学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は恋人2人と無意識にイチャついて、クインヴェール専用観戦室の空気を甘くする。

「あ、おかえり八幡君にオーフェリア。チーム・赫夜は準々決勝進出おめでとー」

 

クインヴェールの専用の観戦室に戻るとシルヴィが笑顔で手を振ってきた。やっぱり可愛い。少し離れ離れになっただけなのに懐かしさを感じる。マジで次からシルヴィがアスタリスクを出る時は俺とオーフェリアも一緒に行くべきだろう。

 

「ただいま。弁当を買ってきたぞ」

 

言いながら弁当の入ったビニール袋をテーブルの上に置くと……

 

「弁当来たー!」

 

「待ちに待った昼食だぜ!」

 

「試合に備えてしっかり食べないとね!」

 

「……お腹空いた」

 

ルサールカ(マフレナを除く)が我先にとビニール袋に群がる。毎回思うがルサールカってライブの時や試合の時を除いたらアイドルからかけ離れているな……

 

「す、すみません。いただきます……」

 

最後にマフレナがおずおずとビニール袋に近寄る。やっぱりこいつはルサールカの清涼剤だな。今度胃薬を買ってやるべきか?

 

ともあれ……

 

「俺も腹が減ったし食うか」

 

言いながら俺はシャケ弁を取り出す。色々迷ったがシンプルが1番と判断した故だ。同時にオーフェリアとシルヴィの分のシャケ弁を取り出してビニール袋をチーム・赫夜の5人に渡す。

 

「お前らにはどれを買ったら良いか分からなかったから適当に選んだ。そん中から選んでくれや」

 

「はーい!」

 

若宮が律儀に手を挙げてからビニール袋から昼食を取り出して、5人と話し合いを始める。そんな光景を見ながらも俺は恋人2人とシャケ弁の蓋を開けて……

 

「「「いただきます」」」

 

食べ始める。口の中にシャケが入ると旨味が広がる。元々シャケ弁はそこそこ人気の弁当だが、恋人2人と食べていると一層美味く感じるな。

 

「「八幡(君)」」

 

するといきなり両肩を叩かれたので左右をチラチラ見ると、オーフェリアとシルヴィがシャケを箸に摘んで……

 

「「あーん」」

 

俺に突きつけてくる。

 

「いやいや……違う弁当ならまだしも同じ弁当で食べさし合いは要らなくね?」

 

何でわざわざ同じ弁当でするんだかわからない。疑問に感じていると恋人2人は首を横に振り……

 

「違うよ八幡君。私達は八幡君にあーんをしたいだけだよ」

 

「……ええ。あーんをされている八幡は可愛いから」

 

再度箸を突きつけてくる。シルヴィはニコニコ、オーフェリアは薄い笑みを浮かべて更に距離を詰めてくる。俺の膝に空いている手を添えながら、俺の腕に柔らかな胸を押し付けながら。

 

「(うん、やっぱりこいつらには逆らえんな……)わかったよ、あーん」

 

言いながら口を開けると2人は笑いながら頷き……

 

「「八幡(君)、あーん」」

 

俺の口の中にシャケを入れてくる。同時に口の中に先程口にしたシャケ以上の旨味を感じる。これはアレか?シャケそのものの味に加えてオーフェリアとシルヴィの愛情が含まれているからか?

 

だとしたらマジで……

 

「八幡君八幡君、美味しい?」

 

「最高だな」

 

2人の愛情があればもう何もいらないし、何も怖くない。……あれ?この後に首を齧られたりしないよな?

 

「えへへー、ありがとう」

 

「嬉しいわ……大好き」

 

俺の返答に2人は嬉しそうにしながら更に強く抱きついてくる。本当に可愛過ぎる。ここが自宅だったら今直ぐイチャイチャしてる自信がある位だ。

 

内心そんな事を考えながら2人の抱擁を受け入れていると……

 

『甘いっ!』

 

そんな叫び声が聞こえてくるので、顔を上げるとルサールカとチーム・赫夜の10人が全員こちらを見て差はあれど顔を赤くしていた。

 

「さっきから黙って見てればこれ見よがしにイチャイチャと……!」

 

「アレなの?!彼氏が居ない私達に対しての嫌味か?!」

 

「イチャイチャするなら自宅でしなさいよー?!」

 

「……ブラックコーヒーが飲みたくなってきたわ」

 

トゥーリア、ミルシェ、モニカ、パイヴィが揃って文句を言いながら詰め寄ってくる。いや、俺達にとってはこの程度他愛のやり取りなんだが……

 

そう言いたいが向こうにとっては違うようだし、口にするのは止めておこう。口にしたら更に騒がしくなりそうだし。

 

「あー……とりあえず悪かったな以後気をつける」

 

とりあえず形だけ詰め寄ってくる4人に謝る。俺に抱きつく2人も俺の意図を理解したからか、特に何も言わずに少しだけ俺から距離を取る。

 

「全く……あー、私も彼氏が欲しいなー」

 

「意外だな。てっきりお前は興味ないと思っていたがな」

 

ミルシェのボヤキにそう呟く。

 

「うーん。昔はそこまで興味なかったけど、シルヴィアが毎日アンタの事を楽しそうに話してるのを聞いてると、彼氏ってどんなものかって興味が湧いたんだよねー。まあ今の所良い男は見つからないし、理事長は反対するだろうから当分先だと思うけど」

 

「そ、そうか……ちなみにペトラさんってまだ俺達の交際に反対してるの?」

 

「それは、もう、メチャクチャに。おかげで私達も彼氏の有無をしょっちゅう確認されてるよ」

 

「あはは……ごめんごめん」

 

ミルシェがジト目で俺達を見るとシルヴィが苦笑をしながら謝る。まあ世界の歌姫に彼氏、それも他の女も愛している彼氏が居ない居たら間違いなく大騒動になるだろう。

 

「あ、でも昨日理事長が、もしチーム・赫夜が今回の獅鷲星武祭で準優勝以上の結果を出して、アンタと『孤毒の魔女』がレヴォルフ卒業後にW=Wに就職してくれるなら、あんた達の関係が世間にバレても引き裂かないとか言ってたよ」

 

「本当?!」

 

「マジで!?」

 

「……嘘じゃないわよね?」

 

ミルシェの言葉に俺達3人が思わず驚き、ミルシェに詰め寄ってしまう。

 

「あ、う、うん。昨日理事長とあんた達の関係について聞いてみたらそんなことを言ってたよ」

 

なるほどな……クインヴェールひいてはW=Wに貢献すれば認めてくれるという事だろう。

 

「マジか……良し、若宮達。絶対に優勝してくれ」

 

元々優勝して欲しいと思っていたが、その気持ちは更に強くなった。これは是が非でも優勝して欲しい。

 

「もちろん!夢を叶える為にも、比企谷君達が平和に結婚出来る為にも頑張るよ!」

 

若宮が力強く頷くと、ため息を吐きながら呆れた表情を浮かべるフロックハート以外の赫夜のメンバーは小さく頷く。本当に良い子達だな。そしてフロックハートについては諜報機関の人間故に、俺達の関係についてあれこれ言われてそうだしマジで済まん。

 

「そうか……期待してるからな。だから先ずは……」

 

言いながら俺はチラッとステージを見ると……

 

『さあ時間となりました!これより5回戦第5試合が始まります!先ずは東ゲート、前大会の覇者にして、今大会優勝候補筆頭、聖ガラードワースのチーム・ランスロットの登場だぁっ!』

 

「優勝候補筆頭の試合を目に焼き付けておくべきだな」

 

ステージの東ゲートからは5人の騎士が粛々と歩いている。彼らとクインヴェールの専用観戦室にいる俺達の距離は200メートル以上離れているのに圧倒的なプレッシャーを感じる。

 

チーム・ランスロットの面々はフェアクロフさんを除いて絶対的な強さを持っている訳ではない。俺自身タイマンならフェアクロフさん以外には負ける気がしないし。

 

しかしタイマンではなく、チーム戦なら5人全員が1つの存在となり絶対的な力を発揮する。よく漫画とかで『チームワークによって1+1は3や4にもなる』なんて言葉が良くあるが、チーム・ランスロットの場合、1+1+1+1+1=5ではなく10や15になる感じだ。

 

「そうだね……もう次の次で当たるんだし、良く見とかないと……!」

 

若宮は観戦室の窓にへばり付き、食い入るようにステージを見る。熱心なのは良いが、窓にへばり付くな。

 

内心呆れている間にも試合開始の合図が起こり、試合が始まったが……

 

「圧倒的だな」

 

『うん(ええ)(はい)(そうね)』

 

俺の言葉にこの場にいる全員が肯定の返事をする。対戦チームも弱くはないが相手が悪過ぎた。

 

ブランシャールが光の翼で先制攻撃をして主導権を握ると、フェアクロフさんが『白濾の魔剣』で相手の防御をすり抜けながら校章だけを断ち切り、ケヴィンさんとライオネルさんが持ち前のコンビネーションで相手の陣形を崩して、パーシヴァルの『贖罪の錘角』で相手の精神を削る。

 

シンプルな戦術だが、個々のメンバーの実力が高いので、恐ろしいくらい正確で、隙がない。並みのチームではアレを崩せる事なく、下手をすれば崩そうとする前に負けるだろう。

 

 

そうこう考えいる間に、パーシヴァルの『贖罪の錘角』による金色の光によって試合は終了した。大歓声があがるなか、チーム・ランスロットの面々は現れた時と同じように粛々と退場し始める。

 

その時だった。

 

(今、一瞬……フェアクロフさんと目が合ったような……)

 

気の所為か知らないが、フェアクロフさんが上を見て俺を捉えたような気がした。

 

慌ててステージを見返してみるが、フェアクロフさんは既に視線を外して横を歩くブランシャールと話をしている。やはり気の所為だったのか?

 

「うーん。やっぱり勝てる未来が見えないなー」

 

窓にへばり付いていた若宮が悔しそうに呻く。まあ確かに、俺自身チーム・赫夜がチーム・ランスロットに勝てる未来は殆ど見えない。

 

(まあ全く見えない訳ではないけどな……)

 

一応勝てる未来は見えない事はない。作戦が全て上手くいけば或いは……って、レベルだが。だから俺のやる事は準決勝までに少しでも勝てる未来を見つけることだ。選択肢を増やせば勝率は上がるのだから。

 

そこまで考えていると……

 

「負けるんじゃないよ!あんた達を倒すのは私達なんだから決勝まで上がってきなよ!」

 

ミルシェが若宮に激励をする。どうやらミルシェは新年早々に行った試合の敗北によって生まれた屈辱を解消したいのだろう。瞳からは強い力を感じる。

 

「そうだそうだ!あの時の屈辱は決勝のシリウスドームで晴らしてやるぜ!」

 

トゥーリアもテンションを高めながら叫ぶ。後ろにいるモニカとパイヴィは力強く頷き、マフレナも苦笑をしながらも止めていない。どうやら全員がリベンジマッチを望んでいるようだ。

 

それに対してチーム・赫夜は……

 

『はい!』

 

同じように力強く返事をする。ライバル同士が決勝で会おう発言……平塚先生が聞いたら少年漫画云々言ってテンションを上げそうだな。

 

(いかん、容易に想像出来る。てかそんなんじゃいつまでも男が寄らなそうだ)

 

俺はもう彼女がいるんで違う人を探してくださいな。

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!今何か誰かに酷いことを言われたような……!」

 

「何を言っているんですか平塚先生。それより鶴見先生の結婚式は再来週の日曜日に決まりましたから予定を空けておくように」

 

「はい……!うぅ……結婚したい……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

何か今平塚先生の涙を見た気がする。誰かの結婚式にでも参加するのか?

 

「八幡君?」

 

そんな事を考えているとシルヴィが肩を叩いて心配そうな表情で顔を覗き込んでいた。見ればオーフェリアも似たような表情を浮かべている。

 

「ん?あ、いや、少し考え事をしただけだから気にすんな」

 

言いながら2人の頭をクシャクシャしながら顔を上げる。実際2人に心配されるような事を考えていたわけじゃないからな。

 

「なら良いけど……何か嫌な想像でもしたの?」

 

「……もしも不安な事があったら直ぐに言って」

 

シルヴィとオーフェリアは不安な表情を消す事なく俺に詰め寄ってくる。参ったな……下らない事を考えていたのにそこまで心配されるとは思わなかったぞ。

 

こういう時は予想外のことを言って拍子抜けさせるのが1番だろう。そうなると……

 

「い、いや、アレだ。少しエロい事を考えて……」

 

それ以上は言えなかった。何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

「ヘェ〜……何を考えていたのか心配したのに考えていたのはエッチな事なんだ〜?」

 

「……是非聞かせて貰いたいわね」

 

俺の恋人2人が迫力のある笑顔(瞳は絶対零度の眼差し)を浮かべながら俺に両腕を掴んできたからだ。ヤバい、これは間違えたな。

 

慌ててルサールカとチーム・赫夜に助けを求めようとするも……

 

「さ、さーて!もう直ぐ試合だし控え室に行こう!」

 

『おー!』

 

「……私達も明日に備えて学園で軽いトレーニングをしましょう」

 

「そ、そうだね……」

 

両チームともそそくさと観戦室から出て行った。その速さはまさに神速と評することが出来るほどだ。

 

(クソッ……こんなことになるなら中学時代の忌々しい過去あたりを言っとけば……!)

 

しかし覆水盆に返らず。2人は凄い笑みを浮かべながら俺に近寄り……

 

 

 

 

 

 

 

「「八幡(君)、そんなにエッチな事を考えたいなら私達以外では考えられないようにしてあげる」」

 

俺の首に腕を絡めて2人同時に俺の口の中に舌を入れて絡めてきた。

 

その後は言うまでもなく、3人で獣のように激しくキスを重ね続けて、夜になったら限界まで搾り取ると言われた。対する俺は2人の要求に対して逆らわずに受ける事を約束したのだった。

 

 


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