正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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夏イベント、なかなか楽しいですなぁ〜

エミヤが同行していなかったのが残念笑




決戦前

「……………」

「……………」

 

「あ、あの、アーチャーさん?」

「何かね、マシュ?」

「その、先輩は、ピンチの私たちを助けようとしてくれたわけで、」

「そんなことはわかっている。だが、これはそういう問題ではないのだよ」

 

ステンノとネロが連合の拠点などの確認を行う間、士郎はアーチャーに怪我を見てもらうようにと言い渡された。案の定、腕の不調のことをアーチャーが知った途端、眉間に深いしわを寄せ、無言で士郎を睨みつける。士郎の方も、動じることなく睨み返している。

 

その様子を眺めるマシュとリリィはオロオロとし、ジャンヌは無関心そうに見えるが、チラチラとこちらを見ている。

 

しかしこの二人、お互いに敵意は無くなったものの、やはりどうにも争わずにはいられないのだろうか。

 

「で、何を投影した?その負荷の様子からして、神造兵器ではないのだろう?かといって普通の宝具程度なら、魔力供給がしっかりとしている今の貴様にそこまでの負荷はかかるまい」

「流石にそういうところはお前に隠し事はできないな……バーサーカー、ヘラクレスの宝具、というか剣技だ」

「なるほどな。その重すぎる武器を使えるようにするために、ヘラクレスの筋力まで再現しようとしたらそのザマ、と」

 

しばらく黙り込む両者。と、大きなため息をつき、片手で顔を覆うアーチャー。息を吸い込むと、

 

「たわけ!何を考えているのだ貴様は!?人間の身でサーヴァントの技量はまだしも、筋力を再現するだと?死に急いでるつもりなのか!?」

 

マジモンの説教みたいなのが始まってしまった。当然、他のやつならともかく、アーチャーにだけは説教されたくない士郎も、ムッとした表情で声を荒げる。

 

「あいつの高速の剣はただ防げばいいってもんじゃないんだぞ!お前と俺が同じ幸運ランクだと仮定したら、どう考えてもこのやり方がベストだろ!」

「ふざけているのか貴様は?一人で無理だとわかっているならば、もっとマシュとの連携を取れば良かったではないか。なんのためのサーヴァントだ!」

「お前、それはあいつと戦ってないから言えることだぞ。太ってる癖にめちゃくちゃ速いとか反則だろ。それに、生半可な攻撃じゃ、あのゴーレムの体は突破できない!」

「ならばそれこそ距離をとって戦うべきではないか!弓を使ってもいいと言われたのならば、無尽蔵の魔力を活かし、連続で壊れた幻想を叩き込めばいいだろうが、この愚か者が!」

「はぁ!?それじゃあフェアな勝負とは言えないだろ!それに、マシュやネロが側にいるのにそんなバカスカ爆発を起こしてられるか、このバカ!」

 

 

 

ますますヒートアップして行く両者。剣を取り出して斬り合わないだけ平和に見えてしまうのは何故だろう。しかし、なんというか、反抗期の息子と怒ると怖い母親の喧嘩みたいになっている……まぁ、アーチャーは男なのだが。

 

「ど、どうしましょう。リリィさん、ジャンヌさん止めた方がいいでしょうか?」

「と、止めると言っても、どうすればいいのでしょうか」

「知らないわよ。ほっておきなさい。どうせすぐに解決するわよ」

 

「ならば令呪でも使え!以前も言ったと思うが、貴様の本分はマスターだ!死にに行くような行動は控えろとあれほど言ったではないか!貴様は自分の命の重さを、此の期に及んでまだ理解していないのか!」

「っ!」

 

命の重さ。その言葉をぶつけられ、士郎の脳裏にあの寂しげな笑顔が浮かぶ。わかっている。いや、わかっているつもりなのかもしれない。それでも、自分のせいで、あんな顔を誰かにして欲しくはない。

 

人類の命運が、この命に託されているのだ。背負っているのは、その他大勢の命だけじゃない。

 

ルヴィア、一成、慎二、美綴。それに、藤ねえに桜、遠坂。必ず取り戻さなければならない。そのためにも、自分は、

 

「……わかってるさ。俺の命は、俺だけのものじゃない。人理の修復ができるのは、俺と、俺のサーヴァント達だけだ。それに……」

「それに、何だ?」

「それに、俺が死んだら、泣かせてしまう人もいる。それはダメだ。俺も、みんなも、一緒に笑い合えるように……だから、俺は死んじゃいけない。死ぬわけには、いかない。そして、誰も死なせるわけにはいかない」

 

士郎のその言葉を聞いていたアーチャー。ふっ、と短く息を吐き、眉間に寄せていたシワを解く。

 

「どうやら、少しはマシな人間になっているようだな。誰かに諭されたのか?」

「まぁ、あえていうなら、母親に叱られた、って感じだな」

「なるほど、母親(ブーディカ)か」

 

何やら納得したように頷くアーチャー。とりあえずは二人の言い争いもおさまったようだ。安心したようにマシュとリリィが息を吐く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、本来の話題であるべき、衛宮士郎の治療の話をするわけだが……それに関しては、手っ取り早くて、安心安全な方法があるぞ」

「それってまさか、人間の自然治癒力に任せる、とかそんなことじゃないよな」

「まさか。それは確かに安心安全だが、手っ取り早いとは言えないだろう。時間がかかりすぎる。いやなに、少しリリィの力を借りるだけだ」

 

「私の、ですか?」

 

突然自分の名前が出たことに、キョトンとした顔で目をパチクリさせるリリィ。

 

可愛い……ではなくて!

 

「そうだ。リリィ、まずは衛宮士郎の体に触れてくれ。場所は特に関係ないから、好きにしたまえ」

「は、はい。では、失礼しますねシロウ」

「あ、ああ」

 

そっと労わるように、リリィが士郎の右手を取り、両手で包み込む。しかし何も変化がない。

 

「やはり、まだリリィでは完全にはいかないか。だが、全く使えないというわけでもないようだな。リリィ、君の魔力を少しずつ衛宮士郎に流してくれるか」

「はい。いきますね」

 

握られた手から、温かいものが体の中に流れ込んでくるのを、士郎は感じた。これはあの時、特異点の冬木で戦った後に、セイバーから感じたものに、すごく似ている。心臓付近までリリィの魔力が届く。と、急に体の奥が熱くなるのを感じる。

 

「っ!?」

「シロウ?大丈夫ですか?」

「あ、ああ」

「もう少しだ、我慢しろ……よし、もういいだろう」

 

アーチャーの合図で、リリィから流れる魔力が止まる。体に特に異常はなさそうだ。どころか、体の調子が良くなったようにも思える。右手で軽くリリィの手を握り返してみる。痛みはない。次に手を離し、両手に干将・莫耶を構える。馴染み深いこの感触に、握った時の感覚。どうやら本当に治っているみたいだ。

 

「これでいいだろう。今後衛宮士郎が何か怪我をした時には、同じようにしてあげるといい」

「あ、はい」

「ありがとう、リリィ。それから、一応アーチャーもな」

「ふん。礼には及ばん。私はこの事態の収束のために、最善を尽くしたまでのことだ」

 

治療が終わったのを見届けると、アーチャーはさっさと退散してしまう。行き先からして、おそらく食事の準備をしに行くのだろう。相変わらず根は変わらずお人好しなその姿に、安心とともになんだか複雑な心境になる士郎だった。

 

「でも、これで俺もちゃんと戦える」

「そうですね。すぐに治って良かったです」

「でも、どうしてリリィさんの魔力を流したら治ったのでしょう?」

 

首を傾げ疑問符を浮かべるマシュ。とはいえ、士郎にも、リリィ本人にも理屈はわかっていないため、答えることはできなかった。

 

 

「それにしてもあのアーチャー、何故その治療方法のことを知っていたのかしらね……リリィも、この男(マスター)も知らなかったというのに」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

休憩を言い渡されていた士郎たち。しかし、右腕をしっかりと試しておきたいと言う士郎に連れられ、広場で士郎とリリィの稽古を見ることになった。

 

「ジャンヌさんは参加しないのですか?」

「私はいいです。サーヴァントとしては十分に得物を使いこなせているので」

 

と、士郎とリリィの方も決着がついたようだ。リリィの首元に干将が向けられている。今回も士郎の勝ちだ。

 

「ありがとな、リリィ。付き合ってもらって」

「いえ。シロウとの稽古は、私にとっても勉強になりますから」

 

どうやら、右腕もしっかりと元どおりになっているみたいで、マシュも、内心ジャンヌも、安心した。

 

「これで、準備が出来次第、いつでも皇帝連合の本部を攻撃することができるな」

「はい。おそらく、聖杯と魔術師もそこに」

「それに、カエサルさんが言っていた彼の方についても気になります」

「考えていても仕方がないでしょう。とにかく、戦う時のために士気を高めておくことです。士気の無い者など、足手まといになるだけなので」

 

ジャンヌの皮肉っぽいアドバイスもしっかりと受け止めながら、士郎たち4人は今後についての話を、呼び戻されるまで続けていた。

 

 

食事のために集まると、いつの間にか仲間が増えていた。服装からしておそらく中国出身なのではないかと予想される2人のサーヴァント。彼らもまた、士郎たちが到着する以前にローマが迎え入れた客将で、今まで別の場所で連合と戦っていたとのことだ。

 

「サーヴァント、アサシン。荊軻という。よろしく頼むぞ」

「よろしく。しかし、皇帝の暗殺といえば、と言う人が出てくるなんて、驚きだな」

「何、あの時は失敗してしまったからな。その腹いせというわけではないが、皇帝どもと戦いたいと考えたのでな。こちらに協力することにしている」

 

聞くと士郎たちが到着した時点では、既に敵方のサーヴァントを3人も倒していたらしく、士郎たちは驚かされる。

 

そしてもう1人、中華風の鎧に身を包んだ大男。会話ができないことから、バーサーカーらしいことはわかったが、驚いたのはその真名だ。

 

三国志において最強の一角、武芸百般を極めた武人、呂布奉先。ただでさえ強い彼の力が、バーサーカーとなることでさらに引き上げられており、間違いなくローマ側最強戦力の1人だ。

 

「あれ、でも呂布って裏切ることで有名だったような……大丈夫なのか?」

「その心配は杞憂というものだ。バーサーカーとなり、理性を失っている彼には、殆ど自意識と呼べるものはない。そのため、単純すぎる行動パターンしか持たないが、少なくとも、我々の指示には従ってくれている」

「なるほど……むしろバーサーカーで理性を失っているのが、こちらにとってプラスに働いた、ということですね」

 

着々と戦力が整えられている。今までは敵の居場所がわからなかったから、守りに徹するしかなかったが、これからは反撃ができる。兵たちの士気も、だいぶ高まってきているようだ。

 

「いよいよだな」

 

この戦いを終わらせること、そして敵側の魔術師を見つけること。それが自分たちのすべきこと。違ったらそれでいい。だが、もしいるのがレフ・ライノールだとした時は、

 

 

「所長……」

 

あの時、目の前にいたのに、助けられなかった彼女のことを思い出し、士郎は拳を強く握った。




今年の夏イベはどんな内容なのかな?にしても、イベントが増えるとこの物語でどこまでやれるかがわからなくなりますなぁ

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