Red Planet   作:Bishop1911

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しばらく戦闘ナーシ。


オッドアイの傭兵
1「傭兵の日常 1」


いつものように俺は一仕事終えると、

AKを背中に背負ったままで

友人が経営する酒場に向かった。

 

ボロボロの扉を開けて中に入ると、

俺と同じように背中にライフルを背負った

集団が先に飲んでいた。

俺はその集団の後ろを通り過ぎると、

サングラスを取って

バーカウンターにつき、

子どもの頃からの友人、アーガスに

ビールを頼んだ。

数秒でビールが出てくると同時に

背後から声をかけられた。

 

「おい、そこの火星人。見ねえ顔だな?」

 

俺は面倒なことに巻き込まれ、

店に入った事を後悔したがいつも通り無視する。

 

「聞いてんのかテメェ!?」

 

また話しかけられるが、

俺は自分に対する興味を失ってくれる事を

祈りながら無視する。

 

「舐めやがって…」

 

俺は背後から肩を掴まれ、

声の主の顔をやっとおがむ。

妙に態度のデカいそいつは日系人だった。

 

「なるほどな…」

 

などとボケた感想をこぼしたのには

ワケがある。

父さんの録音にあった通り、

この火星を開拓するときに

難民たちを助けたのは日本人で、

その二世の彼らはいわゆる上流階級だが、

簡単に言えば調子に乗ってるだけだ。

 

「俺になんか用か?」

 

俺が振り返ると、

日系人は顔を一瞬硬ばらせるが、

やっと会話が進み始めた。

 

「はっ…ははっ、オッドアイか。

おいみんな、コイツ人間じゃねえぜ。」

 

「言いたい事は終わったか?」

 

ビールがぬるくなる前に飲んでしまいたい俺は

会話の終わらせ方を模索するが、

どうやら相手を怒らせただけらしい。

 

「あんま調子乗んなよ?ぶち殺すぞ。」

 

俺は殴り合いに備えてソイツの武器を

把握するために視線を動かす。

背中に下がっているSA58は

かなり雑に扱われたのか砂まみれで、

腰に視線を移すと拳銃は無く、

その代わりに刃渡りが40cmはあるナイフが

ぶら下がっている。

 

「そんなつもりは無いが、

怒らせたなら謝っとく。

それじゃあ俺はもう酒を飲んでいいか?」

 

ソイツに背を向けないように

コップを持った俺の手をソイツが弾き、

俺の手から離れたコップが

甲高い音を立てて割れ、

入っていたビールを床にブチまけた。

コップが割れた音を合図にしたように

ソイツの連れ5人が一斉に立ち上がり、

俺の目の前に立ちはだかる。

 

「この場合お代はお前持ちか?」

 

「ざけんなよ…。」

 

ソイツは腰から銀色に光るナイフを

抜くと、俺に向けてくる。

こういう状況になっても止めない

バーテンダー兼友人はどうかと思うが

いつもの事なので気にかけず、

乱闘になる前に一応相手に断りは入れておく。

 

「別に殴り合いをしたいってわけじゃ

ないんだがお互いに引き下がる事は

出来ないのか?」

 

「んなもん知るかよ、死ねッ!」

 

解決策を提示したつもりだったが

あっさりと無視され、

ソイツはナイフを突き出してくるが、

俺の目にはスローモーションのように映る。

ゆっくりとこちらに向かってくる

ナイフめがけて俺は椅子に座ったまま蹴りを入れた。

ナイフはソイツの手から離れ、宙を舞う。

そのままの勢いで

俺に向かってくるソイツを俺は躱し、

ソイツの頭をバーカウンターに叩きつける。

落ちてきたナイフをキャッチし、

さっきまでナイフを握っていたソイツの

右手に突き立てた。

 

「ギャアアァァァァァッ!!」

 

「うおッ!?」

 

「早い…!」

 

耳障りな悲鳴が響き、

ソイツの連れが驚きの声を上げる。

 

「いいか?

俺はこの店の常連だ。

初めて入る店では常連客に

行儀良くしろこのクソッタレ。」

 

俺はソイツの連れを見回し、

 

「他に礼儀について俺から

指導を受けたいヤツは前に出ろ。」

 

と一言言うと、

連れの5人は揃って首を横に振り、

慌てて店を出て行った。

俺は右手にナイフが刺さったままの

男を引きずって店の外まで行くと、

ポケットから財布を抜き取って店に戻った。

 

 

 

 

 

「騒がせたな、迷惑代だ。」

 

俺はそういうとさっきの日系人から

抜き取った財布の中身をアーガスに渡す。

 

「いい加減静かに飲んでくれないもんかね。」

 

「言っとくが俺が悪かった事は

一度もないぞ?

俺は手を出されるまで何もしてない。」

 

「確かにそうだけどさ、

おっかないつって誰も

来なくなったんだよね。」

 

「それはお前の集客力の問題だろ。」




次回
2「傭兵の日常 2」

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