次回は空星やって早く野球終わらせなきゃこれからの生誕祭とバレンタインに間に合わない……!
「「……はい??」」
俺の言葉にたいして2人が小首をかしげる。
「いや、今ちょっといい感じにカッコよかったじゃん。もっとこうなんかさ、「堕天使……?」みたいな感じでいこうぜ?はい、もっかいやるからな!んんっ!」
咳払いをひとつして先ほどのセリフをもう1度。
「俺は──堕天使になった」
ふっ……決まったぜ!
「だt………ごめん、やっぱり無理だよ!」
「ちゃんとやってくれないと俺が恥ずかしいじゃねぇかよっ!頼むよチカエもん!」
「チカエもんじゃないしっ!今は真面目な話をしてるの!話すなら話すでしっかりやって!」
お前だって普通怪獣になって街破壊しまくってたくせに……。街破壊しながら高笑いしてる時点で普通じゃねぇよ、その怪獣。
「俺シリアスな雰囲気苦手だから面白おかしくしてこうと思ったのによぉ……。しゃあねぇな、真面目に話してやるよ」
再び咳払いをしてから真面目な口調で話し始める。
「さっきも言ったが俺にもなりたいこととか全然なくて、それでそんな自分を変えようと思ったんだ。」
「だけど自分を変えるって具体的に何をすればいいかわからなくてな……。」
「そんな時にたまたま見てたアニメの主人公が厨二病を患ってたんだ。それを見てたら俺もこんな風になったら変わったって言えるんじゃねぇかって思ったんだ。いや、無理やり思い込んだの方が正しいか……。」
2人は先ほどまでと違って真剣な目でこちらを見ている。
「それで?」
千歌が話の続きを催促する。
「それからは自分のことを『ヨハネ』って呼んだり近くにある堕天使ショップやらなんやらに通いまくって色んなグッズを集めたよ。黒いマントだったりドクロがついた杖。他にも黒魔術の本やら妖しげな蝋燭。とにかく色んなグッズを買い漁った」
「でもそんな生活を始めて2週間くらい経った頃にはすでにやめてた。────やっぱり俺は俺のままだった。」
「俺がやりたいのはこんなことじゃなかった、そう思って集めてた堕天使グッズを全部捨てたんだ。……結局は妹の善子が持ってかえってきて自分のモノにしてたけどな」
あれはびびったわ、ご飯できたことを伝えにいったら部屋で儀式やってるからな……。今はもう慣れたけど。
「善子って今日のあの娘だよね……?」
「ああ、そうだよ。」
「だから今日はあんな喋り方だったんだね……。」
「??」
その場にいなかった競泳水着さんが何の話かわからないというようにしていたのでところどころ話をかいつまんで説明した。
「……なるほど。なんというか、個性的な人ですね」
なるほど。個性的という一言であいつのことをまとめたか。あながち間違いではないな。
「それで、その後善ちゃんはどうしたの?」
「その後もう1回だけやりたいことが見つかったんだ……。だけどそれも結局はすぐに終わっちまった」
「それって……?」
「うーん……今はノーコメントだ。ただ言えることはそれからはお前の知ってる俺だってことだけだよ。特にやりたいことも見つけられなかった、さっきまでの俺だ」
「「さっきまで??」」
そう、さっきまでだ。今は違う。
ようやく先ほどやりたいことが見つかった。
「ああ、今朝千歌と話した時。スクールアイドルを始めようと思うっていた時だな。その時に1度考えてさっきの千歌の話を聞いた後に決めた。」
「俺に千歌のスクールアイドルになる手伝いをさせてくれ!お前の話を聞いてわかった、これが今の俺のやりたいことだっ!」
千歌は俺の発言に驚いているのか目を丸くしてから大きく頷いた。
「善ちゃん……うんっ!よろしくねっ!」
俺と一緒の普通でなににも興味を持たなかった千歌がようやく見つけた輝き──。
それは前にも見たことがあるような輝き。あの時は失ってしまった光だけど今回はしっかりと掴み取ってみせる。
(絶対に掴み取ってやる………だから待っててくれよ、果南、鞠莉、ダイヤ)
「はぁ〜……」
赤い夕焼けに染まる沼津の街におれのため息が響く。
俺はシリアス苦手って言ったのになぁ……。
あの後、自己紹介をしてから3人とも別々の方向へ帰っていった。
あの競泳水着さんは桜内梨子というらしい。
なんでもあの音ノ木坂学院出身だそうだ。……それにしてもなんか聞いたことのある名前だな。はて、どこで聞いたのだろうか……?
……考えても無駄か。さて、さっさと家に戻らなきゃな。
そう思った時──
「待って!」
そう声をかけられて振り向いた先には──
「話があるの、善くん」
ここまで走ってきたのか少し息を荒くしている曜がいた。
やはりシリアスは苦手だ……。
どうやったら上達しますかねえ〜……。