学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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よっしゃー!今日死ぬ気でレポートを全て終わらせたぜ!

これで残るはインターンシップの説明会と中間テストだけだ。

って訳で投稿します。ぶっちゃけ1時間ぶっ続けで書いたので誤字脱字が多いかもしれませんがよろしくお願いします


深夜には色々ある。

「さて……んじゃ寝るか」

 

夕食を済ませ部屋割りが決まってから2時間、寝巻きに着替えた俺は案内された客間に敷いてあった布団に入る。

 

「じゃあ消すね」

 

同じ部屋割りとなった天霧が電気を消そうとした時だった。

 

『……八幡、まだ起きてる?』

 

ドア越しにオーフェリアの声が聞こえてきた。

 

「起きてる。何か用か?」

 

そう言って布団から出た俺は部屋を出るとネグリジェ姿のオーフェリアがいた。相変わらずエロいネグリジェだな。

 

そんな事を表に出さずに考えているとオーフェリアが顔を近づけて……

 

「……今日はもう会えないからおやすみのキスをして欲しいのだけど」

 

耳元でキスをねだってくる。耳には艶のある声と小さい吐息が入って煩悩を生み出してくる。ここが自分の家だったら押し倒している自信がある。

 

「はいはい。わかりましたよ」

 

俺は天霧に見られないように客間のドアを閉めながら了承する。少し前の俺なら即座に却下していたが……オーフェリアの上目遣いを見てしまっては逆らえない。この目を見て却下する奴はこの世にいなくてもおかしくないだろう。

 

そう思いながらオーフェリアを抱き寄せて……

 

 

「んっ……」

 

オーフェリアの唇に自身のそれを重ねる。オーフェリアは目を瞑って俺のキスを受け入れる。幸い廊下には誰もいないので目撃される事はなかった。

 

本来ならこのまま続けたいが……

 

「今日はここまで」

 

そう言ってオーフェリアの唇から離れる。これ以上すると歯止めがきかなくなる恐れがあるから止めておこう。

 

「あっ……」

 

するとオーフェリアは残念そうな表情を浮かべるが今回は心を鬼にしてこれ以上のキスはしない。

 

「帰国したらいくらでもしてやるから我慢しろ」

 

そう言って優しく頭を撫でるとオーフェリアはくすぐったそうに目を細める。

 

「んっ……わかったわ。じゃあまた明日」

 

「ああ、また明日」

 

挨拶を交わした俺はオーフェリアが自身が寝る客間に入るまで見送った後、自分が寝る客間のドアを開ける。

 

「おかえり。何を話していたの?」

 

「いや、単におやすみの挨拶をしただけだ。それより電気消すぞ」

 

「あ、うん」

 

天霧からも了承を得たので俺は電気を消して布団に入る。

 

「さて、俺は眠いから直ぐに寝ると思うが……手を出してくるなよ?」

 

念の為天霧に釘を刺しておく。俺はそっちの趣味はないし、恋人も2人いるから手を出してきたらと考えると結構怖い。

 

「だから違うって!俺にそっちの趣味はないから!」

 

「ならいいが……」

 

正直疑わしい。何せ今まで色々な女子を無意識のうちに落としておきながら浮ついた噂が殆どない男だ。寧ろネットでは男に興味があると記されている記事もあるくらいだし。

 

……まあ一応信じてみるか。万が一手を出してきたら影の中に逃げればいいし。

 

そう思いながら俺は瞼を閉じた。昨日はオーフェリアと深夜までキスをしていたから今日は早く眠れるだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいま」

 

「あらランドルーフェンさん、お帰りなさい」

 

「何処に行っていたんだ?」

 

「……八幡におやすみのキスをして貰ってきたわ」

 

「なっ?!そ、そうか……な、仲が良くて良い事だ」

 

「……ええ。そういうユリスは?」

 

「な、何がだ?」

 

「天霧綾斗におやすみのキスをして貰わないの?」

 

「なっ!お、オーフェリア!お前は何を言っているんだ?!付き合っている訳ではないのにく、く、唇を合わせるなんて……!」

 

「……だったら額や頬にして貰ったらどうかしら?それなら親愛的な意味で通じるわよ」

 

「……なるほど。それでしたら……」

 

「ちょっと待てクローディア!どこに行くつもりだ?!」

 

「綾斗におやすみのキスをおねだりしに行くだけですわ。何か問題でも?」

 

「大アリだ!付き合っていないのにそんな破廉恥な事を……!そもそもお前はさっきも綾斗が風呂に入っている時に入ろうとしていたじゃないか!」

 

「あら?私は綾斗の体を洗ってあげようとしただけで他意はないですよ」

 

「嘘を吐くな嘘を!」

 

「……だったらユリスもキスして貰えばいい」

 

「そういう問題ではない!って、お前は行かせないぞ!綺凛と紗夜からも頼まれたからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局エンフィールドはユリスと騒ぎを聞きつけた綺凛と紗夜によって止められて、若干残念そうな表情になりながらベッドに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後……

 

「……ダメだ。やっぱり眠れん」

 

「あはは……俺もだよ」

 

時刻は既に深夜にもなっているにもかかわらず俺と天霧は眠りに付いていない。

 

お互いに眠れないので適当に駄弁っていれば眠れるだろうと思って駄弁っているものの全く眠れる気がしない。

 

「……仕方ない。今から散歩にでも行くか」

 

「ええっ?もう2時過ぎてるよ?」

 

「気分転換しないと眠れなさそうだ。お前も眠れないなら来るか?」

 

いつもなら1人で散歩しているだろうが今は何となく誰かと暇潰しをしたい。

 

「でもこんな遅くに危険じゃないかな?」

 

「いやいや、鳳凰星武祭優勝者と王竜星武祭セミファイナリストの2人を倒せる不審者なんてそうはいないだろうが」

 

まあオーフェリアなら倒せると思うけど、あいつは敵じゃないし。

 

「うーん……」

 

天霧が首捻って悩んでいる時だった。

 

「……んー」

 

突然部屋のドアが開く音がしたかと思いきや誰かがフラフラと部屋に入ってきた。

 

「「っ!」」

 

俺達は咄嗟に体を起こし警戒態勢をとるが……

 

「んだよ沙々宮かよ」

 

薄暗かったからわからなかった。一瞬不審者と勘違いしちまったぜ。

 

「どうしたのさ、こんな時間に」

 

天霧は沙々宮に呼びかけるも、沙々宮はそれに答えることなく覚束ない足取りのままゆっくりと俺達の方に歩いてくる。

 

「紗夜……?」

 

「んんー……」

 

どうやら寝ぼけているらしい。どんだけ器用なんだこいつは?

 

呆れている中、沙々宮は殆ど閉じかけた瞳でうつらうつらと船をこぎながらそのままどっさりと天霧が寝ているベッドに倒れこんで、そのまま布団に潜り込んだ。

 

「さ、紗夜?!」

 

天霧は慌てだすが俺は……

 

(……俺の布団に潜り込まなくてよかった。もしも俺の方に来たらオーフェリアにぶっ殺されそうだ)

 

フェアクロフ先輩の胸を揉んだ際は『塵と化せ』をくらったんだ。夜這いをしていると勘違いされたら冗談抜きで殺されそうだな。

 

「ちょ、ちょっと紗夜!それはマズイってば!」

 

天霧が煩いのでベッドを見るとパジャマを着崩している沙々宮の姿が目に入った。肩や腹が露出していてかなり際どい。

 

それを見た俺は立ち上がり天霧に話しかける。

 

「じゃあ天霧、俺は散歩行ってくるから後よろしく。1時間半くらいしたら帰ってくるけど大丈夫か?」

 

1時間半もあれが事は終わっているだろう。それまでは気まずい思いをしそうだから帰らない方がいいだろう。

 

「ちょっと待って比企谷!その1時間半って絶対に勘違いしてるよね?!」

 

「いやいや。俺は勘違いしてないぞ。一応言っとくが避妊はしろよ」

 

学生妊娠とかガチでシャレにならないしな。場合によっては学校を辞めるかもしれないので止めておいた方がいいだろう。

 

そんな事を考えながら俺は部屋を出る。後ろから「やっぱり勘違いしてるから!」とか聞こえてきたような気がするが気の所為だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおっ、寒いな……」

 

沙々宮の親父さんから許可を貰った俺は外に出ると開口一番にそう呟く。てか親父さんはいきなり真横から現れないで欲しい。アレは真夜中にやられるとガチで心臓に悪い。

 

まあそれはともかく……

 

俺は端末を取り出して周囲の地図を見ると近くに自然公園がある事がわかった。散歩にはもってこいだろうな。

 

そんな事を考えながら歩き出すと直ぐに自然公園に到着した。自然公園は中心に噴水があり周囲には花が咲いている造りになっているが……

 

 

「真冬の夜だけあって噴水の水は凍ってるし、花は少ないな」

 

その所為か余り風情がないなんとも寂しい気持ちになってくる。とはいえ後1時間くらいは戻れないだろう。場合によっては天霧と沙々宮が乳繰り合っている可能性があるし。とりあえずベンチに座ってコーヒーを飲みながら読書でもするか。

 

そう思いながら近くの自販機に行ったものの……

 

「マッ缶がない……!」

 

やはりアレは日本にしかないようだ。

 

「……Maxコーヒーがあるわけないじゃない」

 

「いや、まあそうだけどよ。甘い物飲みたい……」

 

「だったら1番下の段の左端のコーヒーにしたら?ヨーロッパでは有名な甘いコーヒーよ」

 

「おっ、マジか?サンキューな、オーフェリ……ア?」

 

俺がゆっくりと後ろを振り向くと……

 

 

「……どういたしまして、八幡」

 

オーフェリアが薄い笑みを浮かべながら手を軽くヒラヒラと振っていた。可愛い……って、そうじゃなくて!

 

「何でお前もいるんだよ?」

 

「……眠れなくて窓の外を見ていたら八幡が歩いているのが目に入ったから追ってきたのよ」

 

「……そうか。っと、寒いだろ?今からコート作るから少し待て」

 

そう言いながら星辰力を影に込めようとした時だった。

 

「……別にいいわ。こうすれば大丈夫だから」

 

オーフェリアはそう言うなり俺に抱きついてくる。オーフェリアの小さい身体が俺の胸の中にすっぽりと収まる。

 

「ふふっ……本当に温かいわ」

 

オーフェリアは俺の胸元でスリスリしてくる。手は腰に回して優しく摩ってくる。

 

「お前は本当に甘えん坊だな」

 

「……八幡が私を甘えん坊にしたのよ?私は悪くないわ」

 

そう言いながらもオーフェリアは俺から離れない。全くこいつといいシルヴィといい……甘えん坊過ぎる。

 

「はいはい。俺が悪うございました。それより座ろうぜ」

 

「……ええ」

 

オーフェリアも了承したので俺達は近くのベンチに座る。

 

暫くの間無言でベンチに座っているとオーフェリアが話しかけてくる。

 

「……明日は久しぶりに故郷に帰る事になるわ」

 

「そうだな。そこんところどうなんだ?」

 

「そうね……懐かしいという気持ちはあるわ。……でも今の私は昔の私と違って薄汚れているから……」

 

否定されるだろう

 

口にはしていないがオーフェリアが内心そう思っている気がする。

 

「……周りの意見なんて気にすんなよ」

 

「……そうね。別にそこらの人に否定されるのは構わないわ。ただ……」

 

オーフェリアは1つ区切ってから俺を見上げてくる。その目は不安に満ち溢れていた。

 

「……八幡やシルヴィア、ユリスに否定されるのは嫌だわ」

 

全くこいつは……

 

「アホか。少なくとも俺は絶対に否定しないしあいつらもお前の事を大切に思ってるに決まってる。それともアレか?そんなに俺達の事を信じられないか?」

 

だとしたら結構ショックだ。オーフェリアに不審がられるのは今の俺にとって結構心にクる。

 

「っ……!ごめんなさい。そんな訳じゃないわ」

 

「なら良いが……全くお前は……」

そう言いながら俺はオーフェリアを抱き寄せてギュッとする。全く世間の連中ときたら……

 

いくら絶対的な力を持ったオーフェリアでも本当は寂しがりやの1人の女の子だ。そんなオーフェリアが否定されるのは絶対に間違っている。

 

俺は何があっても、それこそ全世界から後ろ指をさされようと絶対にオーフェリアを否定しない。これはオーフェリアと付き合うことになった時から決めている事だ。

 

「……ありがとう八幡。好き……大好き……」

 

そう言ってオーフェリアも抱きついてくる。

 

「それでいい。いいか?お前はもう自由なんだ。自分を卑下して遠慮なんてする必要はない。お前は悪くないんだしな」

 

「……ええ。八幡……」

 

オーフェリアは薄く笑いを浮かべながら俺に顔を近づけてくる。

 

それを見た俺はオーフェリアの望みを理解したので、叶える為俺も自身の顔をオーフェリアの顔に近づける。

 

そして……

 

 

 

 

「んんっ……」

 

お互いの唇がそっと重なる。オーフェリアは目を瞑って腕を俺の首に回してくるので、俺はオーフェリアの背中に手を回す。

 

そして更にキスをしようと顔を近づけた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた場所から万応素が吹き荒れて、複雑な魔方陣が目に入った。

 

「「……っ!」」

 

それを認識した俺とオーフェリアは離れて臨戦態勢をとりながら魔方陣が現れた場所を見ると……

 

「……トカゲ?」

 

1メートルくらいの生き物がいた。背中には翼が生えていてドラゴンと言っても間違いではないだろう。しかし何処かで見たような……?

 

「……アレ、以前八幡と散歩した時に襲ってきたモノに似てるわね」

 

オーフェリアがそう言ったので思い出した。確かアルルカントのフリガネラなんとかって擬似生命体だったか?確かに似てるな。狙いは以前のように俺達か?

 

そう思っていると例の生命体は俺達ではなく沙々宮の家の方に向かって歩き出した。って事は狙いは俺達ではなくて沙々宮博士の研究成果を盗むのが狙いだろう。

 

そうなると放ってはおけないな。泊めて貰っている者として無礼な連中を追っ払うべきだろう。

 

見てみると例の生命体は既に沙々宮の家の敷地内に入っていた。

 

「……死ね。影の槍」

 

俺はそれを認識すると同時に影の槍を俺の足元から射出する。射出された影は一直線に生命体に飛んでいき……

 

「ギアアアアア!」

 

胴体を真っ二つにすると同時に断末魔の絶叫が響き、高濃度の万応素が周囲に四散していった。

 

(……再生しない?って事は前のフリガネラなんとかとか違う、俺の影の竜と似た能力か?)

 

よくわからんな。まあ今はとにかく怪しい生命体を撃破したから良いだろう。

 

そう思いながら後ろを向いてオーフェリアに話しかける。

 

「散歩は終わりだ。帰ってあいつらにも説明しないとな」

 

「……ええ」

 

オーフェリアは頷いて俺の手を握ってきたのでそのまま沙々宮の家に歩を進めた。

 

 

尚、帰った際に天霧はリースフェルトらに沙々宮と同じ部屋で過ごしていたとバレて問い詰められていた。ドンマイ、強く生きろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やれやれ、予想外の化け物が2人もいるとは……これはとんでもなく厳しい仕事になりそうですなぁ」


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