とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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地味にサブタイ変わってるけど誰も気にせーへんからへーきへーき


【祝】50話突破してた記念の特別回・後編【50話】

皆で仲良くお昼ご飯を食べた後。セッシーことセシリアたんが

「『カラオケ』とはなんですの?」

と言っていたので、ホテルの機材を借りてカラオケ大会に。

と言っても俺はもう既に半分くらいお疲れでおねむだったので、一曲だけだ。曲はブルーハーツの『人にやさしく』。ブルハはいいよ、うん。ちっふーもブルハ好きということが判明してちょっと嬉しかった。

でもねちっふー。君の美貌と凛々しさで『皆殺しのメロディ』はちょっと破壊力ありすぎかな。うん。

そのちっふーは他に『夢見る少女じゃいられない』、シャルロットは『心拍数0822』と『time after time』。シャルロット、ボーカロイド聞くんだ…。意外である。シンディはいいよなぁ…。シャルロットの優しげな声色と相まって、つい寝てしまいそうになった。子守歌かな?破壊力ばつ牛ン。ふ、ふつくしい…。

束?あいつは不特定多数と行動をともにするとか無理なタイプだからね。多分ダーツでもやりに行ってるんじゃないかな。知らないけど。

件のセッシーはビートルズの『lady Madonna』を熱唱してた。セッシーの美声で歌われるレディマドンナも悪くない。ただ、やはり本家は偉大だなあと思ったのみである。個人的にはオブラディオブラダとかtwist and shoutなんかも好きなんだ。

ちなみにラウラははしゃぎ疲れたのか、お昼寝ちうである。それはもう、くかーっと広いベッドを独り占めして大の字で。

あの子はこう、ちっちゃいカラダと相まって本当にちみっこの相手してる気分になる時がある。きゃわいいよね。しつけのなってないクソガキは嫌いだが。周りのことを考えられる優しいちみっことか可愛くない?保護したくなるというか。はっ、これが母性本能…。いや俺男だし。じゃあ父性本能?父性本能ってあるのか…?まあいいや。

たっちゃんはホイットニーヒューストンの『I always love you』。しかし俺に熱視線を送られてもどうしろと。

マドカはビリヤードしに行った。束といいマドカといい、自由な奴が多いよね。俺の周りって。いや俺としてはあまり大人数すぎてもうざったいので助かるけど。一人ないし少人数が一番楽。本当に。ただし気の合う奴かお互いを思いやることが出来る奴に限る。脚を引っ張ってくる奴は正直敵だと思っている。

鈴ちゃんは日本に居た時期が長かった故か、俺も聞いたことのあるJ-POP中心にいろいろ歌っていた。でも鈴ちゃん、中島みゆきさんの『時代』とか君いつ生まれよ。マジで。俺それ原曲すら聞いたことないよ?

一夏君は俺好みのアニソンメドレーしてた。ハルヒとか懐かしいな。けど君、今のアニソンよりも古めのやつ多いね?イニシャルDとか俺リアルタイムで見てないよ?

でも時を刻む唄は良い。素晴らしい選曲だ。あと癒月さんのyou。最高である。ボーカルが一夏君じゃなければ。

モッピーは徹頭徹尾演歌でした。ごめん、演歌は詳しくないんや。全然わからんかった。でも最後に回レ!雪月花をアンコールしたら歌ってくれた。演歌以外もいけたのね。

 

そして最後に何故か俺と一夏君で『前前前世』をデュエットすることに。皆めっちゃ静かにしてたからすっごい緊張したんですけど!?何故だ。

しかし俺以外皆美声というね。なんや、君らの中には声優さんでも入ってんのか。俺だけ普通の声でなんか疎外感。どうせなら低い声でも大塚さんみたいな渋い声なら良かったのになぁ…。アッキーオ。スネークもガトーも渋いよねぇ。格好いいと思います(小並感)。

 

さて、セッシーが満足したところで。俺さ、疲れたんだ。こんなんじゃ俺、昼寝したくなっちまうよ…。

てことで一足先にベッドでお昼寝。ラウラ?男女で別の部屋取ってますから。違う部屋の違うベッドでお互いにぐーすかですよ。寝た。

で、夕飯前になったらしいから起きる。起こしに来てくれたのは一夏君。ところで一夏君、俺にかかってたタオルケット誰がやってくれたか知らない?知らないか。そうだよね。

IS学園ならこういう時はだいたいたっちゃんなんだよね。今回もたっちゃんかな?

教えてアンサートーカー先生!

答:NO

ありゃ。じゃあ誰ですか先生!

答:シャルロット・デュノア

あら、シャルロットだったか。あれかな、ラウラの様子を見に来た時にでもついでに来てくれたんだろうか。多分そうだな。うん。

 

で、一夏君。結局俺が昼寝してた間何してたの?

ふむふむ。卓球大会にボウリングとな。面白そうだな。疲れてなければ参加したのに…。残念。

え?参加しない方が良かった?どうしてさ。

あー、一夏君は箒ちゃん、鈴ちゃん、セッシーとでリーグ戦したのな。ほーん。お疲れ。

で、リーグ内で一位を取ったら誰かに何かひとつ、言うことを聞いてもらえる?まあ簡単な王様ゲームみたいなもんやね。それで?どうなったの?

 

ほほう、卓球大会が一夏君の優勝。で、保留か。まあ君の場合そうよね。

ボウリングでは箒ちゃんと鈴ちゃんが接戦?ほうほう、で一位は?鈴ちゃん?じゃあまあまだ大丈夫そうな感じじゃん。何が嫌だったのさ。

え?

箒ちゃんとセッシーがメンチ切り出した?しかも最終的にはホテルの上空でISバトルしそうなところまで行った?え。あかんやん。やめてよ。

ああ、ちっふーがちゃんと止めてくれたのね。良かったー、本当に。マジで良かった。俺このホテルに出禁とか嫌だしね。あ、そして一夏君まで何故か怒られた、と。御愁傷様というか、乙。そら嫌な思いしたな。よしよし。まあうまいもん食べて元気出しなよ。次夕食でしょ?

 

そういえばちっふーとかシャルロット、マドカと束は何してたんだろう。一夏君知ってるー?

あ、そっちも卓球大会?それもひたすら?球が見えなくなるレベルで束とちっふーがバトってた?へえ。

…一体何がそこまで彼女らを駆り立てたんだろう…。こんで俺に何かひとつお願いを聞いてもらう権利をかけてバトルしてた、とかだったら嫌だなぁ…。どうせ変なお願いなら聞かないけどさ。

 

さてさて夕食である。ディナーともいう。今回はコース料理らしいです。いやー、美味しそうな香りがしてますねぇ!楽しみやでぇ!

 

一夏君と共に食事のフロアへ。そこにある2つの円テーブルには、それぞれ箒ちゃん、鈴ちゃん、セッシー。もう片方の円テーブルにはちっふー、ラウラ、束、たっちゃん、シャルロット、マドカの順に既に座っていた。俺はちっふーとマドカの間の席に誘導された。ん?どしたのちっふー。

 

「やっと来たか。なに、先の卓球大会では私が優勝したからな。お前は私の隣だ」

 

あ、夕食の席を賭けて勝負してたのね。まあ、それくらいならいいんじゃない?

で、二位は?マドカ?

 

「ふっふっふ、束さんがちーちゃん以外に負けると思っているのかな?当然二位は私だぜー!」

 

ブイブイ!とか言いながら、テンション高くはしゃぐのは正面の束。わざわざ正面を希望したのか?でも人数的に完全な正面じゃないというね。まあどうでもいいけど。

そういえば、テンションって本来は高い低いじゃないんだよね。張りの強さか何かだから。強い弱いだっけ?テニスのラケットとかの。

あと束。うるさい。

少し、頭冷やそうか。

 

「ふん、私が進んで貴様の横なぞ取るものか。本当なら私が姉さんの隣だったんだ」

 

あ、マドカがなんかぷぅ、と頬をふくらませてる。こいつ本当にお姉ちゃん好きな。むにむに。おお、素晴らしく手触りのよい。むにむにと柔らかなほっぺをお持ちで。うりうり。

 

「あ!嫁よ!何故そやつなのだ!やるなら私にやってくれ!」

 

そう言って身をテーブルに乗り出してきたのはラウラ。はいはいおとなしく座っててねー。あ、ちっふーナイス。おかんやな。

 

「おかん言うな」

 

すいません。睨まないでくだしあ。ねえ、本当にあなた俺の隣希望したの?うせやろ?

 

あ、シャルロットー。タオルケットありがとねー。

 

「ううん、気にしなくていいよ」

 

そう言って儚げに優しくふんわりと笑うシャルロットさん。ああ…。多分このメンバーの中で最大の常識人…。心が浄化されるようだぁ…。ちなみに次点はおそらくたっちゃん。さっきから静かにこっちに手を振ってるだけですませてくれるこの優しさよ…。

てか、なんで起きてそうそうこんな濃いメンツに囲まれねばならんのか。ねえ。マジで。俺が影うっすい感じじゃん。や、目立ちたい訳じゃないからいいけども。

 

さて、大人は高い酒をがばがばやりつつ(特に束がジュースみたいな勢いでウォッカを消費してた)。コース料理なので次々に美味しそうなのが出てくる。いいね。

しかし食べてる途中に思ってしまった。和食食いてえ。普段こういう洋食のコース料理とか頼まないからかな?旅館とかで懐石料理やら鍋つついてる方がなんか性に合う気がする。いや、うん。全部食べ終わってデザート楽しんでる奴が言うセリフじゃないね。旨かったです。はい。

 

さて、美味しい料理でお腹がふくれた後は大浴場へ。やたら一夏君が

「裸のつきあいしましょう!裸のつきあい!」

とか言ってきたけど、付き合いだよね?決して、まかり間違っても裸の突き合いじゃないよね?

…おにーさん、一夏君のこと信じてるからね。ホントだよ?

こそこそケツを隠しつつ大浴場へ。うむ。やはり風呂はいい…!ああー生き返るぅー…。

隣を見ると、いつの間にか一夏君が来ていた。…お、おかしいな。お風呂に入っているのに、体の震えが止まらない…!アッー!冗談です。

 

「鹿波さん、気持ちいいですね!」

 

「そーだねー」

 

あぁ^~こころがぴょんぴょんするんじゃ~^なんて。

ところで一夏君、やけにテンション高いね?(尻を隠しつつ)

 

「ええ、こうやって年上の男の人と風呂入るなんて初めてで…」

 

そう言って照れくさそうにする一夏君。疑ってごめんよ…。おにーさん、既に俗世にまみれちゃってるから…。

 

「夕飯はどうだったかな。お口に合った?」

 

「はい!あんな美味しい料理、なんていったら良いか…。本当に鹿波さん、ありがとうございます」

 

そう言って浴槽で頭を下げてくる一夏君。よせやい、別にそんなたいしたことじゃないさ。大した値段ではあったけど。楽しんでもらえれば、それが何よりだよ。そうは言ってもはにかんでこっちを見る一夏君。なんか照れるというか、調子狂うな。

 

あ、あっちにサウナある。

俺はそそくさとサウナに逃げ込んだ。ふう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、風呂も上がり、後は寝るだけなのだが。

こういう泊まりの時、寝る前にやることと言えば!そう!

猥談である!(違

とはいえ相手は超絶鈍感を地で行く一夏君。おそらく猥談をしようにも、ちっふー似の黒髪美人で気の強そうな女性が大好きみたいな話になるに決まっている。

なので、昨今の違った。最近のクラスでの様子を聞くことにした。普段どんな感じなのか知らないし。

 

「という訳で第一回!チキチキ大暴露大会ー!」

 

「鹿波さん、酔っぱらってますね?」

 

まあまあよいではないか。

 

「で、一夏君。最近の調子はどうだい。可愛い多数の女の子に囲まれて、もうここが俺のハーレムだぜーみたいな心になって来た?」

 

「何言ってるんですか…。まあ、可愛い女の子に囲まれて悪い気はしませんよ」

 

「お、やっぱりそうだよね!まあ、唯一の男故に大変なこともあるだろうけど、やっぱり楽園にいるようなものだからね!」

 

「いや、それが本当に大変なんですって!トイレは遠いし、周りからはいい匂いがするんですよ?それなのに生理的な反応が起きないように努めなきゃいけないんですからね?このつらさがわかりますか!」

 

「いやーわからんなぁー」

 

はっはっはー。とりあえず君の周りには箒ちゃんや鈴ちゃん、セッシーおるやろ。彼女達に相談し…無理やな。うん。

 

「で、一夏君。君は箒ちゃん、鈴ちゃん、セッシーの誰がいいのかね?」

 

「誰がって何ですか、まったく」

 

「じゃああれだ。箒ちゃんについてはどう思ってるの?」

 

「箒ですか。うーん…。やっぱり幼なじみですからね。わりと気安い感じはありますよ。ただ、ことあるごとに斬られそうになったり竹刀を振り回されるのが…」

 

「あらら。やっぱり今でも木刀やら竹刀で叩かれたりするの?」

 

「ええ、それはもう。本当に痛いんですよねー」

 

「あー…。一夏君は、やめてほしいことは箒ちゃんに言ってるんだよね?」

 

「当たり前ですよ。誰も叩かれて嬉しいわけないじゃないですか」

 

いや、ドMな人ならあるいは…。まあ、一夏君はMじゃないんだね。次。

 

「じゃあ鈴ちゃんは?」

 

「あー、鈴ですか。鈴はまあ、そうですね…」

 

お、これは脈アリか?鈴ちゃん頑張れ!応援してるぞ鈴ちゃん!鈴ちゃんなう!違った。

 

「ほら、差し入れしてくれるのは嬉しいんですよ。ただ、いつもいつも酢豚ばっかりだと飽きるというか…」

 

「え、毎回酢豚なの?」

 

うそやろ?マジで?それある意味拷問じゃね?酢豚地獄みたいな。

 

「はい、全部酢豚です。いや、美味しいんですよ?美味しいんですけど、毎回酢豚はちょっと…」

 

お、おう。ちょっとそれはヘヴィーですな。あ、それ以外はどうなのよ?

 

「それ以外ですか。そうですね、やっぱりあれですね。すぐに龍砲を撃ってくるのはやめてほしいですね」

 

え。

 

「それってISの武装じゃなかった?」

 

「そうですよ?」

 

そうですよ?じゃないって。それ下手したら死ぬやつだって。さすがは原作ヒロインズ。主人公を殺しにかかっているとしか思えないような殺意の高さである。正直俺が一夏君の立場だったら絶対既に何回も死んでると思います。本当に。しかしさっきから殺人未遂多いな…。

 

「ならセッシーは?」

 

「セシリアですか?」

 

うーん、としばらく悩むように中空を眺めて顎に手をやりながら考える一夏君。お、案外一番まともなのか?

 

「そうですね…。今のところ、ご飯がその…あれなこと以外は特には」

 

「ブルーティアーズで撃ってきたりは…」

 

「は、ないですね」

 

おお!まさかの一番まともそうなヒロインがセッシーとな!じゃああとは一夏君が料理教えてあげれば完璧じゃね!?

 

「じゃあ一夏君、セシリアのご飯がおいしくないことは言ってあげた?」

 

「それは、その…まだです」

 

そう言って決まり悪そうに視線を逸らす。けどね、それって言ってあげるのも優しさだと思う。

 

「それは言ってあげる方がいいんじゃないかな?セシリア女史だって、自分がよかれと思って渡した料理を実は相手に嫌がられてたとなれば、ねえ?」

 

「そうですね…。でも、そのなんていうか…」

 

どうせ『よかれと思って渡してくれてるからこそ、その笑顔を曇らせたくない』とか言うんだろ!それならずっと不味い飯食ってろ!

とは思うけど言わない。さすがに。いくら酔っぱらってても言っていいこと悪いことはあるだろうし。

 

「まあ、一夏君がそのまま現状を維持したいなら無理には言わないよ。ただ、自分が言わないという選択をしたなら文句言っちゃ駄目。セッシーに失礼だからね」

 

本当にな。

 

「わ、分かりました」

 

そう言って神妙に頷く一夏君。…こいつの場合、本当に分かってるのか怪しい時があるんだよなぁ…。ま、いっか。

そしてその後はラウラやシャルロットの普段の様子を聞いたり、他愛もない雑談に話は移っていった。ちっふーが恋愛したいらしい、と言った時の一夏君の顔は面白かった。凄い顔してたからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一回!チキチキ!」

 

「大暴露大会ー!」

 

「イエーイ!」

 

そんな声が女子部屋に響きわたる。はしゃいでいるのはそれぞれ、顔を赤くした千冬、同じく顔を赤くした束。そして合いの手を入れるのは更識楯無である。おいシリアスどこ行った。

シリアス?ああ、やつは死んだよ。ここにいるのはシリアルだ。さあ、スーパー爆裂タイム始まるよー!

 

「さて、まずは小娘ども!」

 

「「「は、はいっ!」」」

 

千冬が箒、鈴、セシリアを睨み付ける。その眼光はまさに野獣。野獣の眼光。野獣の眼光である!

 

「貴様ら、一夏のやつとどこまで行った。ん?さあ、洗いざらい全て話してもらおうか!」

 

「そうだそうだー!箒ちゃんがいっくんとキスとかしたのか、全部はけー!」

 

この酔っぱらい共やりたい放題である。しかしそこに新たな乱入者がまた一人。

 

「なにっ!?あの愚兄が好きだと!?正気か貴様ら!」

 

リトルちっふーことマドカのエントリー!相手は死ぬ!

 

「おや?マドカちゃんは、いっくんの事が嫌い?」

 

「当たり前DA!何故あんな、いいとこなしで鈍感なくせして女を手当たり次第にころころするやつなたど!」

 

言いたい放題のくせしてやけにリアルに的確にえぐってくるマドカ。すぐにでも反論しようとしていた箒、鈴、セシリアの開かれた口が閉じられる。そして気まずそうに逸らされる視線。心当たりがあったようだ。

 

 

「だいたいそもそもだなーーー」

 

「はーいマドカちゃんは束さんとあっちでお話しようねー♪」

 

「なっ!?HA☆NA☆SE!」

 

そしてマドカは束に引きずられて部屋の隅へ。ドナドナ。ドナドナである。

 

「で、だ。一夏のやつとデートくらいは行ったのか?

ん?」

 

そう言って缶ビール片手に脚を組んでいる様はまさに女王のごとし。なまめかしいおみ足がスカートから覗くが、ここには女ばかりである。無念。

 

「そ、その…」

 

赤面したまま口ごもるヒロインズ。ちなみに箒は一夏と共に水着を買いに行っている。ひそかにリード。

 

「ふん、なんだ。つまらん。

では、今から私は独り言を言うがーーー」

 

そう言って箒の顔を見る千冬(野獣)。箒の顔はまだ疑問符がいっぱいである。しかし、箒の顔が驚きに彩られることになる。

 

「ふん。鹿波のやつから聞いた話だ。

ーーーこの間の臨海学校。水着を新調したいという理由で私の弟(一夏)を買い物に誘ったやつがいたらしくてな。女ものの水着を選ぶセンスが分からない、という相談だったらしい。

なあ、ところでうちの弟のセンスはどうだったんだろうな?

ーーー篠ノ之?」

 

ニヤリ。その音が最もしっくりくるような、とてつもなくやらしい笑みを箒に向ける千冬。えぐい。最低の教師である。

そんな声をかけられた箒はと言えば、口をパクパクさせていた。バカな。何故その事を目の前の千冬さん(想い人の姉)が知っている。そんな顔である。

そしてその隣から肩をがっしり掴む手が。言わずもがな、鈴とセシリアである。

 

「その話。ちょぉぉぉっと詳しく聞かせてもらっていいかしら」

 

「ま・さ・か、拒んだりなんかしませんわよね…箒さん?」

 

「あ、あわわわわ…」

 

がっしりと体を捕まれ、箒は両隣の修羅(鈴とセシリア)に連行されて行った。哀れ。

 

「ふふ…」

 

そして悦に浸る千冬の後ろから、束の声が。

 

「で、そんなちーちゃんは鹿波とどこまで行ったのかな?かな?」

 

千冬が慌てて振り返ると、にっこり笑った束が両肩を掴んでいる。マドカ()は!?囮のやつはどうした!?

そして見えた。口から泡を吹いているマドカの姿を。一体何があったのか、白目を剥いてピクピクしている。あれではしばらく、現世に戻ってくることは叶うまい。そして目の前には、先の自分に勝るとも劣らぬほどニヤリと笑っている束が、捕食者の目で千冬を見ていた。これはやられる。

 

なんとかこの流れから逃れなければ。そう思うが既に時遅し。千冬の周りにはラウラ、シャルロット、楯無がじりじりとにじり寄って来ている。逃げられない!

 

「な、なんの…ことだ」

 

かろうじて声を振り絞る。しかし、その震える声はごまかすには到底冷静さが足りなかった。

 

「君らも気になるよねー?ちーちゃんと鹿波の関係?」

 

なんと、凡人が嫌いな束が凡人を相手してでも千冬を追い詰めに来ている。これは逃れられない。冷や汗をかきつつ、千冬はどうすれば一番傷が浅くできるか考えていた。浅ましい。

 

「嫁と教官の話とくれば、聞かないという訳には」

 

「鹿波さんに織斑先生が何かしたのかは確かめないと…」

 

「更識楯無の名において、鹿波さんに関わる物事はちゃんと把握しなきゃだし…ね♪」

 

そう言って千冬の体をがっしり固定する鹿波ヒロインズ(ラウラ、シャルロット、楯無)。千冬は先ほどから冷や汗が止まらない。ラウラはともかく、シャルロットと楯無はまずい。楯無はもはや好感度のメーターが振り切っているほどの鹿波LOVEだし、シャルロットに至っては忠誠心、親愛度ともにMAXである。どちらかというとシャルロットがまずい。鹿波に迷惑がかかりそうとなれば排除に動く、そんな危険さがある。まずい。逃げたい。

 

しかし現状は不利。目の前には厄介な(クソウサギ)。四肢はラウラ、シャルロット、楯無に封じられている。万事休す。

 

「さあさあちーちゃん、ぜーんぶ教えてほしいな?教えてくれないと、このーーー」

 

そう言って束が白衣のポケットからちらりと覗かせたのは、あられもない格好で自分を慰めている姿の自分(千冬)の写真。しかもあれは、鹿波と居酒屋に行ってぐだぐだに酔った後のやつでーーー!

 

「あああああああ!束!貴様!いつだ!いや、なんというものを貴様!ああああ!」

 

「うーん、ちーちゃんが自分から教えてくれないなら、束さんちょぉぉぉっとだけ手が滑っちゃうかもなー」

 

「くっ、くそぉぉぉぉぉ!言う!言うからその写真を寄越せぇぇぇぇぇ!」

 

「んー仕方ないなー」

 

そう言って、はい。と素直に写真を渡してくる束。ふと気付けば拘束されていたのはなくなっている。しかし、こいつがこんなすぐに渡すか?

写真を回りますには見えないように奪ってそう訝しんでいると、ふと束がこちらにイヤホンを差し出している。嫌な予感しかしない。

しかし確認しない訳にもいかぬとイヤホンを耳にさす。

そのとたん、いやらしい水音とともに、昂っている女の嬌声が聞こえてきた。

 

「あぁっ、鹿波、鹿波…!…っぅ、あぁっ、ぁぁぁ…!」

 

ガバッ!と束の方を見る。束は相変わらずニヤニヤとしたいやらしい笑みを浮かべながらこちらを見ている。

こっ、これは写真よりも破壊力がまずい。むしろ、こんな自分の恥態を撮られているとは思ってもみなかった。

 

「束ぇぇぇぇぇぇ!」

 

「さーちーちゃんはどうするのかなー♪」

 

「言う!言います!言うからこのデータだけは消してくれぇぇぇぇぇ!」

 

そう言って束の襟首を握りながら頭が項垂れている千冬。ちなみにこの瞬間にも千冬と束のイヤホンからはいやらしい千冬の恥態がどんどん流れている。自殺ものである。何が恥ずかしくて自分の喘ぎ声を聞かなければならないのか。こんなものを流されるくらいならば鹿波への素直な気持ちを白状した方が一万倍楽である。千冬は諦めた。そして膝から崩れ落ちた。

 

しばらくして。

 

「…それで、お前たちが聞きたいこととは何だ」

 

千冬が落ち着いた辺りで、話を切り出した。千冬の周りには全員が集まっていた。皆興味津々である。千冬は人気者であった。

 

「じゃあまず私からー!ちーちゃんは、鹿波のことどう思ってるの?」

 

トップバッターは束。ストレートに千冬の鹿波に対する想いを聞いてきた。

 

「嫌いではない。以上だ」

 

それ以上話すことなどないと言わんばかりの態度である。しかし意外なことに、束はそれ以上何も言って来なかった。千冬としては不気味なことこの上ないが、束が思っていたのは以下の通りである。

 

(へーえ、ふーん、ほーお?あれだけ酒の後に鹿波の事を意識しながら自分を慰めておいて、『嫌いではない』?これ絶対ちーちゃん自分の気持ちに気付いてないやつだね!ってことは、いつかどこかのタイミングで自分の鹿波に対する感情を絶対自覚することになるわけで。うひょー!鹿波の事が好きだと自覚して顔を真っ赤にするちーちゃん萌えー!しかもちーちゃん自分の感情を表現するのホント不器用だからね!鹿波に好意を伝えたくて、伝わってほしいんだけど上手く表現できなくてやきもきするんだよ!手に取るように容易に想像できる…ハアハア、ジュルリ。おっとよだれが…)

 

束は今日も通常運転であった。

 

「はいはーい!次私!織斑先生はー、鹿波さんとどこまで行ったんですかー!」

 

二番、楯無。

これまたストレートに鹿波との進展具合を聞いてきた。しかし残念、未だ自分の気持ちに気付いていない千冬には効果は今一つであった。

 

「どこまでも何も、鹿波の奴とはそういう関係ではない」

 

そう言ってふてくされたような顔の千冬。そこにすかさずシャルロットからの追撃が入った。

 

「じゃあ、私達が鹿波さんと結ばれても織斑先生は邪魔しないってことですね」

 

シャルロットさん、ニコニコ笑顔で悪魔のようなことを言ってきますね。おや、千冬さんの顔色が悪いです。実際にそうなった時の様子を想像したのでしょうか?

それにしたってシャルロットさん、鹿波を攻略するつもり満々である。むしろ愛人でもいいから側に置いてほしいとか言いそうなまである。ぐいぐい行きますね。

 

「そ、それは…」

 

「む、教官に二言があるはず無いだろう。心配せずとも大丈夫だぞ、シャルロット」

 

そしてここでラウラからの(無意識下の)キラーパス。千冬は先ほどから黙っている。どうする千冬。どうなる千冬!

 

と、ここで再びの乱入者。マドカである。

 

「ふん、残念だがこれから貴様らに出番はない!次のメインヒロインはこの私!マドカだ!」

 

そう宣言した瞬間、マドカに突き刺さる10の瞳からの射殺さんばかりの視線。

 

「…ヒッ」

 

思わずひきつるマドカ。しかし残念、五人は既に動いていた。ちなみに箒、鈴、セシリアは既に部屋の隅に避難済みである。

 

その夜、一晩中とある女の笑い声が絶えなかったという。

くすぐりは中世から存在する拷問の一種であるが、今回のこととはきっと関係はないのであった。




滑り込みセーフ!

-追記-
たっちゃんの歌が抜けてたので修正しました

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