あ、そういえば、不夜城のアサシンとエルドラドのバーサーカー(2人)来ました
いや、だったらキャスターカモン!ってなりました〜
「ゴルゴン三姉妹……ってことはライダーの?」
「ライダー?そう、あなた、
わずかに士郎を見る目が細まる。値踏みしているような、獲物を狙う鷹のような、そんな目だ。思わずマシュが士郎とステンノの間に入る。
「あら?可愛いことするのね、その子。でも心配しないで。私には戦う力はないもの。どうやらその勇者様には、どういう訳か効いてないみたいだし」
空気が若干和らいだ……気がした。少なくとも、士郎の中で、この女神に対する警戒度は少し下がっていた。戦う力はない。そう本人が言うように、ゴルゴン三姉妹とはいえ、彼女は
「それにしても、ステンノか……こんなところにギリシャ神話の女神様が現れるなんて。特異点の異常は想像以上なのかもしれないな」
「あら、遠い未来に生きる人間にしてはよく知ってるのね?別にあなたの生まれ故郷で有名というわけでも無いでしょ?」
「まぁ、ライダー……メドゥーサの真名を知ってから、その辺りについてもそれなりに調べていたからな」
「そう。感心ね、壊れた英雄さん。……いいえ、もう大分修復はされてきているのかしらね」
「?それは、どういう……」
「さぁ?何かしらね」
「あれが女神……ね。でも、どう見てもただの純白系ゴスロリ美少女にしか見えないんだけど」
「あの、ジャンヌさん……それは既に『ただの』は付かないような気が……」
他者からの評価はともかく、目の前の彼女が古き神、正真正銘の女神であることは確定した。ただ、敵とも味方ともいえない、中立的な立場にあるようだ。ネロからローマに来ないかという誘いも断っている。
「でもそうね、折角ここまで来てくれた勇者様に、何か褒美をあげましょう。この海岸線を進んだ先に、洞窟があるわ。その中に宝物を用意しておいたの。女神の祝福というやつね」
「おおっ、それはありがたい。では余が、」
「待ちなさい。取りに行くのはその勇者様よ」
ステンノが指名したのは士郎だった。ステンノ曰く、
『女神の祝福や、その困難に立ち向かうのは決まって人間の勇者ですもの』
とのことらしい。しかし、右腕が未だに戦闘では使えない士郎、そのことを告げると、特別に一人だけ、同行者を連れて行ってもいいとのことだった。
で、結果……
「はぁ〜。全く、何故私が護衛をしなければならないのかしら?めんど臭いわね」
「なら、じゃんけんに参加しなきゃ良かっただろ?」
「う、うるさいわね!その辺りの事情くらい、察して見せたらどうなのです?」
「いや、察せって……何のことだ?」
「はぁ〜」
「?」
出発した直後から言い合いというか、一方的に突っかかるジャンヌを連れて、士郎はステンノの言っていた洞窟を目指した。
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洞窟内は暗く、明かりらしきものはほとんどなかった。カルデアの支給品にあった懐中電灯が役に立っている。
「それにしても、結構大きな洞窟だな。なんだか大聖杯のあった大空洞への道を思い出すな」
「何よそれ?」
「あ、そうか。ジャンヌはその時はまだ会ってなかったんだよな」
洞窟を奥へと進みながら、士郎はジャンヌに一番最初のレイシフト、特異点となった冬木での戦いについて話し始めた。
マスター候補者の中で、自分だけが無事に残ったこと。燃え盛る街の中で戦ったサーヴァントたちのこと。今は味方のアーチャーのこと。黒い聖剣を振るったセイバーのこと(何故かこの話の時、ジャンヌは不機嫌そうだったが)。黒幕との出会いと、所長から託された願いのこと。サーヴァント召喚で現れたリリィのこと。
「その後、グランドオーダー最初の特異点として、俺たちはフランスに向かった。後はまぁ、何となく知ってるだろ?」
「ええ。あなたによって私の使命が打ち砕かれ、今こうしてその憎むべき相手に仕えている」
「憎むべき……か。無理はしなくてもいいんだぞ?前にも言ったけど、俺はジャンヌが自分自身の答えを見つけられるようにしたい。だから、「わかっています」……ならいいけど」
顔を背けているジャンヌの感情が読めない。怒っているのだろうか?なんて心配する士郎だったが、むしろ逆である。
久し振りに二人だけでじっくりと話ができ、あの時のことを忘れているわけではないのが分かった。それだけで何故かにやけてしまいそうになる。そんな顔を晒すわけにはいかない。そう思って、ジャンヌは必死に表情を引き締めようとしていた。
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やがて、洞窟は少し広めの空間に辿り着いた。ここがおそらく、ステンノの言っていた場所なのだろう。ただ、そこにいたのは、宝物ではなく、
「ガルルル!」
「これって、キメラか!?」
「ちょっと、お宝どころか、化け物じゃない!まさかあの女神、騙したのかしら!?」
目の前にいるのは、キメラだった。いや、正しくはそうではない。これは魔術で様々な生き物を融合させたような、
そのルーツにして、語源。正真正銘、ギリシャの神話に語り継がれる
「とにかく、倒さないと!
右腕に感じる痛みに顔をしかめる士郎。やはり完全に回復していない状態では、魔術の行使も難しそうだ。少なくとも、右腕に魔力を流すこと、それさえも今は出来そうにない。
痛みに士郎が一瞬ひるんだ隙を、キメラは見逃さなかった。巨体に似合わぬスピードで、キメラは士郎めがけて飛びかかった。その鋭い爪が、士郎を狙う。
と、両者の間に、炎が走る。動物的な本能か、キメラは士郎と炎から距離をとった。片腕を押さえたままの士郎をかばうように、ジャンヌが前に立った。
「全く、あなたはバカなのですか?万全の状態じゃないのは知ってたでしょう?ブーディカとの約束、忘れたわけではないでしょうね?」
「いや、悪い。もう癖みたいなもんだ。けど、そうだな。今の俺は、まともには戦えないんだったな。悪いけど、ジャンヌ」
「ええ。任されました。我が憎悪の炎を、その場で見物してなさい」
標的をジャンヌに変え、睨みつけるキメラ。しかし、ジャンヌの笑みを浮かべた表情を見ると、途端に表情が変わった。それはまるで、何かに怯えているかのようだ。圧倒的強者を前にした時の、野生の本能にも近いかもしれない。
「ふふっ、あははは!この程度で怯えるだなんて、神話の怪物が呆れるわ」
そう彼女はわらう。
竜の魔女。あらゆる獣の中でも最高にして最強の種族。それを支配する存在として、フランスを恐怖で覆った存在。それを前にして、あのキマイラさえもが、恐れた。
「憐れな獣ね……その道は、既に途絶えました。私の前に現れた時点で、ね」
動かない獲物を見据え、つまらなさそうに吐き捨てる。それと同時に、複数の槍が降り注ぎ、キマイラの脚や胴体、尾などを貫き拘束する。そして、その足元から炎が溢れ、あっという間にキマイラを包み込んだ。炎が消えると、そこには何も残っていない。ただ、焦げたような匂いだけが、残った。
「ま、当然ですね」
なんでもないように、手に持っていた剣をしまうジャンヌ。そのまま士郎と向き合うと、相手が何やら驚いた表情をしていたため、顔をしかめて問いかける。
「何ですか、その間抜け面は?私の力を疑っていたのですか?」
「あ、いや。そういうわけじゃないんだけど……何というか、やっぱり凄いなって」
「……はい?」
「敵として戦った時も思ってたけど、迫力というかオーラというか……呑まれそうになる」
「下手なお世辞は結構です。あなた、かなりピンピンしてたじゃない」
「あれは使命感とか色々と上回ってたからだ。今改めて見ると、やっぱり凄いって思う」
「……ふんっ」
そっぽを向くジャンヌの耳は赤かった。と、彼女の視線の先に、宝箱らしきものがあった。士郎とともに近づくジャンヌ。辺りを警戒し、深呼吸してから、彼女はその宝箱を開けた。
「待ちくたびれたわよ、仔犬!」
「ニャハハハ。あたし、参上なのだワン!」
無言で宝箱を勢いよく閉めるジャンヌ。苦笑する士郎の前で、ギャンギャン騒ぐ箱(の中にいる人)と、それを閉めたままにしようとするジャンヌが、激しい取っ組み合いを始めてしまった。
今回活躍したジャンヌ、クエストでもかなり活躍してくれましたね〜
あの火力はやっぱり半端じゃない