そこからすぐに連想したのが1145141919810だったあたりに自分の業の深さを感じる。
やぁ。
学年別トーナメント前の怒涛の14連続勤務とかいう、ストレスで胃がマッハなデスマーチも終わった。
二年生、三年生の学年別トーナメントもタッグマッチになっていたが、こちらは一夏君たち一年生とは違い、特にアクシデントもなく終わった。
そういえば、学年別トーナメントが一回戦しか行わないって通知がされたとき、なんだかやけに落胆の声がよく聞こえたけど、あれはなんだったんだろう?
原作では何かあったのかもしれないけど、重要じゃないところは思い出せないから、こういうときには
あー、なんかあったねえ、なんだっけー。
みたいな微妙に気になるこの感じ。
あるあるじゃないかな。
え、ない?
そんなに気になるならアンサートーカーで確認すればいいじゃん、って思ったかもしれないが、別にそこまで気にすることじゃないしね。
それはさておき。
次は確か一年生は臨海学校が行事としてあったんだっけ。
いやー、覚えてますよ、銀の福音事件。
なんかあれだよね。
一夏君が死にかけて、主人公パワーで傷が治ってパワーアップして帰ってくるんだよね。たしか。
雪羅だっけ?
イラスト付きで描写されてたから、そこはよく覚えている。
あとはなんか助けた搭乗者からキスされるやつ。
さすがに主人公は格が違った。
しかし、一夏君が入学してからというもの、本当にアクシデントやら事件がぽんぽん起きるよね。
いつか轡木さんが言っていた、波乱の予感は正しかったんや。
つまり、轡木さんには未来予知の能力がある可能性が微粒子レベルで存在する…?
なんてバカな考えはさておき。
今の時期は春真っ盛りというあたりである。
たしかうちの敷地内には花見が出来る場所があるらしいので、今度時間があったらのんびり遊びに行こうかなーと思っている。もちろん平日の昼間に。
休日だとけっこうIS学園の女子学生がキャーキャーうるさい違った賑やかだから。
あれから一夏君とはよく話をするようになり、基本的には一夏君が勉強でついていけない部分を教えたり、クラスでの日常の何でもないような話を聞いたりだ。
一夏君に教えていて思ったことは、この子は理解するまでは少し時間がかかるけど、理解し始めると一気に進んでいくなー、ということだ。
なので、最初のうちはほぼ毎回勉強会の様相を呈していたけど、最近はもっぱら雑談である。
その話の中で、いつも一夏君がよく一緒にいるメンバーでのんびりお花見でもしよう、という話になったらしい。
ちなみに発案者は一夏君。
彼、たまにすごくおじいちゃんっぽいところがあるから、もうこの歳で枯れてるんじゃないかとたまに心配になる。
ただ、言った時に周りにいたメンバーが悪かったらしい。なんでも、一夏君の希望する、のんびりお花見してゆったり過ごす、という案は、いつの間にか誰が一番お料理上手か大合戦になってしまっており、一夏君いわく「言わなきゃ良かった」だそうだ。
ん、まあそれもいい経験だよ、なんて適当言いつつ、俺はセシリア女史のメシマズテロを知っているので、ひそかに死ななきゃいいけど、なんて思っていた。
そろそろ臨海学校の準備が本格化するらしい。
織斑先生と真耶ちゃん先生が、今回の臨海学校の下見に、旅館の方々に挨拶に行くことを聞いた。
臨海学校の準備はあれど、最近は業務も平常営業な程度で済んでいるらしく、真耶ちゃんから飲み会のお話が来た。
前に言っていた飲み会の日程の相談らしく、今度の金曜日にどうでしょうか、だって。
もちろん俺は普段から仕事に忙殺されることは(この前のような例外を除き)ないので、二つ返事で了承した。
それと、今回は織斑先生も一緒に来るらしく、その話が教員室で広がり、なんと整備課+教員+轡木さんというけっこうな人数での慰労会となってしまったそうだ。
ちなみにIS学園には解析班という、普段からよくわからないことをやっている部門もあるのだが、そちらは以前のクラス対抗戦、つまり鈴ちゃん登場直後のイベントの時に乱入してきた無人機の解析がまだ終わっていないとのことで。
まあ、解析班の人達はIS学園の中でも一際キワモノというか物好きな人達が多く、三度の飯より技術!機械!ロマン!みたいな感じなので、この慰労会には参加しないのも納得である。
俺個人としては、織斑先生の言っていたバーも気になってはいるのだが、どちらかというと美味しいご飯と酒があれば何でも良い。
なので、まあ慰労会の後に飲み足りなかったら連れていってもらうとか、また別の機会でもいいかなー、程度のもんである。
さて、そんな風にちょっとだけ楽しみにしていたら、時間はあっという間に過ぎ去って。
「では、なんとか無事にトーナメントを終えたこと、そして、今年度も皆さんによろしくお願いしますねということで…」
「「「「「乾杯!」」」」」
フォおおおお!酒!飲まずにはいられない!
なんて歓声を聞きながら、音頭をとった轡木さんがあちこちからグラスを掲げられてワイワイやっているのを見ていると、周りの人達もカチャカチャ乾杯していたので自分も混ざって乾杯。
さりげなーく自分のグラスを下から当てる、という、分かる人には分かる遊びをしつつ、周りを見渡した。
今回の慰労会は、実質的な責任者の轡木さんも参加する、ということで、費用は全てIS学園もちである。さすが轡木さん太っ腹。
それゆえか、周りからは
よっ、御大尽!
さあさあどうぞどうぞ、なんて声が聞こえてくる、ありゃ飲んだら飲んだらお酌されてるね。
ちなみにお酒が飲めない人はウーロン茶で乾杯している。
まずは生中、なんて悪しき風習はなかったんや!
隣にいる真耶ちゃんやら、普段はあまり話をしない教員の人たちとも普段の大変さや面白い話で、馬鹿みたいに盛り上がる。
酒をちびちび楽しみたい人たちは、また彼らは彼らで集まって、のんびりと刺身をつまみに楽しんでいる。
あ、ちらっと轡木さんが見えた。あの人もそっち派であったか。
あ、あれ真鯛の塩釜焼きだ、美味しそう!
貰いに行こうかな、なんて思っていたら、こちらの席にも運ばれてきた。
いやー、こういう、本当に楽しめる飲み会なら悪くないねえ!
前世では、飲み会という名の強制行事には、さしてつまらないのに行かされ、しかも料金まで徴収されるとかいうふざけた話があったものだ。
当時は、これも社会人の務めだ、致し方なし。
なんて思っていたものだから、やはり同調圧力を敷く日本の悪しき風習は滅びなければならんなあ、という思いを、この、みんなが楽しそうにしている宴会を見て、強く感じる。
ふと気がつくと、上段に上がって宴会芸を勝手に始めている奴らがいた。
あ、あいつうちの整備課のやつだ。あいつもそうだな。
隣にいるのは三人の先生方。
普段の活躍の場が全く違い、接点なんてあまりにもない日常を過ごしているのに、こうやって一緒になって笑い合えるこの日常こそが、小さな幸せなんだろう。
ちなみに宴会芸はマジックショーだった。
体が切れるマジックはネタばらしがあって、二人が一つの箱に入って、まるで切れたように見せていたらしい。
でも箱の中に体を収めるために体を柔らかく曲げられる人じゃないとダメだったみたいで、だからうちの整備課だけじゃなくて教員の先生たちも参加してたんだな、なんて納得した。
しかし、酒入っているのにあんなに体をぐにゃぐにゃやるとか凄いな。
その後もいくつかのマジックを見せ、突然始まった宴会芸は終わりもまた唐突に幕を閉じた。
しかし最後のロープ、どうやってビンの底から抜けたんだろうか…?
その後は轡木さん自ら歌い始め、皆が好き勝手に熱唱。
そろそろ終わりの時間でーす、という幹事の人たちからの声があるまで、熱気に溢れた宴は続いた。
店を出ると、さっきまで熱唱していた組はまだ歌い足りないのか、二次会行こう二次会!カラオケね!いいねー!みたいに騒いでいた。
俺はなんとなくそういう気分でなかったので、どうしようかなー、とタバコを吸って一服していたが、ふと横から真耶ちゃん先生に声をかけられた。
「鹿波さん、この後どうされますか?」
俺としては特段どうしようか考えていなかったが、特にやりたいこともないので、家に帰って呑み直しかなー、と答えた。
まだなんとなく、もう少し飲んでいたい気分だった。
「じゃあ、この間言っていたバーに私たちこれから行く予定なんですけど、ご一緒にどうですか?」
私たち?
真耶ちゃんの方を確認すると、隣にはほんのりと顔を赤くした織斑先生が。
いつもよりも、僅かとはいえ服装が緩んでおり、頬が桜色に染まっているその様子は、なるほど美しいとか綺麗だとか、そんな言葉ではとうてい言い表せない色っぽさがあった。
俺としてはそのお誘いは嬉しいよ。でも織斑先生は大丈夫ですか?
そんな感じのことを聞くと、意外にも織斑先生本人から返答が。
「ふん、以前私から誘ったのだ。文句など、あるはずがないだろう。
それともあれか?私とは酒は飲めんと言うか」
あかん。これ完全に酔っぱらっちゃってる。
普段よりもさらに暴君度合いがパワーアップした織斑先生に、真耶ちゃんは俺にすみません…と謝ってきた。
いやいや、こんな往来もあり、まだ他の先生たちもいる中で、頭をそんなに深々と下げられてこまる。
なので、慌てて頭を上げるように真耶ちゃんに言い、そういうことなら、とお供することにした。
織斑先生は本当にお酒が好きなようで、バーについたら真っ先にカウンター席に座ってしまった。
仕方ないので俺も後ろに真耶ちゃんがついて来ていることを確認し、織斑先生の右に座る。
真耶ちゃんはその俺の隣に座り、ちょうど二人に挟まれる形になった。
うは、両隣に美人さんとか、両手に花ですな。
一応隣の真耶ちゃんに、この席順で良かったの?と聞いてみるが、何でも今回の主賓は俺だからこれで大丈夫とのこと。
はて、主賓になるようなこと、やった記憶ないぞ?
(※真耶ちゃんは以前、修羅と化していた鹿波の姿を覚えています)
そう言ってみたが、真耶ちゃんには、はい、分からなくて大丈夫です。と言われた。
本当に謎である。
(※真耶ちゃんは修羅と化していた鹿波の怖い姿を覚えに覚えています)
そんなやり取りをしている間に、織斑先生はもうすでに赤ワインを頼んでいた。おい自重。
あんたどんだけ呑みたいねん。
しかもチーズ三種盛りも追加で頼んでいる。おっさんか。
俺はとりあえずソルティドック、あとレーズンバターがあるのでそれを。
真耶ちゃんはウイスキーにカシューナッツをそれぞれ頼み、一息ついた。
しかし織斑先生が、こんな落ち着いたバーを知っているとは。
一夏君から聞く限りでは、居酒屋みたいにご飯やおかずと共にお酒を楽しむ感じだとばかり思っていたので、正直意外である。
本人に向かってそう言うと、
「まあ、私はどちらかというとそういう楽しみ方の方が好きではあるな。
だが、別に落ち着いて飲むのが嫌い、という訳ではない。要は気分次第だ」
だって。
気分次第かぁ。こんな気分屋に振り回される真耶ちゃんも、さぞかし大変に違いない。
本人を目の前にしてそんな失礼極まりないことを考えていると、織斑先生の方からお声がかかった。
「しかしまあ、こんなところでまで織斑先生はないだろう。
千冬でいい。タメだろう」
えー。なに?そんなめっちゃ親しみ持ってる訳じゃない女性を下の名前で呼び捨てにすんの?
ちーちゃんでええやん。
俺もけっこう酔ってきたのか、少しずつ呑みながらそんなけっこう失礼なことを言っているが、ちーちゃんはある人物を思い起こして不愉快だからやめろと言われた。
束のことですね分かります。
ちなみに真耶ちゃんはウイスキーをぐいぐいいっている。おおー、良い飲みっぷり。
そう言うと、皆さんの前では出来ませんからね、なんてはにかみながら言った。
かわいい。
えへへー、なんて言いながら一人で楽しそうに飲んいる真耶ちゃんは放って、織斑先生の話を聞く。
何でも織斑先生は、わりと最近まで俺のことをいけ好かない年上の男だと思っていたらしい。
だが、この間の時の様子を見て、実際のところあんなに不機嫌になって周りに迷惑をかけても許されるほどのことをやっているのか気になって、整備課の奴らに聞きに行ったんだそうだ。
そこで、他の整備課の奴らの二倍以上のペースで仕事をこなしていること、他の整備課の奴らが昼休憩に行っている間にも仕事をしていることなどを聞き、整備課の奴らから直接、俺の普段の仕事ぶりを聞いたそうだ。
何て言ってました?と聞いてみたが、まあ、悪いようには言ってなかったさ。とはぐらかされた。
整備課の責任者としては、ぜひとも部下の本音は聞いておきたかったのだが…。
そして、普段から午後3時も過ぎるとぶらぶらとしている、仕事サボリーマンのだらしがない奴、という評価から一転、やるときはやる男だと認識を改めたそうだ。
他にも理由はあって、轡木さんに
「確かに彼は無愛想だが、色眼鏡で見ていては、見えるものも見えんよ。
君にとっては、君の友人を彷彿とさせるかも知れん。
だが、一度先入観抜きにして観察してみると良い」
と言われたらしい。
それ以後、一夏君に勉強を教えていたり、相談の相手をしていたりするところを見て、自分の考えに思うところが出てきたんだそうな。
そんなところに真耶ちゃんから、実は自分と同い年だと知って、自分が穿ったものの見方をしていたことに気付いて愕然としたんだって。
うーん、自分自身、自分がわりかし嫌な奴というか。
人となるべくうまくやっていこう、という気が皆無だと思っているから、正直いけ好かないっていうのは間違ってない気がする。
他にも、別にやることをちゃんとやるのは当たり前だと思っているし、正直織斑先生ちょろすぎないかなー、と思っていたりする。
まあ面倒くさいので放置。
さて、そんなことをしゃべりながらがばがばワインを飲んでいた織斑先生だが。
かなりのハイペースで飲んだからか、首がかくんと落ちている。
あ、潰れた。
べっちゃりとカウンターに頭をのせてしまった織斑先生を見て、一つ鼻から息をつく。
そして隣を見ると、いつの間に頼んでいたのか、ハイボールとウイスキーボンボンがもうすぐに真耶ちゃんに平らげられるところだった。
俺が見ていることに気がつくと、俺の隣にいる織斑先生の様子に気付いたのか。
苦笑して、残りのウイスキーボンボンを口に入れた。
お口をもぐもぐしている真耶ちゃんが食べ終わるのを待ってから、織斑先生をどうするか尋ねた。
織斑先生はよくこうやって飲み潰れるらしく、後輩の真耶ちゃんがいつも介抱しているらしい。
真耶ちゃん、多分織斑先生よりもキツイのをバンバン飲んでいたはずなのにけろっとしとる…。
私が先輩の部屋まで連れていきます、と言うので、先輩?と聞くと、織斑先生と知り合ったのが先輩後輩の関係だったらしく。
今でもオフのときは先輩と呼んでいるらしい。
じゃあ出る前にトイレだけ大丈夫、と言って確認すると、そうですね、と言ってお手洗いへと向かった。
この隙に会計をすませてもらい、織斑先生の肩を揺する。
しかし、けっこうな額が飛んだ。真耶ちゃん、顔に似合わず酒豪だったんだね…。
まあ自分は割りと既に充分な貯蓄があるので、そう気になるほどじゃない。
なかなか気分良く飲ませてくれるバーを教えてくれた、そのお礼ということで今回は支払っておく。
さて、織斑先生がうーん…とか唸っている間に、真耶ちゃんが戻ってきた。
既に会計はしてあるから出ようか、と声をかけると、真耶ちゃんは律儀にも、ありがとうございますと言って頭を下げてきた。
この辺りの気遣いが出来るのが、皆から愛される理由だろうなー、とか思いながら、真耶ちゃんがうんしょ、と織斑先生の肩を支える。
うーん、正直背の小さい真耶ちゃんが織斑先生を支えているのを見ていると、不安になるな…。
そんなことを思いながらお店のドアを先に開け、織斑先生を支える真耶ちゃんが来るのを待つ。
IS学園には教員や関係者用の寮があり、学校の北西側に女子寮、北東側に男子寮がある。
寮といっても実際は社宅みたいなもので、さすがはIS学園と言うべきか、実際高級マンションのような感じである。
その女子寮に向かいつつ、さすがに真耶ちゃんが織斑先生を運ぶのをただ見ているだけというのは罪悪感があったので、階段を上る時などは手伝うことに。
しかしまあ、織斑先生は多少崩しているとはいえスーツをきっちり着てるし、俺は整備用のツナギに白衣といういつもの出で立ちである。
つまり、分厚い布+分厚い布で、織斑先生を支えた時に「や、柔らかいものが当たってる…!」みたいなドキドキは、全くなかった。
残念、俺はそういうラブコメハーレムものの主人公のような感じにはならなかったのであった。
そして女子寮に着き、別れ際に真耶ちゃんのメアドと番号をゲット。
まあ正直使うことなんて無いような気もするが、真耶ちゃんの番号をもらえるだけでちょっとは嬉しいものである。
ちなみにこれが織斑先生だったらそんなに嬉しくない。
だって必要なら一夏君にかけて代わってもらうか、IS学園にかけるかすればいいし。
そんな感じで、その日の喧騒は幕を閉じた。
織斑 千冬 の 好感度 が 10 上がった !
0 / 100 → 10 / 100
という訳で、飲み会イベントでした。
次は本編行こうか節分・恵方巻ネタやろうか考え中。
どうしますかね。