無事にケルト勢を完封し避難所に戻ってきた。
戻るとナイチンゲールさんは少しの休憩もなく手を洗い、避難所内の医療テントへと向かって
いく。
嵐のような人であるが、直に見ると正に鉄人にして理想の看護婦である。
個人的には美人だし勿体ないと思うが、それこそ彼女の生き様なのだろう。
一方、ぐだ男君たちや黒ヒゲ達は医療テントの前で先ほどのケルト勢について思い思いに話し出したので、俺は一言断り先行してケルト勢を対処していたであろうアサシンズを探しに出た。
尚、ばらきーちゃんが酒呑に会いたいと駄々をこねるので彼女を肩車して避難所を練り歩いた。
しばらく茨木童子と戦闘方法のプランとか餡子は粒餡かこし餡かについて討論を行いながら避難所のはずれ、ほぼ柵の外に当たる場所でアサシンズを発見した。
近づくと既に赤黒く変色し乾いているものの大地一面が血で染まった一画となっており、
思い思いの方法でケルト勢がバラされていた。
ハサン先生は首を切ったり、頭部を穿つといった殺害方法のようだ。
対してXは斬撃、黒こげなど統一性がない。
一番ひどいのはやはり酒呑ちゃんでミンチ、細切れ、轢殺とアサシンらしからぬ状態である。
また当の本人は雅に酒を飲みつつ、腕・・・らしきものをジャーキーのようにかじっていた。
口の周りが真っ赤に染まり超怖い。
俺は突っ込んだらヤバい気がするので全力でスルーした。
「おお!酒呑!さすがだな!!」
茨木童子は久しぶりの酒呑との邂逅に、召喚されてからずっとテンションが高い。
今も俺の肩から無駄に洗練された無駄な動きで飛び降り、酒呑のそばに駆け寄っていった。
少しジェラシーだ。
「三人ともありがとう。こちらは作戦通りサーヴァント二名を撃退したよ。そっちは何か問題あった?」
「いえこちらは雑兵ばかりでしたので特に問題はありませんでした。あるとすれば少し酒呑童子殿やX殿が派手にやり過ぎたために・・・機械化歩兵達に警戒心をもたせてしまいましたな。」
正に職人といった風情のハサン先生が俺に報告がてら苦言を呈する。
まあほか二人はアサシンぽくない殺し方でバカみたいに派手だからね。
しょうがないね。
片方角生やして人喰ってるし、片方は存在とか色々オカシイし。
「いけずやなあ、髑髏さん。あの子も見とらんし、偶には鬼らしく遊んでもいいやない?なあそう思うやろ?茨木?」
「うむ。そうだな酒呑。鬼である我らに歯向かったのだ、それこそ骨の髄まで我らと敵対したことの愚かさを知らしめねばならんな!」
「そうやろ。まあ多少散らかし過ぎたかもしれんけどあの子には秘密にしてもらえんかなあ?葉山はん?」
「ん?意外とぐだ男君のこと気にしてんのな。良いけど一般市民には手を出してないよね?」
「もちろん。喧嘩売ってこん限りは我慢するえ?マスターを困らせるのも楽しいけど・・・お酒制限されるのも堪忍やしなあ。」
「・・・さいですか。」
どうにも初めて会った時から酒呑童子のことが苦手だ。
最初は鬼だから、人間にとっての捕食者だからかと思っていたが茨木童子に対しては
警戒はすれども嫌悪はない。
理由は分からないがどうしても恐怖とか以前に嫌悪が沸きだす。
「ふふ・・・葉山はんも可愛いなあ。」
しかし逆に酒呑の方は俺のことを気に入っているらしい。
それもぐだ男とはまた違った感じで、だ。
彼女曰く俺から懐かしい匂いがするとのこと。
混血だからだろうか?
腕を食べ終わった酒呑ちゃんが腰を上げたので、早速俺達五人は連れ立って医療テントへと今来た道を戻り始めた。
またしばらく進むと徐に酒呑ちゃんが俺に声をかけた。
「なあ・・・葉山はん?」
「まだ何か?食い足りないとかだったら次のケルト勢を見えない所でどうにでもしてください。あと爛れた夜の話は嫉妬のあまり俺がぐだ男君をゲイ♂ボルグ送りにしかねないので止めてください。」
「ゲイ・・・?なんやのそれ?そうやなくて・・・なあ葉山はんて無理しとらん?」
「無理?・・・何故そんなことを?」
突然酒呑ちゃんがメンタリストにでも目覚めたかのようにお悩み相談をし始めた。
今まで接点など無かったのに妙に話しかけてくるが、俺はどこかで酒呑ちゃんルートに
行くためのフラグを立てたのだろうか?
「だって葉山はん、いっつも面白おかしくじゃれ合っとる、うちと茨木のこと羨ましそうに見とったから。」
なんと俺のジェラシーが伝わっていたのか!
フラグとか言ってた自分がめちゃくちゃ恥ずかしい!
見た目少女二人のじゃれ合いを羨ましげに視姦する成人男性。
逮捕待ったなしである。
ターン!
ターン!
タターン!!
俺がどうやって自らの羞恥プレイを隠そうかと必死に頭を回転させていると、遠くから銃声が鳴り響いた。
「あれ?また派手にナイチンゲールが撃っているようですね。
・・・マスター、何騎かカルデア所属ではないサーヴァントの気配を感じます。
一人はあちらにいる者達でも対処が難しいほどの力を感じます。残念ながらセイバーではないようですが。」
俺はXの謎の気配察知スキルによる報告を聞いてふと思い出す。
詳細は忘れたが、ゲームではカルナとエレナの二人によって何故かライオン化したエジソンの所に連れてかれるんだっけか。
まあ捕まるが上手いこと逃げ出して他の味方サーヴァント達と合流するはずだから俺達も早い所合流した方がいいのだろうか?
だがこの世界では俺がいるために此方の陣営が多く、ゲーム通りになるとも限らず、即カルナが殺しにかかるかもしれない。
う~んどうするべきか。
「マスターいかがいたしますか?私が先行して斥候いたしましょうか?」
「いや固まって堂々と行こう。こっそり行って誤解されて戦闘になるのも嫌だし。そもそもイザとなったら相手はたった二騎なんだ、俺達全員でフクロにすればいいだろ?」
「了解しました。」
「ふむ、それで行こうか!何!イザなったら吾と酒呑だけでどうとでもなるからなあ!」
「ハイハイありがとう、ばらきーちゃんチョコレートだよぉ!」
「(*´▽`*)わーい!」
「・・・もう!ほんにしょうがない子やなあ。」
「どうでも良いですが私影が薄くないですかね?」
この後、最近自分の影が薄くないかと他の者が聞いたら鼻で笑うようなことを気にしだしたXを放置して、滅茶苦茶ばらきーちゃんを甘やかした。
医療テントまで戻ると予想通りカルナとエレナ、そして機械化歩兵達にぐだ男君たちが囲まれており、ぐだ男君がカルナの宝具により気絶、俺達も御用となり大統王エジソンの下へと連れていかれた。
とりあえずはゲーム通りどこぞの洞窟を通ってエジソンの居るアメリカ軍の本拠地へ向かう俺達。
ゲーム通りの進行に一人ホッとする俺はふとエミヤに疑問をぶつける。
「・・・なあエミヤ?」
「なんだね?マスター。何かこの状況を打開する良い案でも思いついたのかね?」
「いや違う。・・・カルナはインド神話の英雄だよな?」
「ふむ。そうだな。彼はインド二大叙事詩の一つ「マハーラーバタ」に登場する半神の大英雄で施しの英雄ともいわれる武人だな。」
流石趣味と実益を兼ねた武具マニアのエミヤさん。
短くも要点を抑えた見事な説明である。
その調子で俺の次の質問にも答えてもらいたい。
「じゃあさ、エレナって誰さ?何した人?」
「・・・ロマンが詳しいようだから聞いてみたまえ。」
あれ?この反応、エミヤも知らない系?
確かエレナってキャスターで武具とか関係ないから管轄外とか?
恥ずかしいからロマンに投げたとか?
「あら?二人で仲良く秘密のお喋りかしら?」
二人でこそこそ話しているとエレナ女史に気づかれた。
またその言い方だと俺とエミヤが深い関係(意味深)っぽいから止めてほしいが、正直に本人を目の前にして「貴女のことを知らないので何の英霊か予想してました。」というのは些か気まずい。
そうして表面上には出さず、内面で動揺しまくっているとふと天啓(偽)が舞い降り、
深く考えないまま、脳裏に思い浮かんだ言葉が口を滑る。
「カルナとエレナってぐりとぐらみたいじゃない?って話してたんだ。」
天啓(偽)に従った結果、エレナ女史に百科事典ほどの厚みがある魔導書でぶん殴られた。
解せぬ。
何度か戦闘を終えて、遂にエジソンの居る白亜の城に到着した。
地味に遠く、乗り物位用意しても罰は当たらないと思う俺。
そして瞬時にその考えに同意するぐだ男君であった。
城内に入り、玉座の間にてエジソンと邂逅するカルデア一行。
序でに野獣と化したエジソンに驚愕するカルデア一行。
「ね、驚いたでしょ。ね、ね、ね?」
と見た目通りの悪戯っ子っぽいエレナ女史に萌えつつ、野獣と化したエジソンと特異点やケルトへの対処について話し合いを行うが、途中エジソンが容姿や人種など関係なく知性があれば人間なんだと良いことを言っていた。
だがばらきーちゃんや冬木とかにいたメデューサ、魔神柱など知性はあっても人外な存在ってどうなるんだろうか?
などとどうでも良いことを考えつつ、エジソンとぐだ男君の方針は決裂、物量に押されての幽閉までの過程をたどった。
具体的には特異点を修正し人理を守ろうとするカルデアと世界を切り捨てアメリカ合衆国という名の特異点を作ろうとするエジソン。
双方の意見が纏まるはずもなく、大量の機械化歩兵に押されて敗北することになった。
まあ本気でやればエジソンを殺すことが出来ただろうが、確実にカルナによって此方にも被害が出ていただろう。
牢屋にてしばらく戦闘プランをばらき―ちゃん以外とも話し合いつつジェロニモ氏の救援を俺は待っていた。
ジェロニモ氏はアメリカ大陸の先住民アパッチ族の戦士で欧州からアメリカにやってきた開拓者というの名の侵略者と戦い続けた偉大な英雄でもある。
決して正義超人に憧れ人間から超人になったレスラーの名前ではないのだ。
そして予定通りジェロニモ氏によって牢屋から解放され機械化歩兵を蹴散らしつつ地下を進む俺達。
道中、特筆することもなかったがナイチンゲールさんのジェロニモ氏への歴史を元に戻したらアメリカに敗北した戦士として歴史に紡がれるが、それは良いのかという疑問を投げかけ、
ジェロニモ氏は
「私の血が、私の同胞が流した血が、無為になる。」
「無かったことにするのは簡単だがそれを堪えるのが戦士というもの」
「無かったことにするのは小狡いコヨーテだけ」
という返答をしていたことが印象深い。
まあ本当はその言葉を受けてサーバントたちも皆思い思いにリアクションしており、エミヤとXのリアクションが特に記憶に残ったからだ。
エミヤは我が意を得たとうんうんと頷き、Xは非常に悪い顔色で「そ、そうですね・・・。」と頷いていた。
Xの顔はまるで「英雄王と征服王に自分の王の在り方や聖杯にかける願いを盛大にディスられた末に征服王を慕う王の軍勢を見せられた騎士王」みたいな顔であったと追記しておこう。
途中、カルナ(EASY)を打倒し西部の無人化した町まで逃げてきた。
流石に人間である俺とぐだ男君には辛く、到着してすぐに仮眠をとった。
ぐだ男君は電源が落ちたかのように倒れ、俺は最後の力を振り絞りばらきーちゃんを抱き枕に、マルタの太ももを枕に深い眠りに落ちた。
3時間ほどして目を覚ますと、ばらきーちゃんが居なくなりマルタが丸太に変わっていた。
そんな感じで起きて早々心にダメージを負った俺は自らの体調を調べる。
魔力は十分、身体機能も問題ない。
むしろ起き抜けの怒りと絶望から戦闘能力は狂化的な意味合いでマシマシであろう。
心臓抉られたラーマ君と合流し、味方に引き込もうとする打算と善意から彼の治療を開始した。
しかし治療を初めてからの
「仕方あるまい・・・何しろ相手は・・・クー・フーリン。アイルランド最強の英雄だ!」
というラーマ君の言葉。
一転、カルデアのクー・フーリンことキャスニキの審問会へと変貌した。
まあ直ぐに良識溢れるジェロニモ氏のより他の味方に成りうるであろうサーヴァント達を集めて、ケルトの首魁、クー・フーリンとメイヴを暗殺するという方針が打ち出された為、キャスニキは生き残ることが出来た。
まずはジェロニモ氏の案内の下、ロビン&ビリーと合流しに行ったが、道中ラーマパックを背負ったナイチンゲールさんが単独敵のど真ん中に突撃していって非常に困った。
マシュは大天使なのでどうにかして止めてもらおうと穏便に注意していたが、バーサーカーたるナイチンゲールさんには暖簾は腕押しであった。
次第に鬼娘二人とXも同時に突撃しだし、最終的には敵を見つけたら即全員で突撃という戦闘民族ケルトも真っ青の集団になり果てていた。
無事に二人と合流した俺達は、更に戦力を拡充するために次はロビンの知り合いというセイバーとランサーに会いに向かった。
どうにもロビンは件の二人に会いたくなさそうなのだがさてあまり覚えていないのだが仲間になるのは誰だったであろうか?
未来では有名な大都市であるが独立戦争時はまだ寂びれているとある街へと到着した。
すると俺の魔術で強化した耳には奇怪な音が聞こえてきた。
「ハートがチクチク 箱入り浪漫♪それは乙女のアイアンメイデン」
地獄の蓋が開く!
「♪愛しいアナタを閉じ込めて♪串刺し血まみれキスの嵐としゃれこむの」
鳥は堕ち、コヨーテは泡を吹き、ケルトの雑兵は逃げ出す。
「「「・・・・・・・」」」
思い出した。(白目)
エリザベートとネロ。
型月世界のジャイアンリサイタル二大巨頭だった・・・!!
俺はやっとその事実を思い出し、颯爽とばらきーちゃんの角を撫でまわしながら現実逃避した。
「何度も出てきて恥ずかしくないんですか?」