FGOクリアしました、リアルで。   作:チョコラBB

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俺が何が怖かったか分かるか?

・・・・・前話の感想欄の9割がラフムだったことだよ!!


魔神柱、死す

天を覆わんばかりの巨体。

此方を睥睨する幾つもの眼。

其処に存在するだけでこの身を腐敗させてしまいそうな魔の気配。

俺が実際に始めて見る魔神柱はこの上なく醜く、悍ましいほどに強大な気配を纏っていた。

そんな直視するだけで心折られるであろう魔神柱が計28柱、それらを見上げる北軍には絶望と諦観が満ちていた。

ある者は武器を取り落とし、ある者は涙を流し、ある者は狂ったように笑っていた。

いくら勇敢に戦っていたとはいえ、神秘の薄い時代に生まれた北軍の兵士の多くは完全にこの怖気を催す魔神柱の気配に圧されていた。

サーヴァント達もそうだ。

現地で合流したネロやエレナ、あの二コラ・テスラですら動揺を隠せないでいる。

エジソンは・・・一度心折られていたからだろうか、策はないにしろ意地でも抗おうをしている。

では俺のサーヴァントは?

今まで見たことのない28柱という数の魔神柱の気配に圧されているようだが、戦意は失っていない。

一部を除き、例え一柱でも相対し、打倒した経験があるからか?

それともぐだ男君たちの応援という希望があるからだろうか?

俗人たる俺にはよく分からない。

 

では俺の場合はどうだろうか?

一言でいえば北軍の兵士とそう違いはないだろう。

ゲームやカルデアの記録という形で何度も画面越しに見た存在であるが、実際に相対したコレとは天と地ほども存在感が違う。

恐ろしいし、悍ましい。

恐いし、悲しいし、今すぐ全てを投げ出して逃げたいと感じてしまう。

もしも仲間を裏切れば逃がしてくれるというのなら何の躊躇もなく従うことだろう。

では何故俺はそうせず立っているのか?

何故一歩一歩歩き、仲間達を超えて先頭、最も魔神柱に近い位置に立つのか?

義務感?

正義感?

責任感?

それとも意地や愛情などの精神論?

そのどれとも違う。

俺に有るのは唯一つ。

 

「あふれ出る欲望だけだ!コノヤロー!!」

 

確かに魔神柱は悍ましい。

通常ならあんなもの直視しただけで俺の精神は壊死することだろう。

だが聖戦、具体的には12月22日から25日までの採集、いや最終決戦を経験したマスターである俺には魔神柱は素材の塊にしか見えなかった。

 

「皆聞いてくれ!!」

 

魔神柱から最も近い位置、北軍全てが見渡せ、また見渡すことの出来る場所に立ち、振り向きながら俺は叫んだ。

 

「もう一度言う!皆聞いてくれ!!」

 

多くの視線が俺に集まるのを感じる。

 

「確かにこの化け物、魔神柱は強大だ。皆も感じているとおりさっきまで戦っていた玉藻の前ですら、いや今までケルト軍を指揮しアメリカを蹂躙したクーフーリンですら、この魔神柱の足元にも及ばないほどの力を持っている。」

 

俺の言葉がゆっくりと広がり、北軍の絶望の色が濃くなる。

また半面、サーヴァント達からは怒りや困惑の気配を感じられ、俺の背後からは魔神柱のものと思われる愉悦の気配が感じられる。

このままでは俺は誅されることもあり得るかもしれない。

 

「だが!逆に考えてみるんだ!」

 

「確かに魔神柱の力は強大だし、その攻撃は大地を破壊し、地形すら変わるだろう!」

 

「だが、それでも!俺達が戦ってきたクーフーリンや倒した玉藻の前、たくさんの魔獣よりもコイツが強いと思うか!?」

 

今度は背後からも困惑の気配が感じられる。

ふん!余裕かまして俺を殺さずに放っておいてことを後悔させてやる!!

 

「確かにコイツはデカいし、比べるのも馬鹿らしくなるほどの魔力を持っている・・・。しかし!それでもコイツの図体を見てみろ!コイツがクーフーリンのように攻撃を避けるか!?ケルト兵のように大勢で奇襲をかけてくるか!?」

 

次いで俺の言葉を聞き、北軍のある者は顔を上げ、ある者は未だ涙を流したまま武器を拾った。

 

「ディルムッドやフィンのように人外の技巧を誇ると思うか!?」

 

エジソン達現地サーヴァント達の瞳にも力が戻る。

兵達もいまや全員が武器を持ち、涙をぬぐい歯を食いしばる。

 

「フェルグスのような覇気を!ベオウルフのような暴力を持つのか!?」

 

カルデアより俺と共に来たサーヴァント達に笑みが浮かぶ。

きっと俺も今笑っていることだろう。

 

「こいつがメイヴのように無限にケルト兵を生み出し続けるのか!?先ほどの玉藻の前のように馬鹿げた強化を行えるのか!?」

 

再び振り向き、俺は魔神柱を直視する。

不思議なことに先ほどまでの圧迫感が嘘のようだ。

表情など分からないがこの魔神柱の眼も明らかに困惑している。

 

「皆!今まで神秘渦巻く強大な敵と戦い、アメリカを!人理を守ってきた勇敢なる人間よ!!今まで戦ってきた敵と比べたら相手は確かに強大だ、だが逆に考えればそれだけだ!!魔人柱など移動も出来ない、ただ立っているだけの体力が多いサンドバックと何も変わらない!!」

 

オオオォォォ!!

 

背後から怒号のような雄たけびが轟く!!

 

「何よりも!!」

 

「これだけの巨体、これだけの力ある存在だ!!カルデアの諸君!今までの特異点での記録を見る限り奴は希少な素材の塊だぞ!?」

 

「「「!」」」

 

オ?オオオォォ?

 

カルデアのサーヴァント達の息をのむ雰囲気、北軍の困惑している雰囲気を感じる。

 

「もう・・・、もう霊基素材を探して各特異点をマラソンしなくても良いんだ、死んだ目になっても尚、エネミーを狩り続けなくていいんだ・・・っ!?」

 

「「「!!」」」

 

俺の背後から異様な覇気、というか聖杯戦争終盤の大空洞並に人間の悪意を煮詰めたような気配を感じる。

思わず俺自身にも震えがくる・・・。

これは怖気?いや武者震いというやつだろう、きっと、多分、メイビー。

 

「じゃ、じゃあもう湖の乙女の加護により水面を立てるからと言って、ひたすら黒ヒゲとコンビを組んでオケアノスマラソンしなくても良いのですか!?」

 

「拙者ももうアニメを見る暇もなくこのAIG(頭のイカレタガール)にビクビクドキドキしなくてもよいのですか!?(もう少しまともならprprしたい。)」

 

「exactly(その通りでございます。)」

 

「で、ではもう寝る間も惜しんで宝具投影したり、クレイモアをコツコツ組み上げなくても良いのか!?」

 

「もう・・・もうロンドンで本とか破り回ったり、シャドウとはいえ幼い少女や気狂いピエロを撲殺し続けなくてもいいのね!?」

 

「e、exactly(エミヤはどうかな?頻度が減るくらい?)」

 

「お姉さんも皆が特異点マラソンしている間に一人寂しく食事を用意して待たなくても・・・い、いいの?一話から名前出てたのに今までセリフが一言もなかった事も・・・。」

 

「私もキャスターなのに無茶な近接戦でルルブレし続けたり、困ったときのドラ○もん扱いで無茶ぶりされなくなるのかしら・・・?」

 

「・・・スッ(無言で目を逸らす。)」

 

それは素材集め関係ないから俺には答えられないよ・・・。

だがそんな些細な事は置いといてカルデア勢からは鬼気迫るナニカがあふれ出している。

何というか狂スロットの黒いオーラ的な?

オカシイな?今のメンツにはバーサーカーとか居なかったはずなのだが。

 

「・・・何か余、唐突にカルデアに参加したくなくなってきたのだが・・・。」

 

「皇帝様奇遇だね。俺ッちもだよ・・・。」

 

「・・・うむ。人の三倍働き三倍休むと生前言っていたが少し考えを改めようか。」

 

「フハハハハ!愚かなり!エジソン!!私は触媒なぞ取られてないからな!!貴様は精々凡才なりに頑張るが・・・」

 

「・・・スッ。皆の触媒(ニコラ・テスラのボタンも含む)は入手済みだから・・・。」

 

「なん・・・だとっ!?」

 

「カルデアスタッフのサポートや装備開発出来そうなキャスター、斥候や破壊工作が得意などこぞの緑弓兵は絶対に逃がさん。(にっこり)」

 

「ほっ・・・。ざ、残念ながら皇帝たる余は斥候としては緑に劣るし、キャスターのように魔術にも秀でておらん!しかも戦闘力では既にカルデアにいる戦士たちやカルナやスカサハなどには遠く及ばないからな!!いや、残念だ!!あるといえば魅力あふれる美貌と歌声しかないか・・・。」

 

「・・・皇帝特権って色々出来るんですよね。」

 

死んだ魚の眼で地面に女の子座りするネロ。

 

「しょうがないわねぇ!!そんなにお願いされたら断れないじゃないの!このエリザベート・バートリーの力を貸してあげるわ!!その恍けた顔で感謝しなさい子カピバラ!!プークスクス!」

 

「あ、エリザベートは帰っても良いんで。じゃ、オツカッレシター。」

 

「な!何よ!?私の扱いだけ酷くない!?何よ、何なのよ!この私のスターオーラに嫉妬かしら!?」

 

「・・・だって今言ったこと何もできないじゃないですか。それにワザワザ呼ばなくても勝手に来るんでしょ?ハロウィンとか・・・。」

 

「何でよ!?ホラ!私の蕩ける歌声で慰安とか出来るわよ!?」

 

「まずさっきまで歌声聞かせてたケルト兵に感想聞いてみろよ!?本気でぶん殴られるぞお前!!」

 

「ヒドイ!!ううううっ!私アイドルなのに!?ヒロインなのに!?」

 

涙目、いや既にガン泣きしながら俺の脚に縋り付くエリザベート。

だが俺は彼女を無視し、引き吊りながら魔神柱の下へと進んでいく。

 

「お、お願い~!マスター捨てないで、見捨てないで!私何でもするから!頑張るから!!」

 

「ん?何でも?今何でもって言った?」

 

「え!?う、ううう言いました~!!だから見捨てないで!お願いだから!!」

 

俺の足を掴み、土塗れになりながらも涙目で見上げるエリザベート。

周囲はドン引きである。

 

「・・・しょうがないから呼んでやるか。ホラ立てよ。土を払って、もう分かったから、見捨てないから、泣き止めって・・・。」

 

「スンっスンッ。」

 

数分後

 

「じゃあ改めて。皆確かに魔神柱は強大だ!だが今までの強大な敵と比べれば火力と体力だけの動けない肉塊なんて余裕だ!!皆勝つぞ!!」

 

「「「お、おう・・・」」」

 

「・・・此処で素材がたくさん手に入ったらカルデアのブラック気味な環境も改善するだろうな・・・。」

 

「皆!全力を尽くせ!!どうせ召喚されるなら少しでも努力するべきだ!北軍の指揮は引き続きこの私、エジソンが受け持とう!皆は全力全開で魔神柱打倒に動いてくれ!」

 

「「オおおぉぉぉ!!」」

 

「倒れるなら前のめりだ!」

 

「余はもう諦めた・・・。」

 

「アンコールの時間よ!!」

 

「倒してしまっても構わんのだろう?」

 

皆の士気が上がってとてもうれしい。

俺の魔力回路及び聖杯もフル起動で魔力を精錬しサーヴァント達に注ぎ込む。

また魔術回路がボロボロになって倒れるだろうが無茶をしなければ生き残れない。

 

「――――――――往くぞ!!」

 

「「「応!!」」」

 

聖剣と魔剣の火が灯り、海賊船が突撃し、世界を塗り替える固有結界が展開される。

雷が舞い、神代の大魔術が、近代魔術によるマハトマの光がいくつもある眼球を焼き滅ぼす。

畏怖という名の信仰を奪い取られ、名もなき市民に身体を削り取られ、タラスクは鉄拳制裁され続ける。

 

 

開戦、約三時間後。

魔神柱(二十八人の怪物)撃破。

 




尚、前話から今話の間中ずっと葉山はマスク着用中の模様。

またエリザベートを書こうとしたらアクア様のイメージが混入してしまった。

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