──4月。それは学生、特に先日まで中学3年だったものにとってはどう思うか両極端に分かれる時期であろう。
中学校までの友達と離れるのが嫌でそれを引きずりネガティブに臨むもの。そしてようやくあいつらと別れられるぜ!ひゃっほいと楽しみに臨み俗に言う高校デビューとやらを目論むもの。おれは諸々の事情により後者であったが……。
そしてここにも1人、高校デビューを目論む少女がいた。
「ふふふ……っ!今日から私は生まれ変わるのっ!私はもう堕天使なんかじゃない、私は津島善子。──リア充に私はなるっ!」
──そう、おれの妹である。
「おい善子、リア充とやらになるのは構わないがもうすぐバス出ちまうぞ?いきなり遅刻とかリア充の風上にもおけないんじゃね?」
いや、もしかしたらわざと遅刻して最初の重たい雰囲気を上条当麻くんばりにぶち壊して一躍クラスの人気者になる作戦かもしれない。
俺の妹にしてはよく考えたな。
「ちょっ……!それを早く言ってよぉおおーーっ!高校生活いきなりピンチじゃないの!」
……深読みしすぎたようだ。
「とりあえず今から出れば充分間に合うから早く行くぞ?」
「わかったわっ!」
「そうだ、今日はおれ生徒会あるから着いたらすぐに別行動な。帰りは一緒に帰れるがどうする?」
そう、俺は生徒会に所属している。とはいっても会長が働き者すぎてあまり出番がないのが実情だ。
「う〜ん、今日は入学式だけだからもし友達ができたらその子とご飯でも食べに行くわ。もし行けなかったら連絡するから」
「ん、りょうかい!友達作りがんばれよ?昨日は夜まで堕天使がでないよう特訓に付き合ったんだからな」
ほんとになんであんなに頻繁にでちまうのかね、堕天使ヨハネ。俺もまぁ……そういう時はあったがすぐに終わったぞ?
「わかってるわよ!……昨日はありがとね」
「やけに素直だな。可愛いとこあるじゃねぇか!お兄ちゃんは嬉しいぞ?」
こうやって妹感の成長を見れるのは兄としてはとても嬉しいな。ご褒美になでなでしてやろうじゃないかっ!
「ちょっと!髪をわしゃわしゃするのやめてよ!せっかくセットしてきたんだから!」
「ははっ!すまんな!ついつい……っと、ほれ学校着いたぞ?」
「えぇそうね、それじゃあ行ってくるわ」
「あぁ、がんばれよ善子」
「えぇ、このヨハネに任せておきなさいっ!」
なんか最後の言葉がいきなり不安なんだが大丈夫なんだろうか……?
ちょっと堕天使入り気味じゃなかった??心配し過ぎか?
……やばっ!生徒会遅れちまう!硬度10さんに怒られないうちに生徒会室に向かうか。
「ちぃ〜っす……」
ようやく生徒会室に着いたぜ……。学校って無駄に広いんだよなぁ。特にうちの高校は空き教室が多いからな、歩く距離が無駄に多い。
「善人さん、遅いですわよ!今日は入学式だから早く来るようにと言ったではありませんか!」
「すまんすまん、妹が入学式だからそっちの面倒見ててな。お前も妹が入学式だったよな?ダイヤ」
このお方は黒澤ダイヤ。うちの高校の生徒会長で網元の娘である。
頭がかたいため硬度10など不名誉なあだ名をつけられている(命名おれ)。
「えぇ、私の妹も今日、入学式ですわ。確かに妹さんの面倒をみるのも大切ですがそれとこれとは別です!罰として入学式が終わったら私と見廻りに行きますわよ!」
……これだから硬度10ってよばれるんだよなぁ。今回はこちらが悪いから仕方ないけど。
「へーい、了解でごぜぇますよ。」
「それでは私は入学式の挨拶もありますので。終わったら戻ってくるので仕事をしててくださいな」
そっか。生徒会長って大変だよな。こういう行事ごとにわざわざ長ったらしい挨拶考えなきゃ行けないし。副会長とか超楽だわぁ〜。なにごとも「副」ってつけばそれなりの地位にいながらあまり目立たないから気が楽だ。他の学校がどうかは知らないが俺的にはオススメだね。
「おう、行ってらっしゃい。こういうときにはいつものポンコツやめてくれよ?」
油断するとすぐやらかすからな、この会長。釘を刺しておかないと。
「なっ……!そんなことは決してしません!そんなことよりちゃんと仕事をしておきなさい!」
「へいへい。会長の仰せのままに」
今ごろ善子は上手くやってるのだろうか?不安だなぁ……。
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