とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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新ヒロイン…になるのかな?とりあえず彼女のエントリー
さて、鹿波さん争奪戦に参加させるかどうか…


ある日ある時その場所で

織斑先生達は臨海学校から無事帰って来た。結局銀の福音は一年生の専用機持ち達に沈められたらしい。一夏君ら当事者たちからは詳しいことは機密情報として教えてもらえなかった。なのでたっちゃんと織斑先生に聞いた。たっちゃんとちっふーは、今回の事件に俺も関わってること知ってるからね。

別に一夏君達に俺も地味に関わっていたことを言ってもいいんだけど、なんか一夏君達に近付きすぎると危ない気がするんだよね。平穏を大切にしたい。アンサートーカー先生も、平和に暮らしたいなら一夏君に積極的に関わらない方がいいかどうかという質問にYESを返してきたし。まあ、関わっちゃった以上あまり疎遠にし過ぎるのもあれだし。原作のどの時点か知りたいし。ね?

 

「で、一夏君は一度生死の間をさ迷ったりなんかは…」

 

「いや、確かに大怪我はした。しかしセカンド・シフトした際に傷が治ったとか言っていたな。二度目の戦闘で何とか無力化出来たようだ。

まあ、銀の福音がセカンド・シフトした時にはどうなることかと思ったが…」

 

まあ、なんとかなったよ。

そう言ってふっ、と柔らかく笑う織斑先生。だいぶ優しい顔をするようになったよね。普段からそんな感じなら絶対今ほど恐れられないと思いますよ。

 

「ふん、別に誰にでも好かれたい訳ではないからな。私は今のままで十分だ」

 

さいですか。もったいないなあ。

(※鹿波の前では柔らかく笑う+『誰にでも』好かれたいわけではない。つまりちっふーは鹿波から好かれたくないわけではない)

とりあえず織斑先生から聞いた話をまとめるとこうなる。

銀の福音が暴走したことが発覚した後、原作通りに織斑先生達のいる旅館に銀の福音が飛んでいく。

銀の福音の暴走、銀の福音のスペックなどをまとめて一日目の終わりに織斑先生達に連絡。

臨海学校二日目の装備試験の最中に原作通り束が来て、箒ちゃんに紅椿を譲渡。その後国際IS委員会からの通達が来る。

そして銀の福音と交戦することが決定する。…ここまでは原作通りだった。

原作と違ったのはこの後で、一夏君と箒ちゃんによる強襲失敗時に専用機持ち達による波状攻撃が成功。銀の福音を無力化したかに見えた。

しかしここで銀の福音がセカンド・シフト。この時の攻撃で一夏君が負傷。箒ちゃんに支援されながら戦闘から離脱。そのまま残りのセシリア、鈴、ラウラ、シャルロットによる抵抗も虚しく、銀の福音第二形態に逃げられてしまう。そのため専用機持ちは一度帰還し、一夏君の容態を聞く。

そして銀の福音第二形態の位置の特定をしている間に、一夏君の白式がセカンド・シフト。おそらく理由は戦闘経験の蓄積かと思われる。

そして銀の福音第二形態の居場所が判明。十分な休息を取った専用機持ち達が再びの出撃。その後膠着し、長期戦になろうかというタイミングで箒ちゃんによる絢爛舞踏が発動。そこから一気呵成に畳み掛け、完全に銀の福音を無力化し、搭乗者のナターシャ・ファイルスを救出。

また、織斑先生は専用機持ち達にインカムを持たせて、常に音声等で状況把握に努めていたらしい。

 

あ、ナターシャ・ファイルスはやっぱり原作の通り一夏君の頬にキスをしたらしい。そして一夏ラヴァーズこと箒ちゃんとセシリアさんに一夏君が中身の入ったペットボトルを投げつけられーーーたけどラウラとシャルロットの後ろに一夏君が隠れていたのでラウラが両方とも二人の顔面に投げ返したらしい。

ラウラは投げつけられたのと同じような速さで投げ返したらしく、ペットボトルは箒ちゃんとセシリアさんの鼻っ面に直撃。そこでラウラと口論になりかけたとか。口論にならなかった理由は、保護者シャルロットによる

 

『…正座』

 

の一言だったらしい。さすがシャルロット。良い仕事するよね。グッジョブ。うちの娘たち(ラウラとシャルロット)に(わざとじゃないとはいえ)危害を加えるとか許せん。まあシャルロットがその分きっちり叱ってくれたらしいので良いけど。大和撫子(笑)とイギリスの誇り高き貴族(笑)に好かれてしまった一夏君は大変ですね。

 

 

「しかし、箒ちゃんの後ろ楯はどうするんです?」

 

「目下の所、検討中だ…。全く、頭が痛い」

 

そう言って目を閉じて頭に軽く右手を当てたまま、眉にしわをよせて首を横に振るちっふー。お疲れ様やね。あ、コーヒー飲む?ほい。

 

「む、すまんな」

 

俺から缶コーヒーを受け取りながら礼を言ってくるちっふー。いや、さっき買ったんだけどジョージアだったからいらないんだよね。俺はダイドー派です。

 

ではな、と言って片手を軽く挙げて去るちっふーの背中を見守る。いやー、大変ですね。お疲れ様です。そんな時でも凛々しいちっふーマジ男前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、その後のあるお休みの日のこと。今日の俺は、IS専門パーツショップ『ファントム』に来ていた。ISのパーツはまだまだ専門の企業が取り扱っているものが大半だが、こうやってIS専門のお店もごくわずかにある。まあ、ISの数が有限かつ少数な間はこういうお店も増えるとは思えないけど。ていうか、こういうお店って経営していいのか…?武器屋みたいなもんだぞ…。

 

俺が今日一人でパーツショップに来た理由は単純。ダリル・ケイシーによって取り替えられていたパーツ。これが何のISのどのパーツか、暇潰しがてら調べに来たからである。

 

さすがにIS本体は売ってないが、店頭にはでかでかとISブレードが売っていた。…織斑先生なら買うんだろうか。

とりあえず、細かなパーツが小さいビニールに包まれているエリアを見る。うーん、打鉄のパーツではない…ようだ。

そうしてパーツを下から上までひとつひとつ見ていると、ふいに声をかけられた。

 

「おい」

 

振り返ると、俺より頭ひとつ分背の低い女の子が立っていた。黒地に小さな白い星がちりばめられている帽子をかぶっているため、その顔はよく見えない。ただ、帽子から出ている髪の毛が織斑先生を連想させた。

ああ、俺が邪魔になっていたようだ。そう思い、左によける。そうするとその女の子は、女の子の正面一番上のパーツを見て、手を伸ばした。…届いてない。あ、背伸びして手を伸ばしたままぷるぷるしてる。

…はあ。しゃーない。

 

「…取りたいのは、これかい?」

 

そう言ってひょい、とパーツをひとつ取り、女の子に渡す。そしてパーツを確認した後、帽子を軽く抑えながら

「…ふん」

と言って顔を隠してしまった。

ていうかこの子の服黒ばっかりだな。上は黒のTシャツに黒のパーカー。下は黒の…綿パン?かな?それに黒のショートブーツ。…帽子以外白成分なしかよ。いっそ清々しい。

そして俺が再びパーツ探しに戻ると、少し離れた所から

「…っく、ふっ…!」

みたいな小さな声が。ちら。

こっそりそちらを確認すると、やっぱりさっきの子が手を伸ばしてぷるぷるしている。…はあ。やれやれ。

なんだかあの子は放っておけない気配がある。なんていうか、こう…。ラウラみたいな感じがする。ポンコツな時の。

仕方ない。

そう思い、また俺は女の子にパーツを渡す。すると今度は俺の方を見上げてきた。ん?

 

「…貴様、ロリコンか?」

 

「ちゃうわい」

 

あほう。その前に言うことあるだろ。いや、ある意味安全確認的には間違ってないけどさぁ…。

俺が答えると、そうか。と一つ。そしてこちらを見て

 

「すまんな」

 

と言って不敵に笑った。あ、この子織斑マドカちゃんや。笑った顔が織斑先生そっくり。

そんな俺に構わず、マドカちゃんは話かけてきた。

 

「先ほどは助かったぞ。礼を言う」

 

そう言ってにやりと笑うマドカちゃん。そこだけ見ると凄く決まっている。でも、さっきまでのぷるぷるしていた時とのギャップで、思わず俺は吹き出した。

 

「ブフッ!」

 

口を抑えながら笑っていたのだが、マドカちゃんはジト目で俺を見ていた。でも、凛々しい姿を見れば見るほどさっきまでの背伸びしてぷるぷるしていた姿とのギャップが更に際立ち、俺の腹筋はしばらく収まることはなかった。

 

しばらく。俺が落ち着いて来たのを見計らい、マドカちゃんが言った。

 

「しかし、貴様のような男がなぜこんなところにいる。男はISには乗らんだろ」

 

「ああ、このパーツが何のパーツか調べに来たんだよ」

 

そう言って俺はマドカちゃんに持っていたパーツを手渡す。あ、手ちっちゃい。マドカちゃん何歳なん。見た目的には十五か十六歳くらいに見えるけど。

俺からパーツを受け取ったマドカちゃんは、左手の上にパーツを乗せてコロコロした後、歯の数を数え始めた。パッと見はコマみたいな、一センチくらいの小さなパーツやからね。数えにくいよね。いちにーさんしー…。と数えるマドカちゃんは可愛かったです。どうでもいいね。

 

「…ふむ。貴様、このパーツをどこで手に入れた?」

 

「ん?職場の秘密かな」

 

ダリル・ケイシーが替えていきやがったせいなんだ!なんて口外出来ないし。相手マドカちゃんやし。や、マドカちゃんが今すでに亡国機業に入ってるのか知らんけど。

 

そう言うと、マドカちゃんはこのパーツが何のパーツか教えてくれた。

 

「ふん、まあいい。これはラファールの内部パーツだ。おそらくはスラスターユニットとコアユニットを繋ぐ動力系の部品だろう。まあ、私は専門ではないから詳しくないがな」

 

いや、すらすらとそんなことが分かる時点で俺より詳しいです。整備では普段そんな所弄らないからね。

 

「そうか。ありがとう」

 

そう言うと、マドカちゃんはふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。まあ、ちょっとだけ見えるほっぺたが赤いから照れているだけだろう。…うーん、こうやって見るとただの女の子なんだよなぁ。本当にこの子マドカちゃん?もしそうなら、この子が一夏君に銃向けたりするんでしょ。織斑家の闇深スギィ!

 

さて、パーツが分かった所で帰ろう。そう思い、くるっと振り返った所で俺の服を、と言うかズボンのベルトごとぐわしっ!と握られた。うん、ちょっとそこはやめて。ねえ。

 

「待て」

 

そう言って手を握ったままのマドカちゃん。ねえ、分かったからちょっとそのおてて離そう?ね?

マドカちゃんの女の子らしい手が離れる。よろしい。

一瞬ここで走って逃げようかとも思ったけど、織斑先生と同じレベルの運動能力があれば無意味だと気付いて思い直す。うん、人生は諦めが肝心だよね。諦めたら試合終了ですよ。どっちや。

 

「お前、この後時間はあるか」

 

そう言って、時間がないって答えても逃がさないんでしょう?

 

「む、よく分かったな」

 

ああ、やっぱり…。君によく似た人を知ってるよ。ひっじょーによく似た人をね。

 

「ふん。私によく似た奴など数える程しかおらん。それより貴様、少し付き合え」

 

…。どうせ、君が届かない所のパーツを取れって言うんだろ。店員さんに脚立を持ってきてもらえばいいじゃない。ねえ?

 

「貴様がいれば事足りる。それならわざわざ脚立はいらんだろう?」

 

そう言って不敵にハッ、と笑うマドカちゃん。うーん、あの背伸びしてぷるぷるがなければ決まってたのに…。

そう思ったので言ってやる。さすがに今の見下した笑いはいただけませんなぁ。

 

「ふっ、さっきまで背伸びしてぷるぷるしていたお子様が何を言っているのやら…。取ってくださいお願いします、だろう?」

 

余裕の表情で見下ろしながら笑ってやる。ふふ、どうだ言い返せまい!大人に上からものを言うからだばかめ!

フゥーハハハ!

 

悔しそうな顔をするマドカちゃん。ん?どうしたの?店員さんに脚立持ってきてもらおうか?うん?

そんな感じで内心煽りながら笑いつつ、マドカちゃんの言葉を待つ。正直、次同じようなことを言ったら帰る。

身の程をわきまえない奴は嫌いなのです。

 

「くっ…」

 

そう言って悔しげに歯をくいしばるマドカちゃん。ねえねえ今どんな気持ち?ndk?ndk?

 

「た、頼…む」

 

「聞こえないなぁ!」

 

ゲス精神、全☆開!

あーっはっはっは!やはり俺はこうでなくては!

わざといやらしくはっきり言ってやる。あ、涙を浮かべてぷるぷるしてる。もう一息か!?

 

「お、お願い…します…」

 

「仕方ないなあもー」

 

やれやれー、みたいな雰囲気を出して言ってやる。あ、物凄い睨み付けてきてる。でも涙目なので怖さ半減。

だが!

しかし!

まるで全然!

 

この俺を倒すには、程遠いんだよねぇ!(ゲス顔)

 

小さく

「覚えてろよ貴様…!」

とか呟いてるけど知りませーん。聞こえませーん。

 

 

 

そしてその後はマドカちゃんの後を付いて回り、パーツをカゴ(バスケット)に入れていく。

一度店内の他の女性に

「あ、そこの君。これそっちに戻しといて」

と言われた時には

「今は私が使用中だ。後にしろ」

と言っていた。多分普通に言ってるなーってのが分かったのであんまり嬉しくなかった。

そして精算。マドカちゃんは俺にたかるということもなく、普通に自分で支払いをしてた。やっぱりこの子、根はすごい良い子な気がする。見知らぬ女性がそこら辺の男を財布にしようとする時代だからね、今は。まあ極例だが。

ところでその黒いカードってどこのよ?はっ、まさか。これが本物のゴールドの上、ブラックカード…?

 

「ん?これか。まあ、会員証のようなものだ。

…というかそもそも、このカードが無いとここで買い物は出来ん」

 

え。そうなの。まあ俺買い物しに来た訳じゃないからいいけど。…もしかしてこの店、ちょっと危ない感じお店だったりすんの?ねえ。これは早いところ逃げた方がいいかもしれん。

 

そして一緒に店を出て、じゃあバイバイって言おうとした瞬間、再び服を掴まれた。あ、今度はちゃんと上の服にしてくれてる。うん、でも君握力強すぎな。

服が伸びちゃうだろが!まったく、服が破けたらどうしてくれる。その時は服が破けちゃうだろうが!って言おう。エレン!

 

「待て。さっき言っただろう。時間はあるか、とな。しばらく付き合え」

 

えっ。聞いてないです。

ちなみに拒否権は?

 

「ないな」

 

言い切りおったこの子…。まあ休日だからいいけどね。まさか休日の人が多い中でわざわざ一般人を拉致したりはしまい。…しないよね?大丈夫だよね?不安になってきた。

アンサートーカー先生!

この子に付いて行っても大丈夫ですか!?

答:(生命的には)YES

よし。じゃあ、この子に今付いて行った方が良いですか!?

答:基準によるため回答不可

え。どういうことなの…?

答:付いて行くことによる生命の危機は発生しない。しかし付いて行く事が将来的に問題ないかどうかは現時点では判別不能

 

うむ?付いて行っても大丈夫だけど、これから亡国機業に入ってしまえば俺に不都合なことが起きるかもしれないって感じか。

じゃあ付いて行かない事によるデメリットは?

答:一定期間の療養が必要となる怪我の発生する可能性高。

アカンやん!え、付いて行かないだけで俺怪我するの確定ですか!うわ。それは嫌だな。

あ、待てよ?まず何に付き合えばいいのか、それを聞いてからでも遅くないんじゃないか?

 

「…さっきから何をうんうん唸っている。行くぞ」

 

「ちょっと待った。何しに行くかを聞いてからじゃないと答えられない」

 

「ああ、なんだ。そんなことか。

何、簡単だ。3時頃になったら連絡が来ることになっているが、あいにくとこの辺りは詳しくなくてな。あと一時間足らず、時間を潰すのに付き合え」

 

お、それくらいなら大丈夫じゃないか?

アンサートーカー先生、付いて行くのと付いて行かないの、どちらが俺にとってデメリット大きいかな?

答:付いて行かない事

確定。行こう。アンサートーカー先生がそう言うなら行こう。決まりである。

 

「良いけど、何するんだ」

 

「それは貴様に任せる。言っただろう、この辺りに何があるのか知らんのだ」

 

「じゃあコーヒー飲みに行くか」

 

「好きにしろ」

 

そう言って俺はマドカちゃんと共に適当な喫茶店へ。喫茶店というかカフェだな。いくらかケーキもあるし。

マドカちゃんはあまりこういう所に慣れていないのか、俺の後ろをちょこちょこと付いて来る。カルガモのひなみたいだな、とか思ったのは内緒。リトルちっふーみたいなもんやし。

 

さて、何頼もう。あ、ブルーマウンテンがおすすめとな。ケーキも付くセットにしよう。マドカちゃんはどうするよ。

 

「何頼むか決めた?」

 

「い、いや、そのだな。何を頼めばいいんだ」

 

そう言ってこちらに助けを求めるように見るマドカちゃん。そうだなあ。

 

「コーヒーはブラックいける?」

 

「出来ればブラック以外で頼む」

 

ふむ。そうするとメランジュあたりかな。もしくはブラウナー…は、ちょっと濃いか。フェアレンガーターかカプチーノだな。そこら辺言ってみ。

 

「カプチーノは聞いたことがあるな。では、それにしよう」

 

という訳で本日のおすすめ、ブルーマウンテンのセットとカプチーノ。ケーキはチーズケーキにしたようだ。

 

注文が来るまでしばし雑談。テーブル席で向かい合って話す。

 

「とりあえず、あそこにいたってことは、君はISに乗るの?」

 

「む?ああ、そうだが。ISを作る側だとは思わないのか?」

 

「いや、さっき自分で専門じゃないって言ってたじゃん」

 

「ああ、なるほどな。そう言うお前もIS関係者だろう?」

 

「そうよ。たださぁ…IS関係って、やたら禁止事項多いじゃん?機密だー、とか言って。あれが堅苦しくてしょうがないんだよ」

 

「ふっ、それはこちらだってそうだ。どこもそうだろうよ」

 

「や、でも結構気ぃ遣わない?」

 

「遣う」

 

だよねぇ。なんて感じでお互いゆるーく、しかし警戒しながら話を続けていると、俺の元にブルマンが。マドカちゃんの元にカプチーノが、それぞれケーキと共に来た。しばし無言。

あ、ブルーマウンテンのかおりがいい感じ。あれだよね。ブルーマウンテンは日本くらいとか言われてるけど、日本人に多分合うんだよ。個人的には好き。ちょっと高い気はするけど。ちなみにめちゃくちゃ高いブルーマウンテンはだいたい美味しくない。あれなんでなんだろうね。

向かいを見ると、カプチーノを両手で抱えてほっこりしながらちびちび飲んでるマドカちゃんが。なにこの小動物。かわいい。多分亡国機業所属だから敵だけど。

 

ケーキも食べ終わり、少しリラックスしたところで再び雑談。と言っても、お互い仕事関係のことは話せないので話題はあっちゃこっちゃする。

 

「…で、職場に君によく似た人がいる訳よ」

 

「さっきも言っていたな。どんな奴だ」

 

(ここで織斑千冬の名前が出てきたらこいつは要注意、だな。姉さん…)

 

「いや、それがね?お酒が好きなんだけどさ。この前飲みに行ったんだよ」

 

(酒好きか。…姉さんも酒好きだったはず)

 

「それで出てきたのが『私だって恋愛したいんだよ!』だよ?思わず笑っちゃってさあ」

 

(姉さ…ん?姉さんじゃないのか?凛々しい、とか家事がだらしない、なら姉さんの可能性があるんだが…。まさか恋愛したいなんて言うとは思えない)

 

(ふっ、マドカちゃんは間違いなく織斑先生のことを意識するはず。ならばここでは、織斑先生を連想しやすいことを言うのは悪手!そうですよね、アンサートーカー先生!)

答:YES

 

「ああ、それとも花見した時にはメイド服の写真も(束に)見せてもらったよ!あれは可愛いかったね!」

 

「…メイド服?」

 

(おかしい、私によく似た人物がメイド服だと?姉さん…じゃないのか?いや、まさかな。しかし、姉さんがメイド服…。イメージ出来ん。やはり姉さんではないのか。私が気にし過ぎか)

 

(ふっふっふ、ちっふーがひたすらデータに残さないようにしていた黒歴史そのものだからな!まさか件の人物が織斑千冬その人とは思うまい!)

 

「おや、メイド服に興味あるの?」

 

「ば、馬鹿者!メイド服になぞ…」

 

(いや、待てよ。メイド服、メイド服か。…どうだろう)

 

(およ?これはマジに興味あるパターン?どれ…)

 

「またまたー、そう言って実はメイド服とか、かわいい服装に興味あるんでしょー?」

 

ニヤニヤ。

 

「べ、別に…」

 

そう言って口をへの字に曲げながら俯いて顔を隠すマドカちゃん。ふむ、まあ潮時か。これくらいだな。

時計を見ると、2時55分。あ、ちょうどいい時間。

さてお会計お会計。そう思っていると、マドカちゃんが手を突き出している。なんぞ?

 

「ペンを貸せ」

 

そう言われたので、胸元にさしてあるペンを貸す。…今日この後学園から借りてきたパーツを返しに行くからあるけどさ。普通ペン持ち歩かないよマドカちゃん…。

マドカちゃんは自分の出したメモ帳になにやらサラサラと書き込んで、こちらへ渡して来た。何この数字。

 

「お前のようなヤツは嫌いじゃない。いつでも連絡しろ」

 

「あ、これ電話番号?」

 

「そのようなものだ。ああ、深夜は基本的に出れんぞ」

 

今いつでも連絡しろ言うたやん…。じゃあいつならええねん。

 

「そうだな…。昼頃なら大丈夫だ」

 

1時とか?

 

「それより少し早いくらいだな。1時だとギリギリ過ぎる。

…ああ、そうだ。貴様、名は」

 

「名前を聞く時は?」

 

「…ふっ、そうだな。マドカ、と呼べ」

 

「マドカちゃんね」

 

「ちゃんはやめろ。マドカでいい」

 

「わかったよ。マドカ。俺は鹿波。まあ、また機会があればまたどこかで」

 

(多分これからめっちゃ関わることになりそうな気がするけど)

 

「鹿波、鹿波か。よし。覚えたぞ。

では鹿波よ。またな」

 

そう言ってマドカちゃん改めマドカは出て行った。

あ、お会計…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにテーブルにマドカの分ちょい多めなお金は置かれていたので、俺は自分の分を支払ってカフェを出た。

やっぱりマドカいい子じゃない?




おかしい、私の初期プロットにはマドカちゃんがヒロインになるなんて全く想定してないぞ。どうしてこうなった

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