マブラヴで楽していきたい~戦うなんてとんでもない転生者   作:ジャム入りあんパン

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お待たせしました。
リアルの事情で色々と精神的にまいっていて遅れました。
ちょっと書き溜めたので開放します。


20・グダグダ考えても分からないものは分からない

 

 

 大騒ぎ。その一言に尽きるだろう。

 地上に戻るとハイヴから逃げ出したBETA掃討戦が行われていて、疲労した体を休める間もなく追撃に参加したアムロたち、超ご苦労様。

 びっくりしたのは地上で待ってた俺達もだよ!?分からない人は、京橋、ゴキブリでググってみるといい。すごく衝撃的な動画を見ることが出来るから。

 

ただし、夢に見ても責任は取らないよ!

 

 まあ要するに、アレの拡大版だ。出てきたBETAをゴッキーよろしく叩いて周り、なんとか全滅させることに成功したのだ。

 まあ、出てきた数は地上にいたのと比べると大した事がなかったからな。大東亜連合軍の新人衛士の皆さんの経験値上げに協力してもらったと思いましょう。

 

 

 さて、ハイヴ攻略時の画像データを見ている俺達だが、そこで妙なものを見た。

 主に、他の機体からの画像データだが、ガンダムが赤い光を放っている。

 いや待て、なんだコレ。明らかにバイオセンサーがフルパワーで動いているよな。Zガンダムでカミーユがシロッコに突撃したときとかのアレだ。

 嫌な予感がして、アムロの方を振り返る。

「アムロ、体に異常はないんだな?」

「どこにも異常はないよ。それより教えてくれ。僕のガンダムに何をしたんだ?」

 何をした、というわけではないんだがな。何かをしたと言われれば、何かをしたんだ。が、これは完全に予想外だ。BETAに食われたA-01の連中の思念でも変に吸収したか?その割にアムロにもガンダムにも、大した変化はない。

 とはいえ、バイオセンサーについては話しておかないと駄目だろうな。

 俺は大きく溜息をつくと、後ろを振り返る。後ろにはロンド・ベルの主要メンバーが全員揃っていた。

 俺に視線が集中する中、俺はゆっくりと語り出す。

「多分だが、ガンダムに搭載しているバイオセンサーが影響している」

「バイオセンサー?何だ、それ?」

「ちょっとした試験システムの一つだ。機体の制御機能を向上させるために搭載したものでな、まあ何だ、衛士の思考を拾って機体の制御に反映させる機能がある」

「それは、機体の思考制御ということか?」

「の、試験だ。あくまで機体の反応速度やコントロール制御を円滑化する以上の機能はない。はずだった。が、この映像を見ている限りはアムロの感情に触発されているな。機体のデータでもバイオセンサーの稼働率が100%を超えている。よくもまあ、機体もアムロも無事だったもんだ」

「おいおい、そんな危ないものを積んでいたのかよ」

「言っただろう?あくまで機体の反応やコントロールを円滑化する以上の機能はないんだよ。が、これがアムロのニュータイプ能力と変に反応したらしいな。おそらくだが、アムロのニュータイプ能力に触発されて、思考を拾う機能が最大限に発揮されている。例えば、ここだ。隼人が注意してアムロがギリギリで回避している風に見える映像だが・・・」

 不用意に反応炉に近づいたアムロに、反応炉が触手を伸ばしている。

 だが、コマ送りをすると分かる。アムロも勘違いしているが隼人の注意よりも早く、アムロは機体を回避させている。そして、この反応は従来ではありえないほどの速さだ。マグネットコーティングも施していて正解だったというわけだな。

「アムロのほうが隼人の警告よりも早く動いている。それ以外にも、アムロはBETAの位置を明確に予言したり、反応炉が、これもよく分からんが反応炉が放っている思念波みたいなものを拾ったりしている感じだな」

「そう言えば、アムロくんが反応炉の気配を感じ取っていたな。見られていると言って」

「おそらく、これは俺も予見していなかった現象だが、バイオセンサーとアムロの相性があまりにも良すぎたんだ。その結果、周りに漂っている思考や思念波まで拾ったんだ。それこそ、殺されたA-01の衛士が最後に放った負の思念。死にたくないだとか、そういった感情もな」

 カミーユとの唯一の違いは、アムロはあいつらとそれほどつながりを持っているわけじゃない。これで巌谷大尉や篁大尉だとか、アムロに近く親しい人間が死んでいれば、その思念も拾っていたのだろうが。

「アムロ、休日返上になって悪いが、ガンダムのバイオセンサーを切ってみる。その後で実機で起動実験を行ってくれ。結果によっては、俺は一旦日本に帰って、建造途中の第四世代機を完成させる」

「第四世代機!?そんなものを作っていたのか!?」

「まだフレームが出来たばかりですよ。が、アムロとバイオセンサーの親和性が良すぎる。正直な話、アムロがこれからニュータイプとして能力を強くしていった場合、死んだ人間にとりつかれる可能性が出てきた」

「おいおい、お前はおばけが実在するっていうのか?」

「知らん。だが、アムロがこれだけ思念を拾っている以上、死んだ人間の思念を拾わないとも限らない。今は生きている人間の気配を感じ取るだけだからいいが、ヘタに死者の思念を拾うようなことがあったら、アムロが壊れてしまう。そうなる前に、バイオセンサーは一度切る。アムロはしばらく出撃禁止だ」

「まあ、しばらく出撃の予定はないからいいが、それでどうにかなるのかい?」

「アムロが特に問題ないと感じているなら、バイオセンサーを取り外してガンダムのままで運用する。が、アムロの反応にガンダムが追いついていない場合は、製作中の第四世代機を出したほうがいい。今のままではバイオセンサーは危険だ」

「拓哉くんとしてベストなのはどれだい?」

「一番のベストはアムロがニュータイプ能力に慣れきってしまうことだ。そうすればバイオセンサーを外すこともなく、無理に第四世代機を引っ張り出してくる必要もない。次点で俺が一度日本に帰って第四世代機を完成させること」

 そう、地下のガンダムを置いていたところで、まだフレーム剥き出しのままで放置してある機体を完成させる。

 しかしこれは完全に予想外だ。もう既にアムロのニュータイプ能力は、原作後半のカミーユだとかジュドーぐらいにまで高まっている。

「すまないアムロ。こんな結果になってしまった。俺が余計な事をしてしまったようだ」

「・・・・・・もう一度教えてくれ。拓哉の中で、ニュータイプとはどういうものなんだ?」

 アムロの真剣な目に、俺は一度目を閉じて思考をまとめる。まやかしや隠し事は無しだ。

「人類が行き着く可能性の一つ。という風に大げさに捉える必要はないと思っている。あくまで脳の使用領域が普通よりも上なだけの、ただの人間。もっと俗な言い方をすれば、勘がいいだけの普通の人だ」

「勘がいいだけで人の思念まで拾えるのかい?」

「ああ。拾えるだろうな。人の思念とか何かは、普通の人には拾えないものだ。それに感づくことが出来るっていうのは、要するに勘がいいのと同じだと思う。ほら、覚えがあるだろう?0点のテストを隠していてもお母さんには一発でバレるとか」

 身に覚えの有りそうな、甲児、武蔵、ボスがついっと顔をそらす。

「要するに、そういった勘の良さの拡大版がニュータイプだ。俺はそうだと思っている」

「そうか・・・」

 アムロがそうつぶやき、更に何かを言おうとしたその時だった。

 

 ガタッ!

 

 全員が一斉に音の方を振り向く。

「誰だっ!!」

 真っ先に飛び出したのはリョウだ。扉を蹴り破ると、その先にいた相手を一瞬で組み敷いた。

「きゃっ!!」

「えっ!?」

 可愛らしい悲鳴と、驚くリョウの声に押されるように俺たちも外に出ると、そこにはリョウに組み敷かれたソフィア少尉と、リョウに銃を向けているアントン中尉がいた。

 やっぱりか!という感情のほうが強かった。ソフィア少尉はアムロに随分と興味を持っていた。それもそうだろう。自力で自分のリーディングをブロックするなど、同じESP能力者しかいなかったはずなのだ。それが、アメリカ人の、日本人と親しくしている、あまりにもごく普通の少年だったから。

 そして、アントン中尉はそれなりにA-01の機密も知っている。つまり、リーディングやプロジェクションについても知っているはずだ。多分だが、ソフィア少尉の相談を受けたのだろう。

 俺は大きくため息を付いて、アントン中尉の手を抑える。

「中尉、銃をおろしてください。リョウの行為は何らおかしなところはありませんよ」

「む」

 俺に言われて、しぶしぶとだが銃を下ろす。そりゃそうだ。人の部屋の前で機密を立ち聞きしていて、この対応は優しい方だ。

「で、どこから聞いていました?」

「ニュータイプに関する触りからだ」

 ほとんど全部じゃねーか。

 マズイな。アントン中尉は祖国ソ連に帰ることを希望している。ソ連としても、ハイヴブレイカーの一人であるアントン中尉を、多少政治的に問題のある思考をしているといってでも、手放しはしないだろう。

 さて、こっちも手札を切るか。

「中に入りなよ。そこまで聞かれた以上、こっちの都合に巻き込ませてもらうぜ」

 遠慮する必要はもうないな。まあ、元から遠慮はしてなかったけど。

 再び俺の部屋にて。

「で、どこまで俺の思考をリーディングした?」

「し、していません。中尉から、人の心を勝手に見るのはいけないことだと言われて」

「・・・・・・本当に?」

「は、はい!神に誓って!」

 俺の顔が相当怖かったのか、指先がものすごく震えている。

 本当に震えたいのはこっちの方だっての。

「まあいいや。つまり、こういうわけだ」

「何がだ?」

「ニュータイプはそこまで万能じゃないってことさ。もし万能の代物だったら、アムロは話し始めた時点で部屋の外にいた二人に気づいていた。だから俺は言ったんだ。あくまで勘がいいだけのただの人間だってな」

「そうか、超能力か何かだったら後ろを取られることもないよな」

「そういう事だ。過信は禁物。だがそれ以上に油断も禁物。何があるか、何が起こるかさっぱり分からん」

 前世ではガンダムは小説版もかなり読んでいる。が、ぶっちゃけた話ニュータイプというのはよく分からん。レビル将軍曰く、「戦争なんてしなくてもいい人間」。で、グレイ・ストーク曰く、「本当に人類が戦争しなくても良くなるのは何万年も先の話」ってな。

「俺の方でもいろいろ考えてみるよ。だからソ連さんの方では余計なことをしないでくれ。出来るかい?」

「普通なら無理というところだが、A-01が壊滅したことで大使が茫然自失でな」

 あー、あのおっさん、メンタル豆腐だもんな。ハイヴは攻略したけどそれは日本がやったことで、A-01は壊滅しましたってんじゃあ、本国に返っても立場がない。いや、下手をすれば物理的に首がすっ飛ぶ可能性があるな。

 いや、少しは責任を感じているよ。ロンド・ベルと一緒に行動させていれば、A-01は壊滅しないだろうって思っていたんだが、指揮官の無茶な行動で壊滅状態。生存者はいるが、ほとんど使い物にならないと来たもんだ。

「さて、それで、何か聞きたいことは?」

「俺はない。が・・・」

「ニュータイプについて、色々教えて下さい」

「さっきまで話していた以上のことは何もないよ」

「それでも私は、もっと知りたい!私は、何のために生まれてきたのですか?ニュータイプという人達がいるなら、私は、私たちは・・・!」

 まあ、そう思うわな。自分たちこそが選ばれた人間だっていう意識はあっただろう。だがそこに、天然モノのニュータイプなんてものが現れた。調整もされず、普通に両親の祝福も受けて、多くの人に慕われて、友人にも囲まれて。アムロの境遇は、ソフィア少尉から見れば恵まれすぎているだろうな。

「何のために生まれてきたのですか!戦いの役にも立たず、中尉の後ろで震えていただけの私に、何の意味があるのですか!?」

「知らん」

俺はあっさりと答えた。そりゃそうだ。生まれてきた意味なぞ知るか。

「意味を作るのは自分自身だ。人に聞いても分かるか」

「あう・・・」

「拓哉くん、もう少し言い方というものをだね」

「知らんものは知らん。普通の人間は皆自分で決めている。あんたもそうしろよ」

「それでは、あ、あなたから見た私は、どうなのですか?」

「勝手に人の心を覗き見るハイレベル覗き魔。特殊性癖の変わった子」

「わ、私の能力は性癖ではありません!と、党から命令があっただけで、決して好き好んで覗いていたわけではありません!!」

 かなりマイルドに答えたつもりなんだが、お気に召さないと?

「まあどうでもいいや。ニュータイプとESP能力者は大きく違うよ。天然モノと合成食品ぐらいにね」

「すっげー例え方したな」

「大体合ってる。間違ってないなら問題ないだろ」

 そう、その程度で問題はないんだ。

「比較するだけ無駄。それに、ニュータイプだからといって万能なわけじゃない。ニュータイプじゃないからといって劣るわけじゃない。アムロを見てみろよ。運動能力は人並みで、格闘技なんてあんまり得意じゃないんだぜ?頭の出来は、俺のほうが圧倒的に上だ。そら見ろ、普通の人間と何が違う?」

「あ、いや、でも、それは」

「違わない。何もな」

 どっかりと腰を下ろして、天井を見上げる。

 実に嫌なことに、このままだとガンダム原作みたいにニュータイプが排斥されかねない。だからこそ、俺はあんまり話す気はなかった。アムロは例外だけど。とはいえ、これだけ知られたらどうするかなー。甲児たちはいいとしても、アントン中尉とソフィア少尉がなー。

 俺は椅子ごとくるりと向き直って二人に聞いてみる。

「二人共、このまま日本に亡命するつもりはない?」

「無いな。俺は上に煙たがられてはいるが、それでも祖国への忠誠をなくしたわけではない」

「私も、亡命するつもりはありません」

 だろうとは思っていた。まあ、いいさ。

「とりあえず、ここで見聞きしたことは黙っていてくれ。正直、ソ連の工作員にアムロが狙われる事態は避けたいのでな」

「分かっている。俺も恥知らずではない。いいな、ソフィア」

「は、はい!」

 さて、こっちは大丈夫だろう。アントン中尉はこれで結構律儀な人だ。ソフィア少尉もアントン中尉の言う事なら大人しく聞くだろうし、そうなると後は

「あの大使のおっさん、どうする?」

「・・・・・・こっちで適当に処理をする」

「殺しは勘弁してくれよ」

「勿論だ」

 間が微妙に気になったけど、流石に他所の国の艦内で殺しはないだろう。

 そして、最後に後回しにしたが、アムロだ。

「アムロ、お前はどうする?ニュータイプ能力を鍛えるのなら、俺も多少のアイディアを出すぞ」

「僕は・・・」

「まあ、あんまり時間がないから、明日までに答えてくれよ」

「明日まで?随分と急だな」

「俺は一度日本に帰る。開発途中の第四世代機を完成させる。ついでに、マジンガーとゲッターの戦闘データも届けてくるわ」

 送れば済むと言いたいところだが、ゲッターの新型機、ゲッターロボGの進捗も気になる身としては、一度早乙女博士とあって話をしておきたい。

 兜博士の方はマジンガーZの最適化が最優先課題だろう。甲児の成長が思っていたよりも早かったから、マジンガーZはまだ6割程度の完成度なんだよな。

「元からある程度決まっていたことだしな。艦隊のことは彩峰司令がうまいことやってくれるだろうから、今回の結果に油断せず、訓練に励むこと」

「それは私が言うべきことでは・・・」

「篁大尉、栴納さんにちゃんと言い訳したんですか?」

 現在、篁大尉には重大な家庭内の問題が発覚しております。

 お前のせいじゃないのかって?大本は俺のせいじゃないよ。ロンド・ベル内部に広めたのは俺だけど。

「さ、話はもう終わりだろう。出た出た。俺は帰ってからの仕事を今からやらなきゃならんのだからな」

「おいおい、もう仕事かよ!」

「そうだ。こっちじゃあ作るわけにもいかんからな。一度実家の地下に帰らんと」

「ああ、あの地下格納庫な」

 出撃するその日に、地面を開いてガンダムが飛び出し、家の直ぐ側の土手が切り開かれてホワイトベースが飛び出したからな。いや、ほら、ロマンだろ?

 おかげさまで、今でも地下にはまだ秘密兵器が隠してあるとまことしやかに語られているとか。

 

 俺はアムロたちを追い出した後、持ってきた端末に目をやる。

 本当ならこいつを完成させておきたかったんだが、どうやら次のハイヴ攻略には間に合いそうにない。

 ゲッターロボGも、マジンガーの強化パーツも、到着した頃には全部終わっているだろう。

 手元の書類を見るたびに嫌な顔をしている。自覚はあるよ。一つ行けたんだからもう一つ行っとけや的なこの命令書。国連経由か。

 ボパールハイヴ攻略作戦。ここから比較的近いハイヴでそれなりの大きさになっているハイヴとなると、ここになる。うろ覚えで何だが、スワラージ作戦だったか?第三計画の部隊が完全壊滅するのがここだったような気がする。

 俺の原作知識も、だんだん曖昧になってきたな。俺の頭脳チートは科学技術に由来するところに限定されるから、歴史や何かについては全くの無力だ。

 ハイヴが増えすぎている原因についても、必死になって情報を集めているが、やはり原因はこちらの武装が強化されだした頃からだ。

だがしかし、対応が雑だぜ。マジモンのチートというやつを見せてやるよ。

俺は一人きりの部屋でパソコンに向かい合う。最悪を避けるために。最善を拾いに行くために。

 

 


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