学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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擬形体対決 アルディVSリムシィ

『さあいよいよ午後の試合が始まります!この試合は今大会一番の変わり種!お互いにアルルカント同士で、代理出場同士、新旧『獅子派』の会長同士、加えて擬形体同士の対決だぁー!』

 

テンションの高い実況に観客席からは大歓声が生じる。既にステージには両擬形体がいる。

 

現『獅子派』会長材木座義輝の代理として出場しているアルディ

 

前『獅子派』会長カミラ・パレートの代理として出場しているリムシィ

 

両者は既に互いに武器を持って構えている。アルディは予選の時同様に真っ赤なハンマー型煌式武装『マグネット』を構え、対するリムシィは左手に予選の時に使っていたアサルトライフル型煌式武装を持ち右手には……

 

 

「おお!それがカミラ殿の作った煌式武装であるか!」

 

「ええ。カミラ様が私の為に作り上げた煌式武装の1つ『ルインゲルツ』です。これで打ち倒してみせましょう木偶の坊」

 

「ふははははっ!望むところである!将軍から賜った煌式武装の真の力を見せてやるとしようか!」

 

「丁度良い機会です。カミラ様と材木座義輝、技術者としてどちらが上からハッキリさせましょうか」

 

言いながら両者は開始地点に向かう。本来ならリムシィはアルディのセーフティとして設定しているのでアルディはリムシィに逆らえないが、今大会ではエルネスタはその設定を解除している。

 

そうこうしている間にも試合開始時間は迫り……

 

 

『王竜星武祭4回戦第3試合、試合開始!』

 

 

 

 

 

 

『王竜星武祭4回戦第3試合、試合開始!』

 

「さて、ついに始まったか……」

 

レヴォルフの生徒会専用の観戦室にて俺がそう呟くと、早速試合は動き出す。

 

アルディが早速防御障壁を展開して、『マグネット』を振るって反発作用を利用して防御障壁を飛ばすと、リムシィは飛行ユニットの出力を上げてそれを回避すると、左手にあるアサルトライフル型煌式武装で攻撃をし始める。

 

それをアルディが当然のごとく防御障壁で防ぎ、反撃とばかりに防御障壁を飛ばす。

 

「予選の時から2人とも同じスタイルですけど……」

 

「……手の内を隠してるに決まってるわ」

 

「それは間違いないね。ただ、その奥の手の出し所次第では勝敗が変わるかも、ね?」

 

シルヴィが俺に確認を取ってくる。シルヴィの言っていることは正しい。正しいっちゃ正しいが……

 

「シルヴィよ、膝から降りてくれないか?」

 

現在シルヴィは俺の膝の上で試合を見ている。右にオーフェリアが、左にノエルが俺の影の腕に抱きついていると、ぶっちゃけヤバい状態だ。他の客が来ない生徒会専用の観戦室だから良かったものの、ここが普通の席だったら俺は完全にど変態扱いされているだろう。

 

そんな事を考えながらシルヴィに頼むも……

 

「嫌、私が勝ち取った場所だから降りない」

 

俺の提案は即座に一蹴される。こうなったシルヴィは頑固だからなぁ……

 

「……狡いわシルヴィア。第3試合が終わったら代わって」

 

「幾らオーフェリアでも今日はダメ。恨むならさっきチョキを出した自分を恨んでね」

 

「で、でも……男の子の膝に座るのは良くないと思います……」

 

「いやいや!最初に八幡君の膝の上に座ろうとしたノエルちゃんに言われたくないからね!」

 

「あ、あぅ……そうでした」

 

ノエルは真っ赤になって俯く。どうしてこうなったかと言うと……

 

 

 

①ノエルが観戦室にやって来る

 

②オーフェリアとシルヴィ、俺の隣は自分達だと言って俺に抱きつく

 

③ノエル、俺の膝の上に乗りたいと頼んできた

 

④オーフェリアとシルヴィ、全力でノエルを止めにかかる

 

⑤揉めるに揉めた末にジャンケンで決める事になる

 

⑥シルヴィのグーがオーフェリアとノエルのチョキを打ち破る。

 

⑦シルヴィ、俺の膝の上に座る

 

……って感じだ。しかしノエルが俺の膝の上に座りたいと言ってきた時はビックリしたわ。自由になってからも普段余り感情を出さないオーフェリアも驚いていたし。

 

閑話休題……

 

ともあれ、今は揉めている3人を止めないといけないな。

 

「とりあえず3人とも落ち着け。今は試合を見るのに集中しろ」

 

元々試合を見る為にここにいるんだ。喧嘩をするんだったらシルヴィを膝から降ろす事も考えないといけない。

 

「「「……わかったわ(わかったよ)(わかりました)」」」

 

俺が頼み込むと3人も不毛な争いと判断したのか大人しくなる。良かった良かった。女子の喧嘩は苦手なんだよな……

 

内心安堵の息を吐きながらステージを見ると……

 

「おっ、リムシィの右手にある銃、凄いね」

 

シルヴィの言う通り、空中にいるリムシィの右手にある巨大な銃ーーーそれこそリムシィの身長以上の大きさの銃から放たれる高密度エネルギーがアルディの放つ防御障壁を打ち破りアルディの元に向かう。

 

アルディとリムシィは遠く離れているのでアルディも簡単に高密度エネルギーを回避するが、あの防御障壁を打ち破る手段を持っているのは大きい。

 

アルディも負けじと防御障壁を再度放つと、リムシィは飛行ユニットの出力を上げてギリギリの所で回避する。

 

その事から察するにリムシィの右手にある巨大な銃は連射は出来ないのだろう。まあアレほどの威力の高密度エネルギーを連射が出来るとしたら純星煌式武装じゃないと無理だろう。

 

そんな事を俺の左腕に抱きついているノエルが肩を叩いてくる。

 

「どうしたノエル?」

 

「はい。試合を見る限りリムシィさんの方が有利……ですよね?」

 

「まあな」

 

今の所、お互いに攻撃を一発も食らってないが有利なのはリムシィだろう。何せリムシィは飛行ユニットによって飛べる上に防御障壁を打ち破る手段を持っている。対するアルディは遠距離攻撃は『マグネット』の反発作用による防御障壁の射出のみ。普通に考えればリムシィの方が圧倒的に有利だろう。

 

しかし……

 

(カミラ・パレートがアルディの防御障壁を打ち破る煌式武装を用意したんだ。材木座もそれに匹敵する煌式武装を用意している筈なんだがな……)

 

そこが腑に落ちない。材木座はウザいが煌式武装の開発についてはガチで天才だと思っている。そんな材木座が防御障壁を射出する煌式武装だけしか用意していないというのは考え難い。何か秘策を隠してる気がする。

 

そう思った時だった。

 

『おおっと!ここでリムシィ選手、追加武装を使い出したぁっ!』

 

実況のそんな声が聞こえてきたので改めてステージを見ると……

 

 

 

 

 

 

 

 

「対自立式擬形体用浮遊機雷、起動。散布開始」

 

ステージ上空にいるリムシィがそう叫ぶと、リムシィのユニットから大量の浮遊機雷が放たれて、真っ直ぐにアルディに向かう。

 

「むぅぅぅっ!嫌な予感がするのである!」

 

言うなりアルディは『マグネット』構えて振るい防御障壁を機雷に向けて放つ。すると機雷は10個以上纏めて吹き飛んだ。

 

しかし……

 

「それならこれでどうでしょうか?」

 

リムシィがそう呟くと機雷は真っ直ぐではなく、アルディを囲むように動き出す。アルディは防御障壁を飛ばして次々と破壊するも焼け石に水、遂に機雷はアルディとの距離を10メートルまで縮めた。

 

「おっと!これは危険であるな!」

 

機雷の威力は高くないが校章が破壊されたら負けである以上、馬鹿正直に食らう訳にはいかないのでアルディはバックステップて後ろに下がる。

 

機雷の爆発は防御障壁で防げるが、その間に防御障壁を打ち破ることが出来る『ルインゲルツ』を使われたら危険と判断したアルディは防御障壁を使わずに機雷から距離を取る。

 

幸い機雷の速度はそこまで速くないので捕まることはないが……

 

『ここでアルディ選手、壁に追い込まれたぁっ!』

 

『機雷で逃げ場を奪い高密度エネルギーで防御障壁ごと吹き飛ばす算段のようだな』

 

アルディが機雷から逃げているといつの間にかアルディはステージの壁に追い込まれていた。防御障壁を飛ばして機雷を少しずつ破壊しているが……

 

(機雷が全て破壊されるより私が貴方を仕留める方が早いでしょう。ですが……材木座義輝が何か奥の手を用意していない筈がないので確実に行きましょう)

 

リムシィはそう判断を下して左手に持つアサルトライフルを捨てて、鳳凰星武祭で沙々宮紗夜と戦った時に使用したルインシャレフを起動して……

 

「接続開始」

 

リムシィがそう呟くとルインゲルツとルインシャレフがリムシィの身体の前で合わさり、最初からそうであったかのような超巨大な煌式武装が姿を現わす。

 

「ルインドラーヴァルフーーーチャージ開始ーーー私の勝ちです、木偶の坊」

 

リムシィは淡々と呟きながら機雷をアルディに寄せながら、ルインドラーヴァルフのチャージを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃはー!凄いじゃんカミラ!浮遊機雷にしても、複合煌式武装にしても凄い物を隠し持っているじゃん!」

 

「おねーちゃんすごーい!」

 

シリウスドームのアルルカント特別観覧席にてエルネスタとレナティがハイテンションで手を叩く。

 

「一応レナティや沙々宮との戦いまで見せたくなかったんだがな……それよりも材木座」

 

「……なんであるか?」

 

カミラは冷静な表情で材木座に話しかける。対する材木座はいつもの調子に乗ったドヤ顔ではなく神妙な表情で返事をする。

 

「奥の手は出さないのか?確かにアルディの防御障壁の性質を理解して反発作用を利用して射出する『マグネット』は凄い煌式武装だ。だが……」

 

「……それだけでは壁を越えた人間には勝てないと?」

 

「ああ。それはお前が1番よくわかっている筈だ。そしてお前がその事実を前にして何の策も練らないなどあり得ない」

 

「だよね。将軍ちゃんって普段の行動はバカだけど、会議の時や星武祭の時は真面目だし、何か策を握ってるんでしょ?」

 

カミラは材木座の小説の腕については最低レベルと評しているが、煌式武装の開発に関しては高く評価している。

 

そんな彼が『マグネット』だけ用意したぐらいで優勝すると断言する筈はない。だからカミラは材木座に奥の手があると尋ねたのだ。

 

それに対して材木座は……

 

「奥の手?ステージを見るがよい。そろそろ出すであろうから。それとエルネスタ殿は後でしばき倒す」

 

材木座がそう言ったのでカミラもエルネスタもステージを見ると、リムシィはルインドラーヴァルフのチャージをしながら機雷をアルディに寄せていて、アルディは……

 

 

『何だあっ!ここでアルディ選手の右腕に巨大なガントレットの様な物が装備されたぁ!』

 

自身の右腕に薄い水色の巨大なガントレットを装備していた。同時にアルディが前方に防御障壁を顕現する。

 

そして次の瞬間、ガントレットから光が放たれて……

 

 

「馬鹿なっ!そんな筈がっ!」

 

「嘘でしょ?!」

 

「ふみゅー?」

 

カミラと珍しくエルネスタも驚きを露わにしてステージの光景を凝視していた。一方のレナティは不思議そうな表情をしながらステージを見ていて……

 

「ふふふっ……!さあ見るが良い!我が『スプレッダー』を!」

 

材木座はいつもとは違う笑みを浮かべいた。

 

 

 

 

「ルインドラーヴァルフーーーチャージ完了」

 

言いながらリムシィがルインドラーヴァルフのチャージを完了してアルディに標準を合わせようとした時だった。

 

『何だあっ!ここでアルディ選手の右腕に巨大なガントレットの様な物が装備されたぁ!』

 

実況のそんな声が聞こえたので狙いを定めながらアルディを見ると、アルディの右腕に薄い水色の巨大なガントレットを装備していた。同時にアルディが前方に防御障壁を顕現して……

 

 

「『スプレッダー』発動である!」

 

次の瞬間、ガントレットーーー『スプレッダー』から水色の光が放たれて……

 

「なっ……!」

 

アルディの前方に展開されていた防御障壁がバラバラに分解された。

 

しかし防御障壁は消える事なくアルディの前方に顕現されている。先程まであった1枚の巨大な防御障壁は、小さい防御障壁100枚以上に分割されていた。

 

同時にアルディは『マグネット』を構えて振りかぶる。それを見たリムシィはアルディの行動パターンを察知して、ルインドラーヴァルフを放とうとするも、アルディの方が一歩早く……

 

「むぅぅぅんっ!」

 

アルディが低い声を出しながら『マグネット』を大量の防御障壁に向かって振るう。同時に『マグネット』の先端から火花が生まれ、それが大量の防御障壁に当たり……

 

ドドドドドドドドッ……

 

「しまった……!」

 

100を超えた小型防御障壁は『マグネット』の効果で高速で放たれ、アルディ周辺に浮いていた機雷を始め、リムシィの飛行ユニットやカミラの作り上げた最高傑作のルインドラーヴァルフを穿った。

 

それによって機雷は全て消失して、飛行ユニットを破壊されたリムシィは地面へと落下する。

 

『なななな何と!アルディ選手の右腕に装備されたガントレットから光が出たかと思えば防御障壁はバラバラに分解され、それを射出したぁ!』

 

『ガントレットは防御障壁の散弾銃を作るための道具のような物だな。防御障壁は分解されても威力そのものは変化しないだろう。あのガントレット……恐ろしい煌式武装だな』

 

ヘルガはガントレットーーー『スプレッダー』は防御障壁の散弾銃を作る為の道具ーーー防御障壁を分割する能力と言っているが、それは正確な解ではない。

 

『スプレッダー』は防御障壁の形状を変える能力である。先程のように分割したりするだけではなく、防御障壁を小さく凝縮したり、大きく広げて強度が下がる代わり防御範囲を広めたりと様々な事が出来る煌式武装である。

 

実況と解説の声がステージに響く中、リムシィは体を起こそうとするが……

 

「くっ……!」

 

次の瞬間、リムシィのの真ん前に防御障壁が展開されたかと思えば、アルディの右腕にある『スプレッダー』が光り、防御障壁は大きく広がりリムシィに覆い被さって身体の自由を奪う。

 

同時にアルディが距離を詰めてきて『マグネット』を突きつける。

 

「我輩の勝ちであるなリムシィ」

 

アルディは高らかにそう告げる。それを聞いたリムシィは鳳凰星武祭以来に悔しい感情が湧き上がる。

 

しかし既に自分自身でも負けを認めている。どう足掻いてもアルディには勝てないと認めてしまっている。

 

「……不本意ですが私の敗北です、木偶の坊」

 

リムシィはため息混じりにそう告げると、胸の校章が判定を下す。

 

『試合終了!勝者、材木座義輝!』

 

機械音声が代理人である材木座の名前を高らかに宣言して、一拍置いて大歓声が沸き起こった。

 

擬形体同士の異色対決は材木座とアルディに軍配が上がって幕を下ろしたのだった。


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