書いた自分が夜に悶えて寝られなかった作者です
山田真耶先生に出会って開口一番聞かれました。
「昨日、織斑先生と何かあったんですか?」
なんだろう。何かあったのか聞いていながら、あったことは既に確定してるみたいなこの聞き方。
幸いなのは、俺が織斑先生にひどいことや悪いことをした、と決めつけたりしない、真耶ちゃんに尋ねられた、ということだ。
あー、いや、あれは俺が悪いのかな?
とりあえず、誤解のないように真耶ちゃんには伝えておこう。
こんな女尊男卑の世の中だ。あらぬ噂を立てられるだけでも男は社会的に死ぬ。痴漢冤罪とかね。
そういう訳で、かくかくしかじか。
まあ、俺にも対応に落ち度があったかもしれませんし…。
と、謙虚な姿勢で応対する。
自分の悪いところは直ぐに認めて対応するのは、社会人の必須スキル。
真耶ちゃん先生に説明し終えると、納得したように頷いていた。
「あー…。織斑先生、男性に免疫とかありませんからね…。
あっ、わ、私が男性に免疫あるとか、そういう訳じゃないんですよ!?」
わたわたして説明しちゃう真耶ちゃん。可愛い。
「でも、それを聞いて安心しましたー…。あ、鹿波さんは悪くないので、気にしないで大丈夫です。
私、実はちょっとだけ、鹿波さんと織斑先生が喧嘩しちゃったんじゃないかと心配で…」
そう言って、ほっ…と安堵した表情をこちらに向ける。
まあ確かに。
俺も織斑先生も、どちらかと言うと我が強い方だからね。その心配は尤もではある。
あ、もしかして教員の方達の間で何か話になってたりしました?
「はい。それはもう。
普段なら冷静な顔で淡々と仕事をこなす先輩が、昨日はなんでもないところでミスをしたり、突然ぼーっとして自分のおでこに手を当てたり。
他の先生達も、風邪?大丈夫?って声はかけてたんですけど、大丈夫、大丈夫だから…。と言って、織斑先生が聞かなくて…。
心配してたんですけど、鹿波さんの話を聞いて安心しましたぁ」
そう言って、ほにゃっ、と笑う真耶ちゃん。天使かな?人の良さと相まって、まるで聖人に見える。
日本刀を振り回す聖人はお呼びではない。帰れ。
「じゃあ私、後で教員の皆さんに説明しておきますね。あ、ちゃんと鹿波さんが悪くないことは伝えておきますから、安心してください!」
それではー!
と言って、真耶ちゃんはあっという間に去っていった。
いつもなら見ない速さだったので思わずびっくり。これならクーガーの兄貴も大満足の速さだった。
あ。
待てよ?
教員の皆さんに説明?
つまり、昨日のあれを、教員の皆さんに知られちゃう訳だよな。
…織斑先生、大丈夫なんだろうか。
羞恥で。
「ええぃ、離せ真耶!」
「ダメです先輩、早まっちゃダメですぅ!」
とか…ならんか。
うん、まあ、いいや。しーらね。(無責任)
「嫁よ!」
ッパーン!
特に理由のない暴力が金属扉を襲う!
いや、別に暴力じゃないけど。荒々しい開け方されてるだけだけど。
…暴力と大差ない気はする。
「だから嫁じゃないって」
あと、そのドアはそうやって力任せに開けるものじゃありません。
って、あれ?
「ラウラ、置いてかないでよー!」
「む?すまんなシャルロット」
おや。今日はシャルル君…。いや、女子制服だからシャルロットちゃんか。シャルロットちゃんも一緒なんだね。
いらっしゃい。
あとラウラ、眼帯外したの?
「む?うむ!
嫁は眼帯を着けてた方が好きか?」
なんだろう。
子犬が構って構ってというようなこの感じ。
かわいい。
「いや、ない方がいいかな。
俺はラウラの綺麗な眼、好きだよ」
「そうか。
ならばお前の前では外していることにしよう」
そう言って、ムフーッとドヤ顔をするラウラ。
やだこの子、かわいい…!
「えと…お、お邪魔します」
やあシャルロットちゃん。
この間は突然話かけたのに、ちゃんと聞いてくれてありがとねー。
女子の制服着てるってことは、ちゃんと女の子として再入学出来た?
「はい!あの、ありがとうございました!」
いいっていいって。
(どうせ自分のためにやったことだから)気にしないでー。
ていうか、あれ?
俺が動いたこと、シャルロットちゃんに直接言ったりしたっけ?
織斑先生には何も言わなかったけど。
あれは事故。事故だから。
「ええと、以前お話を教えて下さった際に、知り合い?に頼んだ、とかおっしゃってましたよ」
おう…すっかり忘れてた。
これだからおじいちゃん(24)の記憶力はあかんね。
あ、あとそんなにかしこまらなくてもいいよ。
むしろ、ラウラくらいフランクでオケ。
なんだかむず痒いし。
「フランク、ですか。わ、わかりました」
まだまだ緊張がほぐれない様子のシャルロットちゃん。
あ、なんて呼べば言いかな?シャルロットちゃんでいいの?
「あ、出来ればシャルロットでお願いします。シャルロットちゃんは、ちょっと恥ずかしいです…」
あはは…といいながらそう言うシャルロットちゃん。いや、シャルロットって呼ぶんだったか。
んじゃあ。
「わかったよ、シャルロット。
これでいい?」
「はい、それでお願いします」
そうやって、シャルロットとばかり話をしているのが不満だったのか。
ラウラが俺の背中をよじ登ろうとしている。こら。
「嫁よ、私にも構うがよい。
いやむしろ構え」
そう言いながらもよじよじと背中を登ってくる。
放置してたけど、そう言えばこの子現役軍人だった。人の背中くらい登れるか。
あっ。
「おー!高いな!」
とか言いながら、俺の肩に柔らかでいてしなやかなふとももが乗っている。ズボン越しだからセーフ。
これは俗に言う、肩車というやつだな。
はっはっはー!とかはしゃいでいるラウラに対し、
ダメだよ!失礼だよ!
と言って、腰に両手を当ててラウラを叱るシャルロット。
ああ、ラウラに振り回される保護者のシャルロットの構図はあんまり原作と変わらないのね。
一夏君ラヴァーズじゃなくなってはいるけど。
ラウラの制服はズボンタイプだから、スカートの内側が見えたりしないというのが良い。
あれ、外から見ればただの変態さんになっちゃうからね。スカートに顔を突っ込む変態。不名誉すぎ。
本人にはそんなつもりなくてもそうなっちゃうからなぁ…。だからスカートで登るなら、周りに人のいない時にしてね!おにーさんとの約束だ!
そういえば、と、気になったことを頭上のラウラに聞いてみる。
「そういえばラウラ。やっぱり一夏君達と一緒に過ごすことが多いのか?」
「む?いや、そんなことはないな。
一夏達は一夏達でいつも一緒にいるが、私やシャルロットは他のクラスメイトとも過ごすぞ。
何故か良くお昼頃になると、食べ物をもらうのだ」
皆、とても良い奴らだぞ!
と満足気なラウラ。ムフーッ、と得意げな顔してるんだろうなぁ…。見えないけど。
ちらりとシャルロットを見ると、うん。というように頷いた。
そうか。やっぱり餌付けされてるのか。
まあ、見た目も小さくて愛くるしい上に、行動まで小動物チックで可愛らしいとくれば、可愛がられるわなぁ…。
まあ、ちょっとした楽しめる毎日を送っているようで安心した。
シャルロットも、何かあったら相談してね。
シャルロットは無言で微笑んでくれた。
あらかわいい。
一部改稿