Red Planet   作:Bishop1911

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喧嘩は戦闘に入るのか?
(割とガチでw)


2「傭兵の日常 2」

アーガスの酒場で日系人と喧嘩した翌日、

俺はこの火星を支配している総督府からの

依頼で監視任務の準備をしていた。

車庫のLSV(軽戦闘車両)に

かけてあるシートを剥がし、

必要な食料や無線機、武器弾薬を積んでいく。

エンジンをかけ、

まだ日が登らない街中を

アーガスの酒場に向けて走った。

 

俺が半年前に弾痕だらけにしてから

未だに修理されないボロボロのドアを

開けて中に入ると、

店の奥からアーガスがやってきた。

火星出身者特有の赤目を持つ彼は

寝起きなのか、

不愉快そうな表情でやってくるが、

俺を見た途端にいつものアーガスに戻った。

 

「まったく....朝の5時だってのに早いねぇ。」

 

「ああ。

申し訳ないんだが仕事で

1日くらい家を開けるんだ。

警報装置と鍵を預かってくれないか?」

 

「わかった。

でも2日経っても戻らなかったら

欲しい物もらっとくよ。」

 

「好きにしろ。それじゃあ頼んだぞ。」

 

「おーう、頼まれた。」

 

俺は寝ぼけた友人に

いつも通り家を任せると、

店を出て再びLSVに乗り、走り出す。

 

宇宙港や総督府が集まるここ

エリア01は平坦な平地に作られているが、

百kmほど南に行けば峡谷があり、

地球から人間と一緒にやってきた

昆虫たちの巣窟になっている。

ただの昆虫なら問題は無いのだが、

火星で変異して巨大化したため、

人間を襲うこともある。

定期的に規模を把握して

駆除しなくてはならない。

 

その規模を把握するという仕事を

受けた俺はこうして何にもない火星の大地を

ただひたすらバギーで突っ走っている。

 

最高速度ギリギリの時速100kmで

砂漠を走ること1時間強。

俺はやっと峡谷にたどり着いた。

荷物から水筒を探し、

一口飲むとチェストリグのポーチに

押し込んだ。

LSVを降り、荷物が入ったバッグパックを

背負って歩き始める。

移動しながらAK-74の

コッキングレバーを引き、

もう一度チャンバーに弾薬が

装填されている事を確認し、

セレクターレバーをセミオートの位置に移す。

周囲を見回すと、遠くに砂嵐が見えた。

 

「チッ....さっさと終わらせよう。」

 

俺は峡谷の淵に移動し峡谷を見下ろすと、

峡谷のところどころに穴が空いており、

そこから何匹もの(サイズ的には頭だが)アリが

出入りしていた。

俺は地図とメモ帳を取り出し、

巣の入り口の位置やアリの大きさ、

1分あたりに出入りするアリの数などの

チェック項目を手早くうめていく。

砂嵐の位置を確認するために

もう一度周囲を見回すと、

数百m離れた位置に人影が映った。

向こうは俺と目があったらしく、振ってくる。

おそらく同じ依頼を受けた同業者だ。

俺も手を振り返すとお互いに自分の仕事に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

指定されたポイントをいくつか移動して

観測して情報を集めると、

端末にその情報を打ち込み、総督府に送る。

 

画面に映し出された心のこもっていない

『お疲れ様です』の文字を

確認した俺はバギーに向かって歩き始めた。

砂嵐はもう直ぐそこまできていたため、

少し駆け足気味で向かう俺の背中を

爆風が吹き飛ばした。

軽く3mは飛ばされた俺は峡谷の方を

振り返ると、

さっきの同業者が峡谷の淵で

アサルトライフルを乱射しながら

側に倒れたバイクに向かっている。

その傭兵がバイクを起こした時、

黒い波が峡谷から溢れ出た。

俺は背筋が凍りつくのを感じる。

 

 

「まずい、あの野郎巣を爆破しやがったな!」

 

俺はバックパックを捨てると

急いでバギーまで走り、

バギーの後部座席に積まれたM2重機関銃の

コッキングレバーを引き、

初弾を装填すると黒い波目がけて掃射を始めた。

12.7×99mmNATO弾が降り注ぎ、

黒い波を構成する巨大なアリたちを

粉々に砕いていく。

 

バイクに乗った傭兵が俺の隣を通り抜けた

と同時に俺は射撃を辞め、

運転席に飛び込むとエンジンをかけ、

アクセルを目一杯踏み込んだ。

赤茶色の砂煙を巻き上げて走り始めたLSVの

運転席で俺は無線機を取ると

アーガスの無線機の周波数に合わせて

話し始めた。

 

「アーガス!俺だ、聞こえるか!?」

 

『んん.....どうしたタカシ?』

 

「アリだ!アリの群がエリア01に向かってくる!」

 

『はは....お前が冗談言うなんて知らなかったよ。』

 

「おい、真面目に聞け!

アリは速度遅いからそっちに行くまで

3時間はかかる。

お前が総督府に連絡して

防衛態勢を整えさせろ。わかったか?」

 

『あ、ああ....わかった。』

 

 

 

俺は後ろを振り返ると

アリの群との距離は離れているが数は増え、

地平線を埋め尽くしているほどだった。

 

「クッソ....父さんもこんな感じだったのか。」




次回
3「地の底から訪れし悪夢」

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