とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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ラウラかわいいよラウラ(挨拶)

ラウラは別に鹿波に恋をしている訳ではありません


在りし日の日常3

今度の訪問者は一夏君だった。

 

「やあ一夏君。

最近の調子はどうだい?」

 

「鹿波さんこんにちは。

 

最近ですか?そうですねー…なんか夜な夜な、寮長室からうめき声が聞こえてくるらしいんですけど、鹿波さん何かしら知りませんか?

 

寮長って言ったら千冬姉だから、心配なんですけど…」

 

 

「うーん。

ごめんね。ちょっと分からないかなぁ」

 

 

ごめん一夏君。本当に分からないんだ。

最近は特に、織斑先生を見かけることがめったにないし。

この間見かけた時も、あっという間にどっか行っちゃったし。

やっぱり前の件で嫌われたんかなあ…。

 

(´・ω・`)悲C

 

 

「そういえば、シャルルが実はシャルロットで、男じゃなくて女の子だったのは本当にびっくりしましたよ!

山田先生にシャルルが同室じゃなくなりますって聞いたと思ったら、次の日にはシャルルはシャルロットで男の子じゃなくて女の子でした、なんて言われて!

 

あれは驚きましたね…」

 

本当にびっくりしたんだろう、驚いたという感情がこちらにまで伝わってくるように話す一夏君。

 

そうか。一夏君視点だとそうなるのか。

たしかにそれは驚くよね。

 

 

「最近の特訓の方はどうだい。少しは白式に乗るのも慣れてきたんじゃない?」

 

「いやー、それが全然で…」

 

「へえ?意外だね。

セシリアさんに鳳さん、篠ノ之さんから教えてもらっていたんじゃなかったっけ?」

 

「そうなんですけど…。

シャルロットがシャルルだったころは、シャルルが一番分かりやすく教えてくれてたんですよ。

ただ、最近はシャルルがシャルロットになってから、箒も鈴もセシリアもなんですけど、全然シャルロットに教えてくれないようにしてくるというか…」

 

「なんだい、妨害でもされているのかい?」

 

「いえ、そういうわけじゃないんですよ。

ただ、シャルロットが俺に教えようとすると、なんか突然バトルロワイヤルが始まっちゃって…。

 

そのせいで最近、シャルロットが教えてくれないようになっちゃいまして…」

 

そう言って肩を落とす一夏君。まあ、ドンマイ。

 

て言うかそれ、妨害じゃないの?間違いなく妨害でしょ?

 

織斑一夏争奪戦~恋する乙女は盲目編~

 

みたいな感じがする。

 

あ、でもシャルロットは一夏君のことが好きなんだろうか?どうなんだろう?

もしそうなら、シャルロットが教えてくれないようになる、っていうのは違和感あるかな?

シャルロットが一夏君のことが好きなら、喜んでバトルに参加する気がするし。

 

じゃあシャルロットは一夏君のことが好き、という訳ではないっぽいのかな?

うーん、まあこればっかりは推測じゃあ分からないし。まあ気にしないこととしよう。

 

あ、でも、もしもシャルロットが

 

一夏に私のことを好きになってもらうにはどうすればいいかな?

とか言ってきたら全力で手伝ってあげよう。アドバイスしまくっちゃうよー。

そして一夏君の話は続く。

 

 

「そういえば、今度一緒に水着を買いに行こうって話になったんですよ」

 

「へえ。ああ、そう言えばそろそろ臨海学校だっけ」

 

「はい!正直、今から楽しみでワクワクしてます!」

 

「織斑先生の水着とかね」

 

「そうなんですよ、本当に千冬姉きれいだし…じゃないです!

なにさりげなく千冬姉の水着の話にしようとしてるんですか!怒りますよ!」

 

「あれ、一夏君織斑先生の水着姿が楽しみじゃないの?」

一夏君シスコンなのに。

 

「いや、そりゃ楽しみですけど…。

って、その方向に話題持ってくの、やめてくれません!?

 

俺は普通に、臨海学校が楽しみなんです!」

 

「はいはい、じゃあこれくらいにしようか。仕方ないなぁ。

そう言えば、確か海には入れるんだったよね?

 

周りはかわいい女の子だらけ!そして男と言えば一夏君くらい!そりゃあ楽しみだよね。分かるよー」

そう言ってうんうんと頷く俺氏。

いや、もし自分が一夏君の立場なら絶対楽しみでしょ。目の保養になるし。

 

「その生暖かい視線はやめてくれませんかね…」

 

 

そう言ってジト目で見てくる一夏君。その眼光は野獣のよう…なんてことはなく、織斑先生譲りだなぁと思うほど鋭いものであった。はいはい、わかりましたよ。もう…。

 

 

それにしたって、周りがかわいい女の子で皆水着になるんだろう?それで楽しみじゃないとか言ったら、ちょっと織斑先生に育て方を間違えたんじゃないですか、って言わなきゃいけなくなるじゃない。その…衆道、というやつですね。

 

ホモォ…。

 

「で、水着を今度買いに行くことになったんですけど」

 

「ほほう。織斑先生と?」

 

「さっきから千冬姉のネタ振るのやめません!?」

 

そう怒るな少年。

だって君、少なからずシスコンじゃないか。正直、反応が分かりやすくて面白いんだよね。

 

「はぁ…。今日はやけにからかってきますね…。

まあ良いですけど。

 

 

一緒に行くのは箒となんです」

 

「へぇ。良いんじゃない?

ちょっとしたお買い物デートだね」

 

「ただの買い物ですよ?」

 

即座に首を傾げてそう答えられるキミは重症だと思うんだ。

 

「ただ俺、そういうファッションとかあんまり詳しくなくて…」

 

「ふむ。で、僕のところに相談にきた、と」

 

「はい…。

お願いです鹿波さん!どうすればいいか、教えてください!」

 

 

そう言って頭の上でパンっ!と手を合わせる一夏君。

うーん、そうは言ってもな。

正直箒ちゃんとしては、多分一夏君と一緒に居られるだけで嬉しいだろうしなぁ。ほぼ勝ち確なデートに何をアドバイスしろと。

 

まあ仕方ないので、当たり障りのないことを言っておく。

 

「とりあえず、デート中に他の女の子の名前は出さないこと。これは絶対ね?

 

あとは、そうだね。

相手の女の子の顔や表情、仕草をよく見るんだ。感情を読み取ろうと努力するだけでも、相手は気にしてくれてるんだな、って思うからね」

 

「水着を選ぶ時のアドバイスとかは…」

 

「うーん、それは難しいね。

水着は特に好みとかもあるし。

 

ただ、君がいいなぁと思った方をおすすめしても、そうじゃない方を貶したりしなければ大丈夫」

 

 

よく、女性は既に答えが出ているが、パートナーの男性に選ばせる、っていうのあるよね。

 

あれ、男性が女性が選んでほしかった方を選ばなかったとしてさ。

それで不機嫌になるような地雷な女性とか、僕ならそうそうに縁切るけどね。

 

その女性の方が稼いでるとか、婿に入ってる、とかなら我慢する方がいいと思うけど、普通に付き合っててそんな失礼なことをする女性とか嫌すぎでしょ。そんな嘗めた態度取るような人、さよならするのが一番いい。

一夏君のためにもね。

 

 

「まあ、仮に一夏君がこっちがいい!って選んだ方がハズレだったとしても、別に気にしないでいいよ」

 

「そ、そうですかね…」

 

「もしそれで君がアタリの方を選んでくれなかった、っていって拗ねたりしたら、また僕に相談しに来るといい。

 

その時にまだ君が仲良くしたいと言うのであれば、協力は惜しまないさ」

 

織斑先生けしかけたりね。もしくは織斑先生に相談したり。なんか織斑先生今日出番多いね。別にいいけど。

まあ、一夏君の唯一の家族だしね。そりゃあよく名前もあがるか。

 

 

「うーん、まあわかりました」

 

「なに、ただの助言だからね。結局は自分で判断するのが一番いいよ」

 

「そうですね…。

ありがとうございました!」

 

そして一夏君は駆け出して行った。元気だなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパーン!

 

「嫁よ!」

 

また君か。壊れるなぁ…。

どしたんラウラ。今日はなんだい?

 

「水着を買いに行くぞ!」

 

 

ああ、一夏君が言ってたね。ええで。

でもシャルロットと一緒に行けばいいんじゃないかな?

 

「うむ、シャルロットも一緒だ」

 

え、ちょい待ち。

シャルロットは、俺が一緒に行くのは了承してるの?

 

「うむ」

 

そう言って頷くラウラ。

さすが軍人、腰に手を当てながら話すその姿さえ様になるね。

 

「ラウラとシャルロットの他に、誰か誘ってたりするのん?」

 

「今のところ、私とシャルロットだけだ。

嫁が嫌でなければなんだが…」

 

一緒に行ってほしいの?

 

「うん」

 

そう言って頷くラウラ。素直。かわいい。

さっきからちょっとずつ動くたびにサラサラの銀髪が揺れて、ちょっと触りたい。

 

 

んー…。

ちょっと考えてみよう。

両隣に美少女二人をはべらせる社会人男性(24)。

 

…アウト。

 

 

「ごめんラウラ、それはちょっと社会的に不味いかなぁ…」

 

「そうか…」

 

そう言って肩を落とすラウラ。

しょぼーん、という音さえ聞こえてきそうなその様子は、とてつもなく哀愁が漂っている。

 

うっ。

悪いことはしていないはずなのに胸が痛い。

 

でも、こればっかりはなぁ…。

 

そう思っていると、ラウラが顔を上げた。

 

「嫁よ。どうすれば社会的に不味くないんだ?」

 

「え?」

 

社会的に不味いなら、社会的に不味くないようにすればいいってか?

ていうか君、どれだけ俺と一緒に行きたいの。

 

「うーん、シャルロットと行くのじゃダメなの?」

 

「ダメではないぞ」

 

ならええやん。

そう思った俺だったが、次の言葉に二の句を失った。

 

「ただ、私は出来るだけたくさんお前と共に過ごしたいと、そう思っているだけだ」

 

あんまりない胸を張って、別になんでもないことのように言うラウラ。むしろこっちが恥ずかしい。

やだ…この子純粋すぎ…?

かわいい(確信)

 

 

 

「む、そういえば教官も水着は買いに行くと言っていたな。

教官と一緒なら大丈夫じゃないか?」

 

むむ。たしかに。

織斑先生なら同年代だし、教師として活躍している。

教え子と共に水着を買いにきた、となれば別におかしくはなーーー。

ちょっと待った。

 

それでも結局美少女+美人さんに俺(男)が囲まれてる構図は変わらないよね?

というかむしろひどくなってない?

かわいい女の子(美少女二人)を両隣にはべらせるだけでは飽きたらず、美人教師まで同伴だよ?sneg(それなんてエロゲ)

 

 

あと、織斑先生と真耶ちゃんってよく一緒にいるイメージあるんだよね。

もしそうなれば、ラウラ+シャルロット+織斑先生+真耶ちゃん+俺とかいう、ハーレム状態になるんだけど。

むしろ悪化してるやん…。

 

 

ここはなるべく、織斑先生同伴は阻止すべきかな。

それこそラウラ、シャルロットと共に水着を買いに行くことになってでもなんとか阻止したい。

 

どうせこの辺りで水着を買いに行くとしたら、大型ショッピングモールはレゾナンスくらいしかない。

もし仮に美人教師二人+美少女二人と俺が共に水着売り場にいるところを生徒か教師にでも見られたら…。

間違いなく次の日には学校じゅうに噂が広まってしまうに違いない。平穏無事をこよなく愛する俺としては、それはあまりにも許容できないよね。

 

 

そこまで考えて、ラウラの提案は却下することに。

 

「いや、織斑先生同伴だと更に目立ちすぎちゃうしね。

 

どうしてもシャルロットと二人よりも俺と、ってことならまあ、吝かではないよ」

 

「うむ!では今度の土曜日、共に水着を買いにゆくぞ!

シャルロットも嫁と共に水着を買いに行くことを楽しみにしていたしな!

これでシャルロットも喜ぶだろう!」

 

待って。ステイ。ステイステイステイ。

 

「む?どうした。土曜日ではまずかったか?」

 

違う。そうじゃない。

シャルロットも俺と一緒に行くのを楽しみにしてたの?

本当に?

 

 

「ああ、私がお前を誘うと聞いたとき、それはもうずいぶんと嬉しそうにしていたぞ?

私がそう思うくらいだから、本当に楽しみなんだと思うが」

 

たしかに、ラウラが俺と一緒に居られる!とかならすぐに想像できる。

いつものことだし。

 

でも、シャルロットさんがそんなに?

わりとポンコツなところもあるラウラが気付くくらいに?

そんなに喜んでたの?

 

 

一体どういうことなんだってばよ…。

 

 

そしてその疑問は解消されないまま、またな!と言ってラウラは行ってしまった。

なんでや、いつの間にシャルロットのフラグが立ってたんや…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のお客さんは簪ちゃんだった。

今日も打鉄弐式の製作らしい。

 

 

簪ちゃんは本当にがんばり屋さんである。

そんな簪ちゃんを後ろから見つつ雑談。

 

 

 

 

今度臨海学校あるねー。

 

あはい、ありますねー。

 

楽しみー?

 

あんまりですねー。

 

およ、それまたどうして?

 

本音ちゃん…あ、友達に本音って子がいるんです。

その子が、その…。私より、ちょっぴりスタイルが良くって…。

 

あー、そっかー。水着だもんねー。

 

そうなんですよー。やっぱり気になっちゃって…。

 

まあそうは言っても、男の子なんていないようなものだし…。

 

 

 

 

そう言ってから気付いた。たしか簪ちゃんは一夏君のこと嫌いだったっけ。

しまった、失言だったか。

 

 

 

 

あー、ごめんね。失言だったかな。

 

いえ、もう…。そんなに気にしていないので。

 

あ、そうなの?

 

はい。

 

 

 

 

俺から見えるのは簪ちゃんの後ろ姿だけだから分かりにくいが、そんなに気にしていないというのは本当のようだった。

 

 

 

 

んー、その理由ってさ。聞いてもいいかな。

 

大した理由じゃないですよ?

それでも良ければ。

 

うん、簪ちゃんが嫌じゃなければ教えてほしいかな。

 

本当に大した理由じゃないんですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、少しだけ笑いながら簪ちゃんは話し始めた。

 

 

 

 

ほら、鹿波さん覚えてますか?

私が初めてこの整備庫に来た時のこと。

 

覚えてるよ。

 

あの頃の私は、本当に周りが全部敵にしか見えていませんでした。

本音ちゃんも、お姉ちゃんも、虚さんも。

今はお姉ちゃんとも話しますけど、本当にあの頃は誰もが敵にしか見えなくて…。

でも、鹿波さんはそんな私にも真っ向から向き合ってくれたじゃないですか。

 

ーーーそうだっけ?

 

そうですよ。

今でも私、覚えてます。

『君が周りを敵だと思うのは構わない。君が僕を敵だと思うのも気にしない。

でもさ。

君は本当に、そのISを大切に思っているのかな?

 

今の僕には、ただ自分の道具として扱っているようしか見えないよ』です。

私、あんなにひどくはっきりズバズバ言われたの、初めてだったんですよ?

 

 

 

 

そんなことを話す簪ちゃんの口調は、その字面とは裏腹に明るくて、楽しげで。

 

 

 

 

あの時、すごいショックでした。

何この人、って思うより先に、初対面の人にそう思われるようなことを、私はこの子(打鉄弐式)にしてるんだ、って。

 

ーーーごめんね。

 

いえ、あの時ああやって強く言ってくれたおかげで、私の目が覚めましたから。

むしろ感謝してるんですよ?

 

はは。それなら今度、僕が危なくなった時にでも守ってもらおうかな。

 

 

 

 

冗談でそう言うと、彼女はくすりと笑ってこう言った。

 

 

 

 

「大丈夫。あなたは私が守るから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り向いたその顔は、思わず見惚れるほど優しい笑顔だった。




ちなみに簪ちゃんはアニメ大好きっ子です。
綾波さんリスペクト。

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