なんとか三月中には終わったぁ
メンテの間の暇つぶしに見てくださいな
しかし、まだまだ物語は続くので、お付き合いくださいませ〜
「ジル・ド・レェの霊基の消滅、及び聖杯の現出を確認。聖杯の回収、無事に完了しました」
「やりましたね、シロウ!この特異点も修復されるはずです」
「あぁ」
マシュとリリィの嬉しそうな声に笑顔で応える士郎。激しい戦いだったが、誰一人欠けることなくやり遂げたのだ。
『もしもし士郎君?そちらに聖杯の反応が現れたから連絡してみたけど、無事に戦いは終わったのかい?』
「ドクター、随分今更な連絡ですが、はい。無事に聖杯を回収しました」
「フォウ、キューフォウ」
「フォウさん、いつの間に。戦いの時はいつもどこかへ消えるのは、どこへ行ってるのでしょうか。ねぇ、シロウ」
「まぁこうしてちゃんと来てくれたんだからいいじゃないか」
戦いを終えて、なんとなく団欒していた彼らのもとへジークフリートたちもやって来た。
「あら、アマデウス!」
「やぁマリア。無事で何よりだよ」
「ええ、貴方もね」
「どうやら戦いは終わったらしいな。すまない、その時共に戦えなくて」
「マリーから聞きました。外にいたフランス軍を守っていてくれたのですよね。ありがとうございます」
「何、礼には及ばないさ。そういえばもう一人いたのだが、こちらの戦闘が終わったらすぐにどこかへ消えてしまった」
「彼がいなければ我々も危なかったでしょうから、御礼をしたかったのですが、こちらにも来ていませんでしたか」
「ところでマスター、一つ聞いてもいいか」
「何だ、ジークフリート?」
「君が背中に背負っているのは」
「色々あってさ。思うところもあるから、なんとかしたいと思った。簡潔に言うと、それだけかな」
「そうか。まぁ戦いも終わったようだし、マスターの決めたことならば口出しはしないさ」
『士郎君、マシュ、リリィ。そろそろこちらへ戻ってくる時間だ。名残惜しいとは思うけどね』
「はい、わかりました」
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士郎たちと、共に戦ったサーヴァントたち。向かい合うように並んだ両者は、別れを実感していた。サーヴァントたちの体も、聖杯を巡る戦いが終わったためか、徐々に粒子状になっていた。
「マスター。君と共に戦えたことを誇りに思う。故に誓おう。また会ったその時も君と共に戦うと。例え君が俺の背に刃を突き立てようとも、俺はそれを許そう」
「ありがとう、ジークフリート。光栄なのは俺の方だ。お前ほどの大英雄にそこまで言ってもらえるなんてな。けど、俺はお前の背中を刺すなんてことはしないさ」
「あぁ、わかっているとも。それでは、また」
「シロウ、正直言うと楽しかったよ。人間は醜い生き物だけど、君たちは、そうだね、綺麗にも思えたかな。それから、マシュに色々と教えてあげたまえ。彼女には君が必要だからね」
「アマデウスさん」
「わかってる。俺はマシュのマスターだからな」
「いや全然わかってないじゃないか。そういう意味だけじゃないんだけどなぁ」
「もう、アマデウス。そういうのを野暮というらしいわ。シェロ君、最後まで一緒にとっても戦えて嬉しかったわ。2度目のお別れになっちゃうけど、またどこかで会いましょう」 チュッ
「先輩?」
「あらあら
「いや待てマシュ、清姫。何でそんな不機嫌なんだ?」
「他の女性にそんなことまでされておいて、知らないとは言わせませんよ」
「先輩、デレデレし過ぎです」
「なんでさ!?」
「これは重症だね、本当に。まぁ頑張ってくれたまえ」
「マリー。あなたはまたそんな軽々しく」
「あら?軽々しくはないわよ。もうシェロ君以外にはしないもの」
「えっ、それって」
「貴方はどうなの、ジャンヌ?」
「わ、私は、」
「あら、もう時間みたいね。ごめんなさい、先に戻ります。シェロ君、忘れないでね、いつだって、ヴィヴ・ラ・フランス!」
「子イヌ。あんた思ってたよりもやるわね。私の理想にはちょーっと足りないけど、子イヌなら
「それは光栄だな」
「そうよ、なんてったってこの私が認めてあげたんだから。だから、しっかりやりなさいよ」
「わかってるよ」
「それじゃ、今度会う時は私の歌、聴いて行きなさいよ!」
「
「そ、そうなのか?」
「はい、それはもう。
「それは、どういう、」
「さぁ、なんでございましょうね。それではまたお会いする時まで」
「シロウ、お疲れ様です」
「ゲオルギウスこそ。ありがとな」
「それはこちらの台詞です。あの時、シロウたちと出会っていなければ、この戦い、勝ち目はなかったでしょう。あの時、町の人を見捨てたくないという私の個人的な意見を聞いてくれたために、辛い決断をさせてしまった」
「それは違う。あれは俺の我儘でもあったんだ。結果的にマリーさんも無事だったから、それで良かったってことにしよう」
「貴方は、とてもまっすぐだ。そしてとても正直だ。その言葉を受け止めましょう。そして共に戦えた事に感謝を」
「こちらこそありがとう。本当に助かった」
「またどこかの戦場で会うことがあれば、その時も共に戦いましょう」
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一人また一人とサーヴァントたちが帰っていく。涙はない。この戦いで、彼らの間には確実に縁ができたのだ。ならば、士郎たちが戦い続ける限り、またいつか会うこともあるだろう。最後に残ったのは、
「ジャンヌさん」
「マシュさん、リリィさん、そしてシロウ。本当に、ありがとうございました。三人とあの時出会っていなければ、きっと私は一人で戦い、そして敗北していたでしょう。マリーたちとも会うことはなく、みんなバラバラに戦い、竜の魔女によって滅ぼされていたかもしれません。貴方たちがいてくれたから、この国を救えました」
「こちらこそ、ジャンヌさんがいてくれて頼もしかったです。ここに来たばかりの時は、右も左もわからなかったのですから」
「はい!それに共に戦えたこと、とっても誇りに思います」
「マシュさん、リリィさん。ありがとうございます」
最後に士郎と向き合うジャンヌ。ちらりと、士郎の背に視線を向けた後、ジャンヌは士郎を見つめた。
「シロウ、どうかお願いしますね」
「あぁ。約束する」
「はい。私のマスターが、貴方のような人で良かったです。貴方のまっすぐな言葉や強い信念に、私は助けてもらいました。この先何があっても、貴方の言葉を心に、信じた道を進みます」
「それは俺も同じだ。あの時、ジャンヌの言葉のおかげで迷いが消えた。だから、ありがとう」
ジャンヌの足元が粒子になり始める。同時にレイシフトも始まったようで、士郎たちの体も消え始める。
「またな、ジャンヌ」
「えぇ。でも最後に、まっすぐな気持ちを一つだけ」
そっと士郎の頬に伸びる手。突然のことに驚いた士郎は、引っ張る僅かな力に抗うことができず、前へと屈むことになる。
強い衝撃はなかった。ただ、唇に押し付けられた感触は、マリーの時よりもやや強めに感じた。ギュッと閉じられた瞼が震えるのは、緊張故だろうか。残念ながら思考を奪われた士郎には分析しようもなかったが。
顔にかかる美しい髪や、頬に感じる吐息と柔らかい手。視界に広がる白く透き通るような肌は赤みがさし、やや熱くも感じる。僅かな息の音も聞こえ、まるで五感全てが奪われたかのようだ。
一瞬か、数秒か、時間の感覚はわからなかったが、ジャンヌの顔が離れた。その表情は戦っている時やマリーたちといる時とも違う、初めて見たものだった。
「貴方のこれからに、どうか祝福がありますよう。そんな願いも込めました」
「あ、あぁ」
「ありがとうございました、シロウ。私は貴方を愛してます」
その言葉を最後に、士郎の意識が沈み、ジャンヌの姿が見えなくなった。レイシフトによる移動が行われたのだ。フランスから、士郎たちは戻ったのだった。カルデアへ。
その後、何故か更に悪くなって、拗ねてしまったマシュの機嫌を士郎とリリィが直すのに苦労したり、いつの間にか増えていた同行者にスタッフがあたふたしたりしたのはまた別の話。
「先輩、不潔です」
「なんでさ!?」
第一特異点、邪竜百年戦争オルレアン
定礎復元完了