マブラヴで楽していきたい~戦うなんてとんでもない転生者 作:ジャム入りあんパン
そんな日常を送ること5年。瑞鶴は無事に完成。装備の基本は撃震と変わりないが、機動力はきっちりとあげておいた。
国粋主義者のバカどもにはしばらく瑞鶴で遊んでいてもらおう。
俺の身の回りにも変化が生まれた。それは、幼馴染が出来たということだ。
幼馴染の名は、『紅蓮焔』。そう、あの紅蓮中将の娘だ。
最初それを聞いたときにはどんな漢女(おとめ)が現れるのかと警戒したが・・・
可愛いじゃないか!めっちゃ可愛い!俺、ロリコンの趣味は全くない。巨乳派なんだけど、今だけはロリコンに転んでもいい!
しかも、ものすごく大人しい子でいい子だし。
俺が何処かに行くときは「拓哉様」と言って服の裾を掴んで離さないし、いないとわかると半べそ状態で「拓哉様~!」と探し回る。俺の仕事の内容なんてサッパリ分からないはずなのに、後ろで常に控えていて、俺の喉が渇くタイミングで「はい、拓哉様」とお茶を差し出してくれる。
もう突撃しました。紅蓮中将に土下座で頼みました。
「焔ちゃんをお嫁にください!」
「却下!!」
ですよねー!だが諦めるか!紅蓮中将の奥さんは見た。まあ、焔ちゃん産む時に亡くなられたらしく、写真で見ただけなのだがめっさ美人。
今から将来性に賭けるのも悪くないよね!?という訳で、
「焔ちゃんをお嫁にください!」
「お前のような小僧にうちの焔たんをやれるかーーー!!!」
焔『ちゃん』じゃなくて焔『たん』かよ。
まあ、男ばっかりの三人兄弟のところに美人で評判の妻にそっくりな、孫ほどにも年の離れた可愛い娘が生まれたらそうなるだろうけどさ。
「焔ちゃんをお嫁にします!」
「100年早いわーーーー!!!」
100年後は大抵の場合、死んじゃっていますよー。
もう既に三人のお義兄さん(仮)は呆れきっているらしく、最初は父親をたしなめていたものの、今はお茶を飲んでまったりしている。
え、お前のしつこさにも呆れているんじゃないかって?そういう説があっても気にしない。
そんな混沌とした現場にさらに火種が投入された。
「分かるぞ、紅蓮!」
スパーンっという音とともに飛び込んできたのは、尖った髪型が特徴的なライディーン・・・もとい、煌武院雷電。
五摂家の当主が護衛もつけずにヒョコヒョコ出歩くなや。まあ、アンタにはいらないんだろうけど。
「ワシも、悠陽たんと冥夜たんが嫁に行くとなったら・・・・・・・」
スゥーッ吐息を吸い込むのを見て、紅蓮中将と紅蓮三兄弟はとっさに耳をふさぐ。
え、なにこれ?俺がわけも分からずに戸惑っていると、
「――ン悠陽たーーーーーーん、冥夜たーーーーーーん!!!!!!!!!」
「知らない天井だ・・・」
病院のベッドで目が覚めた。
マジで何?たしかさっきまで紅蓮家の居間にいたはずだけど?
訳が分からずキョロキョロしていると、何やら腹部に重みがあることに気づく。
焔ちゃんだ。目元には涙を浮かべたまま寝入っている。
すごく嬉しいことだが、これはまあいい。それよりも気になるのは部屋の片隅でぐるぐる巻きにされている雷電翁だ。
とりあえず俺はナースコールを押して看護婦さんを呼び、事情を聞く。
どうやら、紅蓮家で俺はぶっ倒れた・・・というか、ぶっ倒されたらしい。
紅蓮中将と「嫁にください」と「やらん」のやり取りをしていたのは覚えているのだが・・・。
と、俺の腹の上で爆睡中だった焔ちゃんが目を覚ました。
「ふぁ・・・」
寝ぼけ眼の焔ちゃん可愛い。・・・・・・じゃなくて、だ。
「おはよう、焔ちゃん」
まだ状況が理解できていないらしく、キョロキョロしている。
あーもう、かわいいなぁ~。じゃなくて、だ。
「焔ちゃん、お水飲む?」
「飲みましゅ・・・」
どうやら低血圧らしく、目の前に俺がいるのに完全に無警戒。両手でコップを持って水を飲む。
飲んでいるうちにどんどん目が覚めてきたのか、コップを口に固定したまま俺と部屋の中を見回す。そして、
「拓哉様!ご無事ですか!?お加減は、どこか動かないところはありますか!?」
「よし、落ち着こうか。焔ちゃん」
これだけ慌てられると冷静になれるな。コップはしっかりと置いた後で、俺の肩を結構強い力でガッチリ掴んで揺する焔ちゃん。
とりあえず、何がなんだかさっぱり分からん!
この後、焔ちゃんは看護婦さんに止められて、事情説明を受けた。
と言うのも、途中から記憶がすっ飛んでいるからだ。と言うより、なんで雷電翁が吊るされてんの?
「拓哉様が失神する原因を作ったからです!」
「原因なのは分かった。まだ頭がグラグラするし・・・」
神之怒声・・・ゴッドボイスを至近距離で受けて生きていただけでも奇跡だけどな。
「お父様がせめてもの詫びと申しておりました。あ、後こちらを」
そう言って刀を渡された。
「いやいやいや、ちょっと待とうか!」
キョトンとした顔で小首を傾げる焔ちゃん。やっぱりあの家系の娘だな、この子!
俺は刀を焔ちゃんに返すと、雷電翁に近づく。
案の定、起きていたらしく、俺の方に目を向ける。
「なんじゃ、小僧。ワシを笑いに来たか」
「そんな後が恐ろしい真似はしませんて。それよりも、お願いしたいことがあるのですが」
「ふん。ワシに取引を持ちかけるつもりか?」
「ちょっとは反省してるんなら話を聞いてください」
ちょっと気まずそうにする辺り、流石に反省はしているらしい。
だからこそ、今がチャンスだ。
「正直、俺に発言力がありません。求められるのは技術力のみで、俺が意見を言っても子どもの戯言と流されてしまいます」
ここで一旦言葉を切ると、雷電翁は真剣な表情でこっちを見ている。
「続けよ」
「はい。現在、日本は後方国家です。それが故に、危機感が薄い」
そう、コレだ。だからこそ帝国さえ良ければという考えに至る。BETAの脅威が分からない。
「俺が開発したレールガンもヒートサーベルも、帝国の中だけで使っても意味がない。最前線国家にこそ使ってもらうべきです」
「しかし、その武器がこちらに向けられたときはどうする?」
「その時はその時です。と言うより、その時って今、見えているんですか?戦線は押されているでしょう?日本が加わったぐらいでどうにかなります?アメリカは月を落とされているんですよ」
「ならば、貴様はこの国をどうする?」
「先駆けとなりましょう。すべての国が手を取り合い、やがて空と大地を取り戻すための。故に、雷電翁、貴方には私の後ろ盾になっていただきたい」
雷電翁はしばし瞑目する。吊るされてなければそれなりの絵になるんだけどな。
どれだけ時間が過ぎただろうか。俺も焔ちゃんも、雷電翁から目を離さずじっと待つ。そして、
「よかろう。五摂家と斯衛の説得はワシがしよう。だが、帝国軍内部となるとまた難しいぞ?」
「実績を作って叩きつけます。その為に・・・・・・」
俺は、思い描いていたある提案を雷電翁に突きつけた。
結果は、GOサインがでたということで今は納得して欲しい。
しばらくして、雷電翁を解き放った後、尊敬の目でこっちを見たままの焔ちゃんの頭を撫でて可愛がること数分。
艶々の髪からそっと手を離す。
焔ちゃんは寂しげに手を見ているが今はそれどころではない。ドカドカと派手な足音が近づいてきているからだ。
「目を覚ましたか、小僧」
「病院内ですよ。お義父さん」
「誰がお義父さんじゃーーーー!!!」
ナイスな反応に思わず笑みが溢れる。だって、ここには焔ちゃんがいるのだから!
「あの、拓哉様。そういえば、どういうご用事で我が家までお越しになられていたのですか?」
「お義父さんに、紅蓮中将に焔ちゃんとの結婚を認めてほしいってお願いしに行っていたんだよ」
「本当ですか!?」
「ワシは認めてはおらんぞ!」
顔を真っ赤にして怒鳴るお義父さん。まあ、この呼び方が怒りを買っているのはわかっているんだけどね。やめられないんだな。
「では、どのようにすれば認めていただけるのですか?」
「ワシと一騎打ちをして」
「10才児相手に師範が本気になるなや!!」
思わず素が出たけどそこは向こうも気にしていないらしく、
「ならばどうしろと言う!」
「俺は開発者です。撃震改にくわえて瑞鶴も作って、この上何か成果がいりますか?」
「むっ・・・」
そう言われれば黙るしか無いだろう。まだ表に出してはいないが、カタログスペックの上では瑞鶴とF-15イーグルではキルレシオは1.5:1だ。俺の頭脳チートに出てきたF-15のスペックと比較した限りではそのぐらいだ。
つまり2世代機クラス程度のスペックはあるのだ。この上、欲を張られたらそれこそ、際限なしにスペックをあげていかなければならない。
そう、ネオグランゾンを量産しますか?の世界だ。まあ作れないんだけどな。グランゾンならなんとかなりそうな所が恐ろしいが。
そして次に問われるのはコストだ。おそらく、城内廠は、斯衛はそれこそ限界なしのハイスペックを求め続けるだろう。それがどれだけ国庫を圧迫するかも知らず。そして、国民の生活を苦しめるかも知らず。
例えば、武御雷と不知火のコストと性能差を比べてみた。確かに、素晴らしい機体だ。だが、それはあそこまでして守らなければならなかったスペックなのかと言われれば疑問符がつく。専属の整備士に徹底した守秘義務。異常の一言に尽きる。そして、それらは滅多に戦場に出ないお飾りの機体だ。
「俺は、戦術機なんてのは使ってなんぼのものだと思っています。撃震改にしろ瑞鶴にしろ、レールガンもヒートサーベルも、ガンガン使ってください。ガンガン広めてください。そして、人類全てで勝ちにいきましょう」
「貴様はそれでいいのか?それでは、米国の思うがままだぞ」
「思わせておけばいいですよ。それで人類が勝てるなら、安いもんでしょう?」
「・・・・・・何が見えている?」
「まずは人類の敗北が。お互いに手を取り合えず、最後の最後まで国家の利権にしがみついて、手を取り合ったときには手遅れになっている未来が」
実は俺、クロニクルのTDAをやってないんだよな。貧乏サラリーマンにはあのソフトのお値段はちょっとどころか、かなり痛かった。
だから大体はウィキで説明されていた内容。バビロン作戦によって起きた天変地異だとかぐらいしか知らない。だが、今を生きる俺にとっては本気を出すには十分すぎる内容だ。
「どうしてもその気にならないのなら、お義父さんはそこでじっとしていてください。俺の邪魔をしなければそれでいいです。雷電翁には話をつけていますし」
「何!?雷電を説得したのか!?」
「聡明な人でしたよ。話が早くて助かりました。後、いざとなったら焔ちゃんとの婚約についても後押しをしてくれるとか」
「なんだとーーー!!」
「雷電翁の孫娘お二人に手を出さない前提ですが、俺には焔ちゃんしかいませんので」
「おのれ雷電め、孫可愛さにワシの娘を売りおったな!」
「別に売ってませんて。後見人になってもらっただけで」
後見人という言葉に、ピクリと反応する。よし、かかった。
「俺がこれからする事、その後見人になってもらったんですよ。城内廠とか帝国軍のお偉いさんの中じゃあ、俺ってまだ賢しいだけの打ち出の小槌ですからね。だけど、俺が動くにはその考えは邪魔すぎるんですよ」
俺は楽をする。楽をして生きる。そして美人の嫁ももらう。そのためなら自重していては駄目なんだ。
「煌武院雷電様の許可は頂きました。五摂家の方々も説得してくださるそうですし、神野志虞摩様ならば2つ返事でこちらに付いてくださるそうです」
「・・・・・・考えを聞かせてみるがよい。内容によってはワシも貴様に手をかそう」
かかった。俺は頬が緩むのを止められなかった。
焔ちゃん曰く、とても悪そうな顔をしていたとのこと。
「まずは・・・・・・」
すべてを聞き終えた後、紅蓮中将は瞑目し、俺はただ待ち続けた。
煌武院雷電、神野志虞摩、そして紅蓮醍三郎。帝国の三武神とも呼ばれる男たちがバックに付けば、武家が幅を利かせているこの世界の日本帝国ならば発言力が大幅に上がる。
だからこそ、だからこそ最初は紅蓮中将に近づいた。
計算違いは、俺が焔ちゃんに本気になってしまったこと。初めて会った時はまだ7歳だった焔ちゃん。いつの間にか俺の近くにいるようになり、気がつけば彼女に本気になっていた。前世はいい年したおっさんが、未だ10歳の女の子に、だ。
笑えよ。俺の目的は幸せな家庭を作ることとなった。そのためなら、なんだってやってやる。
俺が次に手に入れるべき駒も合わせてな。
やがて、紅蓮中将はゆっくりと口を開いた。
「よかろう。貴様の企みに乗ってやろう」
「ありがとうございます」
「ただし!焔たんは嫁にやらんぞーーーー!!!」
やっぱりそっちは譲らんか、このおっさんは。
「お父様!それは卑怯です!」
「別にそっちの許可まで取りませんよ。心配しなくても、すぐに結婚するわけじゃないんですから」
「拓哉様?」
「いざとなったら奪っていくだけですし」
「貴様――――――――!!!」
まあ、奪っていくは半ば冗談だけどな。俺としては、嫁にもらってくださいと言わせれば勝利だと思っている。
流石に一生嫁にやらないなんて不可能だし。
まあ、それはそれとして計画の第一段階が成功ということで。
俺は腕にしがみついて幸せそうにしている焔ちゃんの頭をなでながら、すごく悪い笑顔を浮かべていた。
クロスボーンガンダムでのトビアくんの頂いていく宣言。
男なら一度は言ってみたいものです。
そんな相手いないけどね!