とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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邂逅

織斑君が入学してしばらく。

 

 

真耶ちゃんこと山田真耶先生から、中国の代表候補生の転入が済んだことを聞いた。

 

 

そっかーリンちゃん転入ってけっこう早いタイミングだったんだなー、なんて思いつつ。

そうすると、セシリアチョロコットさんはチョロインらしくもう織斑君に落とされたんだろうか、なんて空想したり。

 

 

 

まあぶっちゃけアンサートーカーを使えば真実(チョロインなのかチョロくないヒロインなのか)はわかるのだが、正直なところ自分の目で見れた方が面白い。

ネタバレし続ける物語なんてつまらないので、もしどこかで知る機会があれば自分の目で確かめてみようかなー、なんて程度のものである。

 

 

正直、すべての答えがわかると言っても、すべての答えを知ってしまえば、多分この世は全くつまらないものになる気がする。

それに、俺は全知などというものに興味はないのだ。

 

 

さてさて、今日の整備は全て終わっているのだが、今わたくしめは清掃業務の真っ最中です。

普段なら整備員たるわたくしは清掃を業務としてすることはないのでありますが、これには深ーい訳があるのです。

 

 

 

というのも、さっきまで話をしてた真耶ちゃんのクラスに転入してくる代表候補生ズの書類が届き、今そちらに人員を割かなければ通常業務も回らないような修羅場だそうで。

たしかドイツとフランス…?の代表候補生とかなんとか。

 

 

 

 

しかして手伝おうにも、当然機密情報なんかもあったりするから整備員たるワタクシは手伝えない訳でありまして。

急遽轡木さんほか十数名がヘルプにお呼ばれした。

 

で、その轡木さんの分のお仕事が回ってきた、と。

 

まあそういう次第であります。

そこ、別に深くないね、とか言わないの。

 

 

 

まあそろそろその轡木さんの分の清掃仕事も終わるし、午後5時くらいにはISコアのプログラミングに取りかかれそうかな?

 

それでは掃除道具(モップ)を片付けましょう。

 

しまっちゃおうね~。

 

 

「ん?」

 

 

いつもの整備庫に行ったら先客が。

 

 

水色の髪、ツンツンの髪の毛。

 

 

更識楯無か?いや、でもこの時間は生徒会室にいるはず。

楯無め、サボりか。

 

 

とも思ったが、一心不乱にカチャカチャやってる様子を見るに、どうも違うっぽい。

 

 

 

あ、そういえばさんざん自慢された、妹ちゃんの方か?

 

曰く、「私に似てる」「天使みたい」「いや天使よりかわいい」「むしろ簪ちゃんが天使」…うん、たしか簪って名前だったな。

 

 

あいつの妹だし大丈夫だとは思うが、もしこの子が女尊男卑な考え方で、何もしてないのに痴漢だとか言われると面倒だ。アンサートーカーで確認しておくこととしよう。

 

 

この子は女尊男卑な考え方か?

 

 

Noでした。一応一安心。

 

 

こちらからはISに向き合ってプログラミングしている簪らしき人物の背中が見えるが、彼女からすると俺は突然現れたよくわからない男になるんだよな。

 

 

ふむ。

 

 

「こんにちは」

 

 

挨拶は大事、古事記にもそう書いてある。

しかし彼女にはけっこうな驚きだったようで、ビクッと肩をはね上げこちらを見た。

 

 

「こ、こんにちは…」

 

 

うむ。ちゃんと挨拶を返せる子でおじちゃん安心した。

なんでも、見知らぬ人に挨拶したら、

「そんなに気持ちよく挨拶されたら、殺す気も失せるじゃねぇか…」

と言われた、などということすらある世の中だ。

 

 

やはり挨拶は重要なのだ。古事記うそつかない。

 

 

「ええと…?」

 

 

ああ、うん、そうだよね。

女の園に成りつつあるIS学園で見知らぬ男を見たら「誰だコイツ」とか「怪しい人?」って思うよね。

 

 

…いや、いっそその方向でいくか。

 

 

「お嬢ちゃん、運がねえなあ…。まさかこんなに早く見つかるとは思わなかったが…。

 

悪く思うなよぉ!」

 

などと言って、いかにも悪役っぽく、それでいて愉悦を多分に含んだ笑顔を見せると、完全に本物だと思ったのだろう、ヒッ、という息を飲むような悲鳴と共に、後退りしてしまった。

 

 

ちょっとびびらせすぎたか…。

すまない。本当にすまない。

 

 

悪役顔をやめて、顔をむにむに。うむ、よし。

柔らかく微笑んでごめーんね。

 

 

 

「ごめんごめん、そんなに怖がられるとは思わなくてね。僕は鹿波、ここの整備員を担当しているよ。君は?」

 

 

 

 

多分更識簪ちゃんだと思うけど念のため。

 

 

 

 

 

「え、あ、え…?」

 

 

 

 

あら、よくわかっていらっしゃらないご様子。

 

 

 

とりあえず落ち着いてね。

 

 

 

「あ、えっと…。更識簪っていいます。整備員、さん…?」

 

 

 

「うん、僕整備員。簪ちゃんが一生懸命にプログラム作ってたみたいだから、邪魔しちゃあれかなと思ったんだけどね。何も言わずにっていうのもね」

 

 

 

「あ…そう、だったんですか」

 

 

 

あからさまにほっとした顔を見せる簪ちゃん。

さて、ここでフラグを立てに行くならプログラミングのお手伝い、という所なんだけど。

 

あいにくと!

 

僕は!

 

フラグを立てに行くつもりはぁ!

 

 

 

 

ないっ!(迫真)

 

 

そんなわけで簪ちゃんイベントはスルーで。

 

 

「うん、それだけ。

邪魔してごめんねー。」

 

そういって手をヒラヒラさせつつ、俺は奥に歩いていった。

 

適当なところの机まで進み、制作途中のISコアを出す。

 

 

さて、続きといきますか。


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