ほそぼそとやっていこうぜ、というスタンスで
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拉致られた。
誰に?
篠ノ之束ことクソ兎に。
何故?
知らない。
や、アンサートーカー使えば理由とか全部わかるけど。
ほら、そういうのって、全部わかるとつまんないし。
あと、周りから見ると軽く異常者じゃん?
拉致されたやつが何の説明もなく、何故拉致されたのかを正確に把握してる情景を想像してみ?
異常だろ?
僕は怪しまれたり、変に注目をされるのは嫌なのです。
ナスは嫌いなのです!
てな訳で、理由は分かりません!
まあ、仮にも相手は天才クソ兎だ。何かしらの思惑があるんだろうとは思う。
俺はこいつを原作知識(ただしうろ覚え)で多少なりとも知っているけど、クソ兎は俺のことを全く知らないはずだ。
だからまあ、初めて自分が理解出来ない存在に対して、理解しようとしてるんじゃないかなー、とか適当に予想してる。
で。
「何処へ行くつもりだ」
俺は今、こいつの作った潜水艦の中にいる。
潜水艦内部は機械がごちゃごちゃしており、人間はこの篠ノ之束とクロエ・クロニクル(クーちゃんと呼ばれていた)以外にはいないようだ。
潜水艦の割には中は意外と広く、キッチンスペースにIS関連のものであろう作業用スペース、ソファもあり、生活環境としては十分に整っている。
結局あの後、俺は銃で撃たれた。
といってもあの銃は捕縛用の特殊弾が詰められていたらしく、ロープ状のワイヤーで左手と胴体を絡めとられただけだが。
幸いなことにバランスを崩して転倒したり、くわえていたタバコをおとしたりすることはなかった(ここ重要)。
潜水艦に引きずり込まれようとする直前には、中は禁煙だからと暗にタバコ捨てろ、と言われたが、その時自由なのは右手しかないわけで。
いつもなら携帯灰皿が胸ポケットにしまってあるが、ロープで左手と共に胴体が縛られているので取り出すことが出来ない。
ということでふてぶてしくも灰皿を要求したが、これが意外にもすんなり灰皿が出てきて少々驚いた。
一体なにが気に食わなかったのか、当然クソ兎はぶすっとむくれたように不機嫌だったが、まあ用意のいいことで。
あとずっと睨んでんじゃねえ。
そんな感じにあれよあれよという間に、俺は潜水艦へ引きずられていった。
当然行き先は告げられていない。
そして先の質問へ戻るわけだ。
「…」
クソ兎はこっちをじっとじとっと半目で見るだけで答えない。
俺は生活エリアらしきスペースのソファに背中を預けており、クソ兎は俺の右手側にある作業用スペースの丸椅子(クルクル回るやつ)の背もたれに腕を組んで乗せている。
あと背もたれの付け根を両足で跨ぐという姿勢のため、はしたない感じになっている。お前なんでスカート履いてんのにそんなズボラなんだよ…。
さて。
このまま行き先がわからないのはなんだか弄ばれているようで不愉快かつ気持ち悪いので。
しゃあなし。
てってけてってってーっ、てってー♪(ピョコン)
アンサートーカー!(某ネコ型ロボット風)
困ったときにこれいっこ。
ふむ。
行き先は、ドイツ?
それも恐るべき子供達計画…いや、違った。
デザイナーベビー達、強化人間の製作工場跡…か。
俺はこれまでこの人生、自分が後悔しないことを基準として生活してきた。
それゆえ、今回も、後悔しないための最善な行動を考える。
ここでも登場、アンサートーカー!
ふむ、花束を3つ用意すること、か。
「おいクソ兎」
「聞いてるよ」
返事は割とすぐに返ってきた。
ああ、俺が聞こえてないのかと思っているのか。まあどうでもいい。
「花屋に寄れ」
そう告げると、驚いたのか、いぶかしんでいるのか。
僅かに片眉を上げた後、そっか。とだけ呟いた。
それにしたってこいつ、コミュニケーション能力ゼロだな。