マブラヴで楽していきたい~戦うなんてとんでもない転生者 作:ジャム入りあんパン
自重をしていては全く進まないことを知った。
ハイヴは既に20を数えるほどにまでなり、アンバールやボパールといったここから比較的近いところにもハイヴが建設されていた。この勢いで行くと、下手をすれば原作にないハイヴも建造されるかもしれない。
そう思った俺は、彩峰司令に一つの作戦を立案する。
「ハイヴ攻略作戦だと!?」
「そうです。ここから一番近い甲9号アンバールハイヴを落とします」
今まで作戦に口を挟まなかった俺が、突如こんなことを言い出したことに司令室は緊張に包まれる。
「だが、どうやって攻略するつもりかね。言っては何だが、こちらの戦力だけでは到底対処できんぞ?」
「日本で用意している物資をこちらに送ります。紅蓮中将指揮の斯衛軍と天馬級二番艦もこちらに回して、正面突破をします」
「無茶だ!BETAの物量に押しつぶされるぞ!」
「俺も別に精神論で話をしているわけじゃないんですよ。まず根拠の1。アムロたちがヴォールクデータをクリアしました」
『は!?』
俺の口から飛び出た衝撃発言に、誰もが驚きの声を上げる。
ちなみにアムロたちがクリアしたのは普通のヴォールクデータだ。この間、嫌がらせでやらせたおふざけデータではない。
流石に難易度がゆるすぎるかと思って、普通のデータにBETAの量を倍増させて挑ませたのだが、こちらも難なくクリアしてしまった。
それが、つい一時間前の話だ。行けると思った。いや、確実に行けると確信した。
「アムロたちだけで、です。アムロ、甲児、ゲッターチームと士郎さんだけでクリアしました。ここに巌谷大尉と篁大尉、ジムの部隊が加わればさらに容易に事は進むでしょう。ダメ押しに天馬級を投入して、更に日本から部隊を派遣して一気呵成に押し切ります。押し切れます」
BETAがまだビーム兵器に対応していないだろう今が勝負だ。前の戦いの時には一匹も残さず倒しきったから、まだ対応されていないはずだ。だがおそらく、先遣部隊が帰ってこないことを不審に思うだろうBETAは、さらなる戦力の拡張を行うはずだ。
「やるなら今です。アムロたちの士気も高い。BETAがさらに大部隊をよこしてくる前に、正面切って叩き潰すべきです」
「根拠の二つ目は何かね?」
「ガンダムとマジンガーZの新武装が追加されます。ガンダム用のやつはストライカーパックなので、熟練衛士ならばすぐに使いこなせます」
そのストライカーパックは統合兵装ストライカーパック。俗にいうところのIWSP(Integrated Weapons Striker Pack)だ。その中でもSEED DESTINYに出て来たオオトリだ。
最初はストライカーパックに手を加えてマルチプルアサルトストライカーにしようかとも思ったのだが、計算上、エネルギーの消費が激しすぎる上に、バランスが後ろに片寄りすぎる。ムウさん、よくあんなのに乗ってたよ。
オオトリはビームランチャーとレーザー対艦刀、ミサイルランチャーまで装備しており、バランスもよく取れている。普通のIWSPも考えたが、あっちは近接武装が普通の実体剣だ。ビームサーベルに作り変えても良かったんだけど、面倒だった。
ちょうどホワイトベースの仕事も大詰めの時だったので、頭脳チートの中から設計図だけ引っ張り出して、強引にガンダムに合わせて作ったのだ。
ちなみに、マジンガーの方はよく分からんが多分アイアンカッターだ。日本にいた時にもりもり博士が一生懸命図面を引いていた。とりあえず俺が言いたいことは一つ。設計図と部品だけを送ってあなたは来ないでください。戦死されたらたまりません。
「全部明日には届きます。訓練期間を入れてもBETAが失った戦力を取り戻すよりも早く攻め込めます」
「ふむ・・・。分かった。ラダビノッド司令ともその辺を相談してみよう。ストライカーパックの概要がわかるものはあるかね?」
「こっちのディスクに。必要なら俺も行きますけど?」
「いや、君はアムロくん達についていてくれたまえ。私から言うより、君の口からのほうが衝撃は少なかろう」
それはしょっちゅう無茶振りしてるからって意味で受け取っていいんですかね?口には出しませんが、面倒なことを押し付けやがってという視線は十分に感じ取ってくれたらしく、彩峰司令はついっと視線をそらす。
まあ、いいけどね。いいけどね!
・・・後で覚えてろ、あのおっさん。
「と、言う訳でハイヴ突入作戦が決行されることになった」
俺の説明を聞いていたアムロたちは、流石に緊張の面持ちでいる。
この場にいる最年長者の士郎さんもそれは同じだ。この艦内にハイヴ突入したものはいない。それどころか、人類でハイヴ突入して生き残っている人はごく僅かだ。
だがいつまでも高級な装備を持ったまま、亀の子のように引っ込んでいる訳にはいかない。
俺はかなりの数の賛同者を得てロンド・ベルを結成させたが、それでも俺のことを気に食わないと思っているものは多い。
アムロのような外国人を取り込み、武家の仕来りも無視し、武家でありながら戦わない腰抜けとまで言われていることを俺は知っている。
だがそんなことは知ったことではない。俺は俺にできる戦い方をしているだけにすぎない。そうやって陰口を叩いている連中も、今頃は俺が作ったジムで大喜びして遊んでいるのだ。
と言うか、そういう連中を優先的にロンド・ベルに誘ったんだぜ?そこまで言うなら俺と一緒に世界を救おうって。何かと理由をつけては断っていたけどな。
と言うか、引っ込む理由に皇帝陛下や政威大将軍殿下を持ち出すなよ。皇帝陛下はご高齢だからともかく、殿下は自分から戦術機を持ち出して飛び出そうとする意志を持っておられたぞ。万が一があっては困るので、思いとどまってもらうのが大変だったけど。万が一にも殿下が「余について来い!」とか言い出したらどうするつもりなんだか。
話を戻そう。
「明日には新型のストライカーパックとか物資が届く。それまでに決めてくれ。ハイヴに突入するか否かを」
「なら、私から質問はいいか?」
そう言って挙手したのはアントン中尉だ。流石に俺を威嚇することはなくなった。どうやらこの間ヴォールクデータを攻略させたことで、俺のことを、と言うか、ロンド・ベルの評価をかなり上方修正させたらしい。
ちなみにアントン中尉とソフィア少尉の機体であるマインドシーカー改は既に完成している。シゲさんが率先して魔改造好きな人員を集めて改造していたからな。
「どうぞ」
「その作戦は、君が提案したのだとすれば、私達は君の指揮下に入るのか?」
「いいえ。俺はあくまで作戦の提案だけです。立案と実行は彩峰司令と、ここの基地司令であるラダビノッド司令が行います。と言うか、俺は軍人じゃないので、軍事に口を出しませんよ」
「だが、君は口を挟んだな」
「今が好機だと思いました。あくまで提案なので、断られたらそこまでです」
まあ、断らせない手はいくつも考えていたけどな。
「明日には日本から大量の物資と戦艦が届きます。これによって連隊規模になった日本帝国軍と、あなた達が元いたA-01連隊が先陣に立って、ここの基地部隊は後詰めをする形での作戦となります。ちなみに、ここの基地部隊を後詰めにしたのは、大半の衛士の練度が所定のラインに達していないからです」
そう、流石に即席栽培は無理だった。俺達が行った後の取りこぼしを排除してもらうことで、経験値を積んでもらうことにしたのだ。
アンバールを攻略した後はボパールハイヴに入ることになるだろう。できればEU諸国にもジムを届けたかったのだが、そうも言っていられない。
代わりに届けるのは、今絶賛建造中の天馬級3番艦に運ばせる予定だ。艦長は神野中将が務めることになっているらしい。
あそこはドイツの東西問題が長引いていて、少しばかり面倒なことになっているが、上手に調整してくれるだろう。
「他に質問は?」
「ない」
そっけない返事が返ってくる。これでも大分接しやすくなったんだぜ?
「あ、あの、私からいいですか?」
おずおずと手を上げたのはソフィア少尉だ。
「どうぞ」
「他の、私の姉妹たちはどうしていますか?」
やっぱり気になるか。何も出来ないではマズイと思ったらしい巌谷大尉たちに戦術機の操縦訓練を受けさせられていたから、情報を集めているどころじゃなかったのだ。
「いつも通りだそうですよ。殴られた子たちも無事に復帰して、通常任務についているそうです」
「そうですか・・・」
クリスカと社霞を足して2で割ったらこんな感じではなかろうか。妙にホッコリするんだよな。
浮気はしませんよ。俺は焔ちゃん一筋です。
「他には?」
「ガンダムとマジンガーはパワーアップするみたいだけど、ゲッターは何かないのか?」
「早乙女博士から聞いた話だと、新型のゲッターロボは今作戦には間に合わないそうだ。代わりに強化用の設計図は預かっているから、それで細部を強化といったところだな」
スパロボ的に言えばHP+500、EN+50、装甲+500、運動性+10と言ったぐらい。結構頑張ったと思うぜ。あのおっちゃんがあれだけ申し訳無さそうな顔をするってことは、後継機、多分だがゲッターロボGは期待してもいいってことだな。
「後、みちるさんから隼人によろしくってよ」
「なんだってー!お前、オイラのみちるさんに何しやがったー!」
「お前のじゃない。それに、特別な意味もない」
「特別な意味もなしに名指しでよろしくするかー!」
クールにそっぽを向く隼人だが、微かに頬が赤らんでいるのは気のせいじゃないはずだ。と言うか、いつの間にコイツラこんなに仲が進んでやがった。
「ちぇー、隼人もリア充の仲間入りかよ。俺も美人の彼女が欲しいなー」
「甲児くんにはさやかさんがいるじゃないか」
「べ、別にさやかさんとはそんなんじゃないや!ただ幼馴染ってだけで!」
本人がここにいなくてよかったな、甲児。いたら多分、血まみれの惨劇が繰り広げられていたぞ。
ふと視線をずらすと、そんな甲児たちの様子がおかしいのか、ソフィア少尉はクスクスと笑っている。
狙っていたわけじゃないが、どうやら緊張もほぐれたらしい。
俺はパンパンと手を打って注意を引く。
それだけですぐに居住まいを正すのは、流石に訓練されているからだ。
「話を戻すぞ。アムロと甲児は明日届く新型武装のチェック。マニュアルはあるからな。甲児、後でもりもり博士にお礼言っとけよ。リョウたちは今からゲッターの改造を行うから、いつでも出撃できるように準備しておいてくれ。アントン中尉とソフィア少尉はマインドシーカー改に慣れてくれ。ここまでで質問は?」
今度は誰も手をあげない。それに拓哉は頷く。
「よし、それじゃあ行動開始。急げよ、作戦開始まで時間はないぞ」
みんなを見送りながら、俺は自分の仕事に入ることにした。
さて、自重はもう止めだ。流石にネオグランゾンやゼオライマーは無理だが、俺は些か大人しすぎたかもしれない。
流石にオーパーツじみた機体は作れない・・・事もないが、コストも掛かるし乗れる人間も限られてくるので除外する。
俺は自分の部屋に戻りつつ、次の機体の設計案を考える。量産型はジム系列で十分だ。十分なはずだ。無理なら別の作品から色々と持ってくればいいだろう。
例えばATなんてどうだろうか。戦術機に比べれば衛士適性の壁は低いはずだ。武器の種類を増やしてやれば、いろんな戦場に対応できるだろう。
スーパーロボットの類も幾つか用意しておいたほうがいいかもしれない。とはいえ、あれは乗り手を選ぶからな。とりあえず日本の科学者を調べて、何処かにスパロボ出演経験者・・・この表現もどうかと思うが、兜博士や早乙女博士みたいな人もいるかもしれない。これは情報省に調べてもらうか。
逆に戦術機の規格は不用意に増やせない。例えばナイトメアフレームだとか、エステバリスとか。もし作るとしたら、戦術機風にアレンジする必要がある。
戦力の主流はやはり戦術機だ。これ以上種類をむやみに増やす余裕は、日本にも、そして最前線国家にはありはしない。規格は統一する。
俺の記憶が確かなら、初代ガンダムでは操縦の規格統一がなされておらず、『ザクの操縦は出来てもドムの操縦が出来ない』などという事が往々にあったらしい。同じ国の同じ軍内部にあってだ。
俺はそんな間抜けはするつもりはない。やるのなら統一だ。だからこそ例えばジムと撃震の操縦方法に大きな違いはない。簡単な機種転換訓練を一週間程度受ければすぐに乗れる。
リアル系の量産型はしばらく避けておくか。そうなると必要になるのはスーパー系の戦力だ。これは人員を探してからのほうがいいかもしれんな。
さて、どっちみち機体を作るなら実家に帰ってからしか出来ない。今の我が家の地下格納庫はがらんどうだ。何かで埋めてやらなければな。
俺はこれから先の算段を立てながら、歩みを進めていった。