獅子は今日も。   作:KARASAWAん

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はじめまして、KARASAWAんです。
アンジュです。一応アンジュはスマホアプリの方はストーリー全部終わらせて、アニメを現在必死に回収中です。シリアスは書くの苦手だから自動的にギャグ寄りになりますが、場面によっては書きます。
長々言ってもあれなんで、本編どうぞ。


#1

お父さんお母さん、そんなに喜ばないでください。

 

おい、コウタにハル、笑ってんじゃねえよ。

 

その他大勢の男子同級生、そんな怨念を込めた目で俺を見るんじゃない。

 

先生、近所のおばさんおじさん、涙して俺のことを送らないでください。

 

俺は、俺は―――――――――

 

 

 

 

「青蘭島に、………いや、αドライバーになんてなりたくないんだよぉぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

時はわずか一ヶ月前に遡る。中学三年の冬、受験シーズン真っ只中の中、一月に行われる10代男性対象全国共通検査が行われた。内容は、『αドライバーの資質の計測』。

何がなんだかわからないかもしれないが、十数年前に起こった四つの世界の結合。黒の世界『闇に眠る黒姫の棺』、赤の世界『テラ・ルビリ・アウロラ』、白の世界『システム=ホワイト=エグマ』、そして青の世界『地球』………これによって、まず10代の女の子が大半を占める『プログレス』が生まれた。

そして、それをサポートするための男性、『αドライバー』となるものが存在することが数年前に発覚したのである。

世界の崩壊を防ぐために必要不可欠な存在である『プログレス』、それを支える『αドライバー』。しかし、それも問題が発生している。

 

 

 

 

 

αドライバーの不足。

 

 

 

現在存在しているプログレスの人数が100少しに対してαドライバーの人数は3人。どう考えても人数の比率が釣り合わない状態である。

 

で、プログレスとαドライバーは青蘭島と呼ばれる孤島……巨大学術都市に集められ、そこにある青蘭学園で日夜研究が行われるため、αドライバーに選ばれようものならちょっとしたハーレムなんてのを味わうことができる。

 

俺としては、そんなのはごめんだが。だいたい、そんなに足りないんだったら適当に普通の人間つれていって、研究とかなんやらでαドライバーにしたらいいんじゃない………

 

 

 

 

 

話を戻して、『αドライバーの資質の計測』だが、結論から言うと「お前らαドライバーとしてやっていける資質あんなら、とっとと青蘭島行ってこいや」っていうやつである。なんとも勝手な話。

 

ともかく、なんで受験シーズンにそんなことしなくちゃなんないの、ってことだが、青蘭島の学園側の言い分だと区切りがいい、進路のひとつとして選べや、プログレス側からしたら同年代に近い方がいいんだよ――――――――って辺りだろうか。

 

 

 

で、計測会場である町のホール館内。下は小学生高学年から上は高校生までが計測に並ぶ中、俺は近くにいる友達……いや、腐れ縁の方がしっくり来るな。そいつらと話していた。

 

 

「いやぁ、ついにこの時期が来たなコウタ。」

 

俺としては、一生来てほしくはない時期なんだがな、ハル。

 

「悪いが、ハーレムを築くのは俺だぜ、ハル。」

 

どうぞご勝手に。というか、そんな不純な動機でいいのかよ、コウタ。

 

「おいおい獅音、そんなに緊張しなくたってお前に当たるわけないって。なんせお前ぐらいだと思うよ、青蘭島に行きたくないなんて考えてるやつは。」

 

「そうだよな、それにαドライバーなんて早々出てこないし………だが、俺は行ける気がするけどな。」

 

………少しは気が楽になったが、そのどこから生まれるかわからない自信は凄いと思うよ。

 

 

 

自己紹介が遅れてしまったが、俺の名前は水無月 獅音。現在中学三年、趣味はブレイクダンス、好きなものは海。そして、鳥肌がたつほど嫌いで、可能なことなら関わりたくないほどに嫌いなものは、女子だ。もう一度言おう、女子だ。

 

何度でも口に出して言おう、女子が大嫌いだ。

 

なんで嫌いかまでは言わないが、昔ちょっとしたいざこざがあって、それ以来極力女子とは関わらないようにしてきた。今現在俺がなんの心のつっかえもなく話せる異姓は青蘭学園にいる妹と幼馴染みぐらいだ(あれ? 今はゼロ人……?)。というか、そもそも女子と話してなんのメリットがある? せいぜい時間を潰せるぐらいじゃないのか? そんな時間あったら………まぁ、ここでとやかくいっても無駄なことだから、今は検査の方に集中しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――どうやら、神様は俺を見捨てたようです。見事αドライバーの波形を観測、しかも歴代のαドライバーよりも強い波形……より資質があるとのこと。

 

目の前の試験官は大慌てで電話をしている。まさか見つかるとは思ってなかったのだろうか、呆然とする俺を完全に無視して連絡するのに必死である。

 

ポン。肩に手をおかれる感触、恐る恐る後ろを振り向くと、あぁ、これが笑ってない笑顔ってやつかぁ。握りこぶしを振り上げた腐れ縁どもがこっちを見ていた。

 

「なぁ獅音、顔面か鳩尾――――――――好きな方選べや。」

 

「待て、この場合俺は一方的に被害者だ。お前らも俺の事情知ってて言ってんだろうが。」

 

「関係ないね。まぁ……同情一割、憎しみ九割ってか。」

 

理不尽の極みである。俺だってできることならこんなことになりたくなかったし、拒否権があるのなら行使したい。――――が、たぶんそれは許されないだろう。

あぁヤバイ、これからの人生で数多くの女子と関わらなくちゃならないと考えるとめまいがっ………意識が遠退きそう………

 

「おい、獅音。目が虚ろになってるぜ………流石に同情したくなってくるわ。」

 

「」

 

「返事がない、ただの屍のようだ。」

 

「」

 

このとき俺は、はじめて時間が飛ぶ感覚を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

そんなことがあって、現在俺は青蘭島に向かうための船が止まっている港にいる。もちろん今すぐにでも逃げだいたいのが本音であるが、逃げられない。

 

「αドライバーは私、安堂 環が責任をもって青蘭島に案内させていただきます。………ところで、ロープでぐるぐる巻きにされてるこの子はこれで大丈夫なんですか?」

 

――――逃げられない。

 

「いいんですよ。そいつはそうでもしとかないと青蘭島に行きませんから。」

 

嬉々として説明するハルの姿を、これほどまでに殺したいとは思わなかった。見送りに来たやつらの中には「なんであいつが……」とか、「もっとありがたく思えよ……」とか言う言葉をボソボソと、俺に聞こえる程度の大きさで話す。知るかよ、俺だって行きたくねぇんだよ。

 

「それならいいんですが………それでは、私たちはこれで。」

 

こうして(なかば無理矢理)俺の青蘭島での物語が幕を開けようとしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドナドナドーナードォナァー」

 

「そこまで青蘭島行きたくないの!?」

 




ハルとコウタは獅音の友人です。よき理解者なんですが、しばらく出てきません。

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