学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡はオーフェリア・ランドルーフェンと……(後編)

 

 

 

どんな時でも冷静であるべき。

 

それは正しい事だと思う。感情を露わにして冷静さを失うのはあらゆる事においてもするべきではない。そうすると本来の力を失い普段なら出来る事も出来なくなるかもしれないからだ。

 

そう言った事もあるので俺は常に冷静である事を心がけるつもりだ。

 

しかし今の俺にはそれが無理だと断言出来る。

 

何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………八幡」

 

今現在、俺はオーフェリアの寮の寝室と思える場所で、パンツ一枚とバスタオルしか体に纏っていない状態でオーフェリアに抱きつかれているからだ。

 

女の子の寝室で殆ど裸の状態で女の子と抱き合っている。しかも俺は寝る前の記憶が全くない。

 

これで冷静にいられる男は絶対にいないだろう。いたとしたらそいつはホモだ。俺はホモじゃないから冷静でいられない。

 

(……いやいやいや。マジでどうなってんの?疲れ果てて寝落ちしたぐらいしかわかんねぇ。その後に何があって俺はこんな状態になってんだ?)

 

とにかく冷静になろうとするが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んんっ、八幡……もっと……」

 

俺に抱きついているオーフェリアが更に強く抱きついてくる。それに背中に回されている手が動きバスタオルがはだけて、上半身は半分裸になってしまう。

 

(ヤバいヤバいヤバい!これはガチでヤバい。パジャマ越しとはいえオーフェリアの胸が俺の胸板に当たってヤバい)

 

つーかメチャクチャ柔らかい感触が胸板に当たって気持ち良い。これが朝まで続いたら間違いなく狂いだし……ん?

 

オーフェリアの抱擁を受けているとある事に気が付いた。

 

(……パジャマ越し?という事は……オーフェリアは服を着ているのか?)

 

そう思った俺はオーフェリアを見ると暗闇でもパジャマを着ているのがわかった。しかも俺達の周囲からは特に変な感じの匂いがしない。

 

その事から……

 

(……オーフェリアと情事に耽っていないって事か?)

 

起きた時はパニックになっていたからオーフェリアと大人の階段を上ったのかと思ったが、冷静になって考えてみると状況から判断するにオーフェリアと大人の階段は上ってないようだ。

 

とりあえずそれなら良かった。意識もない状態で大人の階段を上るなんて真っ平御免だ。

 

安堵の息を吐いている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…んっ……八幡……気持ち良いわ……」

 

オーフェリアがそんな寝言を言ったかと思ったら、頭を俺の首の方に近寄らせて舌を出して俺の首筋を舐めてきた。

 

それにより俺はビクンと反応してしまう。ちょっと?!オーフェリアさん?!それはマジでヤバいって!てかどんな夢を見てんだよ?!

 

「オーフェリア!頼むから起きろ!」

 

寝ているオーフェリアには悪いがこれ以上は俺のリミッターが解除されそうなので起こす事にした。流石にこの歳でムショに入るのは絶対に嫌だ。

 

「んっ……んんっ……」

 

俺がオーフェリアを揺らすとオーフェリアの瞼が開く。

 

「……んっ、八幡?」

 

オーフェリアは目を擦りながら俺を見てくる。そして暫く俺を見て意識がはっきりしたようで抱擁をといてきた。

 

オーフェリアの顔を見ると月の光で殆ど見えないにもかかわらず頬が染まっているのがわかった。それを見た俺はこんな時にもかかわらず胸が熱くなるのを感じた。

 

「……す、すまんオーフェリア」

 

特に理由はないがつい謝ってしまう。何をやってんだ俺は?

 

「……八幡は悪くないわ。……それより寝ている間八幡に変な事をしたかしら?」

 

はいしました。抱きついたり首筋を舐めてきました。

 

しかし俺はそれを口に出来ない。思ってるだけで顔が熱くて仕方ない。口に出したら悶死する可能性がある。

 

諸々の事情を踏まえて俺は嘘を吐く事にした。

 

「いや、特になかったな」

 

「……そう。なら良かったわ」

 

オーフェリアはホッと息を吐いている。心から良かったという表情をしている。こりゃ口に出すのはやめておいた方がいいだろう。

 

「ところでオーフェリア。俺、何があったか覚えてないんだ。あの後何があったんだ?」

 

状況やオーフェリアの態度からして情事に耽っていた訳ではないようだが……女の子と抱き合って寝ているなんて普通は考えられないし。

 

「……そうね。先ず八幡、数学の宿題をやっていたのは覚えている?」

 

「ん?ああ、それは覚えているな」

 

「……それで休憩しようとしたら八幡が眠ってしまったの。これについては早く休憩を入れなかった私の所為だわ」

 

「いや、それは別に構わない」

 

試合を見に行ったり、ルサールカの尋問で結構疲れてたし。それがなかったら寝落ちはしなかったと思うし。

 

「それでその後は何があったんだ?俺が上半身裸になっている理由は何だ?」

 

俺がそう返すとオーフェリアは頬を染めてくる。おい、俺が寝てる間に何があったんだ?てか聞くのが怖くなったんだけど。

 

「……八幡が眠った後に……その、汗の臭いがしたから体を拭いたの」

 

「……マジ?」

 

え?つまりオーフェリアに服を脱がされたの?ヤバい、顔が熱くなってきた。マジで悶死しそうなんだけど?

 

「……ええ。それで服を脱がしたのだけど……体を拭いていたら机にあった水を溢してしまって八幡の服と下のシャツを濡らしてしまったの。……ごめんなさい」

 

「いや、特に怒ってないから気にするな」

 

オーフェリアはそう言って謝ってくるが本当に怒ってない。寝落ちした俺の体を拭いてくれたんだ。そんな優しい人間のミスに対して怒るつもりはない。

 

それ以前に俺の能力を使えば服なんて簡単に作れるし。

 

「じゃあ服は……」

 

「今はお風呂場にある暖房を使って乾かしているわ。それと……」

 

オーフェリアは一つ区切り頬を染める。何を言ってくるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その、下は拭いてないけど大丈夫?」

 

爆弾を投下してきた。

 

「いや問題ない。寧ろ拭くな」

 

拭いていたら間違いなく自殺していると思う。

 

……まあ今の俺がこんな格好をしている理由は理解した。要するにパンツ以外の脱がした服に水を溢したからだろう。とりあえず情事に耽っていたからって理由じゃないから安心だ。

 

「……そうよね。私もそれはまだ早いと思ったからしてないわ」

 

「それでいいんだよ。俺がこの格好の理由はわかった。んじゃ最後の質問だ。……何で俺はお前と一緒に同じベッドで寝てんだ?」

 

ここ重要。特に間違いは起こってなかったから良かったが、一歩間違えたら取り返しのつかない事になっていただろう。

 

「……私の寮には他のベッドやソファーがないから八幡を寝かすとしたらここ以外ないから」

 

「んな事しないで床に放置しといて良かったのに」

 

「……それは悪いわよ」

 

「そいつはサンキューな。ま、もう起きたし俺は帰るわ」

 

朝まで寝てるならまだしも起きたならオーフェリアに悪いし帰るとするか。

 

そう判断した俺は即座に影の服を纏いベッドから出ようとすると……

 

「……待って。八幡さえ良ければこのまま一緒に寝てくれないかしら?」

 

オーフェリアが影の服の裾を掴みながらそう頼んでくる。おいおいおい……

 

「お前な……流石にそれはヤバいだろ?」

 

さっきまではともかく、お互いに一緒に寝る事を認知して寝るんだぞ?寝れる気がしないし。

 

そう判断した俺はオーフェリアに再度断ろうとするとオーフェリアは俯きだす。いきなりどうしたんだ?

 

疑問に思っていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お願い」

 

上目遣いでおねだりをしてきた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり八幡は温かいわ」

 

オーフェリアは俺に抱きついてスリスリしている。俺は半ば投げやりになりながらオーフェリアの背中に手を回す。

 

はい、結局断りきれませんでした。今現在、俺はオーフェリアと一緒に寝ています。

 

でも決してやましい気持ちがあって寝ている訳ではない事は理解して欲しい。あんな悲しい表情をしている割と仲の良い女の子がおねだりをしてきたら断れないだろう。

 

「……そいつはどうも。つーかお前、俺と初めて会った頃に比べて変わり過ぎだろ」

 

初めて会ったのは1年以上前で会った当初はベストプレイスでお互い一言も話さずに近くで飯を食ってたのに、今じゃ一緒に寝てくれと言ってくるんだ。変わったとしか言いようがない。

 

「……そうね。八幡と出会った。それによって欲しかったけど諦めていた物が手に入ったからだと思うわ」

 

「……ん?欲しかったけど諦めていた物?」

 

よくわからない言い方だな。オーフェリアは何を言っているんだ?

 

「……八幡は私が昔孤児院にいたのは知ってるわよね?」

 

「ああ」

 

「……あの頃は本当に幸せだった。けど孤児院から離れて色々な場所で実験を受けて、アスタリスクに来た頃には全てがどうでもよくなったわ」

 

「まあそうなっても仕方ないかもしれないな」

 

リースフェルトから聞いたが借金のカタとして招集する研究所なんて碌な物じゃないだろう。

 

「……だけど、八幡がアスタリスクに来て一緒に過ごすようになって孤児院にいた頃と同じように幸せになったわ」

 

「……そんな事をはっきり言うな」

 

顔が熱くて仕方ない。オーフェリアが嘘を吐くとは思えないので事実なのだろう。そう認識すると更に顔が熱くなる。

 

「事実よ。それで私は……一度諦めていた幸せという存在がまた手に入ったから……私を幸せにしてくれる八幡に甘えてしまうの。だから……」

 

オーフェリアは一つ区切り俺を見て……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡の許す限りでいいから八幡に甘えさせて……」

 

そう言って更に強く抱きしめてくる。まるで絶対に離すものかと言っているように強く抱きしめてくる。

 

今の言葉を聞く限り……もしかしたらオーフェリアはある意味俺に依存しているのかもしれない。

 

しかしだからと言って俺は拒絶出来ない。

 

もしも拒絶した場合オーフェリアが壊れる、もしくは暴走するかもしれない。

 

どの道数少ない友人がそんな目に遭うのは見たくない。

 

俺は息を吐いてオーフェリアを抱き返し好きに甘えさせる事にした。この関係が正しいのかはわからないが好きに甘えさせる。

 

それが正しい事か悪い事なのかわからないが……少なくともこの時だけはオーフェリアの好きにさせるべきだろう。

 

そう思いながら俺は瞼を閉じて意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

光を感じたので目を開けると……

 

「……おはよう。八幡」

 

オーフェリアが抱きつきながら挨拶をしてくる。え?!何でオーフェリアがここに?!

 

一瞬、驚いたが直ぐにオーフェリアの家に泊まった事を思い出した。

 

てか近い。近いからな?俺の顔とオーフェリアの顔の距離は10センチ。少し魔がさしたらキスするくらいの距離だ。

 

俺はさりげなくオーフェリアから距離を取る。

 

「……おはよう。今何時だ?」

 

「7時半。今から朝食を作るけど食べる?」

 

「ん?その前にシャ……いや、何でもない。朝飯貰ってもいいか?」

 

危ねぇ、シャワー借りていいかって聞きそうになっちまった。女の子の寮のシャワーを借りるって何か危ない雰囲気あるからな。

 

「……?よくわからないけど朝食はいるのね?わかったわ」

 

オーフェリアはそう言って起き上がり部屋を出て行った。

 

それに対して俺はいつまでもダラダラしてたら悪いと判断したので、起き上がりオーフェリアの朝食作りを手伝った。

 

 

その際にオーフェリアが「……こうして2人で並んでいると夫婦みたいだわ」と妙な事を言ってきたのでチョップをしたらジト目で睨まれた。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

あ、朝食についてはガチで美味かったです。あーんするのは止めて欲しかったけど。

 

 


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