マシュの姉が逝く【完結】   作:VISP

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一部、ストーリ上重大な加筆をしました。


その23 第七特異点 シト新生 + ステータス 加筆修正

 ティアマトによるウルク進行の遅延作戦。

 ケツァル=コアトルの「炎、神をも灼き尽くせ」の自壊すら厭わぬ連射、二重の防壁、そしてサドゥによる汚染と無数の残骸の獣達。

 それを以てしてもなお、30分は時間が足りなかった。

 再び突撃を仕掛けようにも、既に燃料たる呪詛が半分を切っているサドゥでは止め切れない。

 カルデア一行がラフムにかかり切りになる中、ウルクの兵士達の生き残りが必死に砲撃を加える。

 否、それだけではない。

 幾体かのラフムすらその戦列に加わり、一分一秒であっても良いからと抗戦する。

 だが、止まらない。

 空を埋め尽くすラフムと巨大なティアマトを前にウルクの滅亡は決まっていた。

 だからこそ、ギルガメッシュ王が、そしてエルキドゥの二号機たるキングゥが前に出た。

 ギルガメッシュは心臓を貫かれながらも、自らが作成したディンギルの遠隔操縦による一斉砲撃でその動きを抑制し、そこにウルクの大杯によって再起動したキングゥは本来の役目にして姿である「神性を縛る鎖」へと全身を変じさせ、ティアマト神の動きを完全に封じ込めた。

 カルデア一行が周囲のラフムを寄せ付けまいと奮戦する中、遂に彼ら二人はビーストⅡを相手にたった二人だけで勝利のための時間を稼ぎ切ってしまった。

 

 「さらばだ、天の遺児よ。その誇りある雄姿、永遠にこの目に焼き付けた。」

 

 そして、天の鎖が砕け散った時、ティアマトから放たれた光線により、ジグラッドごとギルガメッシュ王が死亡、同時にウルク全体が冥府へと沈んだ。

 冥府の女王エレシュキガルが治める冥府。

 それをウルクの地下に広げ、神々ですら例外なくルールに縛られる冥府へと落とし、その後に更に下層である虚無へと叩き落すのが、この対ティアマト作戦の要だった。

 冥府への落下後、絶え間なくイシュタルの宝具級の攻撃が降り注ぎ、ティアマトを焼き続ける。

 だが、

 

 『■■■■■■■■■■■■■―!!』

 「嘘お!?」

 

 ティアマトの全身から発生するケイオスタイドによって冥府は汚染、その法則すら跳ね除けた。

 更に、冥府から飛び立たんと変形、直立する有翼の魔獣とも言うべき姿となり、一気に離脱する構えに入った。

 最早止められない。

 諦めが広がり、力が抜け、歩みは止まり、心は折れかける。

 

 「させ」

 

 だが、しかし、それでも

 

 「るかァァァァァァァァッ!!」

 

 諦めない者達はいる。

 

 「全貯蓄呪詛を解放!我は人の望みし悪!」

 

 ティアマトの直上100mから落下しながら、サドゥが吼える。

 だが、まだ足りない。

 最大規模で稼働させるには、まだ憎悪が足りない。

 だから、別のもので代用した。

 

 自分の憎悪に燃える魂そのものを燃料として、最大規模の呪詛を練り出す。

 

 ガリガリと、ガリガリと、自身の他人よりも脆い魂がヤスリにかけられ、燃料となって消えていく。

 構わない、知らない、聞かない。

 こいつを此処で殺せれば、後はどうなっても良い。

 

 (いいや、先にオレを使うんだ。)

 

 君にはまだ早いと、何処かで聞いた男の声がした。

 それと共に、自分のもっとも奥まった所から、何かが半分だけ消えていく。

 同時、宝具の発動に必要な呪詛が貯まった。

 

 「『この世全ての悪』!!」

 

 その全身から、黒い呪詛が沸き上がり、一つの形を取る。

 もし彼女が絶望と狂信のままに真に獣へと落ちていたら至ったであろう、一つの姿。

 この世全ての呪詛を纏い、人を滅ぼさんとする第三の獣。

 正に獣と言うべき、隻眼の巨獣の姿へと。

 

 「■■■■■■■■■■■■■――ッ!!」

 『■■■■■■■■■■■■■――ッ!!』

 

 残った目から理由の分からぬ涙を流しながら、隻眼の獣が突貫、ティアマトへと衝突する。 

 超巨大質量同士の衝突に、冥府がビリビリと振動し、その咆哮は魂魄すら震わせ、砕いていく。

 隻眼の巨獣の真上からの奇襲に、元より戦士でもない有翼の魔獣は驚愕と怒りと共にその攻撃をまともに食らう。

 喉元に食らいつかれ、四肢に爪を深々と突き立てられ、その爪牙からは呪詛を注入される。

 そこまでしてなお、ティアマトはその翼を羽ばたかせる。

 

 『いけない!このままじゃ飛ばれるぞ!』

 「なら、今度は僕らの番だ…!」

 

 それをカルデア一行が阻止せんと息巻くが、サーヴァント達はまだしも、既に生身である立香とマシュは限界であり、末端から壊死が始まる程だった。

 

 「いよぅし、間に合った―――!アヴァロンから走って来た甲斐があった!」

 

 援軍、グランドキャスターが一角、マーリンにより、ラフムを発生させ、冥界を浸食していたケイオスタイドが、ただ花を咲かせるだけの無害な泥となっていく。

 

 『■■■■■■■■―!!』

 「■■■■■…!?」

 

 だが、ティアマト本体までは止められない。

 魔獣の姿を取っても、弱体化著しい状態では、アンリマユにティアマトは止められない。

 今にも振り解かれそうになりがらも、辛うじてその爪牙を泥へと変じさせ、接着剤の様にしながら、意地でもしがみついている。

 

 「何、安心したまえ!心強い援軍も来てくれた!」

 

 そして皆が上を、冥府と現世の淵へと目を向けた。

 そこに立つのは杖をついた老人、ジウスドゥラの姿がある。

 

 「…死無くして命無く、死有りて生きるに能う。其方の永劫は、歩みではなく眠りそのもの…。」

 

 否、それは偽りのもの。

 

 「災害の獣、人類より生じたる悪よ。回帰を望んだその慈愛こそ、汝を排斥した根底なり。」

 『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―!!』

 

 ティアマトが、原初の海が恐慌する。

 何だこれは、何だお前は。

 無限の命を持つ彼女が知らないモノがそこにあった。

 

 「獣に墜ちた神なれど、原初の母であれば名乗らねばなるまい。」

 

 それに応える様に、朗々と威厳ある声が冥府へ響く。

 

 「――幽谷の淵より、暗き死を馳走に参った。山の翁、ハサン・サッバーハである。」

 

 髑髏の兜と甲冑を纏った、本物の死神が姿を現した。

 

 「晩鐘は汝の名を指し示した。その翼、天命の下に剥奪せん――」

 

 飛び降り、神速の一刀が振り下ろされた。

 

 「死告天使――ッ!」

 

 その一刀はティアマトの左の角翼を再生すら許さず切断、その無尽蔵の命故の不滅性すら否定し、死の概念を付与してみせた。

 

 『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―!!』

 「ッ、あぁ!?」

 

 そして、ティアマトが死を知ったが故に、死力を尽くして冥界より離脱せんと動き出す。

 自身を抑えつける巨獣を弾き飛ばし、最大規模でラフムを放出、再生産した魔神柱クラスの親衛隊を伴に冥府の壁を昇り、地上へ脱出しようとする。

 再び抑えつけようにも、既に全ての呪詛を使い果たしたサドゥに余力は無く、力なく弾き飛ばされて、冥界の土を舐めたまま、動きを止めてしまった。

 

 「フハハハハハハハハ!我、見参――!」

 「「「「「「ギルガメッシュ王――!?」」」」」」」

 

 そこでこの人が再登場した。

 

 「原初を語る。天地は分かれ、無は開闢を言祝ぐ。世界を裂くは我が乖離剣。星々を廻す渦、天上の地獄とは創世前夜の終着よ。死をもって静まるがいい。『天地乖離す開闢の星』!」

 

 雨霰と降り注ぐ宝具、そして対界宝具乖離剣による一撃で、ティアマト神は昇りかけていた壁から叩き落された。

 

 「今、全員最大火力―――!」

 

 そして、原初の母神は、再び眠りに就いた。

 もう二度と、その眠りが妨げられる事は無いだろう。

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 「汝にはまだ晩鐘は鳴らぬ。その寸前で、あの若者達が引き留めた。」

 「うん。感謝してます。」

 「うむ。そして、汝らの旅の終わりもまた間もなくだ。努々己を損なわぬように過ごすが良い。」

 

 そう言って、始まりの山の翁は何の痕跡も残さずに立ち去って行った。

 

 “ま、あの爺さんなりのお節介だろうさ。本人が真面目一徹だから、キャラ崩す訳もねーし。”

 (寧ろキャラ壊す姿が想像できない。)

 “それな。”

 

 とは言え、もう時間切れだ。

 自分は最後まで一緒には行けないだろう。

 

 “まぁ、ここまでよく保った方じゃないか?”

 (うん、そうだね。ありがとうアンリ・マユ。)

 

 ここまで無茶させ過ぎだった相棒に、礼を告げた。

 

 “あぁ。んじゃちょっと休んでな。”

 

 うん、おやす

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 「姉さん、起きて!起きて下さい!」

 

 レイシフトから帰還直後、サドゥ・キリエライトは倒れた。

 以前にもあった事で、医療スタッフらの反応は迅速だった。

 だが、今回は助からないだろうとの見方が強かった。

 既に彼女は本来決められた寿命よりも長く生きており、ウルクに滞在中に何時死んでもおかしくはなかった。

 それは偏に呪詛を取り込みながらも自身を強化し続けていたが故に、だ。

 しかし今、呪詛を使い果たした彼女に、自己を延命させる手段は無い。

 そして、聖杯であっても、彼女の寿命を人並みにする事は出来ない。

 

 「ドクター、お願いします。」

 「最善は尽くす。けど、もう時間稼ぎしか出来ないと思ってくれ。」

 

 既に、サドゥの身体は末端から崩れ始めていた。

 元より今の彼女はケイオスタイドから作った、ティアマトを殺すための身体なのだ。

 ティアマトが死に、役目を終えたからには、消え去るのが道理だった。

 

 「何とか君達が帰ってくるまでもたせる。だから…」

 「分かってますってドクター。」

 

 カルデアの非戦闘系のキャスター達。

 彼らの総出で固有時制御や因果律への干渉等、明らかに封印指定級の技術を用いてまでも、サドゥを延命させると事前に取り決められていた。

 

 「これより、カルデア全体を第一種戦闘配備へ!各員、これが最後の戦いだ!」

 

 そして、第七の聖杯により、魔術王の本拠地の座標が手に入った。

 だが、何のセーフティが無い筈もない。

 カルデアがその座標を認識したと同時、魔術王もまたカルデアの座標を認識したのだ。

 

 「待っててね、サドゥ。」

 

 藤丸立香は立ち上がる。

 

 「行ってきます、姉さん。」

 

 マシュ・キリエライトは立ち上がる。

 

 「また、三人で過ごそう。今度は平和になった世界で。」

 「はい。その時は私と姉さんでご飯も作りますねっ」

 「はは、そりゃ楽しみだ。じゃぁお腹空かせておかないとね。」

 

 明日に希望があるのだと信じて、二人は最後の戦いへと踏み出した。

 終局特異点、冠位時間神殿ソロモンへと。

 

 

 人理修復、最後の戦いが今始まる。

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 ・キャラ紹介

 

 アヴェンジャー版マテリアル

 真名 サドゥ・キリエライト/アンリ・マユ

 身長 161cm

 体重 41kg

 出典 ゾロアスター教

 地域 古代ペルシア

 属性 中庸・悪 

 カテゴリ 地

 天敵 マシュ、立香、人外

 性別 女

 イメージカラー 黒

 特技 大抵何でも出来る(が、際立ったものはない)

 好きなもの カルデアの人々、マシュ、立香、英霊達

 苦手なもの 自身を過度に褒める者・貶す者、マリスビリー

 クラス適正 アヴェンジャー

 

 

 ・霊基再臨

 初期装備(半裸)

 →第1再臨(マント+ブラ)

 →第2再臨(マント脱いで双剣が増える)

 →第3再臨(入れ墨と髪が発光)

 →最終再臨(入れ墨と髪が発光した状態で黒い背景の中、祈りを捧げている)

 →ビースト状態(黒い盲目の巨獣と無数の残骸の獣)

 

 

 ・ステータス

 筋力 E(最大A)

 耐久 E(最大A)

 敏捷 A(最大A+)

 幸運 E

 魔力 D(最大A)

 宝具 C(最大A++)

 

 スキル(パッシブ)

 ・神性− … 後天的なものであり、条件を満たさない限り、効果は発揮されない。

 ・復讐者A

 ・忘却補正

 ・自己回復(魔力)E

 ・呪詛吸収・放出B … この世全ての悪であれと呪われた青年の持つ、生贄としての性質をデミ・サーヴァント固有の憑依継承によって昇華されたもの。本来ならEランクだったが、サドゥの限定的と言えど小聖杯の機能と合わせて強化されている。吸収した呪詛により、ステータスや回復力を強化できる。また、体外に放出して、攻撃や補助にも応用できる。

 

 スキル(アクティブ)

 ・投影魔術E … 嘗てアンリマユが同化した殻となった人物のものが極度に劣化したもの。歪な双剣「右歯噛咬・左歯噛咬」のみ、ある程度サイズや形状を変えて投影でき、壊れた幻想も行えるが、普通の宝具に比べれば微々たる威力しかない。

 ・死滅願望A … 文字通り、自身の死滅への願望。自身に滅びが近づくと共にステータスが向上する。それはまるで燃え尽きる前の蝋燭の、最後の輝きに似る。

 ・四死の終末 … 後述する宝具「無限の残骸(アンリミテッド・レイズ・デッド)」発動のトリガー。一定の条件を満たした時、無限に湧き出る残骸の獣を誕生させる。

 

 

 ・第一宝具「偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)

 詳しくはWiki参照。

 

 

 

 

 

 ビースト版

 

 ・マテリアル … アヴェンジャー版と同上。

 

 ・ステータス

 筋力 A

 耐久 A

 敏捷 A+

 幸運 E

 魔力 A

 宝具 A++

 

 

 スキル(パッシブ)

 ・神性C … 本来なら無効だが、ビースト化した事で本来のアンリマユに近くなり、神性を発揮できるようになった。

 ・復讐者A

 ・忘却補正

 ・自己回復(魔力)E

 ・呪詛吸収・放出B 

 ・獣の権能B … ビースト固有スキル。特にアンリマユのそれは「人類及び人類が生み出したものでは勝つ事が出来ない」と言う、対人類に特化したスキルとなっている。

 ・単独顕現A … ビースト固有スキル。人類の悪意が存在する限り、例え撃破しても何時か何処かで必ず復活する。自身で狙った時間と場所でも可能。召喚者も必要ない。

 ・自己改造C … 文字通り、自己を改造できるスキル。散々身体を弄られた故か、どんなに改造しても割とすぐ馴染む。

 

 

 

 ・第一宝具「偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)

 詳しくはWiki参照。

 

 ・第二宝具「無限の残骸(アンリミテッド・レイズ・デッド)

 詳しくはWiki参照。

 レンジ 対軍~対人類

 ランク B

 サドゥ・キリエライトと言う正常に機能しないながらも小聖杯としての機能を持つ少女を依り代に、あり得ない可能性が満ちる特異点を旅し、歴史の闇に消える呪詛を小聖杯の中に納め、虚数の海たるケイオスタイドへと浸食され、サドゥ・キリエライトがティアマト殺害の手段として望んだが故に発現した。

 吸収した呪詛及び魔力を燃料に、残骸の獣を無尽蔵に連続召喚する。

 アンリ・マユの持つ対ビースト優勢により、ティアマトとその子供達に対しても高い威力を誇る。

 なお、矛先が人類に向いた場合、人類から悪性が、又は本体たるサドゥとアンリ・マユが消えない限り、文字通り無尽蔵の残骸の獣(対人類特攻持ち)が溢れ出し、人類絶滅を目指して行動する。

 但し、個体としての性能は英霊として見れば低く、人間以外の英霊や死徒等には弱い。

 また、人間が少ない環境で使用した場合、大幅に弱体化する上に、呪詛が切れれば召喚できなくなる。

 

 ・第三宝具「この世全ての悪」

 レンジ 1~1000人

 ランク A

 純粋な宝具ではなく、自己改造スキルと呪詛吸収スキルとの合わせ技。

 第二宝具と併用可能。

 吸収した呪詛及び魔力を放出、それを外殻として身に纏う事で多様な戦局に対応できる。

 人が想像するあらゆる悪の姿になれるが、対ティアマト戦では巨大な隻眼(右目のみ)となって格闘戦を仕掛けた。

 ビースト時は完全に盲目となり、配下の残骸の獣達の視界を用いて周囲を把握する。

 この時、放出される呪詛は通常よりも遥かに高密度な聖杯の泥、ケイオスタイドと同等であり、人類なら触れれば即死か精神崩壊、並の英霊なら汚染、反英霊なら同化吸収されてしまう。

 物理的な攻撃も、虚数の海でもあるケイオスタイドに吸い込まれ、無力化される。

 外見は「う○おととら」のラスボス「白面〇者」を黒くした感じ。

サイズは適宜変更可能。

 正面から戦うならウルトラマンを呼びましょう。

 

 

 

 説明文

 

 ・絆1 … カルデア職員、サドゥ・キリエライトがサーヴァントと憑依融合した姿。

 デミ・サーヴァントと呼ばれる。

 

 ・絆2

 だが、サドゥ・キリエライトは再現性の極めて低い存在だった。

 それは彼女の特異な生まれに起因する。

 小聖杯と器としての機能を持った肉体と生まれたばかりの魂に、他の大人の異性の魂をぶつけて無理矢理融合させ、その上でアンリマユを召喚し、その体内に格納させた。

 結果、極めて不安定な精神状態になっており、運用には最大限の注意が必要である。

 

 ・絆3 … 憑依継承「呪詛吸収・放出」

 デミサーヴァントの持つ特殊スキル。

 魔力放出と同タイプのスキルだが、呪詛特化版。

 自身の強化や防御だけでなく、周辺環境や生物等を汚染する事も可能。

 周囲に呪詛が、人間がいる限り、魔力不足に悩む事はない。

 

 ・絆4 …  其は人の生み出すあらゆる悪性の受け皿。

 人が存在する限り、永劫に誕生と肥大化を繰り返す悪神アンリマユ。

 人が生み出し、人が望み、人を信じる純粋悪。

 彼女は自らが悪を担う事で、人が善であると無垢に信じているが故に、求められるままに悪を成す。

 故に人は決して彼女を殺す事は出来ない。

 自らの悪性を捨て去らない限り、自らが滅びない限り、永劫に。

 

 以上の信仰を以って、彼女のクラスは決定された。

 元々、拝火教の悪神なぞ偽りの名に過ぎない。

 其は人間が捨て切れなかった原罪の化身。

 人が人である限り、永劫滅びぬ大災害。

 

 その名をビーストⅢ。

 七つの人類悪の一つ、「狂信」の理を持つ獣である。

 (自らがこれ程醜悪なら、人類はきっと想像もつかない程に素晴らしいに違いない。

  それが彼女の狂信=獣性である。)

 

 ・絆5 … 彼女の願いは一つ、死ぬ事。

 生存こそ自身にとって最大の苦痛とする彼女にとって、死は慈悲と同義だ。

 故に彼女は己を殺してくれる者を待っている。

 必ずいる筈なのだ。善なる人々がいるのだから、悪たる己を討つ者が!

 願うなら、それが妹とその主たる青年である事を祈る。

 自分の死を悲しんでくれる人達に看取られる事程、幸せな事は無い。

 

 

 ・条件解放

 叶う筈なんて無い。

 それは痛い程分かってる。

 

 あぁでも、もし本当に叶うのなら……私も平和で穏やかな、極普通で当たり前の生活を、三人で送ってみたかったな。

 

 




 ふぅ…難産だったな第七特異点

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