一応この時はまだレベルスティーラーは禁止前、ということで
「冷たい炎が、世界の全てを包み込む…。漆黒の華よ、開け!
ブラックローズドラゴン!」
「はい奈落」
「ああああ!」
勢いよく場に出した棘のある茨の竜をかたどったモンスターが、活躍する間もなく除外される。
それを見て、刀奈は頭をかきむしりながら勢いよく立ち上がった。
「ちょっと鹿波さん!なんてことするのよ!」
「いやいや、これ対戦だし」
そう言う鹿波さんは涼しい顔をしている。くう、私の場には今のシンクロ召喚のために素材にしたからモンスターはいない。
そして私の伏せカードにはミラフォのみ。
うぅ、心配だけどもうこれ以上出来ることはないし…。仕方ない。
「ターンエンドよ!」
「じゃあ、そのエンド時にリバースしてサイクロン。当然対象はかっちゃんの伏せカード」
「ちょっとお!」
ああ、なんて無情な。そんな思いと共に、私はミラフォを墓地に置く。…次のターンで私、死んだかしら。これ。
「じゃあ俺のターン。ドロー。
手札からレベル・スティーラーを墓地に捨ててクイック・シンクロンを特殊召喚。
クイック・シンクロンのレベルを1下げることでレベル・スティーラーを墓地から特殊召喚。
クイック・シンクロンとレベル・スティーラーでジェット・ウォリアーをシンクロ召喚。
ジェット・ウォリアーのレベルを1下げてレベル・スティーラーを墓地から特殊召喚。
(この時ジェット・ウォリアーのレベルは4に)
シンクロン・エクスプローラーを召喚、効果により墓地からクイック・シンクロンを特殊召喚。
(この時クイック・シンクロンは効果無効状態のレベル5)
クイック・シンクロン、レベル・スティーラー、シンクロン・エクスプローラーでロード・ウォリアーをシンクロ召喚。
ここで、ロード・ウォリアーの効果を発動。デッキから、ジェット・シンクロンを特殊召喚。
ロード・ウォリアーのレベルを1下げて、レベル・スティーラーを墓地から特殊召喚。
(この時ロード・ウォリアーはレベル7に)
ジェット・シンクロンとレベル・スティーラーで、フォーミュラ・シンクロンをシンクロ召喚、そしてフォーミュラ・シンクロンの効果で一枚ドロー。
ジェット・シンクロンがシンクロ素材として墓地に送られたので、ジェット・シンクロンの効果でジャンク・シンクロンをサーチし、手札に加える。
ロード・ウォリアーのレベルを1下げてレベル・スティーラーを墓地から特殊召喚。
(この時ロード・ウォリアーはレベル6に)
ジェット・ウォリアー、ロード・ウォリアー、フォーミュラ・シンクロンでシューティング・クェーサー・ドラゴンをシンクロ召喚。
…あれ、かっちゃん生きてる?」
なぁにこれぇ。ふええ、この人一人でソリティアしてるぅ…。
そしてこの後さらに
「…かっちゃん、これだいぶ前の環境のデッキなんだけど。もしかしてかっちゃん、現環境の情報知らない?それで簪ちゃんに挑むとか本気?その子、十二獣とか使うみたいじゃない」
「そんなの知らないもん…」
そもそものことの発端は、私が妹の簪ちゃんと仲直りしたくて、簪ちゃんの好きなカードゲームでなら交流がはかれるかな。というものだ。
もちろんカードゲームなので、まずはルールを覚えないといけない。
でも、私も虚も本音も全く詳しくないしーーー。
そう思っていたところで、意外にも知ってたのが鹿波さん。
鹿波さんいわく、
「昔ちょっとやってただけ」
らしいけど、そんなことは関係ない。
本当に少しでいいの、ちょっとでいいから教えて!必要なものとかあったら全部揃えるから!
とお願いして、ようやく最近私は自分のデッキが作れるようになった。
最初のうちは鹿波さんが個人的に好き、ということで、私用にBFデッキ、鹿波さん自身は王さま?デッキとか、十代・二十代デッキとかいうのを使ってた。
最初はルールも覚束ない私が嫌な思いばかりしないように、とだいぶ手加減してくれたりして、私の勝率が50%くらいになるようにしてくれたり。
で、少しずつ慣れてくると全部分かったような気分になるもので。
同じデッキで勝負よ!と言って、私も鹿波さんも同じ内容のBFで勝負した。
結果、勝率2割。泣いた。いじけた。
鹿波さんはそんな私に辛抱強く付き合ってくれて、最近は私が自分一人で作ったデッキと、鹿波さんいわく全盛期の6割デッキ、じゃんど?とか言うので相手してもらっている。今日も惨敗したけど。
鹿波さんいわく、私のデッキは基本的に回る速度が遅くて、メタや妨害も足りない、だって。
そう言ってぶーたれる私に
「うん、カードを大切に思う気持ちはいいね。その気持ちは大事にしよう。
ただ、自分の好きなカードで勝つ、というのは、勝つために組んだデッキで勝つよりも難しいんだ。いわゆるファンデッキとかもそうだけどね。
かっちゃんが好きなカードで勝ちたい、っていうのは、多分簪ちゃんといい勝負をした後に仲直りするよりも難しいと思うよ」
だって。でも、私だってこの子で勝ちたいもん…。
私のわがままだとは分かってる。でも、そんな私に鹿波さんはずっと付き合ってくれた。