻っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから私たち正規ローマ軍は、皇帝ネロの元、連合ローマ軍首都への攻撃を開始しました。ステンノさんの示した場所へ荊軻さんが偵察に行くと、確かにそこに、ローマと似たような都市があったのです。

 

最後の戦いになるかもしれないので、ネロさんに協力している全てのサーヴァントが集められました。私を含め、11人のサーヴァントを加えた戦力。敵もまともな戦闘をしていては勝てるはずもありません。だと言うのに、連合側は、全くサーヴァントを戦闘に出してはきませんでした。

 

戦いは順調に進み、私たちは次から次へと土地を奪還してきています。順調すぎて、逆に怖くなってきます。それに、カエサルさんが彼の方と呼ぶ存在のこと、敵側の宮廷魔術師のこと。わからないことも多いまま、私たちは今日の戦を終えました。

 

 

 

「マシュ、何してるんだ?」

「先輩」

 

カルデアから持ってきていたのか、ノートにペンを走らせていたマシュが、声をかけられ顔を上げる。

 

「実は、この度の記録を伝記風に書いてくれないかとドクターに頼まれまして」

『だって、古代ローマの皇帝の客将として戦うだなんて、滅多にできない経験だよ!それに、後でこちらの報告書とかの役にも経つと思うしね。マシュがどんなものを書き上げてくれるのか、楽しみだよ』

「こう言うものを書くこと自体初めてなのですが、やれるだけやってみます」

「そっか。でも、日記みたいなのをつける習慣があるのは、悪いことじゃないと思う。読み返した時に、あの時あんなこともあったっけな、なんてことを思い出すかもしれないしな」

 

とはいえ、昔はともかく、高校生頃からは日記なんて書いていなかった士郎。この期にやってみようか、なんて考える。

 

「他の皆さんは、どうしてるのですか?」

「スパルタクスと呂布は待機。ブーディカさんとアーチャーは料理。荊軻はネロと一緒に作戦を立てていて、ジャンヌとリリィは特訓中。ステンノはそれを見に行ったぞ」

「みなさん、自分にできることをしているのですね」

「この戦いを終わらせる、そのためにも協力しなくちゃいけないからなぁ。マシュ?」

 

ノートを閉じ、膝を抱えるように座り直すマシュ。浮かない表情をしていて、どこか調子でも悪いのかと、士郎は心配する。

 

「私は、何ができるのでしょうか」

「えっ?」

「みなさん、自分にできること、自分だからこそできる特技のようなものを、ちゃんと持っています。そしてそれが、誰かのために貢献しています。ですが私は、そう呼べるものも特にありません。今までだって……」

 

士郎はマシュが、自分と出会う前に、どんな暮らしをしていたのかは知らない。そもそも聞いたことがなかったのだ。一度ロマニに聞いて見たら、

 

『それはちょっと僕の口からは言うべきじゃないと思うなぁ。そのうちマシュから話してくれる時が来るよ。だから、待ってあげるといいよ』

 

と言われた。何か複雑な事情があるのかもしれない。カルデアから出たことのないと言うマシュは、どんな風に生きてきたのだろう。

 

「俺は知ってるぞ。マシュの特技みたいなもの」

「えっ?」

「マシュは、俺たちの誰よりも努力家だ」

「努力家、ですか?」

「どんな時でも諦めずに挑む所とか、何をするにもできないから無理と言うんじゃなくて、自分のベストを尽くしてみる所とか。そんなマシュのまっすぐな姿に、俺はいつも励まされているよ」

 

それはかつて、自分が料理を教えていた頃の後輩にも重なる。最終的に、彼女はその分野においては、自分以上の料理の腕を身につけた。その姿勢と似ているものをマシュも持っている。であるならマシュは、もしかしたら大きく成長するのかもしれない。

 

「マシュの強さは、諦めないこと、その心の力だ。きっとそれが、マシュに大きな力をくれるはずだ」

「……はい」

 

しっかりと頷くマシュ。心なしか先ほどよりも表情が明るくなった気がする。

 

「マシュも色々と挑戦してみるといいかもしれないな。ブーディカさんから料理を教わるとか、どうだ?」

「料理ですか……なるほど……」

 

こののち料理にチャレンジし始めることになるマシュ。その成長が少しばかり楽しみになる士郎だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日、どうも何かがおかしい。敵の兵の動きが、何やら不穏というか、そう、

 

「順調すぎるな」

『ええ。明らかに敵に誘い込まれている気がします』

 

士郎の呟きに、前衛にいるジャンヌが念話で返す。与えられたものだったとはいえ、彼女の中には生前の戦いの記憶もある。兵法にも通じている彼女は、この事態に違和感を感じていた。

 

「報告します!我が軍の後方から敵兵が!」

「戦力は?」

「数自体は大したことはありません。敵は既に撤退を始めている模様」

 

やられた!

 

報告を聞いて、そう真っ先に思ったのは士郎とアーチャーだった。正規ローマ軍の陣形として、前衛にリリィ、ジャンヌ、荊軻が配置されている。右翼側はキャット、左翼側はエリザベートが守りについている。皇帝ネロとステンノの守護は士郎、アーチャーとマシュに任せられ、後衛としてスパルタクスと呂布、そしてブーディカが配置されていたのだ。

 

バーサーカー組を後衛に配置したのは、彼らが敵を見つけると、作戦や陣形を忘れ、ひたすら追いかけてしまうことを考慮していたのだ。一応ブーディカが二人のストッパー役として置かれているものの、バーサーカー組を完全に制御するのは難しい。

 

そのため、戦闘以外では後方に立たせることで、二人の先行を抑え、分断されることを避けようと考えていたのだが……

 

「報告します!呂布将軍、スパルタクス将軍、共に隊列を離れ、敵を追跡し始めました!」

「やはりな……」

「ぬ?どうした、アーチャー?」

「どうやら我々は、敵の策にはまってしまったようだ。どうやら敵側には、相当戦上手な者がいるようだな」

「先輩、一体何が?」

「敵はわざと俺たちに進軍させてたってことだな。陣形や戦力、それぞれの特徴。サーヴァントと人間の違いまでもをしっかりと理解した上で、作戦を立ててたみたいだな」

 

順調すぎる進軍に、自分たちも警戒していたつもりだった。しかし、敵の方が作戦をしっかりと立てていたのだろう。まんまと術中にはまってしまい、バーサーカー組と分断させられてしまった。ということは、大きな懸念が一つ。

 

「ブーディカさんが危ない!」

 

言うが早いか、士郎は既に駆け出していた。後ろからマシュが追ってきている。焦りの表情を見せながら走る士郎の姿に、戸惑いながらも兵たちは道を開ける。息を切らし、士郎がブーディカ達の居たであろう場所に辿り着く。

 

「……くそっ!」

 

そこに残されているのは、倒れ伏しているローマの兵たち。分断されたらしい呂布とスパルタクスの姿は見当たらない。そして、ブーディカも。辺りを見渡すと、一本の細い木の下に、一人の兵士が座り込んでいる。肩が上下していることから、まだ生きているようだ。急いで士郎が駆け寄り治療する。

 

「大丈夫か?」

「はっ。っ、報告、申し上げます。突然現れた伏兵によって、襲撃を……敵側の将は二人、うち一人は少年です。我が軍の大半と、ブーディカ殿は、捕らわれました」

「なっ、捕らわれた!?」

「士郎殿と皇帝陛下に伝えよとのこと、っ。彼女を救いたくば、自分たちのいる場所に来い、と。敵は、あちらの方向へ」

 

兵士が指差したのは今までの進路から外れた方向。向こうにも砦があるらしく、敵はそこに向かったと考えられるとのこと。兵士に肩を貸し、立ち上がる士郎。

 

「先輩!これは……」

「ああ。ネロに報告しないといけないことがある。マシュ、衛生兵を探してくれ。彼を預けないと」

「わかりました」




次回はあの凸凹逆転コンビの登場ですな

しかし、マジでローマ陣営が大きくなり過ぎた笑
本来のやつの倍以上だわ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。