正義の味方の人理修復   作:トマト嫌い8マン

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今回は士郎とマシュの共闘編です

なんだかこの二人だけで戦うのは久しぶりな気がする


先輩のサーヴァント

「来たか」

 

その男は士郎たちを見るなり、退屈そうに座っていた椅子から立ち上がった。右手に持っているのは金色の剣。その特徴から、近接戦闘においてはかなりの脅威なのがわかる。幸運の判定で成功した分だけさらに連続攻撃を行う。アーチャーの幸運値を考えると、自分にとってかなり面倒な相手かもしれない。

 

男が立ち上がると同時に、その傍に黒い体を持つゴーレムが現れる。先ほどのゴーレムのグレードアップされたもののようで、ひとまわりは大きくなっている。

 

「しかし、退屈しすぎたかとも思ったが、待った甲斐はあったようだ。美しいな。そう、美しい。実に美しい。ローマを統べる者にふさわしき美しさだ。愛しきローマを継ぐものよ、名はなんという?」

 

ネロだけを見つめ、語りかける男。

 

「それとも、名を名乗ることもせずに私を斬るか?ローマの皇帝を名乗り、我らが土地を治める者が?」

「ふむ。貴様の言う通りだな。我が名はネロ。ローマの5代目皇帝、ネロ・クラウディウスである!」

「ネロ。良い名乗りだ。そう、良い。実に良い。そうでなくては面白くない。異国の客将、貴様らも名乗るがいい」

「士郎。衛宮士郎だ」

「マシュ・キリエライト。マスターである士郎先輩のサーヴァントです」

「そうか。それがサーヴァントとマスターというものか……まぁいい。いずれにせよ、私の敵だな。この黄金の剣、黄の死(クロケア・モース)を喰らうがいい」

 

剣を抜き構える男。しかし士郎は構える様子がない。

 

「どうした?今更怖気付いたとでもいうか?」

「……で、あんたは?」

「む?」

「こっちは全員名乗った。なら、あんたも名乗るのが筋だろ?」

「ふむ……確かにそうだな。そうだ。その通りだ。我が名は皇帝の起源、ユリウス・カエサルだ。覚えておくが良い」

 

胸……もとい腹を張って答えるカエサル。その答えを受けて、士郎とマシュの目が点になっている。

 

「?なんだ?どうかしたのか?」

「えっ、あっ、いえ。ただ少し、驚いただけで……」

「いや、まぁ、伝承とかってどう間違ってるかなんて、もう予想もつかないしな……男が女だったとか……な。カエサルが実際は、こう、ふくよかでもおかしくはないか」

「何やら不愉快な納得をしているようにも聞こえたが、まぁいいだろう。来るがいい、既に賽は投げられた。貴様らの探しているもの、求める答え、よく戦えば答えてやらんこともないぞ」

 

カエサルが戦闘態勢に入ると、ゴーレムも動き出し始めた。

 

「シロウ、マシュ。あの岩の怪物は頼むぞ。余は皇帝を名乗るあの男を!」

「気をつけろよ、ネロ」

「戦闘、入ります!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

巨体から繰り出された拳を士郎は双剣で、マシュは盾で受け止める。しかし、やはりグレードアップされているようで、容易く後退させられる。

 

「先輩、気をつけてください。並みのサーヴァント以上の腕力はあるかと」

「あぁ。それに、身体を形成しているのも土じゃなくて、硬化させられている岩だ。多分、防御面でも、かなり強くなっているな。気を抜かずに行こう、マシュ」

「そうですね……あ……ふふっ」

「?マシュ?」

 

突然嬉しそうに笑うマシュに、士郎は疑問符を浮かべる。何か楽しいことでも思い出したのだろうか。

 

「いえ……その、こうして先輩と二人でというのも、なんだかずいぶん久しぶりな気がして」

「そういえば、リリィやジャンヌ、それに特異点で出会ったサーヴァントが基本は一緒だったもんな。冬木での戦い以来か?」

「そうかもしれません。そんなに前ではないはずなのに、もう既に懐かしく感じてしまいます」

「そうだな。じゃあ久しぶりのタッグだ、頼りにしてるぞ、マシュ」

「はい。行きましょう、マスター」

 

 

 

二人並んで強化ゴーレムを相手取る。通常の人間よりも強いとはいえ、サーヴァントほどの戦闘力はまだない。二人の敵ではない。ゴーレムの動きを上回る速度で二人は獲物を振るい、攻撃を叩き込む。しかし、

 

「先輩っ。攻撃を当てることはできますが、防御力がかなり高いです!これでは、決定打を与えられません」

「あぁ。しかも、地面からの砂利や土を使って、削れた部分を再構築してるみたいだな。これは、再生力を上回るダメージを与えないとダメってことか」

 

干将・莫耶やマシュの盾は、確かにダメージを与えることには成功している。だが、その攻撃はせいぜい体表のごく一部分を削り取ることはできても、大きなダメージを与えているようには見えない。

 

次第に防戦に回る二人。いくらダメージを与えても、再生してしまうのでは、こちらの体力を消耗するだけ。策を考える間、二人はゴーレムの攻撃をしのぐことに徹していた。

 

「ゴーレムの再生力を上回るには、強力な一撃を一点に集中させることが有効かと思います。それなら、あの強固な身体を貫くことも可能になるのではないでしょうか」

「一点に……よしっ、マシュ。数秒間、あいつを引きつけてくれ。あいつの防御を切り崩す!」

「!了解です」

 

バックステップし距離を取る士郎と、前に出てゴーレムの攻撃を迎え撃つマシュ。一切の迷いなしに、マシュは士郎の頼みを実行する。それは士郎に対する、絶対ともいえる信頼。そしてその期待に応えるべく、士郎は魔力を集中させる。

 

投影、開始(トレース・オン)

 

「———鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎむけつにしてばんじゃく)

 

両手の干将・莫耶を握り、二刀を投げる士郎。ゴーレムの体表で弾かれるだけのなんの変哲も無い攻撃。攻撃の出どころである士郎へと向かおうとしたゴーレムの前に、マシュが立ち塞がり、再び自分へと意識を向けさせる。

 

「———心技、泰山ニ至リ(ちからやまをぬき)

「———心技、黄河ヲ渡ル(つるぎみずをわかつ)

 

すぐ様同じ剣を投影する士郎。先ほどと同様に、二刀をゴーレムに向けて投げつける。交差するように、先ほどの二刀と合わせた合計四刀がゴーレムに当たり、また弾かれる。

 

もはやその攻撃を気にもかけずにマシュを攻撃するゴーレムに対し、マシュは堅実な守りでダメージを受けずにいる。士郎が策を発動させるまで、自分のすべきことは彼を守ること。必ず成し遂げてみせる。

 

そして士郎の手に握られる三対目の夫婦剣。これは投げずに、士郎は更に魔力を込める。

 

「———投影、重装(トレース・オーバーエッジ)

 

夫婦剣が変化する。より長く、より鋭く。まるで広げられた翼のように、二刀は進化を遂げる。これで、準備は全て整った。

 

「———唯名別天ニ納メ(せいめいりきゅうにとどき)

「———両雄、共ニ命ヲ別ツ(われらともにてんをいだかず)……」

 

 

「マシュ!」

「はい!」

 

名前を呼ばれたマシュは、盾でゴーレムの攻撃を弾く。その反動で後退するゴーレム。止まった場所は、丁度士郎の真正面に当たる。士郎との間には他に何もなく、まさしく絶好のポイント。

 

「うぉぉぉぉおおおっ!」

 

駆け出しながら、士郎が吠える。夫婦剣を握る腕を振りかぶりながら、狙いを定める。士郎をターゲットと認識したゴーレムが近づいてくる。巨体が腕を士郎へと伸ばす。

 

けれども、届きはしない。届くはずもない。その程度の速度では、追いつけやしない。

 

一刀一刀が必中、それが合わせて6つ。

 

近接戦における、彼とあの英雄の絶技。

 

更に、その強化版。

 

故に、その技は、止められはしない。

 

「———鶴翼三連!」

 

全く同時にゴーレムの体を、6つの刃が切り裂いた。1つ1つでは無理だったこと、その強固な鎧のような体を、この技は容易く切り裂いたのだ。

 

しかし、これで終わったわけではなかった。

 

僅かな岩で繋がっている胴体。しかし、それだけでもゴーレムは活動を停止することがなかった。ボロボロになりつつある腕を高く上げ、士郎に振り下ろそうとする。

 

「マシュ!」

「やあぁぁっ!」

 

士郎の呼びかける前に、マシュは既にゴーレムのすぐ後ろに回っていた。横薙ぎに振られる盾は、ゴーレムの体を両断し、完全に砕いた。崩れ落ちる岩は、二人の足元で動かなくなった。

 

「ナイスフォロー、マシュ」

「いえ、先輩こそ、お疲れ様です」

「それにしても、よくあのタイミングでゴーレムの後ろに回ってたな」

「先輩の言っていたことを思い返したら、どうするのかがわかったんです。先輩は防御を切り崩すと言いました。それはつまり完全に倒しきるのではない。だからとどめは私が、という意味だったんですよね?」

「正解。って、今思うと、よくわかったな、マシュ。自分で言うのもなんだが、あれだけじゃ結構わかりにくかっただろ?」

「いえ。私は、先輩のサーヴァントですから。今はまだ無理でも、将来的にはアイコンタクトだけでどんな指示も理解してみせます」

「……そっか。頼もしいな」

「あ、ありがとうございます」

 

お疲れ様の意を込めて、マシュの頭を撫でる士郎。くすぐったそうに、でも嬉しそうに、マシュはその手を受け入れる。呼吸を整えた二人は、直ぐさまネロの戦っている方へと向かった。

 




あれだけ間空けてこの長さかよって、自分でも思いますけど、すみません、忙しくて( ; _ ; )/~~~

次はネロとカエサルかぁ〜
うーん、このネロってまだ人間なんだよなぁ、一応

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