「二連続襲撃計画…か」
ぽつり。
他に誰も居ない自分の部屋で独り、今回の襲撃計画について聞いたことを思い出す。
IS学園を二度襲撃し、一度目では織斑一夏の捕獲及びISコアの奪取という二正面作戦。
二度目は各国官邸への襲撃の際の時間稼ぎ。
一度目の襲撃では、私は織斑一夏の捕獲のサポートメンバーとして、二度目の襲撃では恐らく出てくるであろう山田真耶及び更識楯無の相手をすることになっている。
作戦目標として、織斑一夏の捕獲よりもISコアを
正直、織斑一夏の捕獲よりもそちらの方が気が楽だ。織斑一夏の顔を前にして、殺さずにいられるとは思えない。奴の顔を見ていると、ふつふつと煮えたぎるような殺意が湧き出てくるからだ。スコールとオータムが強襲する手筈になっているらしいが、オータムの奴は
「とはいえ…」
IS学園にはあの妙ちくりんな奴も、世界最強もいる。正直、ボスとやらが考えているように、そううまく事が運ぶとは思えないが…。
まあいい。私は私の考えで動くだけだ。
待っていろよ…。
某食堂。
今日も普段通りになかなかの賑わいを見せているらしく、部屋の外から漏れ聞こえる喧騒を背景に、俺は机の上にある二枚の招待状をにやにやしながら見つめていた。
我らが親友、心の友。一夏の奴が俺と蘭に、学園祭の招待状を出してくれた。
招待状にあるその場所の名前は、かのIS学園。
IS学園。
それは美少女達ばかりの桃源郷…。
普段とは違った雰囲気、浮わついた、もとい楽しみな気持ちで積極的になるはずのこの機会…!逃してなるものか!
そう!
俺は!
絶対に!
ここで彼女を作るッッッッッ!
「お兄うるさい!」
ドンッ!
「おぅっ!?」
隣の部屋から飛んでくる妹の声。いつもならここで反射的に謝ってしまうところだが、今日の俺は一味違うぜ?
「そんなこと言ってたら、招待状やらないぞ?っと…」
言った途端ドタドタドタッ!と足音がしたと思ったらバンッ!と勢いよく俺の部屋のドアが開けられた。
おいおい、もう少し手加減してくれないと壊れるんだけど。壊れたら直すの俺だぞ?しかも叱られるのも俺。理不尽。これが我が家のヒエラルキー。泣ける。
「ちょっとお兄、招待状来てたんなら早く言ってよ!」
そう言ってツカツカと俺の机に寄って来たと思ったら、むんずと招待状を手に取ってさっさと出ていってしまった。
…うん、こんなことだろうと思ったよ。
でもさぁ、でもさぁ…。
もうちょっとくらい、優しくしてくれてもいいんだぜ?(泣)
「あ!見つけたわよ、一夏!」
「おう、鈴か」
放課後。学園祭の各クラスの出し物が決まって、クラスごとに準備が進められつつある頃。
「あんたのところは何やるのよ?」
「…喫茶」
「へえ、あんたのところも喫茶店なら、ちょうど良いわ。アタシのクラスとあんたのクラス、どっちが売り上げられるか勝負よ!」
「…」
あれ?なんだか変ね。いつもならここで、
『おう、望むところだ!負けた方が昼飯おごりな!』
とか言ってくるんだけど。なんだか苦虫を噛み潰したような表情してるし。嫌なのかしら?
「嫌だったら別にまあ、その、いいケド…」
ちょっと前なら、
『はっ、あんたまさか負けるのがこわいの?プークスクス、男のくせにみっともないったらありゃしないわね!』
とか言ってたかもしれないから自重自重。アタシはもう、あんな嫌な奴にはならないって決めたからね。
そう思っていると、一夏はハッとした顔で、
「ああ、嫌って訳じゃないんだ。ただ、ちょっとな…」
って言ったきりまた黙ってしまった。
もしかして…。
「あんた、また何か面倒ごとに巻き込まれてる訳?」
「面倒ごとっつうか、何て言うか…」
歯切れが悪い。言いたいけど、あんまり言えないような、もどかしいような感じ。
正直気にはなるけど…。
「ま、あんたが言えないようなら無理には聞かないわ。その代わり、大変になったら遠慮しないで言うこと。いい?」
どうせまた、何か厄介ごとに手を出したりしてるんだろう。だから、アタシはアタシに出来る形で手伝おう。
「サボ島に動き?」
『はい。これまでなかなか掴めなかった亡国機業の痕跡ですが、今回ようやく確かな足取りを確認しました』
「よくやった、クラリッサ。それで、奴らの動向は」
『はい。これまでの調査では、現在は使用されていない廃棄されたアメリカの生物兵器開発基地にて、武器の運び込みが確認されました。特にISの整備環境を整えており、近々襲撃があるのではないかとのことです』
「ふむ…」
最近はシャルロットの相手をしていたり学園祭の準備で忙しくなってきたこともあり、外の様子がなかなか掴めなかったが…。このタイミングでの報告、さすがはクラリッサというところか。
しかし、シャルロットの奴も遠回りな主張をするものだ。
心配はしてほしい、構ってほしい、でも自分から甘えに行くのは恥ずかしい。
これはあれだな。思春期と呼ばれるものだろう。
普段私達とは普通に会話するくせして、嫁の前だと喋ろうとしなかったり。最近は嫁の元には行かずに、そのくせ私や一夏に嫁の様子を聞いてきたり…。
そんな回りくどいことをせずとも、さっさと嫁の元へ行って構ってほしいと言えば良いのに、と思わずにはいられない。まあ、シャルロットの奴にもいろいろあるのだろうが…。
っと、そうだった。今は亡国機業についての対応を考えなければ。
とは言え、現状私が調べられることは圧倒的に少ない。となれば。
「わかった。こちらでも、生徒会長や嫁に当たってみよう」
『IS学園の生徒会長というと、あの更識楯無ですか』
「そうだ。ロシア代表の更識楯無だ」
『わかりました』
教官…いや、織斑先生は恐らく私が聞いても何も答えてはくれないだろう。私に教えるということは、ドイツ軍に情報をリークすることと同義だからだ。
しかし、何もしない訳にもいかん。なんとなく、胸騒ぎがする。
…何だかんだで嫁が一番現状をよく知っていそうな気がするのは何故だ?