学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は暗躍をする。

 

 

鳳凰星武祭調整日

 

昨日風邪を引いて頭痛に苛まれていた俺だが翌日になると頭痛はなくなっていた。昨日は散々だったから1日で治って良かったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし……今日は胃痛に苛まれてそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……八幡、もっと強く抱きしめて……」

 

現在午前8時前、俺は今自分の寮の寝室でオーフェリアを抱きしめている。

 

オーフェリアが強く抱きしめてと要求してくるので俺は更に力を込める。

 

「……んっ」

 

するとオーフェリアも更に強く抱きしめてくる。それによって更に密着度が高まりドキドキする。特に2つの膨らみがヤバい……

 

「……八幡、八幡」

 

何とか引き離そうとするも、スリスリして思い切り甘えてくるオーフェリアを見るとそれを断念してしまう。いやだって……引き離そうとすると悲しそうな表情で見てくるからなぁ。

 

pipipi……

 

そんな事を考えているとアラームが鳴り出した。時計を見ると確かに8時を指していた。

 

それを認識すると俺はオーフェリアとの抱擁をといて反対側を向く。そこにはシルヴィがいて……

 

 

 

 

「じゃあ私もよろしくね」

 

そう言って俺に抱きついてきたので俺も背中に手を回してシルヴィと抱き合う。

 

 

どうしてこうなったかというと……

 

①朝シルヴィと抱き合っていた

 

②オーフェリア目覚める

 

③オーフェリア物凄く不機嫌になる

 

④オーフェリア俺に対して自分も抱きしめろと要求する

 

⑤シルヴィもう少し抱き合いたいと反論する

 

⑥オーフェリアとシルヴィ議論する

 

⑦話し合った結果、お互い15分ずつ交互に抱き合う事になった。

 

……って感じだ。

 

しかも何か土俵だの負けないとか言っていたがアレはマジで何なんだ?少なくとも戦闘関係じゃないと思うが……

 

 

「あ、八幡君何か違う事考えてたでしょ?」

 

シルヴィがジト目になって俺の背中に回していた右手を俺の唇に当ててくる。その仕草は反則だろ……!

 

「わ、悪い」

 

「ちゃんと私だけを見てね?」

 

そう言って更にギュッとしてくる。気のせいかさっき抱き合っていた時より強い気がする。

 

まあ約束は約束だ。甘んじて受けよう。

 

「わかったよ」

 

「んっ」

 

息を吐いてシルヴィを強く抱きしめる。鼻はシルヴィのいい匂いを感じていて凄く顔が熱くなってくる。

 

ドキドキしながら暫く抱きしめていると……

 

「うおっ!」

 

首元に生温かい感触が襲ってきた。いきなり何だ?

 

抱きしめているシルヴィを見るとイタズラを成功した子供もような笑みを浮かべていた。そして……

 

「ふぅー」

 

首元に息を吹きかけてきた。そして俺の首元に生温かい感触が再度襲ってきた。さっきの感触はこれだったのか。

 

この野郎……やってくれるじゃねぇか。

 

俺はお返しとばかりシルヴィの耳に息を吹きかける。

 

「ひゃぁん?!」

 

するとシルヴィは喘いで胸の中で暴れ出す。やり過ぎたな。てか声が凄くエロいんですけど。

 

「すまんやり過ぎた」

 

「もぅ……八幡君のバカ」

 

シルヴィは拗ねた表情をしてかは顔を俺の胸に埋める。しかし抱きしめる強さは変わらずだった。

 

結局シルヴィが許したのは俺が謝り続けて5分経ってからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2時間……

 

「あ、八幡君。ジャム取ってくれない?」

 

「はいよ。すまんがオーフェリア、ケチャップをくれ」

 

「……ええ」

 

現在10時過ぎ、俺達は朝食を食べている。俺も体調が良くなったのでシルヴィ達と同じ飯を食べている。

 

結局俺達は10時までオーフェリアとシルヴィ、それぞれ1時間ずつ抱き合っていた。それについては過ぎた事だから今は恥ずかしいと思ってないが……

 

(……今更だが世界の歌姫を抱きしめるって……)

 

普通にヤバいだろ?もしも世間にバレたら毎日暗殺されそうだ。絶対にバレないようにしないとな。

 

肝に銘じながら目玉焼きを食べていると端末が鳴り出した。端末を開いてみるとエンフィールドからのメールだった。

 

内容は要約すると『12時に天霧とリースフェルトが外出する。その時にディルクが接触してくる可能性があるから暇なら監視を頼みたい』との事だ。そしてメールには2人がいく店の情報もあった。

 

(この店って前にシルヴィと行った事ある場所じゃん)

 

以前シルヴィと行った店だが……どうしよう?監視を引き受けようか?

 

悩んでいるとオーフェリアに肩を叩かれる。

 

「……八幡、メール?」

 

言われて顔を上げると2人が俺を見ていた。あ、マズイ。食事中にメールを見るなんて非常識だな。こいつは悪い事をしたな。

 

「ん?下らない宣伝メールだよ。食事中に悪かった」

 

適当に誤魔化す。そう言って端末を閉じて目玉焼きを食べるのを再開する。うん、やっぱり美味いな。

 

「ところでお前らは飯食ったらどうするんだ?」

 

話題を変えるようにして話しかける。

 

「私は午後から仕事があるからご飯食べたら帰るよ」

 

「……私は特に決めてないから夏休みの宿題でもするわ」

 

「え?じゃあ俺もやっていいか?」

 

「……八幡は病み上がりなんだからダメ」

 

オーフェリアに一蹴される。そう言われたがもう完治してると思うんだが……

 

まあいいか。これで暇になったし天霧達の監視をしに行くか。

 

俺は自身にそう告げて食事を再開した。いつの間にか目玉焼きは冷めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ私達はもう行くね」

 

食事を終え、オーフェリアとシルヴィは帰りの支度を済ませて玄関を出る。

 

俺もそれに続いて玄関を出る。そして星辰力を自身の影に込める。

 

「目覚めろーー影の竜」

 

そう呟くと自身の影が魔方陣を作り上げ、そこから巨大な黒い竜が現れる。

 

「それに乗っていけ。初めにオーフェリアの寮行って次にクインヴェールの校門前でいいか?」

 

「それでいいよ。オーフェリアさんもそれでいい?」

 

「……もちろん。病み上がりなのにわざわざありがとう」

 

「別にこんぐらいなら問題ねーよ」

 

「……なら良かったわ。じゃあ行くわ」

 

そう言ってオーフェリアとシルヴィは竜に乗る。一応俺も同伴する予定だったが無理はするなと言われて却下された。

 

「またね八幡君」

 

シルヴィがそう言うと竜は一度雄叫びを上げ、翼を広げて飛んで行った。

 

それを見送った俺は息を吐いて時計を見る。時刻は11時前、天霧達を監視するなら11時50分くらいには店の近くで張込みを始めなきゃいけない。

 

そうとなったら準備をしないとな。

 

俺は財布の中身を確認してそこそこあるのを理解すると同時に近くにあるショッピングモールに歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これもお願いします」

 

「まいどありがとうございます」

 

買い物を済ませた俺はショッピングモールを出てトイレに向かう。ふぅ……欲しいものは全部買えたな。

 

銀髪の俺は紙袋からさっき買った伊達眼鏡をかけてトイレにある鏡を見る。

 

(……よし。これなら俺だとバレないな)

 

そう、俺は今変装をしている。髪は以前シルヴィから貰った髪の色を変える事が出来る道具で銀髪にして、伊達眼鏡をかける。その結果『お前誰だよ?』と思われるくらい俺らしくなくなった。多分これならバレないだろう。

 

かなりの自信を持ちながら俺はショッピングモールを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変装をして暫く大通りを歩いていると曲がるべき路地を発見した。天霧達が行く店は注意しないと気が付かないで通り過ぎてしまいそうな不思議な雰囲気を持っている店だ。しかし一度行ったら人を惹きつける魅力のある店なので行った事のある俺は通り過ぎないで済む。

 

一本脇に入った路地を歩くと……

 

(おっ、ナイスタイミングじゃん)

 

ちょうど天霧が店の中に入っていくのを見つけた。見た所リースフェルトはいないが店で待ち合わせしてんのか?

 

疑問に思いながら店を見てみるとリースフェルトがいた。それはいい。それはいいんだが……

 

(……誰だあいつは?)

 

リースフェルトの横にはメイド服を着た幼女がいた。何だありゃ?店員にしちゃ若過ぎるし。それ以前にこの店の制服はメイド服じゃないし。

 

そう思っていると端末が鳴り出した。見るとエンフィールドだった。そういやあの後連絡してなかったな。

 

俺はそのまま店を通り過ぎて路地裏に入る。ここなら天霧達の様子が良く見えるし、向こうからは見えなくい。監視にはうってつけの場所だ。

 

俺は紙袋からあんぱんを取り出しながら通話ボタンを押すとエンフィールドの顔が映る。

 

「もしもし。どうしたエンフィールド?」

 

俺がそう尋ねるとエンフィールドは驚いた表情を見せてくる。こいつのそんな顔は珍しいな。

 

『ええっと……比企谷君ですよね?』

 

「……は?ああ、それで合ってる。変装する為に銀髪に変えてんだよ」

 

『……なるほど。凄い変装ですね。わかりませんでしたよ』

 

エンフィールドも騙せるなら他の奴にもバレないだろう。良かった良かった。

 

「そいつはどうも」

 

『ところで比企谷君は何を食べているのですか?』

 

「は?尾行や監視と言ったらあんぱんに決まってんだろ」

 

『はぁ……よくわかりませんね』

 

まあ両親が統合企業財体に所属しているお嬢様なら知らないのは仕方ないか。これは俺が悪かったな。

 

そう思っているとエンフィールドが気を引き締めた表情を浮かべてくる。

 

『まあそれはともかく……変装しているという事は監視の依頼は受けてくれるという事でいいのですか?』

 

「ああ。それで構わない」

 

どうせ暇だし。そんくらいなら構わない。

 

「ところでエンフィールド。天霧とリースフェルトの他にメイド服を着た10歳ぐらいガキがいるんだがあれ誰か知ってるか?」

 

店を見ると美味そうなパフェを食べている。まさかと思うが天霧とリースフェルトの子供じゃないよな?つーかパフェを見ていたら俺も食べたくなった。前に来た時は違う物頼んでたし。

 

『ああ。多分フローラですね。リーゼルタニアの孤児院の女の子で、メイド服を着ているのは王宮の侍女として働いているからですよ』

 

孤児院……オーフェリアがいた孤児院の事か。オーフェリアの奴は今でも孤児院に戻りたいのだろうか……

 

オーフェリアの事について考えていると……

 

 

「エンフィールド。当たりだ」

 

俺が一言そう告げる。視線の先にはレヴォルフの生徒会秘書の樫丸が店に入っていった。偶然とは思えない。

 

『……本当ですか?』

 

「ああ。後で連絡する」

 

『わかりました。よろしくお願いします』

 

通話が切れると同時にあんぱんを全て口に入れて影の中に潜る。全身が影の中に入ると同時に店の中に入る。

 

「で、では、ご案内しますので、どうぞこちらに……」

 

店に入ると顔が引き攣っている樫丸が2人に話しかけていた。察するにリースフェルトにビビったのだろう。哀れなり樫丸。

 

樫丸に合掌しながら天霧の影に入る。これなら絶対に見つからないだろう。

 

「ごめんね、フローラちゃん。また時間を作るから」

 

天霧は謝罪すると同時に店を出ようと歩きだすのでそれに続く。暫くの間進むと、商業エリアを抜けて、外縁居住区の大通りに出る。

 

そしてその角には……

 

(……ディルクの車じゃねぇか。やっぱりマジでディルクとコンタクトを取ったんだな)

 

巨大な黒塗りの車があった。リムジンタイプで窓は大きいが中を見る事は出来ない。間違いなくディルクの車だ。

 

樫丸がドアを開けると中には革張りのソファーと重厚なテーブルがあって応接室みたいだ。ディルクの車の中って初めて見たがこんな感じなんだな。

 

そしてその1番奥に赤髪の青年、ディルク・エーベルヴァインが足を組んで座っていた。

 

「ーーー入れよ」

 

ディルクがそう言うと2人か入るので俺も影の中を移動して車の中に入る。

 

中を見渡すと車の中にいるのは天霧、リースフェルト、ディルク、樫丸、俺、運転手の6人だ。

 

しかし油断は出来ない。運転手を影から見たが相当な手練れだ。おそらく黒猫機関の人間だろう。星脈世代でないディルクの側に置いている人間だ。弱いはずがないだろう。

 

「てめえが『叢雲』か。……ふん。ぼんやりとした面だな。こんなのが序列1位とは、星導館もたかが知れるってもんだ」

 

名も知らない運転手に若干の警戒をしていると車が走り出し、ディルクの声が聞こえてくる。そりゃまあ天霧も弱くはないが……オーフェリアと比べたらアレだろ?

 

まあとりあえず色々と情報を得らせて貰うか。

 

俺はポケットにあるボイスレコーダーを取り出して録音モードにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、ですか……」

 

天霧の弱々しい声が聞こえる中、俺もかなり驚きで一杯になっている。

 

アレから10分、ディルクが話した事を全て聞いたし録音もした。奴が話した事は天霧の姉ちゃん、天霧遥についてだが……

 

(まさか天霧の姉ちゃんも蝕武祭に参加していたとはな……)

 

ディルクによると『黒炉の魔剣』を使って蝕武祭に参加して負けたらしい。

 

天霧の姉ちゃんといい、シルヴィの師匠のウルスラといい……行方不明になった奴は蝕武祭に参加してるとはな。一応シルヴィにも話しておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんじゃ、次は俺から質問させて貰うぜ。……てめぇ、マディアス・メサとはどういう関係だ?」

 

するとディルクは天霧に予想外の質問をしてきた。は?マディアス・メサだと?星武祭運営委員長のマディアス・メサが何で出てくんだ?

 

天霧本人も予想外の質問だったらしくポカンとしている。

 

それを見たディルクは天霧が知らないと判断したのか聞くのを止めて指をパチンと鳴らす。すると車が止まりドアが開く。

 

外を見ると星導館の近くにある埠頭だった。ここから星導館までは10分もかからないだろう。

 

「話は終わりだ。さっさと失せろ」

 

どうやらディルクはこれ以上話をする気はないのだろう。そう判断した俺はディルクとリースフェルトが口論しているのを聞きながら車から降りて近くにある物陰まで移動する。

 

暫くすると天霧とリースフェルトも車から降り、ディルクの車も走り去って行った。

 

天霧達を見ると、天霧はぼんやりとしていてリースフェルトが心配そうに話しかけて学園に戻って行った。

 

2人の姿が見えなくなった所で影から出る。ふぅ……久々の外の空気だぜ。そして伊達眼鏡を外し髪も元の髪に戻す。やっぱり俺はこうでないとな。

 

そんなバカな事を考えながら端末を出して周りを見渡す。誰もいないのを確認するとエンフィールドの端末に電話をする。

 

すると直ぐにエンフィールドの顔が映る。

 

「エンフィールドか?天霧はディルクと接触した。今星導館の近くにいるんだが直接話すか?」

 

メールでも構わないがこう言った話は直接話した方がいいと思う。

 

『ではうちの学園に来ていただけませんか?』

 

「わかった。じゃあ影の中に潜るから案内頼む」

 

『いえ。それだともしも見つかった場合に面倒なので影に潜るのは止めてください。私が星導館に入る許可証を発行します』

 

「……わかった。じゃあ集合場所は?」

 

『そうですね……今は1時45分なので2時に校門に来てください』

 

「了解した」

 

そう返事をして端末を閉じる。さて今からゆっくり歩けば2時5分前だな……

 

俺は監視の為に用意したあんぱんの残りと牛乳を口に入れてゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星導館に向かって歩いていると星導館の生徒がチラチラとこっちを見てくる。まあレヴォルフのNo2が星導館の近くをウロチョロしてたらそうだよな。

 

それに昔小町に手を出そうとした星導館の男子生徒を半殺しにした事も有名だし……こんな事なら銀髪のまま行けばよかったな。

 

そう思いながら校門に向かうと既にエンフィールドが待っていた。向こうも俺に気付いて近寄ってくる。

 

「わざわざこちらまで来ていただきありがとうございます」

 

「別に構わない。それより早く案内を頼む。ここは人目につく」

 

星導館とレヴォルフの序列2位が一緒にいるからかさっきより目立ってるし。

 

「そうですね。とりあえず生徒会室に案内します」

 

そう言ってエンフィールドが空間ウィンドウを操作すると俺の端末に入校許可証が送られてきた。

 

「これで比企谷君は私から了承を得たら直ぐに学園に入れるようになります。星導館に用がある場合は私にご連絡ください」

 

つまりエンフィールドの許可があれば毎回やらなくちゃいけない面倒な手続きをしないで済むという事か。

 

「それはありがたいな。んじゃ行こうぜ」

 

そう言うとエンフィールドも歩きだすので俺もそれに続いて学園に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらにどうぞ」

 

エンフィールドが案内した場所は高等部校舎の最上階の生徒会室だった。生徒会室は大企業の社長室のようでレヴォルフの生徒会室とはかなり違った雰囲気を持っている。

 

俺は部屋に入り応接用のソファーに座って息を吐く。そしてエンフィールドが向かいに座るとポケットからボイスレコーダーを取り出す。

 

「これが天霧達の会話だ。内容が内容だから聞いたら破棄してくれ」

 

俺がそう言うとエンフィールドは驚いたように目を丸くしている。

 

「会話を録音したのですか?」

 

「ああ。影の中からな」

 

影の中は最高だ。何せ俺以外には誰も干渉出来ない俺だけの世界だから。

 

「……本当に素晴らしい能力ですね。今からでもうちに来て欲しいぐらいです」

 

「小町がいるからそうしたいのは山々だが他の学園への転校は星武憲章違反だからな?」

 

「それはもちろん理解していますよ。さて……」

 

エンフィールドは俺を見てくるので頷くとボイスレコーダーの再生ボタンが押され音声が流れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『話は終わりだ。さっさと失せろ』

 

ディルクの声が聞こえて終了した。エンフィールドは暫く考える素振りを見せてから俺を見てくる。

 

「……どう思いますか?」

 

「確証はないが多分ディルクの嫌がらせだろうな」

 

「でしょうね」

 

あの会話を聞く限り普通の人ならディルクはそこまで得をしたようには見えないだろう。

 

しかしディルクはメリットのない事は絶対にしないという事を良く知ってる俺やエンフィールドからしたら何かしら得をしたと思う。

 

それこそーーー天霧に揺らぎを与えたりとか。

 

「それでどうする?おそらくディルクの奴はまだ諦めてないと思うぞ?」

 

「そうですね。綾斗に直接妨害をかけてくるのはないと思いますが……」

 

「それはないな。天霧を確実に潰せるのはオーフェリアくらいだ。でも……」

 

「それだけの為に『孤毒の魔女』を使うとは思えないので、それは除外しても良いでしょうね?」

 

エンフィールドの言う通りだ。オーフェリアはディルクの最強のカードだ。天霧を潰す為だけに最強のカードを切るとは思えない。

 

「となると後は……天霧の友人を狙って人質にするぐらいか?」

 

「あり得ない話ではないでしょう。もしくはユリスの……」

 

するといきなりエンフィールドがハッとした表情で顔を上げる。

 

「比企谷君の言う人質を使う作戦ならフローラを狙う可能性も高いでしょう」

 

「フローラ?さっきのメイド服のガキだよな?」

「……ええ。ユリスは彼女がいる孤児院の為に戦っているので彼女を人質に取ってきたら危険です」

 

だろうな。レヴォルフの諜報機関ならフローラの素性も簡単に割り出せるだろう。

 

それに星導館の生徒を拉致してバレたらヤバイが、フローラは外部、しかも孤児院の人間だ。証拠を残さずに殺すのも不可能ではない。

 

「……事情はわかった。1つ対策を思いついたが聞くか?」

 

「お願いします」

 

そう言われて俺はエンフィールドにある物を渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って感じだがどうだ?」

 

「良い考えだとは思いますが……大丈夫ですか?」

 

「何がだ?」

 

「下手したら自分の学園を敵にまわすかもしれないのですよ?」

 

なんだそんな事か。

 

「問題ない。ソルネージュを敵にまわしたらヤバいけど、敵にまわるのはディルクくらいだ」

 

流石に統合企業財体を敵にまわす事はしない。つーかディルクとは既に敵対関係だし今更だ。

 

「ならいいのですが……危ないと思ったら直ぐに引いてくださいね。これはあくまで星導館の問題なのですから」

 

「んな事は百も承知だ。それより……ほれ」

 

俺はエンフィールドにある物を渡す。俺が出した策に必要な物だ。

 

「確かに受け取りました」

 

「頼むぞ。これでディルクの嫌がらせについては良いとして、マディアス・メサについてはどうする?」

 

正直言ってあそこでマディアス・メサの名前が出てくるとは思わなかった。

 

「そちらについては今は調べなくてもいいでしょう。少なくとも綾斗には心当たりがないようですし」

 

「……わかった。じゃあ話は終わりだな」

 

「ええ。情報に対策を教えていただきありがとうございます。こちらから何か報酬をご用意しましょうか?」

 

報酬ねぇ……俺個人としてはないが……

 

「じゃあ情報が欲しい。どんな小さい事でもいいから蝕武祭の情報を今後俺にくれないか?」

 

「蝕武祭ですか?それは構いませんが綾斗の為ですか?」

 

「いや、俺も少し蝕武祭に関して欲しい情報があるんだ」

 

もちろん俺個人の為ではなくシルヴィの為だ。少しでもウルスラに関する情報が欲しい。とはいえ俺個人の情報網は大した事ないし、黒猫機関の力はディルクと敵対してるから無理だし、シルヴィ自身も余り自分の学園の諜報機関は頼りたくない。

 

となると他の力を借りる必要がある。そこでエンフィールドに協力を頼んでみる。

 

「……わかりました。ですが蝕武祭についての情報は余り手に入らないので比企谷君の欲しい情報は手に入らないかもしれませんよ?」

 

「それで構わない。どんな些細な事でも構わないから頼む」

 

俺はそう言って生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の寮に帰ると既に夕方になっていた。

 

夕食を食べながら明日の試合のオッズを見てみるて小町達は2.4倍で雪ノ下達が1.8倍となっている。

 

試合を見る限り小町達は四回戦でガラードワースの正騎士コンビで負傷して全快する前に五回戦をやったからな。かなりの疲労が蓄積していているのだろう。

 

対する雪ノ下達は五回戦で川越ペアに多少梃子摺っていたが特に大ダメージを受ける事なく勝っている。はっきり言って小町達が不利だ。

 

まあ俺が今更慌てて仕方ない。今俺がするべき事はしっかり休んで最高の状態で試合を見る事だ。

 

そんな事を考えた俺は夕食を済ませ、風呂に入ってベッドにダイブした。

 

鳳凰星武祭も後3日、どこが優勝するかわからないが最善を尽くして欲しい。

 

俺はゆっくりと瞼を閉じて意識を手放した。良く寝て最高の朝が迎えられますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし朝にオーフェリアとシルヴィを抱きしめた所為なのか、2人と物凄いエロい事をする夢を見て目を覚ましてしまい全然眠れず、最悪の状態で朝を迎えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんで私……八幡君とあんなエッチな事をする夢を見ちゃったの……?」

 

「……八幡。いつか正夢にするから」


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