とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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やっぱり2000字とか無理ィ!


【束】束とわが子と水子の霊3

IS学園に乗り込んだ時、目的の男はいっくんと話していた。

 

 

 

あ、いっくんはいっくんで、名前は織斑一夏。

織斑千冬ーーーちーちゃんの弟だ。

 

 

いっくんの魅力を語り出したら止まらないけどーーー。

今は後にしよう。

 

 

 

いっくんを巻き込む訳にはいかないので、陰からそっと様子を伺う。

 

 

なにかほんの少しでも怪しい動きをしたら、即座に頭をぶち抜いてやる。

 

 

そんな思いで、左手のベレッタを意識しながら注意して見ていたが、それは杞憂だった。

 

 

男は特に怪しい動きもなく、いっくんに触れたりなどもしないまま、会話を続けている。

 

 

 

学園内では貴重な同性ということなのか、いっくんは早くもこの男に気を許している様子。

 

 

むむ。いっくん、その男は羊の皮をかぶった悪魔の可能性もあるんだよ。

そんなに簡単に仲良くしようとしちゃいけません!

 

 

まあ、どんな相手とも仲良くしようとできる所はいっくんの素敵なチャームポイントなんだけど。

 

 

でもその男はまだ束さんチェックが済んでないから駄目だよ!

 

 

そんな心の声が通じたのか、いっくんは男に別れを告げて去っていった。

よかったよかった。

 

 

 

 

 

なお、この時束は気づいていないが、一夏少年は別れを渋っており、授業が始まることを口実に早く行くように促しているのは件の男こと鹿波だったりする。閑話休題。

 

 

 

 

 

さて、と気合いを入れ直した束からは静かな、しかし確かな真剣みと凄み、そして敵意が感じられる。

 

 

 

 

そして一息に男の背後から強襲、捕縛用のヘカートの銃口を静かに男の頭に当て、左手ではこっそりと心臓部分に照準を定める。

 

 

 

さて、本番だ。

 

 

ほんの些細な動きも見逃すな。

そう自分に言いきかせ、すぐに応戦されても確実に殺せるよう、左手に力をこめる。

手からじわりと汗がにじむ。

 

 

 

しかし、予想に反して、というべきか。

 

 

男は特に動きも見せず、ゆっくりと、ゆったりと。あるいは見せつけるように、タバコを吹かしている。

 

 

 

まさか気付いていないのか?

いや、だが頭に銃口を当てられて気付かないなんてことがーーー

 

 

そんなことを考えていると、ふいに声をかけられた。

 

 

「何の用だ、暇人」

 

 

 

「…暇じゃない」

 

 

そう、私は暇じゃない。

暇な時間などない。

 

 

つい3ヶ月ほど前にも、ドイツにある醜悪な人間生産工場の一つを潰してきたが、まだまだああいった施設、設備はある。

 

 

クーちゃんのような、被害者をこれ以上出さないためにも。

罪もない人間や、わが子そのものであるISたちが、非人道的な実験に晒されないためにも。

 

 

これ以上、人間の底無しの悪意に、業に。

さらされなくても済むように。

 

 

私には、暇などない。

 

 

それを、言うに事欠いて暇人?暇人だと?

 

 

私のこの男に対する敵意が強くなる。

しかし男はそんなことは知らんとばかりに言葉を紡ぐ。

 

 

「なんだ、聞こえなかったのか?俺は、何の用だと言ったんだ。用がないなら引きこもってろ」

 

 

 

こいつ…!

 

 

はっきりと分かる。

こいつは私を馬鹿にしている。

それも、隠すことなく堂々と。

 

 

自分で自分が不機嫌になるのがわかる。

 

 

それと同時に、左手に力がこもる。

 

いざとなったら、本気で殺すこともいとわない。

 

 

初めは殺す気などなかったが、ここにきて私はそんな気持ちなどとうに消えていた。

 

 

言われっぱなしというのも癪だ。

 

 

私は皮肉を返してやることにした。

 

 

「立場がわかってないみたいだね。君、自殺志願者?」

 

 

「はっ、ほざけ。

 

命を握った程度でどうこう?馬鹿が。

気にくわなければ撃てばいいだろう。

 

何故ブラックボックスが解析されたのか、わからないままにな」

 

 

死ね。

 

 

一瞬本気でそう思ったが、男のいう通り、何故ブラックボックス化したはずのISコアの制作方法が解析されたのか、私はどうにも突き止められなかった。

 

 

私の気分はすでに最悪だ。

この男とは、話せば話すほど機嫌が悪くなる。

 

 

この男は、私の神経を逆撫でするために言葉を発しているのかと錯覚してしまうほどに、私の気分を阻害した。

 

 

 

しかし左手にこれ以上力を込めるつもりはなかった。

 

 

ここでこの男の言う通り、左手のベレッタで撃ってしまったらーーー

 

 

「論理立てた反論が出来ないという、何よりの証拠になっちまうもんなぁ?」

 

 

 

クソが。

 

 

こっちの心でも読んでるのか。

そう吐き捨てたくなるほど憎らしく、その男はふてぶてしい顔で、こちらを振り向いた。

 

 

反射的に距離を取る。

 

 

5メートル。

 

 

男が一足に詰めるには遠く、私が狙いを外さず撃つには最適な距離。

 

 

この距離なら私の射程距離、キルレンジ内だ。

 

 

念のために右手のヘカートを見せつけるように男に向け、左手のベレッタは見えないように半身になって隠れて心臓を狙う。

 

 

 

さあ、初めてのご対面だ。


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