学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡はクインヴェールに入る

クインヴェール女学園

 

六学園中唯一の女学園にして最小の学園。

 

明るくきらびやかな校風で、入学条件に戦闘能力や学力にプラスして「容姿」を要求しており、所属する学生は皆トップアイドル級の美貌を誇る。 実際にアイドル活動を行っている学生も多い。その為星武祭下位常連という成績にも関わらずファンは多い。 制服は学生が自由にアレンジすることができる。

 

クインヴェールは星武祭の総合成績を考慮せず星武祭を純粋に学生の魅力を引き出すためのステージとしてしか見なしていない。

 

前シーズンの総合成績は六位と振るわないが所属学生が弱いわけではない。実際俺の恋人のシルヴィは強いし、序列2位の『舞神』ネイトネフェルは前シーズンの王竜星武祭で戦って負けかけたし。

 

まあそんな訳でクインヴェールは男女問わず憧れの学園な訳だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今更だが影に入って潜入って犯罪じゃね?」

 

影の中で俺は隣にいる恋人に尋ねる。現在俺は影に潜ってクインヴェールのトレーニングホールを進んでいる。

 

「大丈夫だって。バレても許可証は発行してるから特に怒られないよ」

 

「そりゃそうだけどよ……」

 

シルヴィはそう言ってくる。確かにそうだ。シルヴィからは生徒会長の印が押された許可証を貰っている。エンフィールドから貰ったヤツと同じで生徒会長の許可があれば簡単に入校出来る優れ物だ。

 

何でそんな物を貰っているのに影の中に潜っているかって?

 

んなもんバレた場合犯罪にはならなくても面倒な事になるからに決まってるからだ。堂々と入った瞬間、クインヴェールの生徒が突っ掛かってくるのは目に見えている。その度に許可証を見せるのはぶっちゃけ怠い。

 

よってトレーニングルーム以外の場所では影に潜って、もしもバレた場合は許可証を見せるスタンスで行く事にした。

 

つーか今更だが女子の花園に入るって緊張するな。

 

「そういやシルヴィ、例のチーム、えーっと……チーム赫夜だったか?そいつらには俺の事は説明したのか?」

 

いきなり騒がれたりしたら面倒だし。

 

「えーっと、助っ人が来るかもしれないって説明はしたけど八幡君だって事は言ってないね。八幡君がOKしてくれるかわからなかったし」

 

マジか?それ絶対に驚かれそうなんだけど?

 

……まあ良いか。賽は投げられたってヤツだし。覚悟はしておこう。

 

「わかった。それで例のトレーニングルームは何処なんだ?」

 

「もうすぐそこだよ。ほら!あの赤い扉」

 

10メートルくらい離れた場所に赤い扉がある。あそこがトレーニングルームか。

 

「んでシルヴィ、いきなり中に入っていいのか?」

 

俺の能力なら一々取り次いで貰わなくても中に入れるし。

 

「うーん。予想外の事に驚きやすい子もいるし一度影の外に出て貰っていい?」

 

「了解した」

 

そう言って辺りを見渡すも人っ子ひとりいない。今なら出ても大丈夫だろう。俺が能力を解除すると俺達は影の中から外に出る。

 

それと同時にシルヴィはトレーニングルームのインターフォンを鳴らす。

 

「おーい。赫夜のみんないるかな〜?この前言ってたお手伝いさんを連れてきたよ〜」

 

そんな呑気な声を出すシルヴィ可愛過ぎだろ?

 

『……今開けるわ』

 

暫くすると凛とした声が聞こえてドアのロックが解除される音が聞こえる。

 

そしてドアが開いたので中に入る。

 

「へ……?」

 

「……はい?」

 

「……ふぇ?」

 

「……え?」

 

「……まさか」

 

入るとそこには5人の女子がいた。まあクインヴェールだから女子しかいないけど。

 

その中で知っている女子は2人だけだ。

 

1人は美しい金髪を持つ女子、ソフィア・フェアクロフ。ガラードワースのフェアクロフさんの実の妹で前回の王竜星武祭で俺と戦った人だ。この人てっきり王竜星武祭に絞るかと思っていたので獅鷲星武祭に参加するのは意外だった。

 

もう1人は常盤色の髪を持つ女子、クロエ・ブロックハート。つい最近デビューしたアイドルだ。俺的には割と気に入ったので珍しく音声データを買った。基本的にシルヴィの歌以外は聞かないので割と珍しい事だろう。

 

残りの3人は知らないが全員ポカンとした表情をしている。

 

「ひ、ひ、ひ、ひ、比企谷八幡!な、何故ここに?!」

 

一番最初に再起動したのはフェアクロフ先輩だ。目を見開きながら後ずさりする。……淑女とは思えない所作だな。

 

「お久しぶりっすねフェアクロフ先輩。俺がシルヴィの言ってるお手伝いさんですよ」

 

「なっ?!し、シルヴィア!どういうつもりですの?!」

 

「え?チーム力を上げるなら強い人が良いじゃない?だから私の知り合いの中で暇……手伝ってくれそうな八幡君に頼んだんだよ?」

 

待てシルヴィ。お前今暇な人って言おうとしただろ?事実だから反論はしないが。

 

内心シルヴィにそう突っ込んでいるとクロエ・フロックハートが近付いて鋭い目で見てくる。

 

「どういう目的で私達に協力をするのかしら?『影の魔術師』」

 

「あん?何の話だ?」

 

「本来レヴォルフのNo.2の貴方が私達クインヴェールの生徒を鍛えるなんてあり得ないわ。それに貴方は裏で星導館と組んでいたり、『悪辣の王』からオーフェリア・ランドルーフェンを奪い取ったり……何を考えているの?」

 

「へぇ……そこまで知ってんのか?おいシルヴィ、こいつベネトナーシュの人間か?」

 

俺の情報をここまで知ってるのは各学園の諜報機関の人間くらいだろう。

 

「そうだよ。ちなみにプロデュースをしたのも私だよ」

 

「そうか……お前の事だ。別に悪い事を考えている訳でもないんだろ?それならそれでいい……っと、話を戻すぞ」

 

そう言ってクロエを見据える。

 

「確かに俺は裏でエンフィールドと組んだりディルクからオーフェリアを奪ったりしたがな、それは全部俺自身の為にやった事だ。別にどっかの組織や人の為にやった事じゃねぇよ。今回の件もシルヴィのこ……友人として協力するだけだ。レヴォルフは関係ねーよ」

 

危ねぇ、つい恋人って言いかけてしまった。俺とシルヴィの関係は知られてはいけないからな。気をつけよう。

 

改めて決心して再度クロエに話しかける。

 

「まあお前らが信じないならそれでいい。で、やるのかやらないのかどっちにすんだ?」

 

そう言って5人を見渡すと頭に兎の様な飾りをした女子が勢いよく頭を下げる。

 

「やります!よろしくお願いします!」

 

ピシッと頭を下げてくる。これには俺も予想外だった。

 

「美奈兎……貴女、簡単に信じ過ぎよ」

 

クロエは呆れた表情をするも、

 

「え?だってシルヴィアさんが連れて来た人だし悪い人じゃないでしょ?」

 

美奈兎って女子はあっけらかんとそう返す。そこには疑いの感情は見えない。

 

「そうですね。シルヴィアさんの薦めた人ですし大丈夫でしょう」

 

「わ、私も良いと思う……」

 

名前の知らない2人も賛成してくる。その事からシルヴィの人気を改めて理解する。

 

「へぇ……シルヴィって愛されてんだな」

 

「からかわないでよ八幡君」

 

シルヴィはジト目で見てくるが可愛いだけだからな?2人きりだったら即座に抱きしめる可愛さだ。

 

「悪かった悪かった。まあそれは後にして……フロックハートとフェアクロフ先輩はどうするんですか?」

 

「……そうね。じゃあお願いするわ」

 

「皆さんがそう言うなら……」

 

俺が尋ねると残りの2人も了承する。フェアクロフ先輩は渋々って感じだけど。

 

「ソフィア先輩、何でソフィア先輩そんなに嫌そうなんですか?というか知り合いなんですか?」

 

美奈兎って女子がフェアクロフ先輩に聞いてくる。怖れを知らないなこいつは……

 

「べ、別に嫌という訳ではありませんわ!その……前回の王竜星武祭で彼に手も足も出なかったので……上手く接する事が出来ないだけですわ」

 

あー、まあ……今思い返すと少しやり過ぎたかもしれん。

 

「そいつはすみませんでした」

 

「そこで謝らないでくださいまし!」

 

どうやら悪手だったようだ。これ以上は止めておこう。

 

「了解しました。んじゃ始めたいがその前にそっちの3人の名前を教えてくれないか?」

 

流石においだのお前呼びは失礼だし。

 

「うん。……あ!自己紹介がまだだったね!私若宮美奈兎、よろしくね!」

 

「蓮城寺柚陽と申します。今日からよろしくお願いします」

 

「に、ニーナ・アッヘンヴァル……」

 

知らない3人が自己紹介をしてくる。若宮美奈兎ってのは聞いた事があるな。確かクインヴェールで49連敗して50試合目で序列入りした奴だったな。

 

「比企谷八幡だ。んじゃ早速始めるぞ」

 

俺がそう言うと全員が真剣な表情に変わる。

 

「シルヴィから大体の事は聞いている。確認をするが来年の始めにルサールカに挑むんだったな?」

 

「う、うん」

 

「あいよ。んじゃ先ずは今のチーム赫夜がどのくらいやれるのかを確認させてもらう」

 

息を吐きながらトレーニングルームの中央に立つ。

 

「今から俺1人とそっち5人で模擬戦をするぞ」

 

俺がそう言うと若宮がポカンとしてくる。何だその表情は?

 

「え?比企谷君1人と私達5人?」

 

「あん?そうだけどそれがどうかしたか?」

 

「いや……流石に5対1って……」

 

5対1だから自分達が卑怯だと思ってるのか?

 

「美奈兎、それでもこっちが不利よ。勝率は……そうね、30パーセントあるかないかよ」

 

「そうですわね……アスタリスク最強の魔術師ですからそのくらいでしょう」

 

「そんなに低いの?!」

 

フロックハートとフェアクロフ先輩がそう返す。まあ実際そんな所だろう。少なくとも12月に入るまでに俺に確実に勝てるようにならなきゃルサールカに勝つのは無理だろう。

 

「まあとりあえず物は試しで一戦やるぞ。シルヴィは見学か?」

 

「うーん。見たいのは山々なんだけどこれから仕事があるから無理なんだ」

 

「了解した。仕事頑張れよ」

 

「うん。……あ!最後に1つ八幡君に言わなきゃいけない事があるんだ」

 

シルヴィはそう言って俺の耳に顔を寄せてくる。シルヴィの顔は真剣な表情をしていた。何を話すんだ?

 

俺も意識を集中してシルヴィの言葉を待つ。するとシルヴィは遂に口を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私が見てないからってあの子達に手を出しちゃダメだよ?」

 

「出すか。さっさと行け」

 

どんだけ疑われんだよ?結構ショック

 

 

 

 

 


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