とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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マダガスカル


追憶の刀5

「…ん」

 

頭が動かされた感覚。それと共にやんわりと目を開き、天井を見て気付く。

ああ…そう言えば、整備書庫で寝てたんだっけ…。

 

自分で思っていた以上に疲れていたのか。少し目を閉じるだけのつもりが、軽く寝てしまっていたらしい。ふと顔を上に向けると、自分の頭を優しく支えてくれている彼の顔が目に入った。

 

「あ、ごめん。おこしちゃったね」

 

そう言って彼は私の頭から手を離した。ああ…。天使のぬくもりが…。

そう思って体を起こす。すると、見慣れないものが視界に映る。

 

「なんでベッドがあるの?」

 

「うん?いや、ISの整備って大変じゃん?」

 

「いや、答えになってないけど」

 

そう言うとははは…。と誤魔化すように彼は笑った。

まったく。どうせ彼のことだ。私が疲れているようだから、ベッドを用意してあげよう。

そんなノリで轡木さんに会いに行って、

「IS整備で疲れた子が一休み出来るように、整備書庫にベッドを入れたいんです。私が責任をもって管理しますので」

とかなんとか言ったに違いない。

本当、彼は優しすぎる。やっぱり私達が守らなきゃ(使命感)

 

そして彼はベッドに軽く腰掛けて、ベッドをポンポンと叩いた。ああ、寝るならここで寝なさい、ってことかしら。

靴を脱いでベッドに上がる。彼の匂い。彼の体温。それらが伝わるほどの距離。そこまで彼の近くに寄りそった。

 

「まったく。頑張りすぎは良くないよって、いつも言ってるでしょ」

 

「はぁい♪」

 

彼が心配してくれるのが嬉しい。でもね鹿波さん。私は、あなたがそうやって私の心を大切に包んでくれるから頑張るのよ?

 

「いつも頑張っているたっちゃんに、ごほうびをあげよう。…いる?」

 

「いる」

 

ごほうびをあげようと言いつつ、嫌だったら良いよ、と言う意味のいる?である。本当、この人は素直じゃない。しかも不器用。でもそれがいい。それが彼の魅力だから。わからない?わからない人は帰っていいわよ?ライバルが減って嬉しいから。

 

「で、ごほうびって?」

 

「んー…。目を閉じて?」

 

はい。

すると、目を閉じた私の肩に彼の手がかかる。えっ、まさか…。そう思ってドキドキワクワク期待していると、私の肩を支えたまま、私の体を横に倒してきた。あ、頭の後ろが柔らかい…暖かい。うん?

そう思って目を開ける。彼の顔が下から見えた。あら?これってもしかして。

 

膝枕?

 

そう気付いたとたん、私の顔があっという間に火照る。や、だめ!これはごほうび!

彼が私の顔を見ていないことが救いだ。今の私はきっと、緩みきっただらしなく幸せそうな女の顔をしていることだろう。思わずほおを押さえながら彼の魅力的な顔をぽーっと見ていると、ふと彼が私の方を見る。

やっ、見ないで、見ないでぇぇぇ!

 

「うん?ずいぶん顔が赤いな。熱でもあるのか?」

 

そう言って、すっと私のおでこに手を当てる。ああ、手が!手が!

彼の力強そうで無骨な手が、柔らかく私の額に添えられている。ああ、幸せで蕩けそう。今の私は鏡を見なくても分かる。絶対緩みきった顔してる!

ああ、彼の手が当たっているところが熱い。顔が沸騰してしまうんじゃないかというくらいに熱い。

今の私が理性を手放せば、すぐに彼に襲いかかってしまいそうだ。

さすがにそれはまずい。粛清されてしまう。そうなれば、もう二度と彼と関わることは叶わないだろう。それは嫌だ。

なので私は今の幸せを最大限に享受しつつ、甘い誘惑に抗わなければいけなかった。まさに甘い蜜が甘露な誘いをしてくるかの如く、私のお腹はキュンキュンとときめき、お腹の底から熱い蜜が溢れてくるような気すらする。

ああ、ああ、なんという幸せ!なんという生殺し!

 

そう思っていると、彼は私の頬に手を添えて、ゆっくりと撫でながら言った。

 

「寝てていいよ」

 

寝れません!主にあなたのせいで!むしろ今寝たらそんな自分を許せません!

私は心中で叫んだ。これはひどい。何がひどいって、彼は本当にごく普通にこういう態度をしてくるのだ。

 

疲れた子がいれば甘いものを共に。頑張っている子がいれば陰から応援し。わからないから教えてと頼めば、ぶっきらぼうに答えるくせに最後まで面倒を見てくれる。

彼はそんな事を普通にするのだ。これで骨抜きにされない訳がない。

 

でも彼は

「いや、昔からこんな性格だからモテなくてねえ」

なんて言う。

鹿波さん、それは間違いなくあなたの周りの女の子の見る目がないだけよ。

 

 

あああああ…。

私の心は歓喜にうち震えていた。

気持ち良い…ああ、この気持ち良さ、この快楽よ。

温かいお風呂に入っているような気持ち良さ。実家のような安心感。全てが許されるような暖かさ。

 

あぁ…ずっとこうしていたい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ、寝てる。やっぱり疲れてたのね」

 

ふとたっちゃんの顔を見ると、うへへ…鹿波さぁん…。とか呟きながら幸せそうな顔をして寝ていた。

さて、まだ仕事ちょっと残ってるし、片付けてきましょうか。

お膝の上のたっちゃんのさらさらな髪の下に手を入れて、たっちゃんの頭を支えながら軽く上半身を起こす。

それにしても抜群のプロポーションしてるねたっちゃん。立派なもの()をお持ちで。

そんなゲスいことを考えながらたっちゃんの膝の裏に腕を差し込む。よいしょ。

 

たっちゃんを枕に寝かし、上に体が冷えないようにタオルケットをかけておく。にへら、と幸せそうなたっちゃんを置いてきぼりに、俺は整備(仕事)をしに、整備書庫を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

整備書庫から出るのにはカードキー要らんし、放置でええやろ。




なお、主人公の言う『昔』は主人公の前世だったり

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