学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は最強に挑む

「ここか……」

 

俺は今、再開発エリアの外れにある廃ビルの前に立っている。

 

今いる場所は再開発エリアの中でも歓楽街のようにある種の秩序が形成されている場所とは程遠く、犯罪者達がいる無法地帯だ。

 

こんな場所が集合場所なのか?

 

疑問に思っていると……

 

 

「あ、比企谷君!」

 

後ろから声をかけられたので振り向くと、そこには若宮率いるチーム・赫夜の5人がいた。クインヴェールの学生がこんな場所にいるのは凄い場違い感がするな。

 

「あれ?今日はオーフェリアちゃんはいないの?」

 

「あいつは用事があるからな」

 

オーフェリアはリースフェルトと遊びに行っているのでいない。もしも俺の事情を知ったらこっちに来るだろな。

 

「まあそれは今は関係ない話だ。それで万有天羅はこのビルの中にいるんだな?」

 

「うん。それと呼んじゃってゴメンね?」

 

若宮が申し訳なさそうに謝ってくるが、実際がそこまで怒っていない。昨日の話を聞いた限りじゃ若宮はそこまで悪くないし。

 

 

 

 

昨日何があったかと言うと、

 

①若宮が俺に万有天羅と戦ってくれと頼む

 

②俺が事情を尋ねる

 

③若宮が事情を説明する

 

 

そんでその事情が……

 

①若宮達が街に出掛けた際に万有天羅が道に迷って困っていた

 

②若宮達が助けたら、万有天羅はお礼に稽古を付けてやると言ってきた

 

③稽古を付けて貰って、その後に紆余曲折あって獅鷲星武祭まで鍛えて貰う事になった

 

④鍛えて貰うと決まった後に、条件として万有天羅は若宮達の背後にいる存在と勝負がしたいと言ってきた

 

 

って感じだ。

 

 

実際の所若宮達は俺の名前を奴に言ってないらしく万有天羅が見抜いたようだ。それに話によると万有天羅は若宮達の師匠には気がついたらしいが、それが俺だというのは気付いてないらしい。それなら若宮達を責める理由はない。

 

「とりあえず入るぞ?詳しい事情は中に入ってからだ」

 

そう言いながら俺は廃ビルに入って階段を上る。崩れ落ちた壁などから差し込む冬の弱々しい陽光が、周囲を舞い散る埃を照らしている。

 

そんな埃が舞い散る中俺は……

 

 

 

 

「ほっほっほ!まさか美奈兎達の背後にいる者がお主とはな、比企谷八幡」

 

目の前にいる界龍の制服を着ている童女から目を逸らせずにいた。身長から察するに10歳くらいだろう。

 

しかし俺は目の前にいる小柄な少女に気圧されている。アスタリスクにいる人間なら誰でも知っていると言っても良いくらいの人間だからだ。

 

 

范星露

 

界龍第七学院の生徒会長にして序列1位で、特別な二つ名として伝承されている万有天羅の名を持つ者。

 

世間では俺の恋人のオーフェリアと並んで、別種の存在と言われている少女。何せあのオーフェリアでさえ以前に「最盛期の私でも彼女に勝てるかはわからない」と言ったくらいだ。

 

しかもオーフェリアは身体から噴き出す瘴気を抑える為に力の大部分を失ったので、アスタリスク最強は目の前にいる少女だろう。

 

俺は気圧されながらも何とか口を開ける。

 

「一応聞くが、あんたが万有天羅でいいんだな?」

 

「いかにも、儂が范星露じゃ。以前からお主には興味があってのう。前回の王竜星武祭での歌姫との戦いは実に見事じゃった。今からでもうちに来んか?儂が鍛えたならば、主は間違いなく本気の儂と遊べる域に辿り着けるであろう」

 

そう言いながら目をキラキラさせて俺の手を掴んでくる。

 

「いやいや。転校は星武憲章違反だからな?」

 

「むう……」

 

星露は残念そうに唸る。どんだけ残念なんだよ?シルヴィから星露はバトルジャンキーとは聞いていたがどうやら本当のようだ。

 

まあそれはともかく真面目な話、転校は悪くない話だ。オーフェリアが自由になった以上レヴォルフに未練ないし。星武憲章が無かったら真剣に考えていただろう。

 

「それより本題に入るぞ?お前は若宮達に稽古を付ける条件として、俺との戦いを要求したんでいいんだな?」

 

「うむ。まあこれについては儂の好奇心を満たす為であるがの」

 

やっぱりな。単純に俺と戦いたいから稽古を盾にしたのだろう。

 

そう思いながら俺は目の前にいる星露を見る。確かに若宮達がこいつに稽古を付けて貰うのはメリットがありまくりだ。

 

何せ星露の弟子は界龍に50人くらいいるが、全員が序列入りしていて、冒頭の十二人に至っては全員が星露の弟子である。まあ正確には4位の梅小路冬香は正式な弟子じゃないらしいが。

 

そんな風に界龍の猛者を統括する星露に鍛えて貰うのはまたとないチャンスだ。

 

本来ならオーフェリアに匹敵する奴なんかと戦うのは真っ平御免だが、俺が拒否して赫夜のメンバーから稽古を取り上げるのは勿体無い。

 

その事から……

 

「……わかった。じゃあ今からやるのか?」

 

勝負を受ける事にした。すると星露は年相応の笑みを浮かべてくる。

 

「うむ!儂を滾らせれる事を楽しみにしているぞ」

 

言うなり星露が地面を叩くと、星露の周囲に鮮やかな緑色の光が現れて、辺り一面に放たれた。緑色の光は余りの眩しさに俺はつい目を閉じてしまう。

 

暫くの間、目を瞑っていると……

 

「もう目を開いても大丈夫じゃぞ?」

 

星露の声が聞こえたのでおそるおそる目を開けると…….

 

「えっ?!何ここ?!」

 

後ろから若宮が俺の気持ちを代弁してくれた。

 

そこは板張りの広間だった。床は廃ビルのコンクリートではなく、板張りの床で、辺りには蝋燭と思しき灯りが無数に照らしていた。

 

しかも周りを見渡しても壁らしきものは見えない、広大無辺で静謐な空間に俺達は立っていた。

 

「ほっほっほ。儂とおぬしが戦ったらあのような廃墟は崩れるであろうからな」

 

何事もないかのように星露は笑うが、こんな簡単に異空間を作り出すとは予想外だった。

 

(世間では万有天羅は何でもあり、と評されているがどうやらマジっぽいな。これは気を引き締めないと一瞬でやられるだろう)

 

「……若宮達は下がってろ。巻き添えを食らっても知らねぇぞ?」

 

「う、うん」

 

そう言いながら俺は星辰力を辺りに噴き出して臨戦態勢をとる。相手は最強の存在だ。近くにいて巻き込まれたら笑えないしな。

 

赫夜のメンバーがある程度距離を取ると星露は、

 

 

 

「ふむ、では始めるとしようか」

 

刹那、暴力的な威圧感が吹き荒れる。

 

ただ立っているだけなのに、星露の圧倒的な雰囲気は俺の身体をビシバシ鞭打ってくる。

 

オーフェリアの威圧感は見た者全てに恐怖を与えるものだが、星露のそれは見た者全てを押し潰すような破壊の塊である。

 

ハッキリ言って次元が違う。本気のオーフェリアの威圧を感じていなかったら腰が引けていただろう。

 

しかし引くわけにはいかない。星露に勝てるとは微塵も思っていないが、星露を楽しませるくらいはしないと若宮達の稽古の話が無かった事にされるかもしれないし。

 

「ああ。始めようぜ」

 

俺は内心自分に喝を入れて星露と向き合う。それを見た星露は舌舐めずりをするかのような笑みを浮かべて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではーーー参るぞ」

 

瞬間、星露が目の前から消えた。

 

それと同時に俺は寒気を感じ、本能的に腕に星辰力を込めて腕を交差させて守りの態勢に入る。

 

直後星露が目の前に現れて俺の腕に蹴りを放ってきた。それによって腕に激痛が走る。その威力はまさに桁違いと言ってもいいだろう。

 

(痛えなおい!)

 

俺は痛みに耐えながら内心毒づき、反撃とばかりに蹴りを放つ。対して星露はふわりと舞うように後ろに跳んで簡単に回避する。

 

しかしこれは予想の範疇だ。こんな蹴り序列入りなら簡単に避けれるし。

 

だから、

 

「啄め、影鴉」

 

俺がそう呟くと、影から鴉が現れる。その数150。鴉は影から出ると一度鳴いてから一斉に空中に漂っている星露に突撃する。一度食らいつけば相手の肉を食べ尽くすまで啄む影鴉だ。

 

しかしこんな技で星露を倒せるなんて露ほどにも思っていない。これも囮だ。

 

本命は……

 

「纏えーーー影狼修羅鎧」

 

そう叫ぶと影に星辰力を込めて、自身の身体に鎧を纏わせる。影鴉は影狼修羅鎧を纏う為の時間稼ぎだ。

 

影狼修羅鎧が身に纏いだす中、前を見ると星露は影鴉に捕まる前に地面に着地する。

 

そして鎧を纏った俺が星露に突っ込むと同時に、

 

「喝!」

 

そう言って地面を蹴る。すると暴力的な突風が星露の足元から涌き上がり、周囲に向かって襲いかかる。

 

それは俺や影鴉も例外ではなく……

 

「ぐっ……!」

 

鎧越しでも凄まじい力を感じる。

 

影狼修羅鎧を纏った俺でも力を感じるのだ。影鴉に耐え切れる筈もなく、全て吹き飛ばされて俺の影に戻った。

 

しかし俺は、身体に感じる圧力や影鴉が吹き飛ばされたのも全て無視して星露に殴りかかる。影狼修羅鎧を纏った右ストレート、影狼神槍を除いたら最大の一撃を目の前にいる少女に放つ。

 

すると、

 

「ふむ…….」

 

星露は俺の放った一撃を、腕で軽くいなす。今まで避けたり防がれたりされた事はあるがいなされたのは初めてだ。

 

(やっぱりこいつは次元が違うな……)

 

そう思いながら俺は拳をいなした星露に蹴りを放つ。星露は軽くジャンプして回避したので、

 

「ふんっ!」

 

今度は左ストレートを星露にぶちかます。その一撃は真っ直ぐ星露に向かっていき、星露に直撃ーーーしたように見えた。

 

しかし拳が星露に直撃すると同時に星露の姿は陽炎のように揺らいで消えた。おそらく星仙術の類だろう。

 

その直後、空中から10人の星露が虚空から現れて、一斉に俺に襲いかかってくる。

 

星仙術に対して詳しくない俺にはどれが本物の星露か見分ける事は出来ない。だから……

 

「影の刃軍」

 

鎧の全身から300を超える刃を出して10人纏めて攻撃した。わからない以上全員纏めて攻撃すればいいだけだ。影の刃軍は一斉に10人の星露の身体を串刺しにしようとする。

 

するとその内の1人の星露が小さな手を振って当たりそうな影の刃を破壊した。それと同時に他の星露9人が消えた。どうやらあいつが本物か……

 

そう思いながら俺は未だに影の刃軍を破壊している本物の星露に向けて右ストレートをぶちかます。

 

対して星露も今度は避けずに迎撃を選び、俺の右腕に向かって蹴りを放ってきた。

 

瞬間、板張りの広間に轟音が響き、俺の足元がクレーター状に窪んだ。俺と星露の一撃に床が耐え切れなかったのだろう。

 

そして俺の右腕には激痛が走る。骨折までとはいかないが、それに近いくらいの激痛が襲いかかってくる。開幕直後にも星露の蹴りを食らったが、今回の蹴りはアレよりも数段破壊力が上だ。

 

最初に蹴りは影狼修羅鎧抜きでも耐えれたが、今の蹴りは影狼修羅鎧有りでも最初の蹴りと同じくらいの痛みを感じるし。その事から星露は徐々にギアを上げている事になる。

 

つまり長期戦は危険だ、

 

そう判断した俺は未だに星露の蹴りとぶつかり合っている為に走る激痛を無視して、左ストレートを放ち星露にぶちかます。

 

「ほほう!」

 

すると星露は楽しそうな声を出して後ろに吹き飛んだ。初めて星露の身体に一撃を与えたが、俺の中に喜びは生まれなかった。

 

理由は簡単、さっき左ストレートを星露を当てたが手応えがなかった。おそらく当たる直前に後ろに跳んでダメージを殺したのだろう。

 

実際目の前でピンピンしているし。それどころか満面の笑みでこちらに突っ込んでくるし。

 

俺が改めて警戒している中、星露は瞬時に俺との距離を詰めて掌打を数発放ってくる。対する俺も迎撃態勢に入り星露と殴り合いを始める。

 

瞬間、先程の轟音が何度も響き渡る。星露の拳と俺の拳が当たる度に轟音が生まれ、身体から地面に衝撃が伝わり衝撃波が床をボロボロにする。

 

俺が拳に伝わる衝撃に内心悶えている中、星露は……

 

「楽しいのう!楽しいのう!このように殴り合いをするのも久しぶりじゃのう!」

 

このバトルジャンキーが……イかれてるにも程があるぞ!

 

俺は呆れながら、鎧の上に星辰力を込めて一段と強い一撃を放つ。

 

「むっ!」

 

星露もこの一撃の威力を察したのか、俺と同じように腕に星辰力を込めて放ってくる。

 

星辰力を込めた一撃ーーー流星闘技同士がぶつかった結果……

 

 

「ぐっ……!」

 

俺は押し負けて、地面に叩きつけられる。余りの衝撃に昼に食ったものをリバースしそうになってしまった。

 

「ちっ……!」

 

舌打ちをしながら起き上がると、星露は楽しそうに笑っている。追撃を仕掛けるような素振りは見せてこない。

 

「くくっ……!たまらぬのう!お主と戦えるのは界龍でも暁彗や陽乃、冬香くらいじゃろうな」

 

マジか……今度獅鷲星武祭に出ると噂されている武暁彗がこのくらいの実力なら赫夜のメンバー優勝厳しくね?

 

何せ暁彗1人ならともかく、獅鷲星武祭はチーム戦だ。暁彗のチームメイトは知らないが、間違いなく星露の門下生の中でも上位の人間だろうし。

 

そんな事を考えている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても八幡よ……真の切札を切らない限り儂に勝てる可能性は皆無じゃぞ?」

 

いきなり星露がそんな事を言ってきた。

 

瞬間、息を呑んでしまう。何でこいつが知ってんだ?

 

疑問に思う中、星露はため息を吐く。

 

「儂は万有天羅じゃぞ?儂にはわかる。お主は今着ている鎧と、一撃必殺の黒き槍以外にも切札を持っているのじゃろう?」

 

何でもありの万有天羅か……まあこいつの桁違いの実力からして相手の隠し事を見抜く事も可能なのだろうな。

 

確かに俺には真の切札がある。去年の鳳凰星武祭、より正確にはヴァルダと処刑刀と戦って以降に生み出した最強のカードがある。

 

さっきまで星露と戦ったが、影狼修羅鎧で押し負けた。影狼神槍も奴の実力からして避けられるだろう。

 

なら使うしかないか……

 

そう思った俺は素直に認める。

 

「確かに俺には真の切札があるがこれは余り見せたくない。だから……」

 

言うなり俺は指を鳴らす。すると、

 

「えっ?!な、何これ?!」

 

赫夜のメンバーの顔に影が纏わりつく。そして赫夜のメンバー全員の顔は黒いのっぺらぼうのようになった。

 

「比企谷君、これ何?!」

 

「影のお面だ。こっから先は見せたくない。試合が終わったら外してやるからそれまで待ってろ」

 

そう言って俺は星露と向き合う。

 

「お前にも頼みがある。今から見せる技は誰にも言わないでくれ」

 

この技はヴァルダや処刑刀だけでなく、次回の王竜星武祭に備えての技でもある。出来ることなら知られたくない。

 

すると星露は、

 

「くくっ。それでお主の本気が見れるのなら構わんぞ?」

 

簡単にOKした。界龍のトップがそれでいいのか?

 

疑問に思ったが、直ぐに切り捨てた。万有天羅は自由きままでこその万有天羅だからな。

 

「なら良い。そんじゃあ行くぞ」

 

俺はそう言って、星辰力を高めながら頭の中でイメージを形作る。

 

 

そして

 

 

 

 

 

「呑めーーー影神の終焉神装」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チーム・赫夜が八幡によって頭に影を被せられてから1分後……

 

 

激しい轟音が美奈兎達の耳に聞こえていると、急に頭に被せられていた影が離れて消えた。

 

そして視界が開けた美奈兎達の目に入った光景は……

 

 

「比企谷君?!」

 

ボロボロの床の上で、身体の至る所から血を流しながら膝をついている八幡と……

 

 

「くはははは!まさかここまでとは思わんかったわい!」

 

制服のところどころが裂けて、口から血を流しながら楽しそうに笑っている星露がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くはははは!まさかここまでとは思わんかったわい!」

 

俺は息絶え絶えになっている中、星露の楽しそうな声を聞く。

 

全身からは血が流れ、身体には激痛が走っている。一瞬でも気を抜いたら間違いなく意識を手放すだろう。

 

しかし俺の胸中には苦しみより嬉しさの方が上回っていた。アスタリスク最強の人間に数発攻撃を通せたのだから。

 

星露は未だに笑いながら俺に近寄ってくる。

 

「いやいや、お主は儂が六花に来てから戦った人間の中で一番の強さであったぞ。真の切札に相応しい見事な技であった」

 

「そう、かい……そいつは光栄だねぇ……」

 

「うむ。しかし難しい技であるな。使い所を間違えると命を落とす可能性もあるぞ」

 

だろうな。影神の終焉神装は強力だが未完成の技だ。そもそも今の俺が受けてる傷の内、半分は影神の終焉神装を使った反動によるダメージだし

 

「わかってる……、だが……絶対に極めてみせる……!」

 

処刑刀やヴァルダを倒してウルスラを取り戻す為、オーフェリアを付け狙う全ての敵を倒す為、オーフェリアとシルヴィの3人で幸せに過ごすのを邪魔する奴を倒す為にも絶対に極めてみせるつもりだ。

 

「くくっ……!その信念、実に面白い……!気が変わった」

 

「……は?」

 

いきなりどうしたんだ?

 

「本来なら美奈兎達だけ鍛えようと考えていたが、主も美奈兎達同様に鍛えてやろう」

 

……っ!マジか?俺も星露に鍛えて貰えるだと?

 

「……良いのか?仮にも界龍と敵対するレヴォルフの人間を鍛えて」

 

「それを言うならクインヴェールの美奈兎達もそうであろう。儂としても主の先をこの目で見てみたいしのう」

 

それはありがたい話だ。ヴァルダや処刑刀は強敵だ。その強敵に対し星露に鍛えて貰えるのは本当にありがたい。

 

「ただし以前美奈兎達にも言ったが界龍の手前お主を弟子にするというわけにはいかん。儂個人としては大歓迎だが虎峰あたりは煩く言ってきそうでの」

 

星露はやれやれとばかりにため息を吐くが、虎峰が普通だからな?虎峰からは苦労人の匂いがする……

 

「それはわかったが……」

 

そこまで言うと星露が人差し指を立てて、

 

「その代わりにこの場所で週に一度、実戦で主の相手をしてやろう」

 

つまり私闘の形にして実戦で身に付けろって意味だろう。

 

それでも充分ありがたい。手取り足取り教えて貰えずとも星露に鍛えて貰えるならそれだけで価値のあるものだろうし。

 

「……わかった。それじゃあよろしく頼む」

 

「ほほほ、別に構わんぞ。儂も週に一度お主と戦えるのであるからな」

 

本当に楽しそうに言ってくる。こいつマジで戦闘狂だな。鍛えて貰えるのはありがたいが、週に一度星露と戦うのか……

 

呆れる中、星露が俺やチーム・赫夜の面々を見渡してくる。

 

「くくく……まさか茶葉を買いに外に出たら、このような宝石や奇石を見つけるとは思わなかったわ。覚悟するがよいわ」

 

その言葉に俺達は力強く頷いた。オーフェリアとシルヴィと一緒に幸せを掴む為にも絶対に強くなってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、その日から俺は週に一度、星露と戦いーーー気がつけば俺はレヴォルフ黒学院高等部の2年へと進級していた。




次回から新章突入です。


次回は学園祭前に実家に帰宅します。

学園祭ではイチャイチャして面倒事に巻き込まれて、更にイチャイチャして更なる面倒事に巻き込まれます。

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