マブラヴで楽していきたい~戦うなんてとんでもない転生者 作:ジャム入りあんパン
日本に帰った俺達を待っていたのは、歓迎の大艦隊だった。
EU方面から帰ってきた天馬級三番艦、四番艦も合わせて盛大に出迎えられた。どうやら、榊総理が頑張ってくれたらしい。
あまりの大歓迎ぶりに出国の時からの手のひら返しが凄すぎて、甲児なんかは不機嫌さを隠そうともしない。
「何だよ、都合がいいの」
「そうむくれるなよ。榊総理が頑張ってくれたから穏便に帰ってこれたんだぜ」
そうでなければ俺は参考人招致をぶっちした上で来ているから、帰ることすら考えなかっただろう。皇太子殿下がバックについているということは、皇帝陛下も付いてくれるということだ。そういう点においては最強の手札を得たと言ってもいいだろう。
歓迎式典やら何やらで大騒ぎだった俺の周りは、ようやく落ち着いてきた。
焔ちゃんに膝枕してもらい、耳掃除をしてもらうという至高の楽しみを満喫している。
次の開発はいいのかって?設計図やらなんやらを作ったら俺は当分暇なんだよ。後は製造してもらうだけってな。俺が自重無しで物を作ったらこうなるんだぜ。
そのせいでうちの地下工廠は大騒ぎだ。スーパーロボットを一体に、次期量産主力の第四世代機。そのテストヘッド。更には趣味で作った小型機だ。スコープドッグ系列の機体は技術廠に回したから、放っておけばそのうちバーグラリードッグやブルーティッシュドッグと言った系列機は完成するだろう。ソルテッカマンについても、大東亜連合の現地兵士たちの声を聞いて、扱いを改めることになったとか。
ガンダムMk-ⅡとゲッターGは次の戦場までお休みだ。アムロが家にいると妙に落ち着かないと言って、技術廠の訓練施設でガンダムを動かしまくっている。甲児は、まあなんだ。くろがね屋の皆さんに修行をつけられる羽目になったらしい。ボスもそれに付いていくそうだ。そして、ゲッターチームはそれぞれがそれぞれの実家へと帰っていった。士郎さんも実家に顔を出すらしい。
ロンド・ベルは現在休業中。ホワイトベースの蓄積されたデータを元に、天馬級とは別の新しい戦艦を作るつもりらしいが、果たして何が出来るやら。アーガマだったら笑ってやるよ。
そうそう、ハイメガ粒子砲が天馬級の正式装備になることになった。紅蓮のお義父さん曰く、「そっちばっかりずるいぞ!」との事。それを帰ってきた神野中将やらにも知られてしまい、結果、全艦標準装備とすることになったとか。今は佐世保と呉、横須賀でそれぞれ改造中だ。
その他の衛士の皆さんはというと、ロンド・ベルが死ぬ気で取ってきたハイヴ攻略データ。その名もアンバールデータとボパールデータが大好評で、戦艦用のシミュレーターまで設置された上で訓練に励んでいる。実家に帰るとかすればよかったろうに、一番目立っていたのは徴兵年令に達していない子どもたちだというのだから、悔しくて仕方なかったのだろうな。
キリコがフィアナと一緒に帰ってきた。表面上はむっつりしているが、内心デレデレなのはお見通しだぞ!
「で、式はいつにするんだ?」
「まだ予定はない」
今は二人一緒が幸せだからそれ以上は考えつかんだろうが、掴んだ手は離すなよ~。
次に鹿島優中尉・・・いや、大尉になったのだったな。とにかく、彼とも面談した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「せめて一言喋ってくれ」
無口だとは聞いていたが、無口どころじゃすまないだろう。
「報告は聞いている。俺に何か言いたいことでもあるんじゃないのか」
「そうだ。蒼いジムについてだ」
「いい出来だっただろう。リミッターを解除したら更にスペックアップ。そのままでも高い性能のジムブルーデスティニー。なんか不満でもあったか?」
「なぜ、あれを俺に送った。俺と面識はなかったはずだ」
「ないよ。ただまあ、運命だな」
そう答えて鹿島大尉の方に向き直る。ちなみに、今も膝枕をしてもらっているぞ。
「それよりも、だ。その後ろに隠れている子は誰?」
「この子の相談もあった。マリオン」
優の後ろに隠れていた少女が姿を見せる。髪の毛は蒼いショート。目は赤く肌の色は病的なまでに白い。マリオン・ウェルチかよ。
「鹿島大尉の年齢でその年の子は犯罪だと思いますが」
「何の話をしている。この子の国籍を用意してくれ」
「・・・・・・東ドイツかロシアじゃないのか?」
「マリオンに戸籍はない」
「あ、あの、私は孤児で、東ドイツで育てられたのです」
流石に無口すぎる鹿島中尉に、マリオンからフォローが入る。
簡単に説明すると、彼女の名前はやはりというべきかマリオン・ウェルチ。東ドイツのシュタージで少年兵として育てられたらしい。
ただ、彼女はその環境に馴染むことが出来ず、衛士不適合の烙印まで押された出来損ないだったとか。
それでも処分されなかったのは本当に運がいい。工作員として育てられているさなかに、革命、すなわちシュヴァルツェスマーケン本編が始まり、日本へのスパイとして送り込まれたところを鹿島大尉に出会ったとか。
以降はすっかり彼に懐いてしまい、工作員としては全く役に立たずなって流石に処分されそうになったところを保護されたらしい。
どういう風に保護したのかは具体的には聞かないが、部隊の一部を勝手に動かし、工作員として育てられていた少年少女たちを救ったとか。
結果的に、この工作員養成所をぶっ潰したことでハインツ・アクスマンの手駒の大部分を削減。現役で動いていた工作員たちもソルテッカマン部隊に確保され、現在は更生に向けて活動中とのこと。
「随分と大人しく話を聞いてやがるな。大丈夫なのか?」
「それだけガンダムのインパクトが凄かったということだ。何だ、あの化け物じみた性能は」
「神野中将のわがままに答えた結果です」
「今ではガンダムを神と崇める者までいるぐらいだ」
これが中東だったら、ソラン・イブラヒムくん改め、刹那・F・セイエイが爆誕する結果になるだろうな。作っとくか、エクシア。
「まあ、大体のことは分かった。マリオンとフィアナさんの国籍はなんとかしよう」
「フィアナもか?」
「どうせ手放すつもりなんてないんだろ?だったら、日本国籍をとっといてやるよ。そうすれば後々の面倒は避けられるし」
「助かる」
「その代わり、絶対に手放すなよ。死んだ人間といなくなった人間は、流石に俺もどうしようもないからな」
「無論だ」
「キリコ・・・」
「フィアナ・・・」
さて、焔ちゃんのお膝の感触を楽しむのもここまでか。俺はゆっくりと起き上がると、早速電話に向かった。こういう時に頼りになるのは大人の力、政治の力ってな。
さて、最近大車輪だった俺だが、戦術機以外にも手を出した。それは、食糧問題だ。
榊総理から、アメリカが食料を盾に俺の引き渡しを要求してきていると聞いて、本格的な自重を止めた。自重してたのかって?してたんだよ。
俺が戦術機産業を牛耳る以上、後方関係には手を出さないで放っておこうと思ったんだよ。甘かった。本気でアメリカを破産させる必要があるみたいだな。
まず問題となっているのは合成食品の類。これが不味い!不味いのだが、俺だけじゃないからと我慢していたが、流石にもう我慢する必要はない。これについては味に大幅な改良を加えて、より食べやすい味にした。勿論、俺は料理についてはド素人だから、生産手法を開示した上で、プロの料理人とかに協力を依頼した。
結果、天然モノには流石に劣るが、あの食べただけで吐き出しそうになる不味いレーションは卒業した。やっぱり食事はちゃんと味を楽しめてこそだよな。
そして、天然物食材にも手を加えた。多分見たことはあるだろう、野菜生産の一大プラント。人工の光を当てて野菜を育てるミニプラントキットを見たことはあるだろうか?あれのでっかい版を作った。近くの倉庫をまるっと買い取って、そこを野菜の製造プラントに作り変えた。勿論、そこは俺の頭脳チートで作った、人体に影響はないけどやたらと発育の良くなるお薬の出番だ。
結果、天然物の野菜より多少味は落ちるものの、早くたくさん育つ野菜工場が完成した。順次生産予定だ。
さて、ここまでやったからにはもう容赦はしない。医薬品も完全に自国生産するつもりだ。こっちのプラントも既に出来上がっている。
さーて、破産させるまで頑張っちゃうぞー。
結果、アメリカからものすごい量の抗議文が届いているらしいが、こちらから送り返した文面は以下のとおりだ。
「後方国家として食料面でも貢献できるように努力した結果ですが何か?」
これ、製造プラントを前線国家とかに送るともっと面白そうな結果になったりしないかな?かな?
まあ、その辺のさじ加減は榊総理に丸投げしてある。あの人なら上手いこと調整してくれるだろう。生きるか死ぬかのギリギリ、真綿で首を絞めるかのごとく。
そして、アメリカといったらもう一人忘れてはいけない。
篁大尉とその隠し子だ。篁大尉、極秘にアメリカに渡りたいって言うから榊総理にお願いして色々と手はずを整えた結果、ユウヤ・ブリッジスくんを連れて帰ってきた。
いや、待て。なんでだ?
まあ、理由はすぐに分かった。前カノ、ミラ・ブリッジスさんの死に立ち会ったらしい。今際の際に思い続けた相手が来てくれたことで大層喜んだミラさん。遺言として篁大尉にユウヤくんを預けると言ったそうだ。
勿論、そんな勝手なんぞ通じるはずはないのだが、そこは日本が誇る情報省外務2課が頑張ったそうだ。そのメンバーの中に鎧衣左近氏がいたらしく、篁大尉は帰ってからえらく気疲れしたようだった。
さて、篁家の修羅場劇場はここからだ。隠し子がいたことが栴納さんにバッチリバレた、と言うか、土下座でバラしたらしい篁大尉はなんとかユウヤくんを篁家で育てることに決めたそうだ。が、まず、ユウヤくんの当たりが厳しい。当たり前っちゃあ当たり前だ。栴納さんの目が冷たい。これも当然。そしてトドメは唯依ちゃんの「お父様、最低です」の一言でノックダウン。家庭内での地位は最下位になったそうだ。
まあ、それでもユウヤくんは優しい栴納さんと、何よりもお兄ちゃんが出来て大はしゃぎの唯依ちゃんに囲まれて幸せな家庭で育つことになりそうだ。
一番は唯依ちゃんのウルウル攻撃だったそうだが、それを仕込んだのは俺じゃなくて焔ちゃんだからな。涙は女の最終兵器と言うが、それは兄妹でも有効だったようだ。
ちなみに、ユウヤくんはこのままブリッジス姓のままで生きていくことを決めたらしい。ミラさんのことを、アメリカ人であった自分のことを忘れたくないらしい。
そんな中、まず地下工廠で作っていた俺の趣味の機体が完成した。
何が出来たかって?ガーランドだ。メガゾーン23って知ってるか?スパロボでは一回出たっきりのマイナーな機体だから、最近の子は知らないと思うが、まあ、分かりやすく言うとロボットに変形するバイクだ。それを作った。俺も何かに乗ってみたくてな。
と言っても、俺の腕前では大した脅威にはならないだろう。スパロボDでは回避の鬼だったんだけどな。
「拓哉様も前線に出られるのですか?」
うちの庭でガーランドを乗り回して遊んでいたら、焔ちゃんにそんなことを聞かれた。
「いや、出ない。つーか、出られない」
この理由はいたって単純だ。つまり、帝国で最も頭脳で貢献している俺を失うような結果になったら大変だからだ。
一応、俺は衛士適性試験を旧制度で突破している。旧制度というのは、ジム以前の撃震とか瑞鶴のコクピットシステムでだ。だから意外なことだが俺は戦術機に乗れる。
そもそも、アムロが来るまではガンダムのシミュレーションは俺がやっていたんだ。ただ、そこはやはり才能かな。戦術機の操縦は平凡と言うしかなかった俺は、あっさりと降ろされる結果になったのだ。
さて、ガーランドだ。これ、売れるんじゃないかと思っていたりする。ソルテッカマンに続いて小型の機体ばかり作って、流石に怒られないかとも思っているが、そこはそれ。バイクの運転さえできれば、後は脳波のサポート込みで操縦できるのがガーランドだ。衛士適性はスコープドッグ以下だ。
さて、どうなるかな?
結論。売れた。
いや、マジで。
バイクに乗れるなら操縦できるというのが受けたらしい。街中をバイク形態で走らせて、有事の際には即座に変形して戦うことが出来るというのが美味しいらしい。後、なにげにビーム兵器装備だし。
その結果、基地内ではソルテッカマン。市街地ではガーランド。戦場ではスコープドッグという住み分けが決まった。
まあ、ガーランドもソルテッカマンも前線で戦えるけど。
そんなふうにのんびりとした日常に、ついにやってきた。
再び前線に立つ日が。