ちゅーわけで、やっとガリアから出たよ〜
ブーディカさんとはしばしのお別れです。そして……
「では、余らはローマに戻る。ブーディカ、すまぬが、またここを頼む」
「わかってるよ。ちゃんと、守っているから」
出発の前にネロは兵たちを集め、ブーディカにガリアの守りを委ねることを伝えていた。兵を外で待機させ、改めて言葉を交わすネロとブーティカ、その近くに士郎たちは立っている。
「じゃあね、マシュ、リリィ、それにジャンヌも。ネロ公のこと、頼んだよ」
「はい」
「任せてください」
「……ふんっ」
「でも、三人とも無茶だけはしないように。可愛い女の子なんだからさ。だから、気をつけてね」
「あ、ありがとうございます」
「ええ。気をつけます」
「ご忠告どうもありがとう。でも、私は平気なので」
一人一人順番に握手をし、抱きしめるブーディカ。流石にジャンヌは逃れたが、一応握手をしたところからして、嫌っているというわけではなさそうだ。少しほっとする士郎。何故かブーディカがいると、ジャンヌの機嫌が悪くなるから、もしかして嫌っているのかとも思ったが、違うみたいだ。
最後に士郎の前に立つブーディカ。手を差し出して、優しげに微笑む。士郎もその握手をしっかりと受け、笑顔を返す。
「シロウ……気をつけてね」
「ああ」
「無茶はしないように」
「ああ」
「ちゃんとマシュたちを頼るように」
「……ああ」
「それから……」
ぐいっと腕を引っ張られ、前のめりになったところを、ブーディカに抱きとめられる士郎。その前髪を少しかき上げ、ブーディカは士郎の額にそっとキスをした。
「これはお守り……というよりも願掛けかな。シロウが、無事で入られますようにって、あたしの願いを込めた。だから、きっと神々が、君を守ってくれるよ」
「ブーディカ……さん」
「忘れないでね。あたしがいつでもシロウのことを心配しているって」
「……わかってる。ブーディカさんたちを悲しませることがないように、気をつけるよ……多分」
「多分……ね。うん、正直でよろしい」
士郎を放すブーディカ。今度は下から見上げながら、可愛らしく微笑んだ。
「あたしの教えたブリタニア料理、得意料理にしてね」
「ああ」
「マシュたちにも教えてあげてね」
「うん」
「じゃあ……いってらっしゃい」
ブーディカに見送られながら、ネロたちはローマに向かって出発したのだった。
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ローマへの帰宅ルートの途中、士郎たちは奇妙な噂を聞くようになった。なんでも古代の神が現れたというのだ。サーヴァントという形で過去の英雄が現れるのは何度も経験していたものの、神という単語に引っかかりを覚える。
「シロウよ、果たして神もその、サーヴァントとやらとして現れることはあるのか?」
「無いとは言い切れないんだけど、正直普通に考えたらその可能性は低いと思う」
「先輩の言う通りです。そもそも、サーヴァントとはあくまで霊長の最高峰の存在。半神のように人でも神でもある存在は確かにサーヴァントとして呼ぶことは可能です。ですが、神はそもそも存在からして別格です。本来サーヴァントの枠に収まることはありません。仮にサーヴァントとして現界するには、大幅な制約がかけられることになります」
「だが、不可能ではないということだな」
「……そうなります」
そう、不可能ではないのだ。しかし自身の持つ多大なる権能に制約をかけてまで、サーヴァントとして現界したがる神が果たしているのだろうか。
(そういえばライダー、メドゥーサも元々は女神だったな……ってことはあいつも制約をかけられていたんだろうか……)
何はともあれ、可能性があるならば調べてみるべき、そう言い切ったネロの一存で、一行は船に乗り、噂の場所、地中海にある一つの島へと向かうのだった……船で。
「さぁ、着いたぞ。む、どうかしたのか?」
操舵輪から手を離しながらネロが笑顔で振り向くと、同行者は皆倒れ伏していた。サーヴァント組や、士郎以外の兵たちに至っては、息をしているかどうかと思ってしまうほど、青白い顔をしている。
「つ、着きましたか……ようやく、陸に上がれますよ、先輩。立てますか?」
「ああ……な、なんとか」
「船とは、こんなにも恐ろしいものなのですね」
「もう嫌、無理。こんなの耐えられない。帰りは絶対別の人に操縦してもらいましょう、ええ、そうするべきです」
「む?何をしておるのだ?早く上陸するぞ」
無事に目的の島にたどり着けたのはいいが、もうなんというか、すごい旅だった。自信満々に船を出そうとネロが言った時は、酷くてもなんとかなるだろうと思っていた。けど甘かった。ドリフトして、空を飛んで、そこから落ちてと、どんな船旅だよ!?と思わずツッコんでしまいたくなるようなものだった。
結局、兵たちがみなグロッキー状態で動けないので、ネロと士郎、サーヴァントたちのみで島を探索することにしたのだった。
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「ドクター、何かこの島にいるか?」
『確かに反応があるよ。ただ、妙なんだ』
「妙……と言いますと?」
『間違いなくサーヴァントの反応なんだけど、何か違う。マシュのようなデミ・サーヴァントでもないし……』
「そいつが古き神ってことか」
反応に向かい、海岸を進む士郎たち。やはり、この島にはサーヴァントがいるようだ。でも、通常のサーヴァントとは異なるもの……気を引き締め、慎重に進んだ。
「ご機嫌よう。ようこそ、形ある島へ」
海岸で士郎たちをで迎えたのは一人の少女。だが一目見た瞬間から、本能的に、士郎は危険を感じ取っていた。この笑みは、かつてあの白い少女が向けていたのと同じだ。純粋無垢で、恐ろしい。
「あんたが……古き神?いや、女神か?」
「ええ、そうね。その呼ばれ方は不本意なのだけれど。私は女神——名はステンノ、ゴルゴンの三姉妹が一柱よ」
そう彼女は艶やかな笑みを浮かべ、士郎を見つめた。誰もを魅了するような笑顔で。
なんだかんだ言って、メドゥーサは三クラスで出てますからねぇ
まぁ、うち一つはメドゥーサというか、その後の姿というか
実際は反英霊として呼ばれてましたけど、あれでも女神ですし
そのメドゥーサを知ってる士郎を見たら、実際のステンノはどうするだろうか、気になる